イギリスの秋

今年のイギリスの秋は、例年に比べとても暖かな日が続いています。

先週土曜日に夏時間から冬時間に切り替わり、そろそろ冬に突入する時期ですが、まだ朝夕の冷え込みもそれほどではなく、厚手のコートは全く必要ありません。

やっと仕事がひとつ一段落したので、次に入る前に10月の始めに撮った早秋の風景をアップします。(暇な時は本当に暇なんですが、忙しい時は全て重なるというのがフリーランスの宿命かな)

毎週土曜日にママ友と一緒にウォーキングをしていて、これはその道すがら見つけた風景です。これからどんどん寒くなっていくかと思うと、過ぎ去っていく季節が名残惜しい気がしますね。

berryberry3

何の実か分からないんですが、赤い実をいっぱい発見

berry2

これは野生のブラックベリー

IMG_3296

いつものウォーキングコース。こうしてみるとロンドン郊外も田舎ですね(笑)

allotment

アロットメントと呼ばれる共同農場に沿って歩きます。関係者以外は立ち入り禁止の手描き看板

IMG_3300

共同農場は小さく区切られていて、それぞれの借り手が好きな野菜や花などを育てています。週末菜園を趣味でずっと続けている人、養蜂をしている人など、それぞれ個性があります。

autumn

赤く色付き始めた蔦の葉

先々週の土曜日に(時間が過ぎるのが早っ)SMIRAの創設記念21周年パーティで、ミスイングランドのカースティさんとお母さんにお会いしてきたので、次はやっとその話題に入ろうと思ってます。

 

日本では発達障害と見なされやすい?(その5)

発達障害とは具体的に何なのか?

では、発達障害とは具体的にどの障害を指すんでしょうか?かんもくネットの『場面緘黙Q&A』では、DSM-IVによる発達障害の種類を表にまとめています。

  • 精神発達遅滞
  • PDD広汎性発達障害(自閉性障害・レット障害・小児期崩壊性障害・アスペルガー障害・特定不能の広汎性発達障害)
  • 学習障害(読字障害・算数障害・書字表記障害)
  • 運動能力障害(発達性強調運動障害)
  • ADHD注意欠陥他動性障害(混合型・不注意優勢型・特定不能の注意欠陥/他動性障害)
  • コミュニケーション障害(表出性言語障害・受容-表出混合性言語障害・音韻障害・吃音症)
  • チック(発達障害に含めることもあり)

『場面緘黙Q&A』 かんもくネット著/角田圭子編 (学苑社 2008年)より引用

金原氏の研究報告では、発達障害についての定義には触れていません。そこで、日本における高機能自閉症の権威のひとりといわれる、杉山登志郎氏の『発達障害のいま』を参照してみました。

目次の後に、発達障害の新たな分類とその経過として、発達障害の分類表が記載されています。

  •  第一グループ    精神遅滞/ 境界知能
  •  第二グループ    知的障害を伴った自閉症スペクトラム/ 高機能自閉症スペクトラム障害
  •  第三グループ    注意欠陥多動障害(ADHD)/ 学習障害(LD)/ 発達性協調運動障害
  • 第四グループ    子ども虐待

『発達障害のいま』杉山登志郎著 (講談社現代新書 2011年)

……………………………………………………………………………………………..

やぱり、杉山氏の分類には言語やコミュニケーションの発達に関わる、コミュニケーション障害が見当たりません…。学習障害の中に含まれているんでしょうか?もしご存知の方がいたら、是非教えてください。

何だか、この定義の曖昧さにも、日本で場面緘黙が発達障害と見られやすい理由があるように思えます。(言葉が遅かったり、問題があるのは高機能ではない自閉症の特徴でもあるので)

イギリスでは発達の問題(Developmental problem)という場合、発達の問題全般を指すと思います。ASD(自閉症スペクトラム障害)はその一部に過ぎません。だから、場面緘黙=ASDとは結びつきません。

場面緘黙児の3分の1が言葉やコミュニケーションの問題を抱えていると言われていますが、問診やIQテスト、病院などでの観察で、子どもにどの程度の言語・コミュニケーション能力があるのか、どの程度まで解るんでしょう?

保護者としては子どもの苦手な部分を詳しく知り、より早い段階でその部分を支援してあげたいですよね。

まだ続く予定ですが、書き溜めたものはここで切れてしまったので、次は少しというかもっと間が空きそうです…。週末には仕事が一段落するといいなぁ。

 

日本では発達障害と見なされやすい?(その4)

金原氏は『選択性緘黙例の検討-発症要因と併存障害を中心に』の中で、自分の研究結果をH.クリステンセン(2000年〝Selective Mutism and comorbidity with developmental disorder”)のそれと比較しています。H.クリステンセンは、欧米では唯一、併存障害のケースも含めた研究結果を出しています。

金原・発達に関連する障害との併存率: 60%

  •          PDD: 52% (疑いのあるケースも含めると70%)
  •     精神遅滞: 13%
  •          LD: 9%
  •         (社会不安障害: 65%)

クリステンセン・発達に関連する障害との併存率: 69%

  •      アスペルガー: 7%、
  •      言語・コミュニケーション関連の障害: 50%
  •      発達性強調運動障害: 17%
  •      軽度精神遅滞: 8%
  •            (不安障害: 74%)

『選択性緘黙例の検討-発症要因と併存障害を中心に』かねはら小児科・金原洋治著(2009年 日小医会報)より引用

…………………………………………………………………………………………..

ここで注目したいのは、PDD(広汎性発達障害)とアスペルガー障害(ASD自閉症スペクトラム障害でなく、それに含まれるアスペルガーのみ?)ですが、何故か45%も違いがあります。ASDだったら、違いはもっと少なくなるんでしょうか?とっても謎です。

『場面緘黙Q&A』には、「クリステンセンの研究対象はDSM-IVの診断基準で抽出された緘黙児ですが、アスペルガー障害やコミュニケーション障害の緘黙児は除外されていません」とありますね。(私はクリステンセンの論文の抄録を読んだだけなので、不勉強ですみません)

また、注目したいのは、金原氏の併存障害の中には、緘黙児の3分の1が持つといわれる、言語やコミュニケーション関連の発達障害(吃音、音韻障害、受容-表出言語の障害など)が含まれていないこと。

これは、緘黙児に言語能力テストを行えないため、言語やコミュニケーションに問題があるかどうか解らないという理由から?それとも他に理由があるのでしょうか? 言語能力(特に、話し言葉)については、IQテストでどの程度判断できるんでしょう?

異なる研究であるにせよ、併存している発達障害の種類がバラバラなのも気になります。

こうやって見てみると、「発達障害」という言葉が示す障害の範囲が、使う人やケースによって、明確に定められていないのではという疑問も湧いてきます。日本で発達障害という場合、どうも「自閉症関連の発達障害、LD、ADHD」といった狭い範囲で使われているような…。

またまた続きます。

 

日本では発達障害と見なされやすい?(その3)

日本では場面緘黙児がPDD(広汎性発達障害)と診断されやすいという印象はどこからきているか?

これはイギリスに住んでいる私の印象なので、もしかしたらそうではないのかもしれません。ただ、勉強不足で間違っているかもしれないのですが、日本の小児科医の論文や書籍からも、その傾向が読み取れるような気がします。そういう学会の傾向が、医師や心理士の考え方に影響を与えているとは考えられないでしょうか?

まず、2009年に日本小児科医会会報(日小医会報)で発表された、山口県小児科医会の金原洋治氏の研究報告『選択性緘黙例の検討-発症要因と併存障害を中心に』を見てみます。

抄録によると、かねはら小児科で経験した23例の選択性緘黙例について、主に発症要因と併存障害を中心について検討したとあります。

●発症時期: 幼稚園や保育園入園時が圧倒的に多かった

●初診時年齢: 3~14歳(平均7、8歳) 発症から3~4年経過した例が多かった

●緘黙経過中に完全な知能検査が可能だった例: 12例

IQ60~69: 3例
IQ70~99: 7例
IQ100以上: 2例

●併存障害の有無:

社会不安障害: 15例
広汎性発達障害: 12例(他に疑い4例)
精神遅滞: 3例
LD: 2例
登園・登校しぶり/不登校 10例

●受診理由:

緘黙: 5例
緘黙以外: 17例 (不安障害、発達障害、心身症など)

『選択性緘黙例の検討-発症要因と併存障害を中心に』かねはら小児科・金原洋治著(2009年 日小医会報)より引用

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

23例中、広汎性発達障害が12例、またその疑いがあるケースが4例(合計16例)と、半数を超えています。これを最初に見た時は、「ええっ?!」と驚きました。また、平均IQが低いのも気になります。

ただ、かねはら小児科は発達障害で知られていること、場面緘黙のために受診した例が5例しかないことを考えると、症例のデータが偏っていることが考えられると思います(これは報告書にも記してありました)。(アメリカ精神医学会の診断基準DSM-Vに従えば、この場合の場面緘黙はPDDの二次障害となるので、場面緘黙には含まれないことになります)。

それから、初診の平均年齢が7、8歳で、発症から3~4年経った後というのも引っかかります。場面緘黙が固定化して、学校生活で不適応を起こすような他の問題(不登校など)が表面化してから受診しているように思えるからです。多分、緘黙が固定化しても、学校でしゃべらないだけでコミュニケーションは取れており、友達関係も勉強面もそれほど問題がないケースの場合、発症から数年経って初めて病院に連れて行くという保護者は少ないのでは?

また、今年更新されたアメリカ精神医学会の診断基準DSM-Vで、場面緘黙は不安障害の中に含まれるようになったんですが、社会不安障害が15例しかないのも不思議です…。

以後、またまた続きます。

P.S. 今、仕事やKnetの任務など、色々なことが一度に重なって時間がない状態です。少し書きためたノートを元にブログを更新しようと考えてますが、途切れがちになるかもしれません。(また、うっかりミスや誤字脱字も多くなりそうです)

気長につきあってくださると嬉しいです。

 

日本では発達障害と見なされやすい?(その2)

初めて会う言語療法士が、緘黙の子どもに学校で言語テストを行なえるのか?

地区によっては、言語療法士が家庭を訪問してくれるケースもあるということ。また、子どもが全くしゃべらなかったり、緊張で固まってしまった場合は、言語療法士が何度か学校に通って慣れさせてから、というケースもあるようです。

重要だと思われるのは、言語療法士が学校を訪問する際、SENCO(特別支援コーディネーター)と担任やTAを交えたミーティングを行なうこと。学校での様子、保護者から得た家庭での様子など、現場からの子どもの情報が伝わります。言語療法士が教室で子どもを観察することも多く、言語テストのみでなく、子どもの全体像を把握したうえで、発達障害を疑うべきかどうか判断しているようです。ここに保護者も加わるのが理想ですが、ケースバイケースでしょうか…。

イギリスの言語療法士って、優しい雰囲気の女性が多いように思います。子どもの扱い方にも慣れているので、緘黙児が緘動になりにくいかもしれない。また、小さい子の場合は、テストに絵カードを使うので、指差しで答えることが可能です。

息子はというと、5歳3ヶ月の時に言語療法士に会いました(緘黙になってから10ヶ月後くらい)。息子を別室に呼び出して、1対1で言語テストを行なったようです(学校の手違いで、保護者の私達には事後報告でした)。

●言語テストの内容 Derbyshire Language Scheme Picture Test使用

A) 注意力&聞く力

視線は合うか、集中力はどれくらいあるか、指示に従えるかなどをチェック(社会性やコミュニケーションスキルもチェックしていると思われます)

B) 話し言葉に対する理解力(英語)

絵カードを使って、理解力のレベルをチェック

B) 話し言葉(英語)

絵カードを使って、話し言葉のレベルをチェック

テストでは指差しOKですが、息子は初めから囁き声がでたようでした。この当時、仲の良い友達ひとりに囁ける程度まで回復していました(放課後、友達を家に呼んで遊ばせる”Play Date”が効果的でした)。また、TAと1対1の読本の時間(15分)には、小さな声が出せてました。

言語療法士からの報告書によると、テストは絵カードを中心に、それほど難しくないものを選んだとあります。この頃には、既に私からSENCO(特別支援コーディネータ)へSMIRAの資料を提出済み。緘黙児は試されることを嫌い、それが解ると不安が増すことを考慮して、遊びに近いテストにしてくれたようです。

結果を聞いて笑ったのですが、私の苦手な前置詞や冠詞の使い分けができてないと…。当時、英会話の相手はほとんど私だったので、そのせいですね(反省)。それから、時々文章中で動詞が抜けるとも。基本的なことは理解できているし、文章で答えられるけれど、年齢に見合う言語能力があるかどうかは、将来きちんとテストする必要があるということでした。

別のエントリーで詳しく書きたいと思っていますが、息子の場合は既に発達テストを済ませていた(発達障害ではないという結果でした)ため、心理士への紹介はありませんでした。

う~ん、これでは初めて会う言語療法士が、緘黙児に学校で適正な言語テストをすることができるかどうか、の答えになってませんね。

ただ、日本では学校と家庭、相談機関、医療機関が連携していないところに問題が潜んでいるように思えます。学校、家庭、専門家から見た子どもの全体像がちゃんと把握されているのかな、と…。

それから、日本の学校とか病院とかの公共施設って、とってもよそよそしい感じがするんですよね。イギリスの小学校に行ってみて驚いたのは、校舎の壁に子どもの達が描いた壁画があったり、教室はもちろん、学校のあちこちに子どもの作品がいっぱい飾ってあって、ものすごくデコラティブ(笑)。これも、それほど緊張せずに言語テストができる理由かもしれません。

教室では、通常6人程度のグループ別に席が設けられ、授業によって席を変えたり、ホワイトボードを使った授業では、全員がカーペット敷きの床に座って学習することも多いです。インファントと呼ばれる幼児部(5~7歳)では、自分の机はありません。ジュニア(8~11歳)にあがると、やっと自分の机がもらえるのです。そして、教科書は学校においてあって、時々使う程度というのが驚きでした!

通常は6人くらいのグループで一緒に学び、全員で学習する時は床に座ることも多いですね。また、ロンドンでは人種のバラエティも豊かです。

イギリスの小学校の授業風景1(写真だけ参照してください)

イギリスの小学校の授業風景2(写真だけ参照してください)

どうですか?日本の小学校のように整然とした雰囲気とは、全く違いませんか?日本から駐在員のお子さんが転校してくると、よく「イギリスの学校は楽」と思うらしいんですが、本当にそういう感じなんですよ。先生もフレントリーだし(笑)。だから、イギリスでは緘黙児が緘動になりにくいのかな、とも思います。

あと、複数の心理士に訊いたんですが、発達障害、特にASDかどうかを見分ける時、イギリスではWISCのようなIQテストはしないようなんです。日本ではWISCの結果を見て、できることとできないことの凸凹が大きいと発達障害という風になってるみたいですが…。

私はどうしても息子の特性傾向が知りたくて、7歳4ヶ月の時に心理士にWISCテストをしてくださいとお願いしました。すると、「ASDかどうかをチェックするのは、別のテストです」と。そして、親子面談と個人面談(質疑応答の他、絵を描いたようです)でスクリーニングをした結果、年齢に合った社会性とコミュニケーション力があるという理由から、再びASDではないとの診断がおりました。

息子は感覚過敏で、苦手なこと、新しいことをするのにものすごく抵抗があり、私からみると、かなりこだわりが強いように感じていたんですが…。こだわり+感覚過敏=発達障害という図式ではないような…。自閉症の特徴である3つ組(想像力の障害+社会性の障害+コミュニケーションの障害)が組み合わさって、初めて発達障害となるのかな、と推測してます。

話があちこちにそれて申し訳ないですが、またまた次回に続きます。

 

日本では発達障害と見なされやすい?(その1)

仮説1: A)日本では場面緘黙が広汎性発達障害と診断されやすい傾向にある

まず、場面緘黙が疑われる場合、どんなルートで診断されるのかイギリスと日本で比較してみたいと思います。私はこちらでの経験しかないので、間違っていたらご指摘ください。

●イギリスの場合

通常、場面緘黙かどうかを見分けるのは言語療法士

まず言語療法士により、言語能力テストが行われる。発達に何らかの問題があるかもしれないと判断した場合は、心理士に連絡が行き、必要があれば発達テストが行われる。(”The Wandsworth Care Pathway for Selective Mutism” 参考。これは、ロンドンのワンズワース地区における場面緘黙治療のケアルートを示した資料です)。私の見聞きしたところでは、緘黙児が発達検査を受ける事はあまりないようです。

ちなみに、イギリスでも全国的に定められたケアルートや支援方法がある訳ではなく、地区やそれぞれの学校によって異なっているのが現状です。SMIRAの本拠地であるレスターシャー州と言語療法士マギー・ジョンソンさんが働くケント州では、特にシステムが整っています--というか、彼らが頑張って整えたのですが。同じロンドン市内でも住んでいるエリアや学校で受けられる支援がかなり違うので、宝くじのような感じですね…。

●日本の場合

場面緘黙かどうかを見分けるのは、児童相談所や発達センターなどの相談機関や医療機関に所属する医師または心理士、相談員(?)(正式な診断ができるのは医師のみ)

まず、保護者は相談機関を訪ねたり、学齢期の子どもの場合はスクールカウンセラーに相談することが多いという印象があります。そこで紹介されて、医療機関を訪ねることになるのかな?緘黙児にWISCなどの発達検査をする傾向が強い印象があるんですが、違っていたらご指摘ください。

………………………………………………………………………………………………

息子の場合は、学校側に場面緘黙の知識がなかったため、最初に小児クリニックの門を叩きました。ですが、通常は学校に言語療法士が来て子どもの様子を観察してから、言語能力テストをすることになると思います。イギリスでは学校と地区の医療機関が連携していて、特別支援教育を受ける子ども達のために、心理士や言語療法士などのセラピストが定期的/不定期的に学校に来てくれるのです。

言語療法士が学校でどうやってセッションをするかというと、授業中に子どもを連れ出して、別室で個別のアセスメントやセラピーを行なうんです。私にはとっても不思議なんですが、楽器の個人レッスンも各教師が学校へ出張してくるんですよね。授業を抜け出して15分~30分のレッスンを受けるんですが、勉強が遅れないか気が気ではありません。でも、それが普通です。地区の陸上競技会やコンテストなどでも、選ばれた子が授業を抜け出して参加したり…。

余談ですが、だからこそ子ども達は特別支援を受けている子どもに、それほど違和感がないのかもしれません。誰かが授業中に抜けるのが普通なので、「あっそう」という感覚なのかなと。教室内もいつもガヤガヤしてるし、基本的にグループ学習だし。その点では、日本で緘黙児が言葉の教室に通う方が、心理的に大変じゃないかなと思います。

長いので、ここで一旦切りますね。

関連記事:緘黙は発達障害なのか?

田舎の週末

夫の実家は、イングランド中部に位置するノーサンプトンシャー州のカントリーサイドにあります。義両親は海外転勤族だったんですが、退職後イギリスに戻り、かつてのサナトリウムを改築した家に落ちつきました。

家を買うときの第一条件が「景色の良いところ」だったそうで、庭のむこうにはのどかな田園風景が広がっています。義両親の住む村には郵便局が1軒とパブが1軒あるのみ。

最初は「うわ~、こんな不便な田舎で退屈しないの?」と思ったんですが、二人とも忙しくあちこちを飛び回り、とっても充実した日々を送っているよう。高速(無料)を使って2時間弱の距離なので、2、3ヶ月に一度くらい泊りがけで遊びに行きます。

IMG_2658ヴィレッジグリーンの向こうには藁葺き屋根の家

IMG_2662

雑貨店をかねた郵便局は村人の社交の場

IMG_2538庭の先は見渡す限りの田園風景。手前のバードフィーダーに野鳥がたくさんやってきます

義母の趣味はガーデニングと刺繍。以前はアロットメントと呼ばれる共同農園の一部を借りていたんですが、現在は自分の庭の小さな采園で満足してるよう。

IMG_2314

右から、りんごの木、レタス、アスパラ、紅花インゲン

IMG_2318
温室のブドウ。ここで花の種や苗をある程度育ててから庭に移植します

IMG_2309

窓辺に咲くイングリッシュローズ、ジェネラス・ガーデナー

近所には犬を飼っている家が多く、お隣にはゴールデンレトリバーが2匹。時々ブリーダーもやっていて、ちょうど私たちが行った時に、仔犬が生まれたばかりでした~。

IMG_2345初産のジェマちゃんが産んだ仔犬は合計9匹!

大英帝国が繁栄したヴィクトリア時代には、国中に鉄道ネットワークが敷かれたといいます。義両親の村の近くにも、1950年代まで蒸気機関車が走っていたとか。その廃線になった鉄道の短区間が、10年ほど前に地区のアトラクションとして復活。線路沿いにサイクリング&ウォーキングコースを設け、学校の休みや祝祭日などに機関車を走らせています。

古い施設を修復し、鉄道マニアのボランティアが運営しているので、オンボロ感は否めません。でも、の~んびり、ひなびた感じが、なんともいえずいいんですよね。緘黙の大人が趣味でこういうボランティアができたらいいのにな、なんて思います。

IMG_2596

年に数回の特別イベントで『機関車トーマス』がやってくる時は、家族連れで大賑わい。息子が小さい頃何度か乗ったんですが、実はプラスティック製のトーマスの顔を正面につけただけのハリボテ…それでも、子ども達は大喜びです。ファットコントローラーに扮したおじさんがクイズを出したりして、その手作り感覚が微笑ましいのでした。

IMG_2589ウォーキングコース沿いに厩舎があり、馬達がのんびり草を食べる姿が見られます

IMG_2618

線路沿いの植物からも秋の気配

IMG_2324

沿線で摘んできた野の花

緘黙は発達障害なのか?

 

子どもの場面緘黙を知った時、親がまず心配するのは「治るのか?」ということではないでしょうか?私はその次に、場面緘黙は発達障害なのかどうかがすごく気になりました。

というのも、息子が緘黙だった2005年~2008年当時、日本の多くの緘黙児に広汎性発達障害や発達障害の傾向があるという診断が下りていたからです。何となく、「場面緘黙=広汎性発達障害かそのスペクトラム」という風潮があったような気がします。そのことは、「場面緘黙とは?」(その2)でも触れました。

ちなみに、イギリスでは広汎性発達障害(PDD/Pervasive Developmental Disorders)という言葉は殆ど聞きません。昔、SMIRA代表のアリスさんと話していて、PDDという言葉が通じなかったことがありました。小児クリニック等での体験からいっても、こちらでは自閉症スペクトラム障害(ASD/Autistic Spectrum Disorder)を使うことが多いようです。現在では日本でもそうなりつつあるようですが。

掲示板や保護者会、講演会から判断すると、SMIRAでは純粋な場面緘黙児が主流という印象を受けます(残念ながら、どの程度の割合なのかは調査できていないそうです)。従って、自閉症スペクトラム障害の二次障害としての緘黙については、あまり話題になりません。子どもにASDの傾向ありとの診断がおりた、という話は割と例外的なのです。

「これはどうしてなんだろう?」と、長いこと不思議に思っていました。日本では広汎性発達障害を併せ持つ緘黙児が多くて、イギリスでは少ない--国によって違うのでしょうか?そんなはずはないですよね。他国においても併存のケースは聞きますが、日本ほど多くない印象を受けます。

昨年5月、マギー・ジョンソンさんのワークショップで質問してみたところ、「場面緘黙=ASDではない」という答えが返ってきました。でも、ASDを抱える緘黙児は一定数いるということ。詳しい数字は判らないけれど、その割合はそれほど高くないと思うということでした。特性に類似したところもあるため、ASD児への対応策が緘黙児にも効果的なことがあるとも(例えば、新しい場所や出来事に適応しにくいため、事前に予行練習をするなど)。

(アメリカ精神医学会のDSM -VやICD-10(国際疾病分類)では、自閉症スペクトラムや学習障害などがある場合、場面緘黙は二次障害として扱います。でも、マギーさんは併存の場合もあえて場面緘黙のカテゴリーに加えているそう)。

5年ほど前に、ロンドン大学で教育心理学を教えているトニー・クライン教授とお話する機会があったのですが、教授は「場面緘黙とASDは別」という考えでした。理由を訊くと、「どちらも不安が背景にあるが、不安の質が違う」ということ。(例えば、ASD児が先のことを想像できない不安に対して、緘黙児は先のことを想像して不安になる)。

クライン教授やSMIRAはDSMを基準にしているため、ASDと診断されている子どもは除外されていると考えられます。でも、SMIRAではASD児をスクリーニングしている訳ではないので、会員の割合のコントロールはできませんよね。

日本では、疑がわしいケースは広汎性発達障害と診断する傾向が強いのではないか?また、イギリスの学校ではASD児への支援が充実しているため、二次障害としての場面緘黙が出にくいのではないか、というのが私の仮説です。

また、場面緘黙の定義に注目すると、「話せる人とは年齢にあった会話力&ソーシャルスキルを持っていること」を前提としています。母親が子どもと日常会話を交わしていて、子どもが年齢にあった会話力&ソーシャルスキルを持っているかどうか、判断できるでしょうか?ごく小さい子ならわかりやすいと思うのですが、年齢があがってくると親とろくに話もしない子どもも多くなってきます。

日本語の持つ構造や「察し」の文化のために、子どもの会話能力やソーシャルスキル能力を判断しにくいのではないか、というのがもうひとつの仮説です。

あちこち話が飛んでしまいましたが、これからこの3つの仮設について考えていきたいと思っています。

関連記事:言語療法士マギー・ジョンソンさん

関連記事:ロンドン大学教育心理学教授トニー・クライン氏