北欧の夏休み-ストックホルム編(その1)

旅行3日目は特急列車を使ってコペンハーゲン空港からストックホルムへ。朝、空港へ向かう電車が途中で15分も停止し、焦りまくり…。そして、空港の売店でミネラルウォーターを買おうとしたら、硬貨は使えないといわれ…なぜ、何故??

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とにかく、何とか間に合ってスウェーデンで3番めに大きい都市、マルメ行きの列車に乗り込むことができました。ここで乗り換えた特急の車内は、座席の手すりやテーブルが木製。4人向き合うタイプの座席にはコンパクトな木製の延長テーブルが。シンプルで機能的、かつ温かみのあるデザインは北欧ならではです。

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   車中からノルウェイの森ではなく、スウェーデンの森

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  マルモの駅で買ったお昼ごはん。サンドイッチのサイズも具の量も半端ない…。

ストックホルム中央駅まで友達が車で迎えに来てくれたのですが、もうすぐ13歳になる息子さんの身長が180cm位まで伸びててビックリ!3年前会った時はまだ小っちゃかったのに、子どもの成長は早いですね。北欧の建物は天井も鴨居も高いんですが、それでも「2mまでは伸びないよう祈ってるの」とのことでした。

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「北欧のベニス」とも言われるストックホルムは、水に囲まれた島群といった印象。バルト海は内海なので津波の心配も全くなく、気候も夏はイギリスと変わらない感じでした。夜になってもそれほど冷え込んだりしません。

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まずは、ホテルで荷物をおろすために、ソーダマルム島(Södermalm)へ。今回選んだホテルは岸辺に停泊している船。ハイシーズンなのでホテル代が高く、どうぜ狭い部屋なら記念に船内に泊まってみることにしたんです。対岸にあるクングスホルメン島への船着場がすぐ傍にあって、とっても便利でした。

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    レセプションで「部屋が狭いから、上階のレストランを気軽に使って」と言われてちょっと不安…でも閉所恐怖症になりそうな狭さではなかったです

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ホテルの朝食の写真もついでに

ホテルからガムラスタン(Gamla Stan 旧市街)までは歩いてすぐ。友達母子の説明を聞きながら、古い石畳の路地をブラブラお散歩しました。

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     中央の緑のボックスはかつての公衆電話。右はストックホルムで一番狭い路地ですが、落書が…

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王様の公邸、ストックホルム宮殿。近衛兵の青いユニフォームが素敵

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     聖ジョージとドラゴン像。街の中心にあるストールトルゲット広場は、1520年に多くの貴族が虐殺された「ストックホルム血浴」の舞台だったとか

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     紅茶専門店で久々のアイス・フルーツティーを楽しみました

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夕暮れ時になるとホテルのレストランに灯りが

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対岸にあるクングスホルメン島の風景

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暗くなってくると、レストランの電飾がより華やか

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北欧の夏休み-コペンハーゲン編(その1)

北欧の夏休み-コペンハーゲン編(その2)

 

北欧の夏休み―コペンハーゲン編(その2)

コペンハーゲン2日目は、スウェーデン人の友達が「絶対行くべき」と勧めてくれた、ルイジアナ近代美術館(https://en.louisiana.dk/visit-louisiana)へ。都心部を通り抜けて電車で北へ40分ほど。Humlebæk駅で降りると大勢の人が同じ方向にゾロゾロ歩いていて、道に迷う心配は全くありませんでした。

12分ほど歩いて「やっとついた~!」と思ったら、門の外まで長蛇の列が…。でも、コペンハーゲンカード(公共交通機関乗り放題&主要観光スポットが無料)を買っておいたお陰で、並ばなくてすみました。

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    海辺の丘に建つ個人の邸宅を改造・増築したという美術館。正面から見ると小さそうですが、回廊が延々と繋がっていてすごく広いんです

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        草間彌生のインスタレーション『Gleaming Lights of the Souls』。一度に4人しか入れないため列ができていました

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     目の前に海がキラキラ光っていて、芝生の上でのんびりする人もいっぱい。複数のドアから簡単に外に出られるようにデザインされています

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     海が見えるレストランのビュッフェランチは129DKK(約2000円)でお代わりもOK。海老のカクテルと野菜が美味でした

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ポップアートの作品も充実

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ピカソのコレクションもありました

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彫刻の庭にあったミロの作品。右は湖へと下っていく小径

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戸外の自然と融け合うような建築デザインが印象的

次の予定が迫っていたため全部周ることができず、途中で切り上げて駅へ。雨に降られながらも、電車とバスを乗り継いでなんとかフレデリクスボー城(http://www.dnm.dk/UK/Frederiksborg_Castle.htm)に到着できました。17世紀初頭に建てられた王宮は、現在国立歴史博物館になっています。

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 パラス湖に浮かぶ小島に建てられた、北欧最大のルネサンス様式の宮殿

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荘厳な「勲位のチャペル」は地元の教会として使われているとか

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     豪華絢爛だったのですが、宮殿内の見学時間が1時間しかなくて、ほとんど早歩き…。右の大ホールが圧巻

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広~い部屋の真ん中に豪華な天蓋付きベッド。こんなところで一人で眠るのは緊張しそう…

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      上は宮殿内から見たバロック様式のフォーマルガーデン。庭は公園になっていて誰でも自由に入れます

この後、電車で市内に戻って、前日ボートから見たペーパーアイランドでストリートフードの夕食を楽しむ予定でした。が、遠出して家族全員が疲れてしまい、地下鉄ノアポート駅近くの屋内マーケット”Torvehallerne KBH”で食料を買い込んで、ホテルに戻ることに…ああ、残念。

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        2011年にオープンしたコペンハーゲンのグルメスポット。地下道の壁には食をテーマにした写真が

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      パンとスイーツ、チーズ、サラダ、惣菜から新鮮な花、果物、野菜まで何でも揃うマーケット。見ているだけでも楽しい

ホステルに戻って、買い込んできたパンやチーズ、完熟トマトとシーザーサラダ、苺とブルーベリーでピクニック風の夕食。イギリスだとホテルには必ずケトルが常備されているので紅茶のパックを持参したのですが、北欧はそういう風習はないよう…。ロビーのドリンク販売機まで行くガッツもなく、早々とシャワーを浴びて就寝したのでした。

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北欧の夏休み-コペンハーゲン編(その1)

北欧の夏休み ― コペンハーゲン編(その1)

今年の夏休みの家族旅行は、かねてから希望していた北欧に行ってきました。私が初めてロンドンに来た時、ホステルで3日間だけスウェーデン人の女の子と部屋をシェアしたんです。それ以来20年以上も交友があり、彼女がロンドンに来た際に何度か再会。会う度に「ストックホルムにも来て」と誘われてました。

それで「今年こそ北欧へ!」と思いたった訳ですが、とにかく物価が高そうなのが心配の種。彼女から「ノルウェーは物価が高くて、フィンランドは食事がマズイ」ときかされ、憧れていたフィヨルドの旅とムーミンランド行きは即却下(笑)。

結局、消却法でコペンハーゲンに2日間、そこから特急列車でストックホルムに移動して6日間を過ごす計画を立てました。5月に決めて飛行機のチケットとホテルを予約したんですが、航空運賃はなんと3人で往復4万円ちょっと!(今円高なのも影響してますが)

ご存知のように、6月にEU離脱が決まった途端、英ポンドが下落!その前に予約しておいて、大正解でした。でも、旅行中は為替レートが悪かったので、どっこいどっこいかな。世の中、いつどうなるか分からないものですね…。

北欧の夏は日が長いことを想定し、午後2時過に着く便でゆっくり出発。空港で48時間使えるコペンハーゲンカードを購入し、まずはホステルへ(似たような価格の他のホテルに比べると間取りが断然広いという理由で、空港に近い市街のホステルを選びました。ロンドンも宿泊費が高いけど、北欧も相当です…)。

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空港のカートがおしゃれ。自動運転の地下鉄は車内が広くてゆったり

荷物をおいてちょっと休憩した後、地下鉄で5駅くらいの中心部へ。月曜日だったので博物館などは休館のところが多く、お城などの観光名所もだいたい5時で終わり。まず、クルーズボートに乗って運河からざっと観光することにしました。

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      運河のクルーズツアー発着所を探して街中をウロウロ。右側は現在国会議事堂になっているクリスチャンスボー城。時間切れで行けず…

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やっとボートに乗り込み出発。尖った塔は証券取引所

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ちょっと剽軽なガイドさんが英語とフランス語で解説

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デンマーク建築センター。行きたかった~

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倉庫街ペーパーアイランドにある人気のフードコート

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カステレット要塞付近には軍艦も

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有名な人魚姫の像

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中央はフレデリック教会のドーム

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個人所有の豪華なボートやヨットがいっぱい

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      螺旋階段で塔のてっぺんまで登れるという救世主教会を通りすぎ、最後の橋の下をギリギリ通り抜け、拍手喝采でツアーは終了

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次は、アンデルセン像を探してチボリガーデン付近をウロウロ

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   8時まで開いてたアンデルセン童話館に入るも、「子供だまし」と家族に大不評

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さすがに9時近くになると夕が暮れ始めます

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    北欧最大の会議場Bella Centreに隣接する、めっちゃ奇抜な建築が売りのベラ・スカイホテル。私たちが泊まったホステルはその向かい側。他はな~んにもない辺鄙なところでした(笑)

3人付き合い - 息子の緘黙・幼児期3~4歳(その7)

昨年秋から途切れていた、息子の緘黙記録の続きです。

時間の経過とともに、T君とM君は園の内外でかなり地が出てきました。T君は一見おとなしそうですが、しっかり自己主張するタイプ。活発なM君は体を動かす遊びが大好きなイタズラっ子。息子はというと、自我はとても強いのに1対1でもなかなか自己主張できず、相手に合わせるという感じでした。

例えば、T君がうちに遊びに来ると、真っ先に自分の好きなオモチャを取ります。それらは息子のお気に入りのことが多く、本当は先に自分が遊びたいんです。が、「次は僕」と言えないまま、ずーっと譲りっぱなし(諦めっぱなし)なのでした。

また、T君宅に遊びに行くとなぜか萎縮してしまい、なかなかオモチャに手が出ません。T君は自分のお気に入りは「これはダメ!」と釘を刺すので、違うものにソロソロと手を伸ばすという具合…見かねたT君のママが、「貸してあげなさい」と気を利かせてくれることも多かったです。

(入園以前に仲良しだった日本人の友達はひとつ年上。今考えてみると、精神的にもすごくお兄ちゃんだったなと思います。この子と2人で遊ぶときは、全く萎縮することなどなどなかったんですが…)

台湾人のM君宅に行く時は、だいたいT君もいっしょ。家の中でも外でも活発な遊びが中心なのですが、息子は躊躇するので、なかなか順番が周って来ないことも…。庭にビニールプールを出した際、M君がふざけて周囲にバシャバシャ水をかけるので、息子だけプールに入らなかったこともありました。

公園の遊具では普通に遊ぶものの、木製の汽車の屋根に登って飛び降りるというような新しい遊びが出てくると、最初は見ているだけ。そのうち、ゆっくり登って慎重に地面に降りるという感じで、怖がりの性格が反映されてました。

我が物顔で自由にふるまう幼児が多い中、なんでうちの子は友達に遠慮するのかな?と当時とても不思議に思ったこと、そんな息子にフラストレーションを感じたことを今でもよく覚えています。でも、これって抑制的な気質のせいだったんですよね…。

「3人集まれば社会の始まり」といいますが、1対1の場合と3人の場合では、人間関係の複雑さやダイナミズムが随分違ってきます。自分と相手だけだったのが、そこにもう1人加わることで、第三者のことも考えて行動しなければなりません。

息子は1対1のコミュニケーションは取れてましたが、そこに誰か加わると萎縮してしまう傾向がありました。多分、自分の立ち位置というか、どう振る舞えばいいのか分からなかったんでしょうね。

また、息子は状況を変えることがとても苦手でした。自宅で楽しく遊んでいるのに、どこか違う場所に行かなければならないような場合は特に。でも、行ってしまえば、割りと平気なことが多かったです。ある時、息子とグラニーが仲良く話しているところに私が加わろうとしたら、息子の態度が急変。「マミーあっちに行って!」と睨まれた時は、ショックでした~。

蛇足ですが、私自身も小さい頃から仲の良い友達と1対1で、深くべったり付き合うタイプでした。保育園の時の親友とは家が近く、近所の子たちと集団で遊ぶ時も、2人でくっついてました。小2まで同じクラスで、その後もしばらくは一緒に登下校し放課後もお互いの家で遊んでたんです。そんな風だったので、複数での友達関係を学び始めたのは、小4になる頃だったような…。どう行動すればいいのか、やっぱり戸惑うことが多かったように記憶しています。

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息子の緘黙・幼児期3~4歳(その1)

息子の緘黙・幼児期3~4歳(その2)

息子の緘黙・幼児期3~4歳(その3)

息子の緘黙・幼児期3~4歳(その4)

息子の緘黙・幼児期3~4歳(その5)

息子の緘黙・幼児期3~4際(その6)

 

今できることは、今やっておこう

家族で8日間ほど北欧を旅行していて、またまた更新が遅れてしまいました。ストックホルムからロンドン行きの便が遅れ、火曜日の午前0時半頃にやっと自宅に帰りついて、即ベッドへ。翌日からいつもの日常生活に戻ったと思っていたら、突然の訃報が舞い込んできました。

ここ2年ほど、お誕生日のサマーガーデンパーティーに招待してくださった年上の友人が、病気で急逝されたとのこと…。

あまりに突然だったので、一瞬何のことか理解できず…。その時一緒にいた友達にも心配をかけてしまいました。旅先で倒れられて入院され、手術のかいもなく亡くなられたそうです。

 昨日、お葬式と自宅でのお別れ会に行ってきました。昨年の誕生パーティーの時のように、空は青く澄み渡り、雲ひとつない快晴。明るいチャペルに彼女の好きだったプッチーニの曲が響き渡り、とても温かで親密な雰囲気の中で、式がとり行われました。

お棺の上には白と黄色のバラの花。いつも朗らかで明るく、とてもチャーミングだった彼女にふさわしいアレンジでした。イギリス国内だけでなく、日本やヨーロッパから駆けつけた参列者もいて、人との繋がりを大切にしていた彼女の温かな人柄が忍ばれました。

でも、直接お顔を見てお別れした訳ではないので、なんだか白昼夢をみているよう…。

 彼女が大事にしていたお庭で行われたお別れ会は、いつものホステス役がいなくて、ぽっかり空洞が空いたみたいな感じでした…。キッチンで料理の腕を振るい、にこやかに庭に運んでくる姿がどこにもない。手伝いの指示をだしたり、賑やかに話題を振りまいてくれる人がもういない。

 庭のテーブルに並べられた外注の料理や使い捨ての紙皿を見て、いかに彼女が心をこめて料理を作り、細やかな心遣いで盛り付けや食器選びをしていたか、思い知らされたような気がしました。もうあんな風に、彼女の手料理がここに並ぶことは二度とない--ご自慢の菜園も雑草におおわれ、主人不在の大きさを物語っているかのようで…。

 どうしてもっと頻繁に連絡しなかったのか、悔やんでも悔やみきれず。いつもあると思っている当たり前の日常の脆さ、危うさを思い知った気がしています。当然と思っていたらいけないんですね

突然病に冒され、不安に陥れられたご本人のショックや思い、そしてご家族の悲しみはどれほどのものか…。彼女のご冥福を心からお祈りしたいです。

これからでも遅くない。今できることは、できるだけ今やっておこう。後回しにするのは、極力やめようと自分に言い聞かせています。

 

 

子どもと学校環境

夏休みに入ったらもっと頻繁にブログの更新をしようと思っていたのに、あれよあれよという間にもう1週間以上が過ぎてしまいました。

学校ではサマータームが終了し、SENエージェント経由の個人レッスンもお休みに入る予定でしたが、生徒さん達の希望によりエキストラでレッスンが入ることに。他に片づけなければいけない仕事もあるし、目前に迫った家族旅行の計画も立てなきゃいけないし…(個人旅行なので誰かがやらなきゃいけないんですが、うちの家族はいつも私に任せっぱなし)。

そう思いつつも、久しぶりに友達家族を招いてBBQをしたり、旦那様の実家にやってきた地方の友達と再会したり。子どもが夏休みだと私もお休みモードになるので、いつもよりゆったりできるような気がしちゃうんですよね。で、今ごろ焦ってます。

さて、話は変わりますが、私は場面緘黙の子どもの支援をしたくて頑張ってSENTA(特別支援員)のエージェントに登録したのに、ふと気づくと何故かTAではなく日本語講師をしているという…。きっかけは、「日本語を習いたい子がいるからお願い」というエージェントからの依頼だったんですが、流れに任せているうちに、目標からかなりハズレてしまいました…。

でも、エージェントから来るTAの仕事って、たいていがASD児のサポートなんです…。イギリスでは特別支援教育が定着していますが、地方自治体から支援の予算が出るのは、「特別教育のニーズ」を認定された子どものみ。認定されると、EHCプラン(Education, Healthcare and Care Plan教育・医療・ケアプラン)を立てて、遂行する義務が生じます。

子どもの問題が場面緘黙だけの場合は、「特別教育のニーズ」を認定してもらうのが難しく、学校が緘黙児のためにTAを雇うことは殆どないんです。だから、いくら待っても緘黙児の支援で声がかかることはないかも…。

(学校にもよりますが、インファント(小学校低学年)ではクラスにTA(学習支援員)が常任し、EHCプランを持つ子どもにはだいたい専属のTAがつきます。特別支援の予算が多い学校なら、TAの数はもっと多いかもしれません。

EHCプランはなくても特別支援が必要な子どもは、これらのTAができる範囲で面倒を見ているという感じです。だから、緘黙児が受けられる支援は、学校や予算、クラスの状況によって千差万別。イギリスだから手厚い支援やケアが受けられるかというと、そうでもないのです)。

さて、私が今日本語を教えているのは、高機能自閉症(ASD)の子どもを対象にした小さな私立の特別支援学校です。2年ほど前、1年間TAの修行をさせていただいたのですが、当時も今も緘黙児はひとりもいません。

生徒は14~19歳のアニメ大好きティーンばかりなのですが、彼らを見ていて感じるのは、学校がちゃんと自分の居場所になっているなということ。

全校生徒が30名ほどのこの小さな学校は、1クラスが6人以下。生徒2人に対し大人が1人という割合で、きめ細やかな支援を行っています。SLT(言語療法士)と作業療法士が常務し、アートセラピーや音楽セラピーなども。

公立の普通校に適応できず転校してきた子が大勢いるのですが、転入当時どんなに荒れていても、いつの間にか先生や学校に慣れて、ある程度友達付き合いができるようになるのがスゴイ。

子どもと学校スタッフの距離がとても近く、生徒がみんな安心して暮らしているというか――セカンダリー(12~16歳)になってくると、自分の長所と短所をちゃんと把握していて、かなり落ち着いて学校生活を送っているようにみえます。

まあ、ティーンなので時々は誰かが事件を起こしたりする訳ですが、なんというか、みんな自分に自信を持っているように感じるんですよね。

授業をしていても、わからないところはどんどん訊いてくるし、ある生徒は「僕は理論的に理解できないと、次に進めない」と、納得するまでプリントを読み返します。自分がみんなより遅れていても、「自分の学習スタイルはこうだから」と卑屈にならないんですよね(まあ、あまり人のことを気にしないのもありますが)。

子ども達にとって、学校の環境が合ってるからだと思うんです。不安が強い緘黙児たちにも、彼らに合う環境の学校があったらいいですよね。

実際に学校環境を変えるのは無理でも、周りの教師や大人の配慮で、緘黙児がほっと安心できるひとときや場所を作ってあげられるんじゃないかな…。繊細な緘黙児はそういうことにはとても敏感なので、先生が自分を気にかけてくれていると感じるだけでも違うんじゃないでしょうか。