ベルリンの夏休みの思い出(その5)

もう3月も半ばに入りますね。ロンドンでは一重の桜が満開に近いんですが、天気は相変わらずぐずぐず。最高気温が12、3度くらいと、まだまだ肌寒いです。

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さて、やっとベルリンの夏休み最終回です。

私はその昔、ロンドンの英語学校で知り合った友達と、欧州7か国をコーチで周る格安ツアーに参加した経験があります。アムステルダムからベルギー経由でドイツに入り、ローレライの歌で有名なライン河下りをし、ハンブルグ駅の近くでフランクフルトを食べ、確かミュンヘンだったと思うのですが、何故か街の一角で見世物の熊を見た記憶が^^;

その旅行はイタリアがメインだったのもあって、ドイツについては記憶が曖昧。昨年夏休みにベルリンに行くことに決めたのは、ドイツという国をもっとよく知りたかったのと、ベルリンがアートの街と聞いていたから。美術館はもちろん、街にアートが溢れていると聞いてワクワクしていました。

 

    噂通り街の至る所にグラフィティやアートワークが。手軽な値段で作品が購入できるギャラリーも多数

     

  バウハウス博物館は閉館中で仮ショップに行ってきました。日曜日にはマウアーパーク(Mauerpark)の蚤の市とその周辺をぶらぶら

ベルリン美術館(Berlinische Galerie)

ここは地元の芸術家による1880~1980年の作品を常設展示(上階)する比較的新しい美術館。お目当ては1910年代に起きたベルリン・ダダイズムの作品たち。他に、新客観性派や東欧の前衛アートなどのレクションも。1階の広い展示スペースでは、現役アーティストのインスタレーションが飾られていました。

森鴎外記念館(Die Mori-Ōgai-Gedenkstätte der Humboldt-Universität zu Berlin)

国会議事堂のガラスドームを訪れた帰り、偶然に森鴎外の記念館を発見。1887年にドイツ留学した鴎外がベルリンで最初に下宿したアパートを、フンボルト大学(旧ベルリン大学)が記念館として運営しているそう。鴎外の寝室が再現され、当時の写真や書籍、手紙に加え、遺書も展示されていました。担当のドイツ人女性の日本語(敬語)がめっちゃ上手でびっくり。

森鴎外といえば著書『舞姫』が有名ですね。物語にはブランデンブルグ門からプロイセン王宮まで続く目抜き通り、ウンター・デン・リンデン(菩提樹の下)が登場するんですが、菩提樹の並木道は思ったほどロマンティックではなかったです^^;

ベルリンの美味しい食べ物?

ベルリン名物といえばカリーヴルスト(Currywurst)ですね。フランクフルトの輪切りにカレー粉入のケチャップソースをかけてあるんですが、う~ん私は一度食べれば充分かな…。ある日、主人がビールを飲みたいというのでビアガーデンに行ってみたら、ランチタイムは山盛りのザワークフトを添えたバーガーとフランクフルト、薄いピザみたいなおつまみしかなくて、ちょっとガッカリ。ケーキ類もちと甘すぎ?

  

主人推薦のドイツ料理はこんな感じ。お肉とポテトの量が半端ない?! 野菜は? メゾネットのキッチンではサラダっぽいご飯ばかり作ってました^^;

        

ベルリンで一番美味しかったものといえば、なんと滞在先のアパートのお隣にあったDump Lingという名の中華料理店。シンプルな内装に品数限定のシンプルなメニューだったんですが、これが美味!! 滞在中に2度食べに行きました。

これでベルリンの夏休みは終了です。最後までお付き合いしてくださった方、ありがとうございました。

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ベルリンの夏休みの思い出(その2)

ベルリンの夏休みの思い出(その3)

ベルリンの夏休みの思い出(その4)

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ベルリンの夏休みの思い出(その4)

春の足音が聞こえてきても、なかなか油断できない2月と3月。早春の花が咲き乱れるイギリスですが、再び寒波がやってくるよう。さて、またまたベルリンの夏休みの思い出の続きです。

パドル蒸気船でシュプレー河下り

シュプレー河では複数のクルーズ会社が多様なツアーを企画しています。私達が乗ったのは、船後尾に大きな赤い車輪がついた古風なパドルスチームボート。ベルビュー宮殿(Bellevue Palace)近くから出発し、博物館島の北東を通ってイーストサイドギャラリーの壁沿いにオーバーバウム橋の前まで航行しました。

ボートからはベルリンを代表する新旧さまざまな建物を見ることができました。中でも、2020年に史上初のスマート商業ビルの一つとして登場した近未来的なキューブベルリン(Cube Berline)は圧巻。アイスキューブのような外観にまず驚いたのですが、このハイテクビルでは、プロセス全てをAIで制御しているのだとか。また、国会議事堂やシュプレー川の中州にある世界遺産、博物館島の伝統的な建物郡も大迫力でした。

博物館島(Museumsinsel)で博物館めぐり

ユネスコの世界遺産に指定されている博物館島には、ベルリン美術館(Staatliche Museen zu Berlin)を構成する5つの博物館・美術館が集結。私達は事前に1日入場券を購入し、ミッテ地区の滞在先から徒歩で博物館島へ。旧博物館、新博物館、旧ナショナルギャラリー、ボーデ博物館、ペルガモン博物館があるのですが、見どころが多すぎて旧博物館はパス…。

     旧ナショナルギャラリーではクリムト展を観覧(左から2番目)。島の先端に位置する豪奢なボーデ博物館(写真右3つ)は、遅い時間だったためかほとんど貸切状態!写真に写っていない新博物館は特にエジプト文明エリアが有名で、『ネフェルティティの胸像』を観るために早足で周りました^^;

ハイライトはペルガモン博物館(Pergamon Museum)

5館の中で最も入場者が多いのがペルガモン博物館。何と現地から輸送した古代遺跡を館内でパズルの様に組み立てて再構築し、展示しているのです^^; あまりのスケールの大きさにもうビックリ!大英博物館も大英帝国の時代に各国から収集(略奪?)した文化財を展示しているのですが、ここは規模が違う!ペルガモン博物館は去年10月から改修工事のために14年間の予定で閉館したので、見学できてとてもラッキーでした。

左から、青と金のタイルが鮮やかな古代バビロニアの『イシュタル門(The Ishtar Gate 紀元前568年)』と輸送されてきたタイルの仕分け作業。別館では古代都市ペルガモンを再現した360度のパノラマ映像が観られます。写真右は『ミトレスの市場門 (Market Gate of Miletus 紀元前120年)』

4館を周っただけでも、疲れ果てた一日でした。

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ベルリンの夏休みの思い出(その2)

ベルリンの夏休みの思い出(その3)

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ベルリンの夏休みの思い出(その3)

バレンタインデーも終わり、2月も半ばを過ぎました。ロンドンの街は早春の花が咲き始め、空気にも春の香りが。

さて、昨年のベルリンの夏休みの思い出の続きです。今回は戦争関連ではない観光ハイライトをご紹介します。

うちは家族旅行する際はホテルではなく、だいたいキッチン付のコテッジやアパートを借ります。その土地に住んでいるような感覚で、地元の専門店やスーパーなどで食材を買って料理するのが楽しみの一つ。

今回はベルリン中心部のミッテ区にあるメゾネット(2階層のアパート)を借りました。エレベーターがない4階建住宅の最上階ということで躊躇したものの、2LDKの他に広いスペースやバルコニーがあるのに惹かれて決めたのです。

   入口はお洒落なブティックやカフェ、レストランが並ぶ大通り。気になっていた路面電車の線路は現在使用されておらず、交通量も少ない静かな環境でした。

とはいえ、4階までの階段は想像以上に大変^^;  更に、初日に階下で大音響の音楽が鳴り響き、注意する羽目に…でも、家族それぞれ好きなことができ、暑い中、扇風機が2台置いてあって快適でした。

最寄り駅はアレキサンダープラッツとハッケシャー・マルクト駅。後者は駅周辺にレストランが並び果物などの露店もあって良い雰囲気。

  ハッケシャー・マルクト駅の北側には、お洒落なカフェやブティックが立ち並ぶアール・ヌーヴォー建築の中庭集合住宅街、ハッケシェ・ヘーフェ(Hackesche Hofe)があります

ベルリンの街を展望できるスポット

戦勝記念塔(Siegessäule)

ブランデンブルク門の西側に位置し、総面積210ヘクタールを誇るベルリン最大の公園、ティーアガルテン(Tiergarten)。公園内のロータリーにそびえ立つのが、頂上に黄金の勝利の女神像が輝く戦勝記念塔です。デンマーク戦争の勝利を記念して1872年に完成した、首都ベルリンのシンボルマーク。285段の螺旋階段を登って展望台へ。森の緑の向こうにブランデンブルグ門や街の遠景が。

ベルリン大聖堂(Berliner Dom)

世界遺産となっている博物館島に位置するベルリン大聖堂は、ネオバロック様式の壮麗な佇まい。ホーエンツォレルン王家の記念教会で、ターコイズブルーのドームまでの高さは約114m。階段を270段上り、ドームの周囲をぐるりと周って街を眺めることができます。内部の装飾やステンドグラスも必見。

ドイツ連邦議会国会議事堂(Reichstags)の屋上ガラスドーム

元ネオゴシック様式の建物を1999年に英国人建築家、ノーマン・フォスターの案で修復。事前予約が必須ですが、ガラス張りの屋上ドームは必見。ドームの階段を登りながら会議の様子を見たり、ベルリンの街を360度展望することができます。ガラス張りにすることで開かれた国会と会議の透明性を象徴しているのだとか。

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ベルリンの夏休みの思い出(その2)

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ベルリンの夏休みの思い出(その2)

1月もそろそろ終わりですね。すべきことが多くあるのに、あっという間に時間が過ぎていってしまう…かなり焦っています。

さて、ベルリンの夏休みの思い出の続きです。

この旅行で訪ねてみたかった場所のひとつが、強制収容所跡でした。歴史の時間に学んだこと、アムステルダムで訪ねたアンネフランクの家、プラハで訪れたユダヤ博物館、映画で描かれたホロコースト…。そして、SMiRAの創始者でチェコからひとりイギリスに亡命された、故アリス・スルーキンさんとの会話ーーご家族はアウシュビッツ強制収容所で亡くなられました。

また、小さい頃読んだ『アンネの日記』や息子に買い与えた『The Boy in the Striped Pyjamas(縞模様のパジャマの少年)』が強く心に残っていて、ベルリン近郊に追悼博物館があると知り、是非行ってみたいと思ったのです。

ザクセンハウゼン強制収容所(Konzentrationslager Sachsenhausen)

ベルリン中央駅から北へ、電車とバスを乗り継いで1時間強。元ザクセンハウゼン強制収容所(1936~1945年)は追悼博物館として残されています。45年4月にソ連軍とポーランド軍によって解放されたこの広大な博物館も無料で、敷地の地図(無料)とオーディオガイド(€3.5)を借りて周りました。

白い司令塔を通って中に入ると、有刺鉄線がはられた壁と監視棟に囲まれた広大な敷地に、ぽつんぽつんと簡素なバラックが。中央奥にそびえ立つのは40mの記念碑ですが、それもひどく小さく見えました。殺伐とした風景の中、見学者たちはグループで言葉少なめに移動していました。

ここはアウシュビッツのように大量殺人を目的とした収容所ではなかったそうですが、9年間で20万人を収容。確認されているだけで2万3000人が強制労働、飢餓や病気、虐殺実験などで命を落としたそう…。その中には、ユダヤ人だけでなく、ロマなどの少数民族、反ナチス政治犯、同性愛者、犯罪者なども含まれていたといいます。

まず左側にあった診療バラックから見学。ここでは人体実験や女性囚人の不妊手術などが行われていたとか…。囚人たちの医療記録、彼らが描いた絵・手紙などが展示されていました。

中央にある「囚人のキッチン」がメインの展示室になっていて、1936~1945年までの収容所の様子を垣間見ることができます。印象に残ったのは囚人が着ていた青い縞のパジャマ。ゴワゴワした布地に、名前ではなく番号と印(ユダヤ人、同性愛者などの)が…人としての名前を剥ぎ取られ、人格も性格も喜びも悲しみも剥奪されてしまったんだなと…。右から2番目の写真(下)は食事として出されたパンを少しずつ貯めて作った作品(靴と花)です。

正面左側の壁の向こう側には、写真左から処刑場や遺灰の埋葬地。火葬場跡に建てられた白い建物は追悼施設となっていて、当時の設備が残され、資料が並んでいます。

全部を見て回ることはできませんでしたが、負の歴史の重みにどどっと疲れました。でも行って、自分の目で確かめることができて良かったと思います。あってはいけない現実がちゃんと存在していて、いつまたどこで現実となるか分からないから。昨日までお隣さんだった、友達だった、同僚だった人が、社会の空気の変化である日突然「忌むべき存在」となってしまう…そういうことが起こるのが戦争なんだと思います。

カイザー・ヴィルヘルム記念教会(Kaiser Wilhelm Gedächtnis Kirche)

ベルリン西部のショッピング街の近くに、1943年に空撃された教会堂と鐘楼が記念碑としてそのまま残されています。1961年には右隣にカイザー・ヴィルヘルム新教会堂を建設。2万以上のガラス窓を組み合わせた青いガラスの壁で知られています。また、新教会前のブライトシャイト広場では、2016年末に催されていたクリスマスマーケットにトラックが突っ込み、12人が死亡、50人が重軽傷を負うテロ事件が発生。広場への階段には追悼碑が設けられ、私達が訪れた時もロウソクが手向けられていました。

ポツダム会議が行われたツェツィーリエンホーフ宮殿(Schloss Cecilienhof)

1945年7月中旬~8月初頭までソ連の占領下だったポツダムのツェツィーリエンホーフ宮殿に、イギリスのチャーチル首相とアメリカのトルーマン大統領、ソ連のスターリン書記長が集合。意外にも、この宮殿はカントリーハウスの様な素朴な造り。トピアリーを配した中庭は広くはありませんが、可愛らしい雰囲気でした。ポツダム会議が行われたのは天井の高い大広間で、その両隣には各国首脳が泊まった部屋が。天気が良かったので、敷地の外の草原でピクニックランチを楽しみました。

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ベルリンの夏休みの思い出(その1)

遅まきながら、明けましておめでとうございます。元旦はゆっくり起きて、さてお雑煮でも作ろうかとのんびり構えていたら、能登半島大地震のニュースが!2日には海保機との衝突事故でJAL機が炎上している映像がトップニュース!日本では新年早々大変な年になってしまいましたね…亡くなった方々のご冥福をお祈りします。また、被災された方々、負傷された方々、家族を亡くされた方々に心からお見舞い申し上げます。

昨年の夏は家族旅行でベルリンに行ったのですが、旅行記を書いていなかったので、学校の冬休みに想い出して書き始めました。年が明けても、ウクライナ戦争もパレスチナ・イスラエル戦争(イスラエルのガザでの戦闘)も止まることを知らず…温暖化で地球が悲鳴をあげているのに、人間同士が憎み合って戦い合ってどうするのか…。ちょっと重い内容ですが、ベルリンの街に数多く残されているナチス恐怖政治や冷戦時代の爪痕をまず紹介させてください。

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戦争の過ちを繰り返さない精神

ドイツといえば、すぐ頭に浮かぶのはナチス政権とホロコースト(1933年~1945年 欧州のユダヤ人迫害・虐殺)ですよね? 首都ベルリンにはホロコーストの歴史や記憶を後世に伝える数々の慰霊碑や記念碑があります。学生や旅行者に学んでもらうためか、殆どが入場無料なのに感心しました。

ベルリンに着いた夕方は、まず冷戦時代に東西ドイツを隔てたベルリンの壁(1961~1989年)を観に、壁博物館(The Wall Museum)とイーストサイドギャラリーへ。博物館では当時の様子を写真パネルや映像で説明。西ドイツは英米仏の、東ドイツはソ連の支配下に置かれていたのは知っていましたが、東から西へと逃亡した約200名もの人たちが射殺されたとは知りませんでした…。

シュプレー河(Spree)にかかる赤煉瓦造りのオーバーバウム橋(Oberbaumbrücke)は東西ドイツを隔てる境界線でした。河沿いのミューレン通り(Mühlenstraße)に約1.3km続くイーストサイドギャラリーは、壁崩壊後の1990年に21カ国、118人のアーティストによって壁に描かれた作品が並ぶ世界最長のオープンギャラリー。特に有名なのはソ連のブレジネフ書記長と東ドイツ国家評議会議長ホーネッカーの『独裁者のキス』ですね。シュプレー河岸は市民の憩いの場となっていて、沈んでいく夕日が綺麗でした。右端は橋から見た元東ドイツの風景。

翌日は有名なブランデンブルク門((Brandenburger Tor)から出発する無料ツアーに参加。事前に予約しておいたのですが、勝手に観光名所巡りだろうと思い込んでいたのです^^;

すると、まず案内されたのが「虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑(Denkmal fur die ermordeten Juden Europas)」でした。約2万㎡の敷地に、高さの異なる灰色のコンクリートブロック 2,711基がグリッド状に並ぶモノクロの光景。曇り空の下、石碑の間の狭い通路を歩いていると、なんともいえない閉塞感を覚えました。

  

    左からブランデンブルク門と自由に歩き回ったり、腰掛けたりできる記念碑。記念碑の向こう側に見えるのは国会議事堂のガラスドーム

場所が特定できないのですが、次に行ったのはロシア様式の住宅街の中にある草の茂った駐車場。ガイド氏から、「ここはヒットラーとエヴァ・ブラウンが自決した総督地下壕の跡地」と説明されてびっくり。観光地化しないため、記念碑も看板も付けずにいるんだとか。次に、元ドイツ航空省本部で現在は財務省の建物、デトレフローヴェッダーハウス(Detlev-Rohwedder-Haus)へ。建物の前には第二次世界大戦時の巨大なモノクロ写真を配した記念碑が、回廊の壁にはロシアのプロパガンダ絵画が。

                    

    左から、デトレフローヴェッダーハウスと、チェックポイント・チャーリー(東西の境界線に置かれていた国境検問所)

ツアーの最終地は敷地がベルリンの壁と面する情報センター「テロのトポグラフィー(Dokumentationszentrum Topographie des Terrors)」。ナチス政治の中枢施設の跡地に、その恐怖政治の歴史を伝える情報センターが解説されたのは2010年のこと。センター内外に写真や文書で当時の記録が残されています。

ガイドの説明によると、壁の西側は西ドイツ政府の建物で、東からの逃亡者のため、就業後にトイレの窓からロープがたらされていたそう。壁沿いに歩いてみたら、壁に穴が空いて鉄骨がむき出しになっている箇所がいくつか…。ここで熱く語ってくれた南米出身のガイド氏に20ユーロお支払いして解散。センターを見学する前に、近くのチェックポイント・チャーリーに寄ってランチとコーヒー。ヘビーな内容に備えました^^;

   

     初日の夜は疲れ果てて、壁博物館の隣のレストランでバーガーを食べました^^; 中央はベルリン名物のカリーヴルスト(カレーパウダーをかけたソーセージ)。最寄り駅の果物屋台でビタミン補強

う~ん、ベルリンに着いて約1日半、予期せずなかなかヘビーな内容!でも、ナチス政権の責任を問うだけではなく、ドイツ国民がそのプロパガンダや勢いに同調してしまったことを反省し、自国の負の歴史に正面から向き合っているんだなと感じました。ここまで徹底してるとは驚きでした。

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SM H.E.L.P. 2023 10月サミット(その4)腸内環境を改善して不安を低減

今年もあと2日に迫りました。が、まだごくうっすらと陽性反応が出て、義母宅から帰った家族から隔離されています^^; 明日の大晦日までには陰性になります様に!

   

     今家で一番元気がいいのはビバーナムの小花〈左)。イギリスにもナンテンがありました

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子どもたちのダイエットを改善

トニさんの子どもたちには感覚過敏があり、食べ物にはうるさかったとか。それでも、新鮮な食材を増やし、超加工食品を減らしていった結果、より健康で幸せそうになり、笑うことが多くなったといいます。同時に、子どもたちの不安は驚くほど軽減されたそう。

砂糖は脳内で「ドーパミン」を放出する

まず、トニさんは子どもに甘いものを与える影響や超加工食品が内臓に与える影響について学びました。気にしすぎるのはよくありませんが、朝食を食べなかったり、砂糖いっぱいのシリアルばかり食べるのでは、必要なビタミンやミネラルが採れません。また、砂糖は脳内での「セロトニン」や「ドーパミン」の分泌を促進するため、依存性を助長してしまうとか。

(そういえば、息子が2歳になったころ、友達の誕生会で初めてライビーナを飲んだんです。そうしたら、いきなりシュガーハイになって驚いたことがありました。ママ友達もその頃までは、やれオーガニックだ、手作りだと頑張っていたのに、お誕生会が始まってからジュースやらお菓子やら、ほとんど成分を気にしなくなり…総崩れ状態に)

そこで、小さなご褒美を与えながら、ストレスなくバランスの取れた食事が採れるよう工夫したのだとか。味覚は変わっていくものと考え、加工食品よりも手作りするようにして努力を重ねていきました。

娘さんが12歳のころ、OCD(強迫性障害)ではないかといわれ、そうではないかと思われる行動が散見されました。住んでいる地区では専門家が見つからず、NYの専門家に相談することに。食生活を変えてみたところ、3ヶ月で改善したとのこと。

娘さんは学校生活が合わず、それまで数年間自宅で学ぶホームスクールだったのが、学校に行けるように。トニさん自らのIBSや睡眠不足も改善したそう。

食生活を根本から見直すことがメンタルヘルスの改善に欠かせないと、現在では栄養士の資格を取る勉強もしているとか。

息子が赤ちゃんだった時、一番重要だったのは食事・排泄・睡眠。生きていく上で、基本的にはそれはずっと変わらないんじゃないかと思います。やはり、何はともあれ健康第一ですよね。

ロンドンでは今韓国のキムチがちょっとしたブームなんですが、味はもちろん発酵食品が身体にいいという考え方が浸透しつつあるようです。納豆よりもキムチの方がとっつきやすいんでしょうね^^; ちょっと悔しくもありますが、味噌と豆腐、お寿司とわさび、チキンカツカレー(何故チキン?)、ラーメンとうどんは、イギリス人の間でもすっかり定着しています。

みなさんも健康に気をつけて、良いお年をお迎えください。

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身体と心のリンクを大事にして、身体の声を聞いていきたいですよね。

 

SM H.E.L.P. 2023 10月サミット(その3)腸内環境を改善して不安を低減

今日はクリスマスですね。いつもは義両親宅に行ってお祝いするのですが、昨年は初めてコロナ感染してしまい、自宅でのぼっちクリスマスに(夫と息子は陰性)。今年は2月に義父が亡くなり、義妹とその子ども達も一緒に義母宅に集まる予定。が、昨朝コロナ検査をしてみたら、何とまた陽性(2度目)!! 自覚症状が全くなかったので、もうビックリ!実は、土曜日に会った友達が前日に会ったクライアントがコロナ感染したと連絡がきて、念のための検査でした😲 2年連続でクリスマスにコロナ感染するなんて、めっちゃ確率低いですよね…😢 それで、今年もぼっちクリスマスとなってしまったのでした….。

      ロンドン中心地のXmasツリー。トラファルガー広場も買い物を楽しむ人でごったがえしていました

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腸内環境を改善して不安を低減

場面緘黙でなくても、不安が強い子ども/ 人は緊張するとお腹が痛くなったり、胃腸の調子が乱れたりすることが多いですよね?これまでの研究で、IBS(過敏性腸症候群)はストレスによって引き起こされたり、悪化したりすることが分かっています。

ニュージーランド在住のトニ・パクラ(Toni Pakula)さんは、心理学の修士号をはじめ、ホリスティックウエルネスのコーチ、メンタルヘルスやマイクロ栄養素のアドバイザーなど多数の資格を持つ3人の子どもの母親です。

トニさんが子育てを経験するなか、程度の差はあれ子ども全員が不安に悩まされたといいます。その中にはSM(場面緘黙)も含まれていましたが、自国ではSMに関する情報が少なく、専門家も殆どいない状態。手探りで模索していた時、「腸の健康」という概念に出会ったのだとか。

トニさんのウエブサイト:https://www.calming-voice.com/about-me

「第2の脳」と呼ばれる腸の健康は、感情やメンタルヘルスに直接影響を与えます。内臓と脳の健康、そしてメンタルヘルスは密接に繋がっており、人の感情と行動にも直結しているのです。トニさんはそれを理解することの大切さ、腸の健康の大切さを学んだといいます。

マイクロバイオロジー(微生物学)とは?

マイクロバイオロジーは微生物を研究対象とする学問。 対象によってウイルス学・細菌学・菌類学・原生動物学などに、また、応用微生物学・病原微生物学・土壌微生物学などに分けられます。 私たちの体には100兆個を超える数の微生物(主にバクテリア)が存在しており、内臓のバクテリアのバランスが取れていることが重要となります。

マイクロ栄養素とは?

マイクロ栄養素とは、毎日の生活で身体が機能するために不可欠なごく少量のビタミンとミネラル。体内に留まらず排出されるため、毎日摂取することが必要とされます。ビタミンBやオメガ3などは内臓の膜を健康に保つ他、メンタルヘルスとも密接に関係しています。

不安と内臓の関係

不安や悩みを抱えている状態だと、ストレスによって腸内バクテリアのバランスが崩れてしまいます。また、全ての栄養素は総合的に働くため、一つの要素が足りないだけでも身体は上手く機能しません。脳が上手く働くためには内臓の健康が不可欠。内臓の壁が荒れて栄養素が漏れている状態だと、栄養を吸収できず脳も働きません。

また、「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」や「ドーパミン」といった神経伝達物質を作っているのは、実は脳ではなく殆どが内蔵なのです。腸内環境が整っていないと、これらを上手く増やすことができません。

最近になって、プロバイオティックという言葉をよく聞きます。プロバイオティックスは、腸内に生息するバクテリア(善玉菌)の餌になる食品成分で、豆類や緑黄色野菜、発酵食品などオリゴ糖や食物繊維を多く含む食品に含まれています。サプリメントとしてカプセルで購入できますが、注意しなければいけないのは、内臓のバクテリアは人それぞれ異なるということ。ある人に効くからといって、他の人に効くとは限りません。トニさんは専門家に相談することを勧めています。

この続きは次回へ。

 

     老舗店フォートナム&メイソンやシャネルなどの有名ブティックのデコレーションが綺麗でした。もしかしたら、電車の中で感染したのかも…

  

      絶対に感染していないと信じていたので大ショック!症状は殆どありません。昨日マスクして慌てて買い出しに行き、本日ローストディナーを作りました

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SM H.E.L.P. 2023年10月サミット(その2)緘黙と迷走神経

12月もあっという間に過ぎ去って、クリスマスまであと1週間ちょっと。日本では12月を師走といいますが、イギリスでもクリスマス前はめっちゃ忙しくなります。会社や友人同士のクリスマス会(忘年会のような感じ)で外出が増える傍ら、家ではクリスマスの飾り付けをし、クリスマスカードを書き、家族や友人への贈り物を準備し…。

    

    我が家も飾り付けとギフトの準備が大体整いました。これから贈り物のラッピングをせねば

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さて、先回の続きです。(博士とケリーさんの会話を元に、私が説明を加えた感じになっています)

喉が閉まったようになって声が出ない」のはなぜ?

SMの人はよく緘黙になった時の状態を「喉が閉まったようになって声が出ない」と表現します。これは迷走神経と関係があるのでしょうか?

迷走神経は多くの筋肉を支配し、発話や咽頭を開くことにも極めて重要な役割を担っています。扁桃体が危険を察知すると、起こるのは「闘う(Fight)」、「逃げる(Flight)」、「固まる(Freeze)」のいずれかの反応。中でも、「固まる(Freeze)」反応が多く、緘黙状態もそのひとつと考えられます。この状態になると喉を動かす筋肉がうまく機能せず、したがって声を出しづらくなります。本人は実際に喉が閉まったように感じているのです。

そんな風に喉が閉まったようになったら、誰だって怖いですよね。余計に不安になって、ますます動けなくなりそうです。

また、「学校では人前で食べたり・飲んだりできない(会食恐怖症?)」という声もよく聞きます。これも口や喉の筋肉がうまく働かないことが関連しているのではないでしょうか? 上手く噛んだり、飲み込んだりすることができなければ、食べることが難しくなりますよね。

迷走神経は心拍数や体温の調整、空腹感、消化などにも関与しています。学校で十分な水分を取らないのは、トイレを我慢するためもあるかもしれません。でも、緊張と不安によって、様々な身体機能の調節が上手く行かず、空腹感や尿意を感じないケースもあるのかも…。

そう考えると、ロングイヤー博士が唱える「脳と身体の繋がり」、「身体も心も全てが繋がっている」という考え方は合点がいきますね。

博士によると、迷走神経はある程度までは呼吸法などでコントロールが可能なのだそう。

詳細は説明しなかったのですが、ケリーさんの娘さんは舌の神経を刺激する治療を受けたそう。扁桃体が刺激されて「闘う(Fight)か逃げる(Flight)か」反応を起こすと、心拍数が増え、目の瞳孔が開いて大きくなります。舌に刺激を与えることで、瞳孔は小さくなり、心拍数や呼吸数を下げることもできるのだそう。緊張を解いて、通常の状態に戻す訳ですね。

自分でもできる対策として、うがいやハミングが舌の良い刺激になるとのこと。食事の前にレモンやチョコを口に入れて、唾液を促進するのも良いそうです。

緘黙治療で最初にするのは、緊張や不安を取り除き安心できる環境を整えること。ロングイヤー博士は脳を再トレーニングをする可能について言及し、リラクゼーションと笑うことが重要だと語っていました。家でも学校でもなるべくリラックスできる環境作りを目指したいものですね。

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SM H.E.L.P. 2023年10月サミット(その1)

11月も今日で終わりですね。ロンドンでは今週から急に気温が下がり、今朝は路上駐車している車の窓ガラスに初霜が! 予報ではまだ冷え込みが続くらしいので、近いうちに初雪が降るかもしれません。

  

 

   黄色く紅葉した落葉樹もずいぶん葉を落とし、冬の風景に変わりつつあります。街角の花屋さんで季節外れのチューリップを発見

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10月は欧米における場面緘黙の啓蒙月間でした。アメリカではケリー・メルホーンさんが毎年恒例となっているSM H.E.L.P. の秋サミットを開催。今回のサミットでは、より総合的でホリスティックな視点から場面緘黙を捉えているように思いました。

時間がなくて一部しか視聴できず、よく理解できていない部分が多々あるのですが、印象に残った対談の一部概要をお伝えします。

まず、フロリダ州でカイロプラクターの診療所を営む、マイケル・ロングイヤー博士(Dr. Michael Longyear)との対談から。博士はカイロプラクターを養成する私立大学、ライフ大学の神経科学研究所の元所長です。

注:カイロプラティック:骨の歪みを矯正し、体の不調を改善させる施術 

娘さんが場面緘黙を克服できるよう、ケリーさんは心理士や言語療法士のみならず、幅広い分野の専門家に支援を求めました。カイロプラクターのロングイヤー博士もそのひとり。

脳と身体の繋がり

この対談のキーワードは「迷走神経(vagus nerve)」。昨今、脳神経科学の研究が盛んに行われていますが、SM(場面緘黙)においても脳神経の研究は欠かせないものになってきているよう。対談ではステファン・Wポージェス博士が1994年に提唱したポリヴェーガル理論(Polyvagal theory)の話も少し出ましたが、ここでは割愛します。

迷走神経とは何か?

迷走神経は脳と末梢器官を結ぶ神経で、頚部から胸部、腹部の内臓、心臓や血管などに広く分布。感覚・運動・副交感神経として働き、声帯心臓胃腸消化腺の運動、分泌司っています。さらに、メンタルヘルスとも密接に関わっていることが解明されています。

<Wikiの解説>

迷走神経

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%B7%E8%B5%B0%E7%A5%9E%E7%B5%8C

ポリヴェーガル理論:

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%83%AB%E7%90%86%E8%AB%96

ロングイヤー博士が強調するのは、迷走神経の身体をリラックスさせる機能

「迷走神経は身体を休ませ、回復させる機能を持つ、いわば生命維持システムの中で最も重要な部分。注目すべきは、身体がリラックスしている間に身体や神経の再生・再構築を行っていること。例えば、迷走神経はストレスで疲れた身体を回復させる役割を果たす。また、末梢神経は消化とも深く関わっている」

「迷走神経に対し、脳の扁桃体(アミグダラ amygdala)は不安や恐怖を司るセンター。脳が危険を察知すると扁桃体が活性化して、ハイアラート状態になる。扁桃体と迷走神経は緊密に関わり合っており、扁桃体のスイッチが入ると迷走神経のスイッチかオフになる。脳も身体も、全てが繋がっているから、そのバランスを保つことが大切」

SM(場面緘黙)の人は不安や恐怖を感じやすく、扁桃体が過剰に反応してアラート状態が続くといわれています。その間、迷走神経がきちんと作動しないため、身体を休息・回復させることができません。ストレスがたまったままだと、身体的にも精神的にも疲労した状態。また、迷走神経が司る心拍、体温調整、消化などの機能にも影響が出て、身体の不調につながることも。

うちの息子は緘黙が酷かった頃、よく家でかんしゃくをおこしていました。SM児は学校で大きなストレスを抱えているため、抑えられていた感情が家で爆発してもおかしくありませんね…。また、息子は緊張するとトイレが近くなったり、ストレスでお腹を壊すことが多かったんです。ちなみに、私は過敏性腸症候群(IBS)なのですが、3年ほど前息子にも同じ診断が下ったのでした^^;

かなり中途半端で申し訳ないのですが、この続きは次回へ。

<関連記事>

SM H.E.L.P. 2022年10月サミット

SM H.E.L.P.2022年10月サミット(その2)

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場面緘黙に対する思い ー マギー・ジョンソンさんのポッドカストから

11月も半ばに差し掛かり、季節は秋から冬へと変わりつつあります。今年は日本でもコロナ禍が終焉した(様に報じられていますよね)ためか、この寒くて暗い時期にまだまだ海外からの訪問者が途切れません。

    今週末はブルガリアから友人家族が来訪。イスラエル軍のガザ侵攻に反対する大規模な抗議デモがあったため、街中は避けてテムズ河南岸&バラマーケット付近を散策してきました

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さて、マギー・ジョンソンさんのポッドカストの続きです。

マギーさんは最近NHS(国民保険サービス)におけるSLT(言語聴覚士)の仕事を退職されました。でも、その後もワークブック執筆や他国での講演会、国内でのワークショップなど多忙を極めているとのこと。

場面緘黙の定義や一般の知識については、まだまだ誤解が多く改善の余地があると思っているそう。

まず、Selective Mutismという疾患名について。「selective」は本人が話さないことを選択していると誤解されやすいため、Situational Mutism(状況的緘黙)という呼び方が適切だと考えています。

また、ASD(自閉症スペクトラム)とSM(場面緘黙)が併存するのは周知の事実なのに、DMS-5では併存が認められず(詳しくは『場面緘黙と自閉症(その3)SMiRAの立場』をご参照ください)、改正を望むとも。

マギーさんはDMS-5 (2013年)において、SMセクションのコンサルテーション・パネルに選ばれ、「不安障害」へのカテゴリー変更に尽力しています。これにより成人の場面緘黙が診断されやすくなりました。

現在は「場面緘黙」と「不安障害」との関連について、更に深く考察しているよう。SM児は社会不安を抱えている訳ですが、SMになる前からそうだった訳では無いといいます。

「SMは社会不安による極端なシャイネスと思われることが多いけど、家庭では活発でお喋りな子が多いの。よく考えて欲しいのは、SMは不安が原因で起こる症状ではないということ。恐怖症と同じで、SMは恐怖条件が起因となって起こる症状。そして、SMになったことが原因となって、大きな不安を覚えるようになるんです。

例えば、犬恐怖症の人は犬に対する不安が原因で犬恐怖症になった訳ではない。何かがきっかけがあって、何故だか解らないけれど犬に対して理不尽なまでの恐怖にかられる様になる――そこから、犬を避けたり、犬に遭ったらどうしようと大きな不安を抱えるようになるんです。

生まれつき不安になりやすい気質を備えているとしても、多くの子どもはSMになるまでは不安障害というほど重症ではなかったと思う。SMになったことで、深刻な社会不安になるんです」

そう言われてみると、抑制的な気質を持って生まれた我が息子も、SMになってから社会不安が深刻化したような…。SMはもう随分前に克服しましたが、未だ自己評価がとても低いと感じます。

DSM (米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアルDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)におけるSM(場面緘黙)の遍歴:

1980年DSM-3

  • 初めて記載
  • 疾患名はElective Mutism(選択性緘黙)
  • 分類カテゴリー:通常、幼児期・小児期、または青年期に初めて診断される疾患
  • 定義:正常に話す能力があるにもかかわらず、ほとんど全ての社会的状況で話すことを拒否し続ける(”a continuous refusal to speak in almost all social situations” despite normal ability to speak.)

1994年DSM-4

  • 疾患名がelective mutism(選択性緘黙)から現在のselective mutism(場面緘黙)に変更
  • 定義:特定の社会的状況では一環して話すことができない(consistent failure to speak in specific social situations)に変更

2013年DMS-5

  • 分類カテゴリー:不安障害に変更

DSMが改正される度にSMの定義は変わってきているので、今後も変わっていくんでしょうね。専門家・一般に緘黙の知識が広く浸透し、もっと多くの支援が得られるようになると良いですね。

このポッドカストはSMiRAのサイトからリンクされています: http://www.selectivemutism.org.uk/videos/

<関連記事>

マギー・ジョンソンさん出演のポッドカストから

マギー・ジョンソンさんの新しい実用書

SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その1)

SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その2)

SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その3)

SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その4)

SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その5)

SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その6)

SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その7)

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