時代がもたらす社会的要因(その2)

地方コミュニティの崩壊や時代の変化によって希薄になった人間関係に加え、携帯電話やPCの普及により、相手の顔を見ながら行うコミュニケーションがさらに減少しています。この傾向は、抑制的気質の子どもに限らず、子どもにも大人にも悪影響を及ぼしているように思います。

日本でもそうだと思いますが、イギリスの学校では筆記テストの点数だけが評価の基準ではありません。自分の考えや意見をしっかり伝え、授業やクラスに貢献できるかどうかも成績に響いてきます。特に、国語では「話す」技能を問われます。

緘黙児や大人しい子には、かなり辛い傾向ですね…。

私は昨年冬から、『発音・言語・コミュニケーションの困難を持つ子どもの支援(Supporting Children with Speech, Language and Communication Needs)』という短期コースを受講していました。イギリスではここ5年ほど「話し言葉」の重要性が叫ばれていて、文部科学省が様々な支援プログラムをバックアップしています。

子どもの発音・言語・コミュニケーションのスキルは、他者との交流により、0歳から18歳くらいまで、特定のパターンで発達していきます。これはどの言語でも同じです。

「見て、聞いて、感じて、知る」

「知った言葉を、自分で使ってみて、人の反応を見ながら正しい使い方を覚える」

これを積み重ねて、少しずつ自信をつけ、話し言葉だけでなく社交技術や社会性など、人生において大切なスキルを身につけていくのです。

だから、子どもに一番近い保護者、特にお母さんが子どもに話しかけることはものすごく大切です。携帯やタブレットで息抜きタイムも必要だけど、まだ話ができない子どもだって、お母さんが誰かに挨拶したり、話したりするのを見て、聞いて、感じて、常に学んでいるのです。言葉だけでなく、ジェスチャーやボディランゲージ、顔の表情といった非言語コミュニケーションも。

重要なのは、これらのスキルが、子どもの学習・ふるまい・社会性の発達・情緒の発達に大きな影響を与えるということ。忙しい毎日ですが、家族が一緒に過ごす時間を多くするなど、なるべく子どもと話す機会を多く作りたいものですね。

余談になりますが、バーチャルでの交流もいまや必要不可欠ですよね。書くことで自分の考えをまとめられるなど、利点もあると思いますが、顔が見えないと相手の気持ちや場の雰囲気を察しづらいもの。ネットの匿名性も災いして、エチケット違反も増えてきているような気がします。