カタツムリとの闘い 

5月も今日でおしまいです。5月最初の週末、久しぶりに主人と散歩に出かけ、帰りがけにガーデンセンターでクレマチスを買いました。というのも、昨年すくすくと蔓を伸ばしていた淡いグリーンの八重咲きが、どういう訳か途中で折れて枯れてしまったからでした。

今回選んだのは、剪定が簡単で手もかからないクレマチス・アルピナ。マクロペタラという名のモーヴ系ピンクの花は、切り花にもうってつけの感じ。よくばって蕾がたくさんついたのを購入し、1本だけ伸びていた蔓をフェンスに這わせることにしました。

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で、翌朝見てみると、蔓の先っぽの新芽がナイ!あれっ?? でも、蕾だった花が咲き始めて、なかなかゴージャスです。

2日目の朝、新芽の横についていた葉っぱもスッカリなくなり、やっとのことで「あ~、虫に喰べられたぁ!」と気づいたのでした。しかし、他のクレマチスは全く大丈夫なのに、なんで新しく購入した花だけが??

IMG_6285せっかく伸びはじめた蔓が、こんな姿に…

どうやら犯人はカタツムリ、もしくは私の大嫌いなナメクジらしい…(よく考えてみたら、昨年枯れてしまったクレマチスもカタツムリにやられたんですね)。急いで土にまく粒上の駆除剤を買いに走り、ネットで「カフェインを嫌うから紅茶をまくと良い」というアドバイスを見つけて、さっそく実行。よせばいいのに、上からたっぷりかけてしまいました。

翌朝、おそるおそる庭に出てみると、ひょえ~っ!地面には大きなカタツムリ3匹と小さなナメクジが2匹、そしてフェンスには3cmくらいの茶色い毛虫が…!背中にゾゾっと悪寒が走りましたが、なんとかせねばなりません。夫と息子は朝の支度で忙しく、すぐ来てくれそうにないし…。仕方なくキッチンから長めの割り箸と袋を持って来て、虫たちを箸でつまんで袋へ。

「私の大事なクレマチスが~!」と、息子に訴えたら、「マミー、自然のままにすべきだよ。虫も生きなきゃいけないんだから、自然淘汰だよ」と…。小学校の頃からエコロジーやフェアトレードを教え込まれているせいでしょうか?とっても冷たい答え。でも、頼みこんで虫入りの袋だけは外のゴミ箱に捨ててくれました。

それからは、あらかじめ割り箸と袋を持って庭に行き、カタツムリ+αの袋詰めを外のゴミ箱に捨てる毎日です。雨が降ると、10匹以上の収穫(?!)があるんです~。もしかしたら、芽を食べてしまったのはケムシかもと思い、ケムシを退けるという白い粉の除虫剤も購入。花が咲き終わったクレマチスの葉っぱに、いっぱいふりかけたのでした。

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5月中旬には天候が崩れて、いきなり霰が降りました~

蔓の芽を喰べられ、全体に紅茶と白い粉を振りかけられた可哀想なクレマチスは、なんとなく茶色っぽくなり、急速に元気をなくしてしまいました…。終わった花を全部カットして、肥料を少しあげたんですが…。

カタツムリとの格闘に入ってから2週間半ほど経過しましたが、葉っぱだけになったクレマチスは元気のないまま。でも、よ~く見たら硬い木の部分から、小さな芽が出ているのに気づきました。葉っぱだけ?それとも蔓になる?

それを確かめる前に、息子のハーフターム(1学期の中間休み)がやってきて、義母が手を負傷したとSOSが。息子と一緒に1週間夫の実家に滞在することになりました。

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義母はガーデニングが趣味なので、広い庭は花盛りでした

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これはチャイブの花

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窓辺のイングリッシュローズ、ジェネラスガーデナーは今年も元気。今日一番花が開きました

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昨日は天気が良かったので散歩に出かけ、義母に野の花をプレゼント

夕方、ロンドンに戻ってきたら、夫が水やりを忘れたため窓辺の4つの鉢うえのうち、3つが枯れていました…。中庭の花にはタップリ水をやってくれたらしいんですが。

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ビオラさん、さようなら…

そして、気になっていたクレマチスを見に行くと、1週間の間に紫陽花のアナベルが勢いよく伸びて、今度は陽が当たらないという問題が出てきそうな…。

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1週間前に見つけた芽はちゃんと葉っぱに育っていましたが、蔓ではないみたい…。今日はカタツムリが3匹。闘いはまだまだ続きそうです。

 

 

学校での支援体制

昨年から途切れ途切れに掲載してきたマギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンへの支援』も、あと2回ほどでおしまいです。マギーさんが所属するケント州のNHS(国民保険サービス)トラストでは、この支援が大きな効果をあげているよう。支援者が専門家に相談できるシステムが整っているのが、何といっても強みといえます。イギリスでも住む場所によって支援サービスが全く異なるため、マギーさんのいるケント州やSMIRAのあるレスター州を羨む保護者が多いのが現状です。

《緘黙に苦しむ小学校中・高学年&ティーンへの支援》

場面緘黙アドバイザリーサービス 言語療法士マギー・ジョンソン著/ ケント州コミュニティヘルスNHSトラスト

内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。なお、年が上の子どもへの支援は、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』の第二版(2015年春/夏出版予定)に新項目として掲載される予定です。

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その15)

4. 家庭と学校の協力的な環境

学校職員全体の教育を

  • 個別教育プラン(Indivisual Educational Plan)の作成(定期的に見直し、ターゲットを更新)
  • リスク要因も含め、職員会などで子どもについて話し合う
  • 場面緘黙のDVD(『場面緘黙へのアプローチ』など)を利用し、関係者の理解を深める
  • 支援原則を学校全体に浸透させる — 最初は言語コミュニケーションへのプレッシャーを取り除く(話すことを期待せず、機会として捉える)
  • 全ての活動に参加させる
  • ひとりの支援者が継続して関わり、言語による参加を徐々に増やせるようコーディネートしていく

主となる支援者/学校職員をひとり決める

  • 緘黙の生徒と定期的にコミュニケーションを取る(直接的/間接的)
  • クラスの状況を監視する
  • 子どもの不安度(快適度)を確認
  • 職員間で支援策を決め、協力しながらそれぞれが貢献していく

学校での基本的な方針

  • 必要であれば、1対1もしくは小グループで話す機会を設ける
  • 学校内に安心できる場所を与え、ランチタイムや休み時間に孤立しないようにする
  • 苛めがないよう徹底管理する(生徒が報告するまで待たない)

みく注: 通常、支援プログラムは学校もしくは家庭で行います。実際にはとても難しいですが、プログラムを始める前に、まず子どもを取り巻く学校と家庭での環境 — 対人関係はもちろん、授業や休み時間に不安なく過ごせ、家庭ではリラックスできる環境を整えておくことが望まれます。特に、思春期の子どもは傷つきやすいため、予め子どもにどのように対処して欲しいかをきくことも大切ではないでしょうか。

緘黙が起こる主な場所、学校の環境は本人にとって死活問題。頼れる大人がいて、自分の教室以外に逃げ場があると随分違うと思います。ただ、緘黙児は自分から動くことが難しいので、声をかけたり、誘導してもらえると心強いかも。また、先生全員に子どもの特徴や支援策を知らせ、学校全体で取り組むことも大切ですね。中学校以上だと科目によって担当教師が変わり、より多くの先生と接することになります。それぞれの先生が子どもに対して一貫した態度・支援方針を取ることが、子どもの心の安定に繋がるかと思います。

公的な試験に際して

  • 試験をする際の配慮

緘黙の子どもは、試験時間の延長(うまくできるか/間違えるかもという不安からスピードが落ちるため)、及び普段教室で使う用具や学習環境、特別教育プラン(IEP)に記されている用具等の使用を認められる権利を持つ

(例)

  • 録音やビデオの使用
  • 小グループ、または単独試験官による試験
  • 外部の試験管でなく、馴染みの先生による試験

みく注: 症状が場面緘黙のみだと、イギリスでも試験の際の特別な配慮は困難です。例えば、ディスレクシアなどの学習障害を抱えている場合は、特別な用具の使用などが認められやすいのですが…。長期間緘黙が続いている子どもの中には、問題を解くスピードが遅かったり、動作自体が鈍かったりする子もいるようですし、実技や口頭試験が難関となることも多いでしょう。他の子どもとのかね合いや学校の方針もあるでしょうし、とても難しい問題だと思います。

次の段階(中学、高校、大学、専門学校、就業研修など)への計画的な移行

  • 新しい環境に慣れるための準備
  • スタッフの教育
  • 家庭訪問の回数を増す(相互協力 ― 3月に新担当者が学生を訪ねることを検討)
  • 16歳以上の子どもには、将来にむけた計画を立てる

専門家間のネットワーク

学校/家族用に個別教育プラン(IEP)の評価ミーティングをする際、言語聴覚士や教育/臨床心理士などの専門家を交えるとより有効

  • 支援活動をうまく持続するため、目標ターゲットや戦略を定期的に見直し、更新することが不可欠。記録を取る係を決めておくこと
  • 通常アセスメントのフレームワーク(CAF)または(教育的ニーズの)ステートメント
  • 16歳以上の子どもに対する特別支援
  • 関連チャリティ団体へのアクセス

みく注: 日本では特別支援制度がどの程度浸透しているのか私には判りませんが、IEPを作成して関係者が定期的に会合するというところまではいってないのでは?(文部科学省のサイトで、平成19年度に作成された「特別支援教育の推進について(通知)」を見つけました。基本的には、個別指導計画(IEP)の作成を推進しているようですね。 

http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/07050101.htm)。

イギリスでも学校によって緘黙児に対する支援の体制・程度は本当にまちまちです。ただ、特別支援の対象になれば(通常は何か問題があれば、診断が下りてなくても対象になります)IEPの作成が義務付けらるため、何らかの支援は受けられるはず。また、保護者が関わることによって、SENCO(特別支援コーディネーター)と担任との連携も強くなるような気がします。緘黙児は問題をおこさないため放っておかれがちです。また、緘黙期間が長ければ長いほど、担任も保護者もどうにもできないと思いがち…。保護者から学校への働きかけが必須になるかもしれません。

 

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ひと足遅れの花便り

4月上旬に日本から戻ってきたら、知らないうちに中庭の植物たちがぐ~んと成長して、緑いっぱいになってました。全く手入れせず、肥料もあげてなかったのに、植物って健気ですね。

バタバタ忙しくしている内に季節が駆け足で過ぎてしまいましたが、今年の春の風景を少しだけおすそ分けします。

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4月中旬の日曜日の夕暮れ、家に帰る道すがらふと空を見上げると、まだ青い空に薄い月が出ていました。散りかけの桜の大木の下を通ったら、冷たい風とともに花びらがはらはら。

IMG_20150428_193059偶然桜の花吹雪みたいな写真が

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     今年はぼんぼりのように咲くロンドンの八重桜の季節を見逃してしまったよう…。でも、代わりに知人宅でりんごの花を満喫しました

うちの小さな中庭で一番早く花を咲かせるのは、フェンスいっぱいに蔓を巻きつけているアケビの花。今年は、その蔓にアルピナ系のクレマチスも加わりました。実は、タグの写真についていた葡萄色の小さな花が気に入ってアケビとは知らずに苗を購入し、後で「フェンスにあの不思議な実がいっぱいぶら下がる?!」と後悔したのです。でも、4年経っても一度も実をつけません(ほっ)。

IMG_6273目を凝らすと、濃い臙脂色のアケビの花も見えます

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アケビというのは不思議な植物で、ひとつの株に雄花と雌花が別々に咲きます(雄雌同株)。写真の大きい方の花(実際は萼)が雄花で、右側の小さいほうが雌花。昆虫によって受粉するらしいのですが、うちの庭では4月に蜂は見たことないし…。

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昨年植えた白い花たちが一気に増えてました。花にも本当に色々な個性がありますね。

 

『私はかんもくガール』―場面緘黙児のなんかおかしな日常って?

今年2月に出版されたコミックエッセイ『わたしはかんもくガール』(合同出版社)は、元緘黙児でイラストレーター&2児の母親でもある、らせんゆむさんの作品です。(実は、私も帯のお手伝いさせていただきました)。

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もう読まれた方も多いと思いますが、今さらながら感想を。まず最初に思ったのは、やはり日本のコミックカルチャーはすごい!ということで、文字だけだと判りにくい緘黙児や抑制的な気質の子どもの気持ちや態度、表情などがつかみやすいですね。苦悩の末、どんな風に緘黙を克服し、後遺症と戦ったかをユーモアたっぷりに綴っています。

らせんさんが緘黙になったきっかけは、幼稚園に入園したこと。初めての公の場で緘黙になる子どもは多いですが、それ以前の3~4歳の段階で自ら「外ではしゃべらなくていい」と決心するなんて…とても早熟で利発な子だったのでしょう。そして、とても感受性が高かったんじゃないでしょうか?それゆえに、家庭環境からの影響も強く受けただろうと想像されます。

私は所属しているTAエージェントでも、ボランティアをしていた特別支援校でも、愛着論理(Attachment Theory)の研修を受けました。乳・幼児期に少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持できないと、子どもは社会的・心理的な問題を抱えるようになるというものです。Wikiの愛着論理の説明: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E7%9D%80%E7%90%86%E8%AB%96

両親が喧嘩をしていると、子どもは自分のせいではないかと不安になります。その上、無条件で愛してくれるはずの母親が、時として自分を否定するような言動を取るというのは、めちゃくちゃ辛くて混乱することだったに違いありません。

軽妙なタッチで描かれていますが、緘黙と家庭での問題がダブルでのしかかり、それを自分だけで克服していくのは本当に、本当に大変だったと思います。

学校で話せない緘黙児は、同世代の子ども達や大人とコミュニケーションを取ることが難しく、社会的な体験を積む機会が失われがち。学校は子どもが社会性を培い人格を形成していく集団生活の場でもあるので、長く緘黙していると社会性の発達に支障をきたし、いわゆる「後遺症」が残ってしまいます。ちなみに、緘黙に限らず、話し言葉、言語、コミュニケーションに難しさを持つ子どもは、心理的・社会的な問題を抱えやすく、その影響が態度やふるまいに反映される傾向が強いようです。(2年ほど前、『Supporting Children with Speech, Language & Communication Needs』というコースで学びました)。だからこそ、家庭が安心できる場であり、のびのびと過ごせる環境であることが望まれます。

ゆむさんは社会人になってうつ状態になった時、自らクリニックに通い、たくさんの本を読んで思考を転換する強さを持っていました。そして、「母も母なりにしんどかったんだろうなあとは思う」、お父さんと旅行した際「初めて父の心境や苦労を聞けた」と、不安や怒りを浄化し、過去を受け入れて親に思い遣りを持つまでに自分の気持ちを整理できたよう。すごいことです!

ゆむさんを支えていたのは、「好きなこと」で培った自信だと思います。「やりたい」ことへの情熱と追求心は半端なく、苦境を創作意欲に変えてきた面もあったでしょう。もともと才能があったところに、努力を積み重ねて希望する職業に就き、色々な人と関わって自信をつけていった結果、緘黙もうつも克服できたのではないでしょうか。

「好きなこと」「得意なこと」の力ってすごいなと、改めて思いました。

それと、私も母親なので、読んでいてお母さんのことが気になりました。彼女は彼女なりに娘のことを愛し、心配していたのではないかな?好きな習い事を続けさせたり、美術系の高校に進学させたり、ゆむさんの個性を尊重し才能を認めていたと思います。ただ、自分が問題に直面すると、その不満のはけ口が自分より弱い存在である子どもに向かってしまった…特に攻撃しやすい対象だった長女のゆむさんに…。

そういう私も、時々息子に怒りを爆発させてしまいます。何かにつけて慎重な性格なので、「早く!早く!」とガミガミ急がせることもしょちゅう…注意しないといけませんね。緘黙支援をしている時、子供や自分のことで悩んでいる時、のめり込んでしまってどうしても視野が狭くなりがちかと思います。母親にも話し相手や息抜きがとても大切ですね。

*ここ数日間サーバーがダウンしていて、ブログへのアクセスができない状態でした。もしアクセスしてくださった方がいらっしゃったら、どうもすみませんでした。