緘黙児とオンライン学習

早いもので12月もすでに9日!イギリスでは先週火曜日に全国的なロックダウンが終わりましたが、ほとんどの地区は警戒レベル2「高い」か3「非常に高い」に逆戻り。店舗やジム、美容室などは再開したものの、個人宅に人を招くことは禁止されています。

それでも、政府は一年最大の祝日であるクリスマスには、5日間限定で個人宅に3家族まで集まることを許可しました。クリスマスショッピング(食料品、贈り物、デコレーション他)で経済が潤い、国民は家族との再会を楽しめる――政府への反発は弱まるかもですが、その後の感染拡大が今から心配。

明るい話題としては、アメリカとドイツの製薬会社が開発したファイザー社のコロナワクチン接種が昨日からスタート。2回の接種が必要なので、効果が出るのは来年の1月5日以降ということですが…。

実は、昨日勤めている特別支援学校が、なんとコロナ感染のため閉鎖となりました!幸いにも、私は濃厚接触者ではなかったので自己隔離は必要なしですが、あまりにも身近!! 授業がリモートに切り替わったので、準備に追われています。

      学校近くの住宅街で見つけた街路樹の根元に広がるアートワールド。先週からクリスマスモードに。アイビーちゃんとノア君のママが美術監督です

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昨日、SMiRAのFBにオンライン学習で緘黙児の不安と緊張がより高くなったという投稿がありました。対面クラスの方が緊張するはずなのに、どうしてなのか悩んでいるという母親。この相談に対して、色々な回答や意見があったのでご紹介します。

ちなみに、娘さんは3歳の時に場面緘黙になり、現在15歳とのこと。

昔から、ビデオを撮って祖父母に見せるのは平気だったし、自らの映像をYouTubeに投稿して楽しんでいたよう。それが、今では写真もビデオも撮影はNGに…。

普段の授業では、100%正解でなければ絶対に答えないため、クラスで声を出す機会は少なかったといいます。その場合も、先生が指名する前に合図を送り、OKだったら指名するというサポート体制ができていたよう。

それが、オンライン授業だと体が硬直してしまい、無表情になり、質問されても全く答えられない状態に。そのうえ、頻繁にパニック状態が出るようになったとのこと。

「何か変なことを言ったらどうしよう?!」

「間違えたらどうしよう?!」

「みんなが笑うわ!ビデオに映ってるのよ!」

こう訴える娘に、母親は胸が張り裂けそうだといいます。

どうしてこんなに自己評価が低いのか?自分が皆にどう見られているのか、笑われているのではないか--そんな不安に苛まれているのは、前の学校で虐めにあったのが原因ではないか、と推測も。

一番安心できる自宅で行うビデオ通信での間接的なコミュニケーションと、不安が大きい学校での対面の直接的なコミュニケーション――前者の方が緊張が高くなるのはどうしてなのか? 学校では、時間割やルーティンが決まっているから予測がつけやすいから?

多くの回答の中で最も納得できたのは、PCのカメラの焦点が自分だけに当たっているから、という指摘でした。

教室では時々先生には見られていても、他の生徒に見られているという感覚は少ないかもしれません(イギリスの学校はグループで座ることが多いですが)。教室の方が、大勢の中のひとりとして隠れやすいのかも。

本人の画面上は、先生をメインに他の生徒達の顔が無数にこちらを向いている訳で――みんなに凝視されてるかのようにも感じるかも。

また、自分の顔が常に皆の画面上にあって、話す時には注視されると考えると、目立つことを嫌う緘黙児が嫌がるのも無理はありません。

緘黙児には自意識過剰な子も多く、一度怖いと感じると、どんどん不安が増大してしまうのではないでしょうか?

回答をみると、オンライン授業が苦手な緘黙児は少なくないようです(反対に、得意な子もいると思いますが)。その対処法としてあげられたのは、自分の姿や自分の声を隠せるミュート機能を活用すること。

事前に先生と打ち合わせをして、文字のみの参加から可能にしてもらうなど、それぞれの子どもに合う方法を取れるといいと思います。慣れてきたら、最初は文字だけで参加して、最後の挨拶だけ顔を出すなど、少しずつステップアップしていければ。

そういえば、私の学校の日本語の生徒達(高機能ASDのティーン)も、過半数は顔を隠して(アイコンのみ表示)オンライン授業を受けています。最初の挨拶の後は、画面をシェアして音読やQ&A方式ですすめているので、顔が見えなくても支障はありません(実は、私自身もできれば顔出ししたくないです…(;^_^

いずれにせよ、不安が少ない状態でオンライン授業に臨めることが一番ですね。

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オンラインで緘黙支援

オンラインで緘黙支援

イギリスは先週木曜日から4週間のロックダウンに突入しました。今回は学校閉鎖がないため、週2回車で隣町にある学校に通っているのですが、ロックダウン前より外出してる人が多いような?

外での運動はOKなので、学校が終わった後に近くの森を散歩するのが楽しみ

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2015年4月に、マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援(その14)』として、『どうして緘黙のティーンが短期間で話し始めるのか?』という記事を投稿をしました。(もう5年も前とは――月日が過ぎるのは本当に早い(;^_^ )

その中で、下記のような疑問を持ち、私なりにその理由を4つ考えてみました。

>さて、番外編の続きです。年が上の子への支援について、マギーさんに直接お伺いしたところ、「支援を受けたティーン全員が2、3週間で口をきくようになった」との答え。これらのティーン達は緘黙が長期間続いていたと思われるのに、すごくないですか?

実は、機会があって現在21歳の緘黙男子をオンラインで支援しています。セッションは先週で4回目。通っているカレッジで最も緊張が強く緘黙状態が酷いため、誰にどのようにサポートを求めるか、彼の気持ちを確認しながら一緒に作戦を立てている最中です。

最初はSNSでやり取りし、次にオンラインでセッションを行ったのですが、何せ一度も会ったことがない相手。セッションで初めて顔を合わせるので、声が出せるのかどうか全く予測できませんでした。とにかく、少しずつでも声を出せるようになればいいなと考えていたのです。

そこで、一番楽なコミュニケーション法を選べるよう下記のような提案をしました。

<選択肢>

  • アイコンだけの参加(顔見せしない)OK
  • ミュート機能をオンにし、こちらに自分の声が聞こえないようにしてもOK
  • メッセージでの返答・やり取り(こちらの声は聞こえる状態で)OK

私には20歳の息子がいるし、主にハイティーン達に日本語を教えている関係で、若い人とのコミュニケーションには慣れているつもり。でも、彼から見たら、知らない東洋人のおばさんな訳で…。一体どんな反応をするのか、少々心配ではありました。

そうしたら、「普通で大丈夫」という返事が…。

まずは、趣味について話そうということになりました。雰囲気が良ければ、彼のSM情報を収集し、将来やりたいことやトーキングマップ(話せる人のマップ)作りができればなと…。

当日は、不安が募ってオンライン・セッションに現れない可能性も充分あると思っていました。そうしたら、約束の時間の1分前に「今、すごく不安。ただミーティングに参加するだけでいいの?」とSNSメッセージが。

「不安だって教えてくれてありがとう。参加してくれると嬉しいよ。実は、私も緊張してるんだ」

そう返事を返した途端、彼が画面に現れました。そして、何と普通にしゃべり始めたのです!

お互いに短い自己紹介をして、すぐさま自分の状況を話してくれたのですが、まったく自然な感じで、「本当に緘黙?」と疑うほど。

彼によると、緊張が強くても大人と1対1だったら、人によっては何とか声を出せるそう。ただし、同世代のクラスメイトは全くダメ。話そうとすると、喉が締まったようになって体が硬直してしまうと…。

何とか緘黙から脱出したいという強い気持ちに加え、私の日本語訛りの英語も安心材料のひとつだったかもしれません。

一緒に計画している作戦で、カレッジが動いてくれるかどうか--彼はダメもとで自分でやってみるつもり。第三者である私と話すことで、自信をつけたり、自分の問題を客観的に見ることができたらいいなと願っています。

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マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その1)

どうして緘黙のティーンが短期間で話し始めるのか?

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