黒海沿岸の春休み(その3)

ブルガリアの首都ソフィア、プロヴディフについで大きいのが、黒海沿岸にある都市ヴァルナ。ホリデーアパートのあるビャラ(海の白い崖から「白」という地名がついたそう)から車で北へ45分くらいの距離です。ブルガスに比べると洗練された雰囲気なのですが、友達曰く「方言がキツイ」とのこと。その北郊外にあるアラジャ岩窟修道院(Aldadzha Monastrery)に行ってきました。

 遠くから見るとこんな感じ(左)。崖に取り付けた階段を上って岩窟修道院へ

11~12世紀に確立された修道院は、その名の通り40メートルの断崖の洞窟を利用して造られたもの。2つのレベルに分かれていて、上層階には礼拝堂が、下層階には礼拝堂、修道士の個室、台所、食堂など20の部屋があるとか(全部は公開していないよう)。入場料は5レヴァ(約340円)でした。10年前訪ねたリラ修道院のように外国人料金を取られず、高感度大。

     上層階の礼拝堂の床には旅行者が投げたコインがいっぱい(左下)。天井と壁に当時のフレスコ画が残ってます。700メートルほど行った森の中にはカタコンベ(埋葬地+初期教会)も(右下)

狭いし、冬場はめっちゃ寒そう…こんな不便なところで自給自足しながら何十人もの僧が修業を積んでたんですね。村上春樹の『雨天炎天』では、ギリシアのアトス半島でダイハードな修行生活を送るギリシア正教徒が描かれているんですが、多分似たような感じだったんだろうなと想像しました。

それからヴァルナの海辺に移動して、持参したサンドイッチやチーズでピクニック。やっぱり定番のキュウリとトマトが美味しかったです。その後、観光スポットをブラブラ巡ってから帰途につきました。

  

    街のシンボル的存在、ブルガリア正教会の生神女就寝大聖堂(中は撮影不可でした)。シーガーデン近くは歩行者天国

    復活祭で閉館していた海洋博物館の灯台。アイスはやはりヨーグルト味が美味。右はヴァルナを中心に、世界の都市名が刻まれたプレートの地図

夕方アパートに帰りつくなり、「さあ、もう一度海に行くぞ」と走っていった息子と友達。私もお茶を飲んでから行こうと思っていたら、ほどなくして戻ってきました。「潮が満ちて海岸がなくなってた~!」とのこと。

  

窓からのぞいたら本当でした。残念

ところで、前日卵を2ダースも買いこんできて不思議に思っていたら、ブルガリアではゆで卵を着色して絵を描いたり、模様を入れたりするのがイースターの風習なんだとか(イギリスでも子どもが絵を描き、転がしてぶつけ合います)。「今夜茹でておくわ」というので見ると、何とデッカイ鍋で24個全部茹でるって…。「別の卵料理を食べたい人がいるかもよ?」と言ってみたんですが、聞く耳持たず。この後、マッシュポテトに卵を入れようとした夫が激おこでした…(共産主義の時代を経験したから、自己主張が激しくなったのでしょうか?)

 

   翌朝、植物性の染料で卵を着色。イラストレーターでもある彼女の作品はさすが!

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ブルガリア黒海沿岸の春休み(その1)

ブルガリア黒海沿岸の春休み(その2)

黒海沿岸の春休み(その2)

旅行3日目、首都ソフィアに住む友人家族が車でホテルまで来てくれました。「朝早く出て午前中に着く」とのことでしたが、到着はやっぱり2時過ぎ。10年前にソフィアで会った際、「彼が15分と言ったら1時間かかる」ことを体験学習したので、我々は近所のレストランでランチしながら待ったのでした。

頑固なダンナさんはIT関係、奥さんは編集の仕事をしていて、とっても可愛いひとり娘は6歳。2年ぶりの再会を喜び合った後、彼らの車に乗り込み、ブルガスの町で休息してから黒海沿いの1本道を北上しました。途中、大規模な道路の舗装工事をしていて、砂埃をあげながら20分ほどノロノロ運転…。スーパーで食料を買い込み、イザ海辺のリゾートタウン、ビャラ(Byala)?へ。

黒海のリゾート地は、町中から海岸までホテルやショップ、大規模なリゾートコンプレックスが立ち並んでいるんですが、オフシーズンなのでどこもゴーストタウンのようでした。

 Byala の海岸に建つホリデーアパート群

我々が借りた海辺の高級アパートも、30室以上はあると思うんですが、我々と管理人の他は誰もおらず…。実は、予約の際に4軒断られ、かなり高めのアパートを借りることになったのでした。(ホリデーアパートはブルガリア人のセカンドハウスだったり、ロシア人の投資だったり。オフシーズンは管理人もいない所が多く、短期に貸すのは割に合わないよう)

         

でも、ここが大当たり!玄関と同じフロアにあるんですが、切り立った崖の上に建っているため海側から見ると5階なんです。海岸までぐるっと回って2分と至近距離で、しかも人気がないため、殆どプライベートビーチの感覚!こんな贅沢、めったに味わえるものではないですよね。

アパートから海岸へと通じる階段と道

翌日は時間が過ぎるのも忘れて、海岸を思う存分散策。友だち夫婦の案内で、岩がゴロゴロしているワイルドな場所までどんどん歩きました。彼らは何度かこの地区に来たことがあって、観光マップにない場所をいっぱい知ってるのです。

海を向いて左側と右側の風景。真ん中は頑固ものの友人

左側を行くと岩場になっていて、自然の彫刻があっちにもこっちにも

友人(奥さん)曰く、「三つ胸岩」と「トンガリ崖」

知らない間に海辺で4時間ほど過ごし、アパートに戻ったら久しぶりに眩しい光を浴びたせいか頭痛が…。遅い昼食の後、6歳のSちゃんは長いお昼寝、男性陣は昨日のスーパーへ買い出し、女性二人はおしゃべりしてシャワーを浴び、のんびりダラダラの一日を過ごしました。

こういう気分になったのって、もしかして子どもの時以来かも…。時間も何も気にすることなく、なんの目的もなく過ごす一日って、実はものすごい贅沢なのかも。今現実に戻って、つくづくそう思います。

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ブルガリア黒海沿岸のホリデー(その1)

黒海沿岸の春休み(その1)

学校の春休みを利用して、4月3日から10日までブルガリアの黒海沿岸に家族旅行してきました。うち4日間は海辺のホリデーアパートを借り、ソフィアに住むブルガリア人一家と合流。「4月はまだオフシーズンで店は半分以上閉まってるし、まだ寒くて天気が悪いよ」--事前にそう言われて覚悟してたんですが、信じられないほどの好天に恵まれ、殆ど人気のない海岸でめっちゃノンビリできました。

 

まずは、曇り空のイギリスからハンガリーの格安航空会社Wizz Airで黒海沿岸のリゾート、ブルガスへ。夜ホテルに到着してレストランで食事したら、イギリスの物価の半分以下でした。後でわかったのですが、特にここは安くてお得感満載。

  

   夕食にポテトとチキンのグリル・チーズ焼き(約400円)を選んだら、ポテトグラタンでした。朝食に必ず出てくる大切りのキュウリとトマトは、元気いっぱいの味

ブルガスはブルガリアで4番目に大きい人口20万人ほどの都市ですが、オフシーズンのためか人はまばら。5月からの観光シーズンに備え、歩行者天国になっている目抜き通り周辺では大規模な道路工事中でした~。

     

   アレキサンドロフスカ通りにそびえ立つソヴィエト軍の記念碑。共産主義国(1946~1990年)だった名残が感じられます。右のアメリカンチャーチは厳かな雰囲気でした

街の観光スポットは、駅前のアレクサンドロフスカ通り(歩行者天国)周辺と公園(シーガーデン)のある海辺に集中しています。通りをブラブラ歩きながら、行き当たりばったりで教会や博物館巡り。民族学博物館で割引チケットを勧められ、3博物館で8レヴァ(約540円)を選ぶことに。「息子さんは子供料金2レヴァ(約140円)の方が得よ」と、すごく親切でした。

            

    聖キリル&聖メトディウス大聖堂に入ったら、衣装を着た子供たちが合唱中。ブルガリアのイースター(イギリスの2週間遅れ)の行事だったよう

民族学博物館では、トラキア、スラブ、ブルガリア文明から受け継がれたモチーフが共存する各地の民族衣装を見学。ヨーロッパとアジアが繋がる位置にあるため、東洋からの影響やオスマントルコ帝国時代の名残も。工夫を凝らしたお祭りのパン各種がユニークでした。

          

     左の衣装をつけた独身男性は「クケリ」と呼ばれ、立春前に村や町に繰り出して悪霊を退治するんだそう。右は悪霊を払うハーブの束。日本の節分と似てますね

     

   なかなか充実度が高かった考古学博物館。紀元前6世紀末の赤絵式と呼ばれる古代ギリシアの陶器類もありました。ガラス器は古代ローマ時代のもの?

アレキサンドロフスカ通りから海岸までは、歩いて5分ほど。海岸沿いに続く公園、シーガーデンの近くのレストランでランチを済ませ、午後は海岸と公園でのんびり。行きは市営バスで街に出ましたが、帰りは運動もかねて2つの公園を通り抜け、30分ほどかけてホテルまで歩きました。

      リゾート地の食事はギリシア風?グリルもしくは唐揚げの魚や肉に、ポテトなどを添えたシンプルな料理が多かったです

      

     黒海と呼ばれるだけあって、深緑っぽい海。桟橋を渡って展望台(?)まで行くと、柵には何か書かれた錠前がいっぱい。恋人たちが変わらぬ愛を誓って錠を締めて行くようです。空気が澄んでいるためか陽射しがまばゆい

ところで、公園の木の枝先には、赤白の糸で作られた紐ブレスレット(?)がたくさん結ばれていました。ブルガリア人の友人に訊いたら、「マルテニッツアМартеница」のお守りで、2月頭から3月1日まで露店やショップで大量に販売するそう。3月1日はマルテニッツアの祝日で、春の始まりに幸運と健康を祈って、赤白の人形を胸につけたり、ブレスを手首に巻いたり。そして、果樹の花が咲く時期に、木の枝に結び付けるんだとか。

  

最近はナイロン製の輸入ものが増え、ビーズや金属・プラスティック製のチャーム付のものが流行中――伝統的には毛糸などの天然素材で作り、木に結び付けたお守りは鳥が巣作りに利用することも。「環境にやさしい風習だったのに、ちょっと残念」と漏らしてました。こんなところにも、商業主義の波が押し寄せてるんですね…。