悪化するコロナ禍とメンタルヘルス(その2)

 

今年もあと1日で終わりですね。世界中がパンデミックに襲われるなんて、2020年の初めには誰が予測できたでしょう。

先回も書きましたが、南東イングランドではコロナの変異種が蔓延し、ロンドンでも猛威を振るい続けています。昨日、今日と一日の感染者が一気に5万人を超え、医療崩壊が危ぶまれています。春の第一波時の規模を超えたようで、もう未知との遭遇…。

今月初めまでは、身近でコロナに感染した人はいなかったんです。それが、ここ3週間位の間にどんどん身近に迫ってきたと、周囲の人は皆感じているよう。

ウォーキング仲間のママ友一家は幸いにもPCR検査で陰性でした。が、娘さんのクラスメイト複数名とその家族は陽性だったとか…。また、嘔吐と頭痛で寝込んだ友人の友人もコロナ陽性が判明し、セカンダリースクールに通う無症状の息子さんにも陽性反応が出たと…。

どう考えてみても、セカンダリースクール(11~15歳)で変異種の感染が拡大しているとしか思えません。ちなみに、今月コロナで閉鎖したうちの学校も11~19歳のティーンが通うアッパースクールなので、1月から学校に行くのが恐怖です。

イギリス政府は第一波発生時には学校を全国的に閉鎖。そのため、多くの子ども達は2学期(春季)後半から3学期(夏季)を通して、全く学校に行けませんでした。オンライン授業に切り替えたとはいえ、裕福な私立校と貧困層が多く住む地区の公立校とでは、教育格差が大きかったよう。

私が勤める私立の特別支援学校では、各生徒が学校のラップトップを家に持ち帰り、比較的円滑にオンラインで授業を続行できました。が、公立校では兄弟で保護者のスマホを順番に使うしかなかった子ども達や、オンライン授業に参加しなった子ども達も多かったとききます。

更に、今春は高等学校・大学進学のための全国検定試験もキャンセルになりました。各学校で成績を付けたものの、従来の公平性や信憑性には疑問符が…。

それ故に、9月の新学期からは教育を重視して、学校だけは閉鎖しない方針だったのです。

秋には大学生の感染が拡大したため、大学2年に進級した息子が大学に足を運んだのはたった1回のみ。講義もゼミも全部オンラインですが、提出する課題は例年と同じ。人生で一番楽しめる時期なのに、大学で友達に会うこともできず下宿に缶詰状態で、気の毒でなりません。

と書いたところで、セカンダリースクールの学校再開を2週間遅らせることが正式に決まりました。ロンドンとイングランド南西部の多くの小学校も、1月4日からの開始をしばらく延期するそう。大学は春までオンライン授業のみ!?

(息子には悪いけれど、私は来週学校に行かなくてもいいようなので、少しほっとしています)

コロナ禍が受験期や就職活動期を直撃した世代が、ロスジェネになりませんように。

ある新聞記事では、「コロナ禍が私たちのメンタルヘルスに与える影響は計り知れない」と書かれていました。

道で人に会うと反射的に避け合う、買い物をする際に誰とも話さない…。これが長く続くことで、心理的な影響はかなり大きいと。

社会的な存在である人間が人を避け、友人付き合いもままならない――感染の恐怖に加えて、自分の世界がどんどん小さくなっていくような不安を誰もが抱えているのではないでしょうか?

また、コロナ禍が長引けば長引くほど企業やショップが潰れて失業者が増え、経済的な影響も大きくなってきます。

ひっくり返った日常と、一変してしまった世界…。

寒くて暗い季節にどんどん高まっていく不安。これからどうなっていくのか予測できない中、今日オックスフォード大学とアストロゼネカ社のワクチン使用が正式に許可されました。来週の月曜日(1月4日)から接種をスタートする予定だとか。

80歳以上の高齢者にはファイザー社のワクチン接種が進んでいます。義父母を含め、今のところ重篤な副作用は出ていないよう。コロナ最前線で戦っているNHS(国民保険サービス)のスタッフに、一刻も早くワクチンが行き渡りますように!

ワクチンがコロナ禍を沈めてくれる希望の光になることを願ってやみません。

2021年が希望を持てる年となります様に! 日本でもコロナ感染が拡大しつつあるようなので、みなさん健康にはくれぐれもお気をつけて。

悪化するコロナ禍とメンタルヘルス

 

日本でもニュースになっていると思いますが、急拡大しているコロナ変異種の感染を防ぐため、ロンドンを含むイングランド南東部が急遽ロックダウンされました。先週の土曜日に何の前触れもなく、いきなり…。

感染率が再び上昇してきて、みんな危ないなとは感じていました。だから、私の周りでもクリスマスに親戚や友人と集まるのをやめた人が多数。我が家でも金曜の夜、主人が実家に電話してキャンセルの提案をしたんです。

でも、「一回目のワクチン接種は済ませたし、感染対策を万全にするから来て」と押し切られ、土曜の朝も感染対策の話をしていました。そうしたら、午後4時にいきなり警戒レベル4(それまで3が最高)との発表が!

義父母のところは警戒レベル2なので、クリスマス当日のみ1家族だけゲストを招くことが可能です。でも、宿泊は不可のため義妹家族もキャンセルする羽目に…。二人とも落胆が大きかったよう。

科学者達はクリスマスの規制緩和(イギリス全土でクリスマス前後5日間限定で3世帯が合流可)は危険だと、ずっと警鐘を鳴らしていました。ウェールズとスコットランドの首長は、先週頭に方向転換。でも、ジョンソン首相は動きませんでした。それが、感染が急増してから、いきなり180度変更…。

新たな変異種はすでに9月半ばに発見され、じわじわ拡大していたんだとか。感染が止められなくなってからロックダウンしても遅すぎる!ジョンソン首相の政策はいつも後手後手。政府への信用は地に落ちています。きっと、世界もそう見てることでしょう…。

変異種の感染力は従来種の7割増とのこと!TVでハンコック保健相が「感染防止はお手上げ状態」と告白したのを観て、本当にぞっとしました(それでも、町にはいまだにマスクをしていない人がいるんです!)

私が勤める学校でコロナ感染者が出てから2週間半――その間にウォーキング仲間の中学生の娘さんのBFが陽性になり、家族全員が隔離してPCR検査。別の友達もその友達が突然嘔吐・頭痛に襲われ、念のためPCR検査…。幸い、全員陰性でしたが、いよいよ感染が身近に迫ってきた感じです。

警戒レベル4だと、必需品の買いだしと運動以外の外出は禁止。でも、一緒に住んでいる家族以外に、ひとりの人と外で会うことができます。が、その際もマスクと2mの距離を保つことが必須。今までも大変だったのに、更に厳しい状況に突入してしまいました…。

現在のところ、クリスマス翌日にイングランド全域の3度目のロックダウンが囁かれています。専門家たちは4月になるまでは過酷な状況が続くだろうと。

この急な政策変更で、クリスマス前のかきいれ時だった商店やサービスは大打撃。クリスマス用に仕入れた商品やストックが無駄になってしまいました。ただでさえ大変な年だったのに、その心情や経済状況を思うとやり切れません。

また、この緊急処置でクリスマスを独りぼっちで過ごさなければならない人が大量に出現。寒くて暗いイギリスの冬、明るいニュースや希望が全く見えない中、クリスマスだけが唯一の楽しみだったのに…。

長びくコロナ禍で人々の心がすでに疲弊しているところへ、もっと強力な変異種の出現。みんなの心が折れてしまわないか本当に心配です。心が疲弊していると、人のことを思いやることが難しくなりますよね…。

先週、最後の生徒のオンライン授業を終えて少しクリスマスの話をしたら、

「私が親族にコロナを感染させないか心配なの」と言うのです…。

12歳の女の子でも、楽しみなはずのクリスマスを前に大きな不安を抱えている――大人も子どもも同じように不安の渦の中。例え子どもが何も言わなくても、心のケアを怠らないことが重要だと思いました。

政府は教育に重きをおいて、9月の新学期から学校閉鎖をせずにやってきました。でも、殆どの地区の学校でコロナ感染による一部閉鎖が日常茶飯事になっているのです。子ども達は毎日不安の中で学校に通っている訳ですが、友達や先生と会えることが心のケアにも繋がっているし…。

こんな状況で多感な時期を過ごさなければならない子どもたち。この体験がトラウマになったり、将来に影響することがなければいいのですが…。

今まさに、メンタルヘルスケアの必要性をひしひしと感じています。イギリス人にとっては1年最大の祝日であるクリスマス。今年は集うことが難しいけれど、誰もが美味しいものを好きなだけ食べて、温かく気持ちよく過ごせるよう願っています。

皆さんも良いクリスマスを。

    息子が3歳の時、幼稚園で作ってくれたクリスマス飾り。あれからもう17年。大学から帰省した息子がいるだけで、我が家はぱっと明るくなりました

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その22)みんなの前で声が出た!

イギリスではロックダウン後に少し感染率が下がったものの、1万人を切ることなく反転!ロックダウン前はイングランド北部中心だったのが、今度は南西部で感染が拡大しています。

私が住むロンドンでも東部で感染が爆発し、他の地区へもじわじわと拡大している状態。ハンコック大臣によると、変異種が猛威を振るっているらしく、始まったばかりのワクチン接種が効くのかどうか…。

科学者や医療関係者の大反対にかかわらず、政府はクリスマス休暇の自由な移動を取り消さず…。個々の良識に任せるということで、もし感染したら自己責任?!

専門家や個人の間でも意見が分かれ、どうしたらいいのか迷ってしまいます…。義父母は来て欲しいというのですが、もし感染させたらと思うと不安だし…。

クリスマス飾りは出しましたが、あまりそういう気分になれないですね…

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さて、息子の緘黙話の続きです。

1年生の3学期からは、私と放課後の教室を訪問し始めたと同時に、仲良しのB君と学校の放課後クラブに週2回ほど行き始めました。

B君と一緒だったお陰で、嫌がることなく2時間ほどクラブで過ごせるように。常にB君にひっついていたようですが、トイレなど要求がある場合は、スタッフに囁いて伝えることができていました。

幼稚園時代の親友、S君は2学期の終わりに日本に帰国。その1年位前にも、入園前まで仲良しだった初めての日本人の友達が帰国…。仕方がないとはいえ、突然いなくなって全く会えないのは大人の私でも辛く、地元の友達ができてひと安心でした。

(どういう訳か、息子は同じクラスにいた日本人駐在員の子ども達とは、それほど親しくなりませんでした。タイプが全然違ってたせいだと思うのですが。それでも、S君にくっついて、彼のクラスの日本人の子ども達と遊んでいた時期もありました)

さて、3学期も終わりに近くなったころ、教室の庭(低学年クラスの教室は専用の庭付)で、クラスのお楽しみ会がありました。保護者も招かれ、ひとり一品食べ物を持参。私は提供されたリストの中から、ニンジンスティックを選びました(超簡単(;^_^A )。

好天に恵まれ、賑やかな雰囲気の中、子ども達は遊びまわり、大人は並んでおしゃべり。しばらくして、お待ちかねのおやつタイムがやってきました。子ども達は好きなお菓子や食べ物を取りに、我先にとテーブルに集まってきます。

息子も来たなと思ったら、

「それ、僕のマミーが持ってきたんだ!」

ニンジンスティックを手に取った子どもに向かって、息子がいきなりこう言ったのです!それも周囲に聞こえるような大きな声で。

心臓が飛び出るくらい驚いた半面、内心「やった~!」と興奮し、それを顔に出さないようにするのが大変でした。

周囲がガヤガヤしていたせいか、息子が大きな声を出したことに対してのリアクションは別になし。ほっ…。

そうしたら、隣にいたB君ママが「声が出たね」とにっこり。また、あとからTAがやって来て、「皆の前で、あんなに大きな声を出したのは初めてよ」と。

ちゃんと見ててくれてる人はいるんだなあと、また感激したのでした。

野外での賑やかで楽しい雰囲気、皆の中で目立たないことや、B君や私がいる気安さから、意識せずに声が出たんじゃないかなと思います。それにしても、ニンジンがバリアを超える力になるとは…。

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緘黙児とオンライン学習

早いもので12月もすでに9日!イギリスでは先週火曜日に全国的なロックダウンが終わりましたが、ほとんどの地区は警戒レベル2「高い」か3「非常に高い」に逆戻り。店舗やジム、美容室などは再開したものの、個人宅に人を招くことは禁止されています。

それでも、政府は一年最大の祝日であるクリスマスには、5日間限定で個人宅に3家族まで集まることを許可しました。クリスマスショッピング(食料品、贈り物、デコレーション他)で経済が潤い、国民は家族との再会を楽しめる――政府への反発は弱まるかもですが、その後の感染拡大が今から心配。

明るい話題としては、アメリカとドイツの製薬会社が開発したファイザー社のコロナワクチン接種が昨日からスタート。2回の接種が必要なので、効果が出るのは来年の1月5日以降ということですが…。

実は、昨日勤めている特別支援学校が、なんとコロナ感染のため閉鎖となりました!幸いにも、私は濃厚接触者ではなかったので自己隔離は必要なしですが、あまりにも身近!! 授業がリモートに切り替わったので、準備に追われています。

      学校近くの住宅街で見つけた街路樹の根元に広がるアートワールド。先週からクリスマスモードに。アイビーちゃんとノア君のママが美術監督です

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昨日、SMiRAのFBにオンライン学習で緘黙児の不安と緊張がより高くなったという投稿がありました。対面クラスの方が緊張するはずなのに、どうしてなのか悩んでいるという母親。この相談に対して、色々な回答や意見があったのでご紹介します。

ちなみに、娘さんは3歳の時に場面緘黙になり、現在15歳とのこと。

昔から、ビデオを撮って祖父母に見せるのは平気だったし、自らの映像をYouTubeに投稿して楽しんでいたよう。それが、今では写真もビデオも撮影はNGに…。

普段の授業では、100%正解でなければ絶対に答えないため、クラスで声を出す機会は少なかったといいます。その場合も、先生が指名する前に合図を送り、OKだったら指名するというサポート体制ができていたよう。

それが、オンライン授業だと体が硬直してしまい、無表情になり、質問されても全く答えられない状態に。そのうえ、頻繁にパニック状態が出るようになったとのこと。

「何か変なことを言ったらどうしよう?!」

「間違えたらどうしよう?!」

「みんなが笑うわ!ビデオに映ってるのよ!」

こう訴える娘に、母親は胸が張り裂けそうだといいます。

どうしてこんなに自己評価が低いのか?自分が皆にどう見られているのか、笑われているのではないか--そんな不安に苛まれているのは、前の学校で虐めにあったのが原因ではないか、と推測も。

一番安心できる自宅で行うビデオ通信での間接的なコミュニケーションと、不安が大きい学校での対面の直接的なコミュニケーション――前者の方が緊張が高くなるのはどうしてなのか? 学校では、時間割やルーティンが決まっているから予測がつけやすいから?

多くの回答の中で最も納得できたのは、PCのカメラの焦点が自分だけに当たっているから、という指摘でした。

教室では時々先生には見られていても、他の生徒に見られているという感覚は少ないかもしれません(イギリスの学校はグループで座ることが多いですが)。教室の方が、大勢の中のひとりとして隠れやすいのかも。

本人の画面上は、先生をメインに他の生徒達の顔が無数にこちらを向いている訳で――みんなに凝視されてるかのようにも感じるかも。

また、自分の顔が常に皆の画面上にあって、話す時には注視されると考えると、目立つことを嫌う緘黙児が嫌がるのも無理はありません。

緘黙児には自意識過剰な子も多く、一度怖いと感じると、どんどん不安が増大してしまうのではないでしょうか?

回答をみると、オンライン授業が苦手な緘黙児は少なくないようです(反対に、得意な子もいると思いますが)。その対処法としてあげられたのは、自分の姿や自分の声を隠せるミュート機能を活用すること。

事前に先生と打ち合わせをして、文字のみの参加から可能にしてもらうなど、それぞれの子どもに合う方法を取れるといいと思います。慣れてきたら、最初は文字だけで参加して、最後の挨拶だけ顔を出すなど、少しずつステップアップしていければ。

そういえば、私の学校の日本語の生徒達(高機能ASDのティーン)も、過半数は顔を隠して(アイコンのみ表示)オンライン授業を受けています。最初の挨拶の後は、画面をシェアして音読やQ&A方式ですすめているので、顔が見えなくても支障はありません(実は、私自身もできれば顔出ししたくないです…(;^_^

いずれにせよ、不安が少ない状態でオンライン授業に臨めることが一番ですね。

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