2019年SMiRAコンファレンス(その6)SMとASDへの基本姿勢

早いもので、5月もすでに中ば。イギリスではずっと天気がすぐれず肌寒い日が続いていたのですが、やっと5月らしい陽気になってきました。まだまだSMとASDの記事が続きます。

森林公園ハムステッドヒースで午後の散歩

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ASD児とSM児に対する基本的な姿勢

<ASD: 考慮すべきこと>

  • 自閉症は生涯続く
  • 当事者にとっては、自分が一生自閉症のままであること、それは問題ではないことを自覚することが精神的な助けとなる
  • 常に自閉症の三原則(アイスクリームサンデーの3種類のアイスクリーム、及びシロップ(感覚の違い))が存在するが、ウエハース部分(行動・言動)は時間の経過とともに変化してゆく
  • 自閉症の脳は一般的な脳とは異なるが、劣位にあるという訳ではない = 脳の多様性
  • 自閉症はその人から切り離せる症状ではなく、その人の個性を形成しているもの
  • 本人が自閉症を個性として受容する
  • 周囲はその子の個性として捉える

<ASD児が問題行動を起こしてしまうリスク要因>

  • 常に不安や恐怖症を抱えている
  • 感情的な反応を規制することが難しい
  • 他人の意図を読み取ることが難しい
  • 予測可能でない・自分でコントロールできない状況だと不安になる
  • 場や人に合わせたり、応じたりするモチベーションの欠如
  • 経験から学ぶことが難しい

みく備考:ASD児は成長するにつれて自分が他の子と違うこと(人とうまく関与できず、社会的な集団になじめない等)を意識するようになります。この違和感 /疎外感が自己否定感に繋がらないよう、自分も周囲もASDを個性として受容し、自己肯定感を育んでいくことが課題になってくるかと思います。

ASD児は常に不安や恐怖症を抱えており、思考の柔軟性に困難があるため、二次障害としての不安障害(恐怖症、社会不安、強迫性障害)やうつ病などを発症しやすい傾向にあります。私が働いている特別支援学校の生徒たちも、高機能ASDと他の症状を抱えているケースが多いです。

先月、『環境運動の旗手は場面緘黙?』というタイトルで、今欧州で時の人となっているグレタ・トゥーンベリさんについての記事を書きました。彼女はASDとSMの併存のみならず、OCD(強迫性障害)や摂食障害など(定かではないですが)にも苦しんできたよう。現在では、物事を「白か黒か」でしか見られないことやこだわりの強さを自分の個性と受け止め、活動の原動力としています。ASDの特性を生かした彼女の強さは賞賛に値しますし、ニュートンやアインシュタインなど、多くの天才たちがASDだったという説も。

(もし時代が変わって、自閉症の人口が健常と呼ばれる人たちの人口を越えれば、健常の人たちがマイナリティになり、「社会性」は重要ではなくなるのかも…。私たちはもっと脳の多様性(ニューロダイバーシティ)を理解し、色々な個性を尊重し合って共生していくべきなのかもしれませんね)

<SM: 考慮すべきこと>

  • SMは表に現れるウエハース部分(行動・言動)で、本人の意思で話さないのではない
  • 症状は変えることが可能で、時間をかければ改善できることが多い
  • SMを個性として受容することは、本人の精神的な助けにはならない
  • その子・人の個性として捉えず、外側にあるものとして捉える
  • 本来のその子らしさを第一に

みく備考:SMに対しては、「話せない」ことをその子の個性としないことが肝心です。「話せないのが自分」と自ら納得し、周囲が温かく見守り続けるだけだと、緘黙が定着してしまいます。本人が「変われる」「変わりたい」と思うことが克服の第一歩。

ただ、不安になりやすい抑制的な気質の子は、自分がそういう気質であることを認識し、対応策を身に着けていくことも大事かなと思います。自己評価が低い子が多いので、保護者は子どもにどんどん成功体験を積ませ、自己肯定感を育てていけるといいですね。緘黙だと社会的な場で「自分らしさ」を出せないことが多く、自信を持たせることが難しいのですが…。

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2019年SMiRAコンファレンス(その5)SMとASDの対比

日本では10連休ももうすぐ終わりですね。昨日は関東地区でゲリラ豪雨が発生し、大量の雹が降ったとか…やはり、世界各国で気候変動の影響が出ているように思います…。さて、SMiRAコンファレンスの続きです。

<ASDとSMの対比>

  • ASD: 自閉症スペクトラムは、人がコミュニケーションをする方法、世界を見る方法、他者と関与する方法に影響を及ぼす、生涯続く症状。程度の差はあれ、全ての状況で起こる
  • SM: 場面緘黙はある気質的な素因を持つ人が、不安をベースにした反応として起こす症状。全ての状況で起こる訳ではなく、生涯続く訳ではない
  • そして、ASDに不安障害はつきものであるため、ある気質的な素因を持つ人の何割かはASDであると思われる

もし、表に出てくる行動や言動――アイスクリームサンデーのウエーハウスの部分――だけを見るならば、SM児もASD児も似たように見えるかもしれない。

<ASDとSMで重複する行動>

  • 視線を合わせるのを避ける
  • 自発的に、自由に人の輪に参加しない
  • 限定された社会的興味
  • 限定された相互関係
  • 感覚の違和
  • メルトダウン

<ASDの人が抱える困難>

  • 社会的な相互関係
  • 社会的コミュニケーション
  • 思考の柔軟性(想像力)
  • 知覚

          ↑

   ★あらゆる状況で常時存在する(うまく隠せているケースもある)

<SMの人が抱える困難>

  •  社会的な相互関係
  • 社会的コミュニケーション

       ↑

   ★常時ではない(子どもの不安が強い時)

  • 思考の柔軟性
  • 知覚

                         ↑

   ★時として困難が伴うこともある

<なぜ混同されるのか?>

  • 他人の言動や行動は目に見えるが、それを起こしている要因は見えない
  • 自閉症は場面緘黙より認知度が高い
  • 専門家がSM状態の子どもといる時、当然子どものコミュニケーションは通常とは異なる → 保護者に普段の様子をきく必要がある

ASDとSMの併存率は現在のところ知られていない

みく備考:人前では引込み思案な割に、頑固で完全主義なところがある緘黙児は多いのではないでしょうか?ただの「頑固」なのか「こだわり」なのか、判断が難しいところだと思います。でも、「こだわり(柔軟な思考の困難)」が強いからといって、すぐに自閉症には結びつきません。3つの特性をすべて持ち併せているかが鍵となります。

また、騒音が苦手、服のラベルが肌に触れるのを嫌がるなど、SM児の感覚過敏に悩まされる保護者は多いと思います。感覚過敏もASD児に共通する特性ですが、感覚過敏=自閉症ではありません。ただ、SM児の感覚過敏は、成長するにつれて薄らいでいく/ うまく適応・対処していけるケースが多いのでは? うちの学校のASD児やティーンを見ていると、年齢があがっても食べられる食品が極端に少なかったり、「〇〇は絶対にしない」と頑固一徹(思考の柔軟性がない)なような…。状況から判断して、「ちょっと我慢・妥協した方がいいかな」という姿勢は見られません。

イギリスでは、最近になってASDの診断を受ける女の子や成人女性の増加が報告されています。女子は男子より精神的な成長が早く、周囲を見て模倣することや社会性の欠如を隠すことに長けているため、見つけにくいというのが理由のひとつのよう。また、ASD児の男女比は4:1とされているため、女子がアセスメントを受ける機会が少ないとも。アスペルガーや高機能ASDのアセスメントには、女子用のマニュアルが登場しているようです。

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環境問題の旗手は場面緘黙(その2)

環境運動の旗手は場面緘黙?(その2)

5月に入って、令和の時代が始まりましたね。16歳の環境アクティビスト、グレタ・トゥーンベリさんの話の続きです。

まずは、TED(Technology Entertainment Design 世界中の著名人による様々な講演会を開催・配信する非営利団体)で配信されたグレタさんの訴え(日本語訳つき)を聞いてみてください。堂々として、本当に素晴らしいスピーチです。

<1分33秒から2分5秒までに注目>

「それで私は11歳の時 病気になりました」

「うつ病になり 話さなくなり 食べなくなりました」

「2か月で10キロ痩せました」

「後に私はアスペルガー症候群で 強迫性障害で 選択的無言症だと診断されました」

「その症状は基本的に必要だと思う時しか話さないことで 今がその必要な時なのです」

うむむ…(未だに選択制無言症という古い訳)この説明だと、自分で話したい時を選んで話していると思われてしまいますね――実際、英国のガーディアン紙はこの路線でSMを説明し、後に訂正していました。

TEDの動画にはありませんが、他の記事で環境活動を始める以前の自分を、下記のように語っています。

「私はいつもみんなの後ろにいる、何も言わない子どもでした」​​

「学校ストライキを始める前、私は透明人間みたいな存在でした。話さなければならない時以外は、全く話さなかったわ

緘黙の子どもが周囲の輪に入れない自分を、「透明人間みたいな存在」と感じることは多いと思います。が、やはりここでも、自分が選んで話さなかったような表現…。

グレタさんの場面緘黙に関して、もっと詳しく知りたいと検索していたら、オンラインマガジン(?)Quiletteで記事を見つけました。ここには、グレタさんと家族のことがもっと詳しく書かれています。

https://quillette.com/2019/04/23/self-harm-versus-the-greater-good-greta-thunberg-and-child-activism/

グレタさんの母マレーナ・エルンマンさん(Malena Ernman)は、ヨーロッパでは知られたオペラ歌手。父のスヴァンテ・トゥーンベリさん(Svante Thunberg)は俳優、祖父も俳優と、著名な家族の元に生まれています。(でも、実はグレタさんの妹もADHDとOCDを併発しているのだとか)

記事によると、母親のマレーナさんが昨年出版した本『Scenes from the Heart (心の風景?)』に、学校ストライキに至るまでのグレタさんのメンタルヘルスと家族の葛藤が克明に描かれているよう(現在この本はスウェーデン語版のみ)。

グレタさんが初めて環境問題に触れたのは、8歳のころ。小学校の授業で観たビデオ――海洋に集積するプラスティックや飢えてやせ細っていく北極グマなど――に大きなショックを受けました。

クラスメイトたちの興味は、ビデオが終われば別のことにうつっていきました。でも、グレタさんの脳裏には映像が生々しく残り、いつまでたっても不安や悲しみが色あせなかったのです――気候変動が自分や地球にもたらす危機についてひとり悶々と悩み続けたことが、11歳の時にうつ病を発症した主因だったと書かれています。

(これは自閉症の特徴である「こだわり(思考の柔軟性の困難)」に(もしかしたら「フラッシュバック」にも)起因していると思われます。グレタさんはそれを承知していて、現在では自分の個性として受け入れ、モチベーションを保つ原動力にしているとか)

記事では、何年ものうつ病、摂食障害、不安の発作に悩まされた後、やっと医学的な診断がおりたとあります。そして、その当時は家族としか話さなかったと。

この時、うつ病、アスペルガー症候群(ASD)、強迫性障害(OCD)、そして場面緘黙と診断された訳です。

回復のきっかけは、環境についての心配を家族に打ち明け始めたこと。そして、CO2排出量を極力抑えるよう両親を説得し、彼らを変えることができたことが自信になったよう。それから国会前での座り込みを始め、あっと言う間に名が知れ渡って、一躍時の人となりました。

(ちなみに、本人はヴィーガンになり、服など新しいものは極力購入せず、飛行機を避けて列車で移動するという徹底ぶり。自らのポリシーを貫く姿勢がすごいですね)

ストライキを始めたばかりの頃は、お父さんが彼女のスポークスマンとしてメディアや研究者たちとやり取りしていたこともあったとか。国際的な会議などでスピーチをする娘の姿に、グレタさんの両親が一番驚いているよう。

緘黙についてまとめると、

  1. もともと寡黙な子どもだった(すでにこの時点で緘黙だった可能性あり)
  2. 11歳でうつ病を発症した際に家族としか話さなくなり、その後場面緘黙と診断される
  3. 15歳で環境運動を始めると、両親がびっくりするほど話せるようになった

本人は「話さなかった」という言葉を使っていますが、実際のところは「話せない」状態だったのかどうか――本を読んでいないので不明です。

ただ、自閉症の人が抱える不安に環境問題の大きな不安が加わったため、二次障害として不安障害である強迫性障害(OCD)や場面緘黙を発症したのではないかと推測できます。

ニュースやインタビューの映像を観ると、グレタさんはディスカッションにも参加し、デモでも多くの人と関わり、対話しています。

学校や地元でのパーソナルな状況は判りませんが、公の場においては既に場面緘黙を克服しているのでは?

「気候問題に積極的に取り組むことで、私はもう孤独でも、静かな存在でもなくなりました。今は世界を変えることに忙しく、この活動を楽しんでいるの」

この言葉から、自己肯定感が高まり、現在の自分に満足している様子がうかがえます。

大人たちがずっと後回しにしてきた環境問題を、今解決しなければならない緊急の課題として突きつけるグレタさん。時間がかかるのを承知のうえで、金曜日の学校ストライキや環境運動を続けています。その強い意志、忍耐強さ、ごまかしを許さない潔癖さが、世界を大きく動かしているのです。

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日本は今日から10連休ですね。イギリスでは先週末がイースター(復活祭)の4連休でした。その間、メディアを賑わせたのは、ロンドン中心部で行われた『絶滅レベリオン(Extinction Rebellion)』のデモ活動。普段人で賑わう主要部の5か所を占拠し、交通をストップさせて大騒ぎになりました。

     ロンドン随一のショッピング街、オックスフォードサーカスの交差点を占拠するデモ参加者たち

彼らの訴えは、政府の気候変動への対応に不服をとなえるもの。地球温暖化を減速させるために、現実的な対策の実行を要求しています。こうした環境運動は、今ヨーロッパを中心に世界各国に広がりをみせているよう。特徴は、中高生を巻き込む若い世代が参加していること。

その発起人が、スウェーデン人の16歳の少女、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さん。昨年の夏休み明け、たったひとりでストックホルムの国会議事堂前に座り込み、3週間のデモを決行。その後も、毎週金曜に学校を休んでこの抗議活動を続けています。

わずか16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさん

彼女の活動はSNSやメディアを通じて広がり、中高生の賛同者もどんどん増えていきました。これが『未来のための金曜日(Fridays for Future)』運動となり、今年3月15日(金)には、グレタさんの呼びかけで125カ国の約2000か所で、100万人を超える学生がデモに参加したとか。

     『気候変動問題のための学校ストライキ(School Strike for Climate)』のプラカードを掲げるグレタさん

今や国際的な環境アクティビストとして知られるようになったグレタさん。ヨーロッパ各国の抗議デモに参加したり、国連の環境会議や世界経済フォーラムなどで、堂々たる英語で演説したり。TVやメディアのインタビューや対談にも多数出演し、先日ノーベル平和賞候補にノミネートされました。まさに時の人なのです。

先週末は汽車で渡英し、ロンドンにもやってきました。デモのステージで演説したり、政治家に会ったりと精力的に動き、多くのメディアに取り上げられました。

私はグレタさんがアスペルガーだということは知っていたのですが、一昨日、ネットの記事を読んでびっくり。何と、場面緘黙の診断も下りているというのです!

政治家や著名人の前、大勢の聴衆の前で、臆することなく理路整然と英語のスピーチを繰り広げるグレタさんが場面緘黙??

ここのところ、SMiRAコンファレンスの講演『SMとASDの共存』の報告をしている際中なので、とても興味を持ちました。もう少し詳しく調べて、次回に私なりの見解を書いてみたいと思っています。

みなさん、素敵な大型連休をお楽しみください。

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2019年SMiRAコンファレンス(その4)SMとは何か?

<場面緘黙(SM)とは何か?>

  • 場面緘黙とは、学校のクラスメイトやたまにしか会わない親戚など、ある一定の社会的場面で話せなくなる深刻な不安障害
  • 通常は幼年期に始まり、未治療のままだと成人した後まで継続することがある。SMの子どもや成人は話すことを拒否したり選んている訳ではなく、文字通り話すことができない
  • しかし、SMの人たちは、身体がすくむような反応が起きる対象の人(たち)がいない状況であれば、親しい家族や友達など特定の人と自由に話すことができる
  • 幼児のSM発症率は140人にひとり。女子及び、外国に移住し第二言語を習い始めたばかりの子どもに多い

  注)バイリンガルの子どもの発症率は49人にひとりとされている

<ASDとの違い>

  • SMは根底にある要因から生じる行動・言動であるため、変えることが可能であり、多くの場合は治療が可能
  • SMは症状であり、アイスクリームサンデー・モデルのウエハースの部分(表出する行動・言動)に該当する
  • これは、自閉症のような広汎性の発達障害ではないことを意味する
  • SMは話すことのみでなく、他方面に影響を与えていることが多い: 特定の状況下および/ または特定の人とのコミュニケーションに対する極端な抑制がある(自発的な会話、ジェスチャー、文書による作業、食事などを含む)
  • 場面緘黙(Selective Mutism)という名は、根底に潜む困難さ――不安、恐怖症、そして?―― が起因して生じる行動の一つにちなんで名付けられたもの

注)「?」の部分には、バイリンガル環境、遺伝的な精神疾患などが考えられるが、現在の所明らかになっていない

みく備考:

以前にも書きましたが、緘黙のせいで社会的な体験を長期間積むことができないと、後々大きな弊害となることがあります(俗にいう緘黙の後遺症)。

話し言葉・言語・コミュニケーションの発達は、誕生から18歳くらいまで続きます。冗談のやりとり、比喩や隠喩、同年代特有の言葉遣いや付き合い方などは、現場で実際に体験しながら学んでいくもの。SMのために会話の輪に入れず、人との交流が少ないと、いざ話せるようになっても、すぐには上手くいきません。特に、同年代やグループでの自由な会話やコミュニケーションが難しいと感じる人が多いよう。

家族や話せる親しい人との会話、SNSを使った交信など、言語&非言語のコミュニケーションを絶やさないこと、なるべく社会的な場に参加することが、とても大切になってくると思います。

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2019年SMiRAコンファレンス(その3)ASDとは何か?

<自閉症スペクトラム障害(ASD)とは何か?>

「自閉症とは生涯にわたる発達の障害であり、他者とのコミュニケーションの仕方、関与の仕方、周囲の世界に対する感じ方に影響を与える(英国のASD支援団体National Autistic Societyより)

すべての自閉症者は共通する3つの特性を持つ TRIAD(三徴候)

• すべての自閉症者は、社会的なコミュニケーション、社会的な関わり、思考の柔軟性(想像力)に困難を抱えている
• すべての自閉症者は、感覚の違和(感覚過敏)を持つ
• 自閉症は広汎にわたる――その人が世界を見、関わり、経験する方法に影響を与える。それは恣意的にスイッチを入れたり、切ったりできるものではない。

クレアさんによる自閉症のアイスクリームサンデー・モデル

(ASDをアイスクリームサンデーに例え、実際に会場で作りながら説明してくれました)

  • アイスクリームの器:脳
  • 3種類のアイスクリーム: ASDの3つの特性
  • バニラ:社会的コミュニケーションの困難
  • ストロベリー:社会的な関わりの困難
  • チョコレート:思考の柔軟性の困難(想像力の欠如)
  • アイスクリーム全体にかけられたシロップ: 感覚の違和(感覚過敏)
  • ウエハース:*表出する行動・言動

アイスクリームは必ず3種類あることが定義。かけられたシロップの濃度や分量は人によって異なるが、行動・言動に影響を与える。

みく備考:

注意していただきたいのは、はっきり見えるのは*行動・言動 / ウエハース部分のみということ。感覚過敏 / シロップ部分は、本人も明確に説明できないため、保護者や周囲がよく観察し、対処法を考える必要があります。

ひとくくりにASD児・SM児といっても、各自それぞれ違います。私はここ5年ほど高機能ASDのティーンたちに日本語を教えているのですが、本当に個性も行動パターンも千差万別。ASDの3つの特性で判断といわれても、スペクトラム状になっていて明確な境界線がないため、解り難いと思います。

高機能自閉症専門の特別支援学校で会うティーンの中には、ぱっと見ただけだと「この子本当にASD?」と思える子も。ぴょんぴょん跳んだり、手をひらひらさせたりというような目に見えやすい常同行動がない子が多く、あっても中学生くらいになると目立たなくなる傾向にあるような…。

何度かやり取りすると、「あれっ?」と違和感が強くなり、その子独特の行動パターンが見えてくるという感じです。普通の公立校で学校生活や友人関係に支障をきたし、転校してくる子も多いよう。数は少ないですが、小学校高学年までASDと診断されなかったケースも。

幼少期にASDを疑われなかった子どもは、高機能(アスペルガー)でそれほど言葉に問題がない子が多いのではないでしょうか?学校でそれなりに順応できていれば、発見されにくいと思います。家族は一緒に暮らしている年月が長いため、子どものコミュニケーション方法や行動パターンに慣れてしまい、それを「個性」ととらえがち。「何か変だな」と思いながらも、問題が起こるまで受診しないことも多いのでは?

確かに、ASD児の行動パターンはその子の「個性」ですが、早く気付いて支援を受けることができれば、日常生活の困難さや生きづらさを改善できます。成長の過程で、自己肯定感や自尊心を培うことができないと、自己評価が下がってしまい、社会不安などの二次障害をおこしやすい――これはSM児にも言えることだと思います。

もし子どもが「グレイゾーン」や「ASDの傾向が強い」と言われた場合も、その子の生きづらさや苦手分野を認識し、その子に合う支援ができれば、随分違ってくると思います。

目標は子どもが「その子らしく」、自己肯定感を持って生きられるということじゃないでしょうか?

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2019年SMiRAコンファレンス(その2)

2019年SMiRAコンファレンス(その2)SMとASD

講演1:場面緘黙と自閉症スペクトラム障害:コミュニケーションに影響を与える二つの症状:  類似点、相違点、重複部分 Selective Mutism and Autism Two conditions affecting communication: Similarities, differences and overlap

イングランド北西部のマンチェスター市に勤務する教育心理士のクレアさん

講演の一番バッターは、昨年のコンファレンスでも『SMとASDの併存(詳しくは『2018年SMiRAコンファレンス(その5)』をご参照ください)』というタイトルで短い報告をしてくれた教育心理学者のクレア・キャロルさん。今年はそのテーマをもっと掘り下げて、より詳しく説明してくれました(資料は、クレアさんが勤務するマンチェスター市のOne Educationスキームから)。

今回のコンファレンスで最も注目を集めた議題なので、複数回に分けてお伝えしたいと思います。

まずはクレアさんの紹介から。

クレアさんは2000年に教育心理士の仕事を始め、2004年に自閉症の専門家に。場面緘黙の研修を受けたのは2014年とのこと。

クレアさんの長男、グレッグ君(仮名17歳)は、SMとASDの両方を抱えています。ASDの診断は幼少の頃におりたものの、SMは10歳(2012年?)になるまで診断されなかったとか。

(イギリスでは2006年にTVで場面緘黙のドキュメンタリー番組が放送されてから、少しずつ場面緘黙が知られるようになりました。私の息子が2005年春にSMを発症した当時は、SENCOを含む学校関係者も全く知識がなかったのです)。

グレッグ君は家の外では話さなかったものの、学校では答えが明確な質問には、声を出して答えることができていたそう。クレアさんは「緘黙児は学校で全く話さない」と思い込んでおり、長年息子さんの緘黙に気付いてあげられなかったことを悔やんでいました。

当時は専門家の間でも場面緘黙のトレーニングは殆どなかったそうです。早期発見が重要なのに10歳まで診断されなかったことを後悔し、「誰にも同じ思いをして欲しくない」と。その思いが、このSM とASDの研究に繋がっているよう。

SMiRA委員会のメンバーは、自分の子どもがSMだった、または現在も当事者である方が殆ど。それだけに、研究や啓蒙活動にも熱が入るんだと思います。

講演の内容は:

  • 自閉症とは何か? 場面緘黙とは何か?
  • 何故この二つは混同されるのか?
  • 違いは何か?
  • 類似性は何か?
  • 重複する部分はあるのか?
  • 次にすべきこと

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2019年SMiRAコンファレンス(その1)

2019年SMiRAコンファレンス

今年もまた、SMiRAの定例コンファレンスが、SMiRAの本拠地レスターにて3月30日に開催されました。例年のように、全国から70名ほどの保護者や専門家が集結。今回は、特に場面緘黙の成人とLST(言語療法士)の参加者が多かったのが印象的でした。

   故アリス会長への追悼をのべる現会長のシャーリー・ランドック゠ホワイトさん(最後列に座っていたので、写真がブレててすみません)

<コンファレンスの内容>

  • SMiRA創始者、故アリス・スルーキン会長への追悼
  • 場面緘黙と自閉症スペクトラム障害 教育心理士&SMiRA委員会メンバー クレア・キャロルさん SM & ASD Two Conditions affecting Communication: similarities, differences and overlap
  • ノーサンプトン州における緘黙児支援 SLT(言語療法士) ベス・シェリーさん&ハリエット・ウィルスさん Supporting Children with Selective Mutism in Northamptonshire
  • 「教師に伝えて欲しいこと」 専科SLT リビー・ヒルさん “What would you have wanted me to tell your teachers?”
  • 当事者が緘黙を説明する手紙のテンプレート  ジェーン・サラザー 元当事者& SMトーキングサークル主催 SM Adjustment Templates
  • 大学生活を始めるにあたって Starting at University:
    • 選択肢、申請&インタビュー SMiRAチーム
    • 大学で受けられるサポート レスター大学・学生支援サービス シャロン・スタージェスさん
    • 実際の体験談 SMiRA会員

SMiRAは承認制の活発なFBページを運営していて、現在のところ50カ国以上の国から1万人近くが登録。毎日、相談の投稿にたくさんのコメントがついています。

最近の傾向として、ASDとSMを併発する子ども、緘黙のティーンに関する相談が増えているよう。今回のコンファレンスはその傾向を反映しているように感じました。

私は息子がSMを発症した2005年にSMiRA会員となり、2006年からできるだけコンファレンスに参加するようにしてきました。かつてはSM児とASD児を分けて考えるような風潮がありましたが、現在はSMとASDを併せ持つ子どもの存在が、周知の事実になってきているような。

イギリスでは各地区によって差はあるものの、最近では学齢期の緘黙児への支援方法は学校関連機関(小児・青少年のメンタルヘルスサービスを含む)に定着してきた感があります。そのため、まだ支援が行き届いていない分野での相談が増えているのかなと…。

また、場面緘黙が一般に知られるようになり、ASDの二次障害としてのSMが注目されるようになったのではないか?SMで医療機関を受診する人口が増え、その際にASDが疑われるケースが増えてきたのではないか?とも推測しています。

これから順を追って公演の内容を報告していく予定ですが、特に注目が集まったクレア・キャロルさんの『SMとASD』について詳しく触れていきたいと思っています。

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その2)社会的な機会を増やす 

大切なことを書き忘れてしまったので、今回は『息子の緘黙・幼児期5~6歳』への付け足しです。

息子は、夏休み中の8月中旬に5歳の誕生日を迎えました。イギリスの学校は9月に始まるので、かなりの早生まれです(早生まれやひとりっ子の緘黙児、多いような気がしていますが、どこかに統計はないかな…)。

夏休み前半の3週間、学校で行われたサマークラブに参加させました(詳しくは『息子の緘黙・幼児期4~5歳(その23)』をご参照ください)。

その後、誕生会事件が起こって、緘黙症状が大きく後退してしまった訳ですが、実はサマークラブでは進歩もあったのです。

参加した際、サマークラブの主催者やスタッフ(学校とは無関係)には息子が場面緘黙であることを告げませんでした。というか、当時はSelective Mutism という言葉自体が教育関係者にさえ知られておらず、どう切り出していいのか判らなかったのです。

(今だったら、短い場面緘黙の説明と息子の特徴を含む簡単な対処マニュアルを提出すると思います)

まあ、子ども達は各自好きな遊びを選べるし、親友のT君が一緒なので、大人には話さなくてもT君がいれば大丈夫だろうと、気楽に考えてました。まず第一の目標は、夏休み中に学校環境に触れさせ、新学期にそれほど抵抗なく教室に戻れるようにすること。嫌がらずに行ってくれれば、万々歳だったのです。

ただ、初日にスタッフに挨拶に行き、「ものすごい恥ずかしがり屋で、全くしゃべらないかもしれません」と忠告はしておきました。

このサマークラブはインド系のイギリス人によって経営されていたのですが、夏休みは時間が長く、子どもの数も多いので、アルバイトの若い女学生も数名。ラッキーなことに、その中のひとりが息子に目をかけてくれたのです。

今考えれば、いくらT君が一緒でも、抑制的な気質のうえ緘黙になってしまった息子が、初めての「場所」「人」「環境」に慣れるのは大変なこと。自由きままに動き回る子ども達の中で、息子はひとり固まっていたようでした。

見るに忍びなかったのでしょう。

彼女はものも言わない息子にこまめに話しかけ、遊びに誘ってくれたようでした。もちろん、緘黙に対する知識はなく、この「固まっている子」を何とかしなくちゃ、と自主的に対処してくれたんだと思います。

(クラブが終わって校庭に出てくると、普通に動けるし、私やT君ママには話すので、クラブの最中にどうしているのかは不明)

この彼女お陰で、息子は少しずつサマークラブに馴染んで動けるようになり、バスでの小旅行にも参加することができました。クラブが朝9時から午後3時頃までと長時間だったことも、場慣れするのに役立ったと思います。

息子は家でクラブのことを全く話さなかったので、中盤になって彼女に話しかけられるまで、そんなことは全く知らず…。

そして、最後の日に彼女にお礼を言いに行くと、

「実は、今週は言葉がポツポツ出るようになったの!」

「えっ、本当に?!」

「ええ、単語だけだけど。初めは口がきけないんだと思ってたから、嬉しかったわ」

「ありがとう~~~!!」

可愛い大学生のお姉さんに優しくしてもらって(息子はメンクイです)、不安が低減し、言葉が出るところまでいったんでしょう。

緘黙治療に必要なのは、継続的な温かい支援と根気と適度な励ましだなあ、と思います。

でも、その匙加減が難しいんですよね。

いつ、どんな時にどんな人が助けてくれるか、どんな機会に巡り合えるか判らないもの。親戚に会ったり、子どもが好きそうな習い事にチャレンジさせてみたり――緘黙児の社会的な機会を増やすことはとても重要だと思います。

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息子の緘黙・幼児期5~6歳(その1)

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その1) 祖父母の反応

息子の5歳の誕生日をかねて、夏休みに主人の実家に滞在した時のこと。驚いたことに、息子は祖父母に対しても緘黙になってしまったのです(経緯は『息子の緘黙・幼児期4~5歳(その24)』をご参照ください)。

滑り台事件(詳しくは『息子の緘黙・幼児期4~5歳(その7)』をご参照ください)以来、息子はそれまで話していた多くの人と話せなくなってしまいました。が、グラニー(祖母)にはまだ以前と同じように話せていたのです。

車を降りてグラニーに会った途端、息子は私の後ろに隠れました。それを見た義母は、「何恥ずかしがってるの?」「舌をどこかにおいてきちゃったの?」と、積極的に息子にアプローチ。

「緘黙児を安心させるため、話すことを強要しない」というのが、緘黙支援の第一原則です。が、マイペースな義母は、焦る私の心も知らず、どんどん息子に話しかけました。

でも、これが功をなしたのか、息子はポツポツと返事をするようになり、半日くらいで割と普通に会話できるように。反対に、1週間いたにもかかわらず、いつも通り(それ程息子に話しかけない)だったグランダディ(義父)には、殆ど口をきくことができず…。

以来、義両親宅に行く度に(2、3か月おきくらい)、最初は話せないけど、慣れるにつれてグラニーには徐々に話せるようになるというパターンが定着しました。

(実は、息子が私にも口をきけなかった想い出が。それは、6歳の息子を義両親にあずけ、2週間ほど単独で帰国した時のことでした。空港で再会し話しかけると、息子は困った顔をして無言!母親なのに~!車の中ですぐ返事をしはじめ、すぐ話せるようになりましたが、これには本当に驚きました)

時と人、場合によりますが、緘黙児の不安が和らぐまで辛抱強く待つよりも、話すようプッシュした方がいい時もあると思います。下手をすると症状が悪化することもあるので、判断はとても難しいですが。

緘黙克服はスモールステップで進むので時間がかかる上、繊細な子どもの心はアップダウンが激しくて、時にジェットコースターに乗っている気分になります。でも、「三歩進んで二歩さがる」のが普通だと思って、ゆっくり進みましょう。

ちなみに、1年に数回しか会わない義妹夫婦には、クリスマス休みなどで合流しても全く話せない状態が2年ほど続いたと記憶しています。以前は屈託なく接していたので、ものすごく驚かれました。

みんなで集まっているのに、話せる人と話せない人がいるというのは、親にとってすごく気がもめる状態ですよね…。

偏見は持ってもらいたくないし、誰にどこまで説明して理解してもらうかも、判断が難しいところです。