2019年SMiRAコンファレンス(その3)ASDとは何か?

<自閉症スペクトラム障害(ASD)とは何か?>

「自閉症とは生涯にわたる発達の障害であり、他者とのコミュニケーションの仕方、関与の仕方、周囲の世界に対する感じ方に影響を与える(英国のASD支援団体National Autistic Societyより)

すべての自閉症者は共通する3つの特性を持つ TRIAD(三徴候)

• すべての自閉症者は、社会的なコミュニケーション、社会的な関わり、思考の柔軟性(想像力)に困難を抱えている
• すべての自閉症者は、感覚の違和(感覚過敏)を持つ
• 自閉症は広汎にわたる――その人が世界を見、関わり、経験する方法に影響を与える。それは恣意的にスイッチを入れたり、切ったりできるものではない。

クレアさんによる自閉症のアイスクリームサンデー・モデル

(ASDをアイスクリームサンデーに例え、実際に会場で作りながら説明してくれました)

  • アイスクリームの器:脳
  • 3種類のアイスクリーム: ASDの3つの特性
  • バニラ:社会的コミュニケーションの困難
  • ストロベリー:社会的な関わりの困難
  • チョコレート:思考の柔軟性の困難(想像力の欠如)
  • アイスクリーム全体にかけられたシロップ: 感覚の違和(感覚過敏)
  • ウエハース:*表出する行動・言動

アイスクリームは必ず3種類あることが定義。かけられたシロップの濃度や分量は人によって異なるが、行動・言動に影響を与える。

みく備考:

注意していただきたいのは、はっきり見えるのは*行動・言動 / ウエハース部分のみということ。感覚過敏 / シロップ部分は、本人も明確に説明できないため、保護者や周囲がよく観察し、対処法を考える必要があります。

ひとくくりにASD児・SM児といっても、各自それぞれ違います。私はここ5年ほど高機能ASDのティーンたちに日本語を教えているのですが、本当に個性も行動パターンも千差万別。ASDの3つの特性で判断といわれても、スペクトラム状になっていて明確な境界線がないため、解り難いと思います。

高機能自閉症専門の特別支援学校で会うティーンの中には、ぱっと見ただけだと「この子本当にASD?」と思える子も。ぴょんぴょん跳んだり、手をひらひらさせたりというような目に見えやすい常同行動がない子が多く、あっても中学生くらいになると目立たなくなる傾向にあるような…。

何度かやり取りすると、「あれっ?」と違和感が強くなり、その子独特の行動パターンが見えてくるという感じです。普通の公立校で学校生活や友人関係に支障をきたし、転校してくる子も多いよう。数は少ないですが、小学校高学年までASDと診断されなかったケースも。

幼少期にASDを疑われなかった子どもは、高機能(アスペルガー)でそれほど言葉に問題がない子が多いのではないでしょうか?学校でそれなりに順応できていれば、発見されにくいと思います。家族は一緒に暮らしている年月が長いため、子どものコミュニケーション方法や行動パターンに慣れてしまい、それを「個性」ととらえがち。「何か変だな」と思いながらも、問題が起こるまで受診しないことも多いのでは?

確かに、ASD児の行動パターンはその子の「個性」ですが、早く気付いて支援を受けることができれば、日常生活の困難さや生きづらさを改善できます。成長の過程で、自己肯定感や自尊心を培うことができないと、自己評価が下がってしまい、社会不安などの二次障害をおこしやすい――これはSM児にも言えることだと思います。

もし子どもが「グレイゾーン」や「ASDの傾向が強い」と言われた場合も、その子の生きづらさや苦手分野を認識し、その子に合う支援ができれば、随分違ってくると思います。

目標は子どもが「その子らしく」、自己肯定感を持って生きられるということじゃないでしょうか?

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2019年SMiRAコンファレンス

2019年SMiRAコンファレンス(その2)

2019年SMiRAコンファレンス(その2)SMとASD

講演1:場面緘黙と自閉症スペクトラム障害:コミュニケーションに影響を与える二つの症状:  類似点、相違点、重複部分 Selective Mutism and Autism Two conditions affecting communication: Similarities, differences and overlap

イングランド北西部のマンチェスター市に勤務する教育心理士のクレアさん

講演の一番バッターは、昨年のコンファレンスでも『SMとASDの併存(詳しくは『2018年SMiRAコンファレンス(その5)』をご参照ください)』というタイトルで短い報告をしてくれた教育心理学者のクレア・キャロルさん。今年はそのテーマをもっと掘り下げて、より詳しく説明してくれました(資料は、クレアさんが勤務するマンチェスター市のOne Educationスキームから)。

今回のコンファレンスで最も注目を集めた議題なので、複数回に分けてお伝えしたいと思います。

まずはクレアさんの紹介から。

クレアさんは2000年に教育心理士の仕事を始め、2004年に自閉症の専門家に。場面緘黙の研修を受けたのは2014年とのこと。

クレアさんの長男、グレッグ君(仮名17歳)は、SMとASDの両方を抱えています。ASDの診断は幼少の頃におりたものの、SMは10歳(2012年?)になるまで診断されなかったとか。

(イギリスでは2006年にTVで場面緘黙のドキュメンタリー番組が放送されてから、少しずつ場面緘黙が知られるようになりました。私の息子が2005年春にSMを発症した当時は、SENCOを含む学校関係者も全く知識がなかったのです)。

グレッグ君は家の外では話さなかったものの、学校では答えが明確な質問には、声を出して答えることができていたそう。クレアさんは「緘黙児は学校で全く話さない」と思い込んでおり、長年息子さんの緘黙に気付いてあげられなかったことを悔やんでいました。

当時は専門家の間でも場面緘黙のトレーニングは殆どなかったそうです。早期発見が重要なのに10歳まで診断されなかったことを後悔し、「誰にも同じ思いをして欲しくない」と。その思いが、このSM とASDの研究に繋がっているよう。

SMiRA委員会のメンバーは、自分の子どもがSMだった、または現在も当事者である方が殆ど。それだけに、研究や啓蒙活動にも熱が入るんだと思います。

講演の内容は:

  • 自閉症とは何か? 場面緘黙とは何か?
  • 何故この二つは混同されるのか?
  • 違いは何か?
  • 類似性は何か?
  • 重複する部分はあるのか?
  • 次にすべきこと

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2019年SMiRAコンファレンス(その1)

2019年SMiRAコンファレンス

今年もまた、SMiRAの定例コンファレンスが、SMiRAの本拠地レスターにて3月30日に開催されました。例年のように、全国から70名ほどの保護者や専門家が集結。今回は、特に場面緘黙の成人とLST(言語療法士)の参加者が多かったのが印象的でした。

   故アリス会長への追悼をのべる現会長のシャーリー・ランドック゠ホワイトさん(最後列に座っていたので、写真がブレててすみません)

<コンファレンスの内容>

  • SMiRA創始者、故アリス・スルーキン会長への追悼
  • 場面緘黙と自閉症スペクトラム障害 教育心理士&SMiRA委員会メンバー クレア・キャロルさん SM & ASD Two Conditions affecting Communication: similarities, differences and overlap
  • ノーサンプトン州における緘黙児支援 SLT(言語療法士) ベス・シェリーさん&ハリエット・ウィルスさん Supporting Children with Selective Mutism in Northamptonshire
  • 「教師に伝えて欲しいこと」 専科SLT リビー・ヒルさん “What would you have wanted me to tell your teachers?”
  • 当事者が緘黙を説明する手紙のテンプレート  ジェーン・サラザー 元当事者& SMトーキングサークル主催 SM Adjustment Templates
  • 大学生活を始めるにあたって Starting at University:
    • 選択肢、申請&インタビュー SMiRAチーム
    • 大学で受けられるサポート レスター大学・学生支援サービス シャロン・スタージェスさん
    • 実際の体験談 SMiRA会員

SMiRAは承認制の活発なFBページを運営していて、現在のところ50カ国以上の国から1万人近くが登録。毎日、相談の投稿にたくさんのコメントがついています。

最近の傾向として、ASDとSMを併発する子ども、緘黙のティーンに関する相談が増えているよう。今回のコンファレンスはその傾向を反映しているように感じました。

私は息子がSMを発症した2005年にSMiRA会員となり、2006年からできるだけコンファレンスに参加するようにしてきました。かつてはSM児とASD児を分けて考えるような風潮がありましたが、現在はSMとASDを併せ持つ子どもの存在が、周知の事実になってきているような。

イギリスでは各地区によって差はあるものの、最近では学齢期の緘黙児への支援方法は学校関連機関(小児・青少年のメンタルヘルスサービスを含む)に定着してきた感があります。そのため、まだ支援が行き届いていない分野での相談が増えているのかなと…。

また、場面緘黙が一般に知られるようになり、ASDの二次障害としてのSMが注目されるようになったのではないか?SMで医療機関を受診する人口が増え、その際にASDが疑われるケースが増えてきたのではないか?とも推測しています。

これから順を追って公演の内容を報告していく予定ですが、特に注目が集まったクレア・キャロルさんの『SMとASD』について詳しく触れていきたいと思っています。