マギー・ジョンソンさんの新しい実用書

もう10月もあと3日で終わりですね。イギリスでは昨夜時計を1時間進め、夏時間から冬時間へと切り替えました。ということは、日暮れが1時間早まる訳で、どっぷり暗い季節の到来…。暗くて長いイギリスの冬の始まりです。

雲の晴れ間に急いでお散歩。変わりゆく季節の風情を楽しんで

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イギリスで緘黙治療の第一人者と呼ばれ、専門家や一般の教育・支援に貢献してきたSLTのマギー・ジョンソンさん。マギーさんがアリソン・ウィンジェンズさんと共著した『SMリソース・マニュアル第二版』は緘黙治療のバイブルと呼ばれ、このマニュアルに沿って治療プランを立てるのがイギリス式です。

そのマギーさんが今年5月に『保護者や専門家のためのワークブック The Selective Mutism Workbook for Parents and Professionals』を出版。今回は中国の支援協会の代表、ユジュンファ・ライトマンさんとの共著です。世界中の保護者や教育者たちの協力を得て、15の基本戦略と43の活動方法を詳しく解説。学校や家庭ですぐ実践できるスモールステップ法やアイデア、アドバイスが詰まった実用書となっています。

出版を記念して、教育コンサルタントのキャシー・ウエストン博士のポッドカストに出演。その中で印象に残ったマギーさんの言葉やアドバイスをご紹介します。

ポッドカストはSMiRAのサイトからリンクされています: http://www.selectivemutism.org.uk/videos/

場面緘黙とは?

場面緘黙を説明する時、よく「話せないこと failure to talk」というフレーズが使われますが、子ども自身はどう思っているのか?

以下はマギーさんが緘黙の子どもやティーンから直接聞いた言葉です。

「(特定の人の前で)話すくらいなら、死んだほうがマシ」

「どんなに頑張っても声が出ない。まるで話す能力を奪われたみたいに」

「ものすごく怖くて身体が凍りついてしまう。そんな時に誰かに話せなんて言われたくない。月曜日になると頭が痛くて、家を出るのが嫌でたまらない」

「どうして話さないのか訊かれることに耐えられない。頭にピストルを突きつけられて『喋るな!』と言われる方がずっといい」

「母が私の味方をせずに、周囲に難しい子・扱いにくい子と思わせたことを決して許せない。本当に母が大嫌いだった」

「話せない」の影で、子どもたちはこんなに深刻な心理状態に陥っている…。

場面緘黙は成長したら治るものではなく、本人が話す不安に立ち向かい、少しずつ克服しなければならないというのを証明するよう。保護者や専門家、クラスメイトに真に場面緘黙を理解・支援してもらえる環境が整うことがベストですが、そうはうまく行かないのが現実。それでも、少しずつでも支援環境が変わっていくことを願うばかりです。

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提示カード作成をステップに場面緘黙を克服

あっという間に10月も半分過ぎてしまいました。欧米では今月が場面緘黙の啓発月間。でも、イスラエルとハマスの大規模戦闘が始まってしまい、世界中がその緊迫したニュース一色に染まっている感じですね。犠牲になるのはいつも一般市民、一刻も早く戦闘をやめて欲しいです。

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どうしても言葉が出ない時、自分が場面緘黙だということを理解してもらうために提示できるカードをご存知でしょうか?上記のカードを考案したのはエリザベス・ヘルプスさん。自身も場面緘黙でしたが、カードを作成することで回復への第一歩を踏み出すことができたとか。

エリザベスさんは現在29歳。場面緘黙と診断されたのは16歳の時でしたが、それまでずっと軽度の緘黙症状を引きずっていました。「大人しくて目立たなかったから、問題にされなかったのかも」と振り返ります。

診断が下りた頃には症状が悪化していて、ほんの一握りの人にしか話せない状態だったそう。それから事態は更に悪化し、数年後には誰とも話せない全緘黙に。家族とも、ペットのうさぎとも話せない時期が3年も続いたというのです。

そんなエリザベスさんが直面した問題が、話せないために「失礼な人」と誤解されること。自分を理解してもらうために、自分と同じ様に緘黙に苦しむ人たちのために、25歳の時にカードを作成しました。それを場面緘黙のグループに紹介したところ、当事者や保護者から「私も欲しい」と声がかかるように。

「私には言葉が出にくくなる場面緘黙という不安障害があります。言っていることは理解できますが、返事ができないかもしれません」

自らカードを使ってみて、「相手は返事を期待していない」と思えるだけでプレッシャーが減り、人と接することが楽になったとか。不安が減ったこと、仲間に共感してもらえたことに勇気づけられ、少しずつ場面緘黙を克服していくことができました。

現在は場面緘黙を引き起こしていた病院という場所で、週に数時間ボランティアができるまでになっているとか。本人いわく、「緘黙をほとんど克服できた」といえる心境だそう。

プラスティック製のカードは名刺タイプとネックストラップ付のタイプがあり、デザインはそれぞれ4種類ずつ。当事者用と子どもにつけさせる保護者用があり、今ではアメリカやスウェーデンなど海外の購入者も増えているとか。

緘黙児/ 緘黙の人は自分から行動を起こすのが苦手です。緘黙を理解してもらうのもそうですが、まず勇気を出してカードを提示してみることが小さな一歩につながりそう。提示カードがコミュニケーションを取るためのツールになればいいですね。

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