マギー・ジョンソンさん出演のポッドカストから

ハロウィンも終わり、午後4時すぎにもう暗くなり始める今日このごろ。雨混じりの曇り空の下、そこかしこに残るハロウィンのジャカランタンがオレンジ色の灯火のようです。

先月天気のいい日を狙って訪れたノーサンプトンシャーの田舎町、オルニー(Olney)

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この5月に新書『保護者や専門家のためのワークブック The Selective Mutism Workbook for Parents and Professionals』を出版したマギーさん。教育コンサルタントのキャシー・ウエストン博士との対談から、印象に残った言葉やアドバイスをご紹介しています。

このポッドカストはSMiRAのサイトからリンクされています: http://www.selectivemutism.org.uk/videos/

どうして場面緘黙になるのか?

緘黙の人が声を出そうとすると、喉の筋肉が動かなくなって、実際に喉が詰まったように感じます。身体が麻痺した様になり、恐怖にかられ、胸がドキドキして、息が苦しくなったり、冷や汗が出たり、吐き気や頭痛がしたりということも…。

この反応が起こるのは、本人にとって安全圏外の人たちから話すことを期待されている時。

人は極度の脅威にさらされると、本能的に「闘うか・逃げるか(Fight or Flight)」反応が起こります。注目したいのは、恐怖のために身体が凍りつく・虚脱したような感じになる「不動化(Freeze)」反応も起こること。

蜘蛛が嫌いな人が蜘蛛を見たら恐怖で固まってしまう――それと全く同じ反応。場面緘黙は正式に不安障害と定義されていますが、マギーさんは恐怖症と捉えるのがいいと提唱しています。

恐怖症の治療はCBT(認知行動療法)のエクスポージャー法が基本。スモールステップで恐怖の対象に少しずつ慣れ、最終的に克服していくのは場面緘黙も同じことですね。

シャイネスとの違い――緘黙児の見分け方

緘黙の子どもは「内気な子」と見過ごされがち。マギーさんは、話さないことだけではなくボディランゲージにも注目して欲しいとアドバイスしています。

子どもは話すことを予期されると、身体の動きや表情まで不自然に凍りついたようになります。内気な子はもっと自然に振る舞うものです。身体やしぐさが極端にぎこちなくなったり、無表情になるということはありません。

また、緘黙児はアイコンタクトを避けて常に下を向いていることが多く、いつまでたっても特定の状況に慣れません。シャイな子どもは(1対1の場合は特に)徐々に打ち解けてコミュニケーションを取り始めるもの。

緘黙児は同じ学校内でも、安心できる子/ 人と一緒の時と、そうでない状況の時とでは、ボディランゲージが全く違います。そして、そのパターンは一貫して続きます。ある子/ 人とは話せても、他の子/ 人とだと凍りついたように押し黙ってしまう――教室では縮こまっているのに、校庭の片隅ではリラックスした表情を見せるなど。ある日は調子良く話せて、ある日は全く話せないということはありません。

保護者だったら家での様子と全く違うことにすぐに気づくはず、とマギーさんは言います。

でも、うちもそうでしたが、親は学校での子どもの様子を知らないため、場面緘黙に気づくのが遅れてしまうんですよね…。反対に、教師は学校での子どもの様子しか知らないため、内気な子なんだと思い込んでいる可能性が高いのです。

緘黙が起こっている場で早期発見してもらうためには、子どもの様子をよく見て、気になる点があったらすぐにアラームを鳴らすことが必要です。そのためにも、学校で緘黙を含むメンタルヘルスの研修をしてもらえたらと思います。

毎年盛大にハロウィンを祝うお向かいさん家

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マギー・ジョンソンさんの新しい実用書

もう10月もあと3日で終わりですね。イギリスでは昨夜時計を1時間進め、夏時間から冬時間へと切り替えました。ということは、日暮れが1時間早まる訳で、どっぷり暗い季節の到来…。暗くて長いイギリスの冬の始まりです。

雲の晴れ間に急いでお散歩。変わりゆく季節の風情を楽しんで

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イギリスで緘黙治療の第一人者と呼ばれ、専門家や一般の教育・支援に貢献してきたSLTのマギー・ジョンソンさん。マギーさんがアリソン・ウィンジェンズさんと共著した『SMリソース・マニュアル第二版』は緘黙治療のバイブルと呼ばれ、このマニュアルに沿って治療プランを立てるのがイギリス式です。

そのマギーさんが今年5月に『保護者や専門家のためのワークブック The Selective Mutism Workbook for Parents and Professionals』を出版。今回は中国の支援協会の代表、ユジュンファ・ライトマンさんとの共著です。世界中の保護者や教育者たちの協力を得て、15の基本戦略と43の活動方法を詳しく解説。学校や家庭ですぐ実践できるスモールステップ法やアイデア、アドバイスが詰まった実用書となっています。

出版を記念して、教育コンサルタントのキャシー・ウエストン博士のポッドカストに出演。その中で印象に残ったマギーさんの言葉やアドバイスをご紹介します。

ポッドカストはSMiRAのサイトからリンクされています: http://www.selectivemutism.org.uk/videos/

場面緘黙とは?

場面緘黙を説明する時、よく「話せないこと failure to talk」というフレーズが使われますが、子ども自身はどう思っているのか?

以下はマギーさんが緘黙の子どもやティーンから直接聞いた言葉です。

「(特定の人の前で)話すくらいなら、死んだほうがマシ」

「どんなに頑張っても声が出ない。まるで話す能力を奪われたみたいに」

「ものすごく怖くて身体が凍りついてしまう。そんな時に誰かに話せなんて言われたくない。月曜日になると頭が痛くて、家を出るのが嫌でたまらない」

「どうして話さないのか訊かれることに耐えられない。頭にピストルを突きつけられて『喋るな!』と言われる方がずっといい」

「母が私の味方をせずに、周囲に難しい子・扱いにくい子と思わせたことを決して許せない。本当に母が大嫌いだった」

「話せない」の影で、子どもたちはこんなに深刻な心理状態に陥っている…。

場面緘黙は成長したら治るものではなく、本人が話す不安に立ち向かい、少しずつ克服しなければならないというのを証明するよう。保護者や専門家、クラスメイトに真に場面緘黙を理解・支援してもらえる環境が整うことがベストですが、そうはうまく行かないのが現実。それでも、少しずつでも支援環境が変わっていくことを願うばかりです。

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提示カード作成をステップに場面緘黙を克服

あっという間に10月も半分過ぎてしまいました。欧米では今月が場面緘黙の啓発月間。でも、イスラエルとハマスの大規模戦闘が始まってしまい、世界中がその緊迫したニュース一色に染まっている感じですね。犠牲になるのはいつも一般市民、一刻も早く戦闘をやめて欲しいです。

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どうしても言葉が出ない時、自分が場面緘黙だということを理解してもらうために提示できるカードをご存知でしょうか?上記のカードを考案したのはエリザベス・ヘルプスさん。自身も場面緘黙でしたが、カードを作成することで回復への第一歩を踏み出すことができたとか。

エリザベスさんは現在29歳。場面緘黙と診断されたのは16歳の時でしたが、それまでずっと軽度の緘黙症状を引きずっていました。「大人しくて目立たなかったから、問題にされなかったのかも」と振り返ります。

診断が下りた頃には症状が悪化していて、ほんの一握りの人にしか話せない状態だったそう。それから事態は更に悪化し、数年後には誰とも話せない全緘黙に。家族とも、ペットのうさぎとも話せない時期が3年も続いたというのです。

そんなエリザベスさんが直面した問題が、話せないために「失礼な人」と誤解されること。自分を理解してもらうために、自分と同じ様に緘黙に苦しむ人たちのために、25歳の時にカードを作成しました。それを場面緘黙のグループに紹介したところ、当事者や保護者から「私も欲しい」と声がかかるように。

「私には言葉が出にくくなる場面緘黙という不安障害があります。言っていることは理解できますが、返事ができないかもしれません」

自らカードを使ってみて、「相手は返事を期待していない」と思えるだけでプレッシャーが減り、人と接することが楽になったとか。不安が減ったこと、仲間に共感してもらえたことに勇気づけられ、少しずつ場面緘黙を克服していくことができました。

現在は場面緘黙を引き起こしていた病院という場所で、週に数時間ボランティアができるまでになっているとか。本人いわく、「緘黙をほとんど克服できた」といえる心境だそう。

プラスティック製のカードは名刺タイプとネックストラップ付のタイプがあり、デザインはそれぞれ4種類ずつ。当事者用と子どもにつけさせる保護者用があり、今ではアメリカやスウェーデンなど海外の購入者も増えているとか。

緘黙児/ 緘黙の人は自分から行動を起こすのが苦手です。緘黙を理解してもらうのもそうですが、まず勇気を出してカードを提示してみることが小さな一歩につながりそう。提示カードがコミュニケーションを取るためのツールになればいいですね。

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場面緘黙と自閉症(その3)SMiRAの立場

イギリスはもうすっかり秋の気候。今日は久しぶりに秋晴れのいい天気になりました。これから落葉樹の梢がだんだんと紅葉していくのが楽しみです。

    雨降りの夕方、東の空にくっきりと円い虹がお目見え。よく見たらダブルレインボウでした。近くの公園でイギリスでは珍しいススキを発見

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場面緘黙の診断に関するSMiRAの立場

a. 診断担当医は、患者がSMの診断基準を満たしていると考える場合、SM(かどうか)の評価を行う必要がある。2018年、ICD-11が発表される前に推奨されていた診断基準は、SMを不安障害として記載していた DMS-5の診断基準でした。ICD-11ではSMを「不安障害または恐怖関連障害」として分類しています。除外疾患として次のものが挙げられます:

  • 統合失調症
  • 幼児の分離不安の一部としての一過性緘黙症
  • 自閉症スペクトラム障害

ICD-11における除外とは、「他(の分野)に分類されるという条件」であり、「ICD内で相互参照として機能し、カテゴリーの境界を定めるのに役立つ」ものです。これはSMとASDが別の障害として分類され、したがって併存疾患として診断できることを意味します。これは「(ASDの経過中)のみに起こるものではない」というDSM-5で使用されている除外の定義とは異なります。

注:解りにくいのですが、DSM-5ではASDの経過中にSMを発症した場合はASDが一次障害として上位診断され、二次障害であるSMは除外されて診断されないことになります。

SMIRA’s position on diagnosis of SM:

a. Diagnosing practitioners should make an assessment for SM where they believe the patient meets the criteria for such a diagnosis.The preferred diagnostic criteria prior to the publication of ICD-11 in 2018 were those published in APA DSM5, which lists SM as an anxiety disorder. ICD-11 classifies SM as an ‘Anxiety or Fear Related Disorder’. It lists as exclusions:

  • Schizophrenia
  • Transient mutism as part of separation anxiety in young children
  • Autism spectrum disorder

Exclusions in the context of ICD-11 are ‘terms which are classified elsewhere’ and which ‘serve as a cross reference in ICD and help to delimitate the boundaries of a category’. This means that SM and ASD are classified as separate disorders and can therefore be diagnosed as co-morbid. This differs from the definition of exclusions used in DSM5 as ‘does not occur exclusively’.

b. 診断担当医は、たとえ他の疾患に対する既存の診断があったとしても、SMについては別個の診断をくだす必要があります。SMiRAではDSM-5の併存診断からSMを「除外」することは、医療従事者とその患者にとって非常に無役だと考えています。これは、特に併存障害がASDの場合に当てはまります。私たちはASDを持つ人はSMの可能性もあると考えており、これはIDC-11の分類を使用すれば〈診断は)許容されます。

このSMiRAの立場は、『場面緘黙リソースマニュアル第2版 The Selective Mutism Resource Manual 2nd Edition』と『場面緘黙支援の最前線 Tackling Selective Mutism』で明らかにされており、後者ではマイケル・ラッター教授(キングスカレッジ・ロンドン精神医学研究所)によって支持されています。

b. Diagnosing practitioners should make a separate diagnosis for SM even if there is a pre-existing diagnosis for another disorder. SMIRA believes that ‘excluding’ SM as a comorbid diagnosis in DSM5 has been very unhelpful to medical practitioners and their patients. This is especially true in the case of ASD. We believe a person with ASD can also be selectively/situationally mute (SM), and this is allowable using ICD-11 classification.

This position is made clear in The Selective Mutism Resource Manual 2nd Edition and in Tackling Selective Mutism, the latter being endorsed by Professor Sir Michael Rutter (Institute of Psychiatry, King’s College London).

SMiRAがこの声明を出しているということは、イギリスでもまだSMの併存診断がつかないASD児がいるということですね…。うちの特別支援学校でも、SMや書字障害などのLD、ADHDを併せ持つ子が大勢います。イギリス国内ではASDの他に、これらも別個の障害として診断がおりているものと思いこんでいました…。

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場面緘黙と自閉症(その2)DMS-5 と ICD-11

今週は雨が降ったり・止んだりの肌寒い天気が続いています。雲の合間に陽が射して青空がのぞく時間もありますが、あたりはもうすっかり秋の空気。学校は始まったものの、まだ最終的な時間割が決まらず、ちょっと中途半端な日々です。

      久しぶりに訪れたハイゲートの森。うちの四季咲きのイングリシュローズは色も姿も儚げ

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さて、前回の続きです。

「現在の規定ではASDとSMの併存を診断できないのか?」という質問に対して、匿名で下記のような回答がありました。

DMS-5 (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders  米国精神医学会が作成する精神疾患の診断・統計マニュアル第5版) においても、ICD-11 (International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems 世界保健機関WHOが作成する疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第11版) においても、ASDとSMとが同時に診断することは可能です。ただし、そのためには子供の持つ発話の問題はASDが原因ではないことを確認する必要があります。

DMS-5よりSMの規定の抜粋

The disturbance is not better explained by a communication disorder (e.g. childhood-onset fluency disorder) and does not occur exclusively during the course of autism spectrum disorder, schizophrenia, or another psychotic disorder.

この障害はコミュニケーション障害(例えば、小児期発症流暢症)では説明がつかず、ASD、総合失調症、その他の精神障害の経過中のみに起こるものではない。

DMS-5より(どこに記されているか不明)

Neurodevelopmental disorders Individuals with an autism spectrum disorder, schizophrenia or another psychotic disorder, or severe intellectual disability may have problems in social communication and be unable to speak appropriately in social situations.

ASD、総合失調症、その他の精神障害を持つ神経発達障害の人、または重度の知的障害がある人の中には、社会的コミュニケーションに問題があったり、社会的状況で適切に話すことができなかったりするケースがある。

       ⇑  <上記に対する投稿者の意見>

でも、彼らにSMの症状がある場合、そのコミュニケーション上の問題は別の種類のものだから、ASDだからという理由ではうまく説明ができません。その問題は様々な場面(状況)を超えて持続する、もしくは会話の欠如ではなく会話の内容に関連するかのどちらかです。

ICD-11から

Boundary with Autism Spectrum Disorder and Disorders of Intellectual Development:

Some individuals affected by Autism Spectrum Disorder or Disorders of Intellectual Development exhibit impairments in language and social communication. However, unlike Selective Mutism, when language and social communications impairments are present in Autism Spectrum Disorder and Disorders of Intellectual Development, they are notable across environments and social situations.

ASDおよび知的発達障害との境界:

ASDや知的発達障害がある人の中には、言語や社会的コミュニケーションに問題を抱える人もいる。しかし、ASDや知的発達障害の人に言語や社会的コミュニケーションの障害がある場合は、SMとは異なり、その問題は環境や社会的状況を問わず現れる。

 ⇑   <上記に対する投稿者の意見>

そのため、ASDの子どもが場面緘黙になっている状況でのみ沈黙している場合は、SMとASDの両方を診断することが可能。反対に、彼らが常にコミュニケーションの問題を抱え、その原因がASDである場合はSMの診断はできません。ASDが除外セクションに記載されているのはこのためです(SMと診断する前に、言語の障害の原因としてのASDを除外する必要があるため)。子どもが安全と感じる状況では話し(例:家庭)、不安が強い状況では話さない(例:学校)のはSMに特有な性質で、ASDが原因ではないからです。

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DMS-5の「SMはASD等の経過中のみに起こるものではない」という言い回し、すごく解りにくくないですか? ASD経過中にも起こりうるし、そうじゃない時にも起こりうるということ?

追記:DSM-5では、ASDの経過中にSMが起こった場合、医学的にはASDが一次障害でSMは二次障害という位置づけ。そのため、一次障害のASDが上位診断となり、原則的に併存するSMは診断されないということだそう。

私は高機能ASD児を専門とする特別支援校に8年間勤務しているのですが、ティーンの生徒たちは言語能力が高く目立つ常同行動もないため、一見するとASDだとは分からない子が殆ど。グレーゾーンの子も入れると、学校などで問題が起きなければ、周囲が子どものASDに気づかないということも理解出来るんですよね…。

スレを立てた方の質問は、診察やテストの際にSM児が話さないから診断不可ということでしたが、子どもが家で話している映像を利用したら、少しは手助けになるかもしれないと思ったのでした。

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場面緘黙と自閉症(その1)

もう9月も半ばですね。今年は日本から友達が二人もやってきて、あっという間に夏休みが終わってしまいました。最後の最後に、この夏の課題だった遮光ブラインド作りに着手。やっと完成したんですが、ギリギリになるまで夏休みの宿題をやらなかった学生時代と同じ^^;  なんやかんやでブログをさぼってしまい、前の記事から1ヶ月近く空いてしまいました…。

     

     秋風が吹き始めた中庭に咲く花々。ご近所さんにもらったナスタチウム(?)が巨大化して、あっという間に庭の一角を占拠してます😲

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私がこのブログを始めた2013年頃、イギリスでは場面緘黙(以降SMとします)と自閉症(以降ASDとします)の関連はほとんど取り沙汰されていませんでした。当時はSMとASDの併存という話題も非常に少なかったと記憶しています。その反面、日本では多くのSM児に発達障害が認められると言われていました。

当時、イギリスでは緘黙治療法が進んでいて、マギー・ジョンソンさんをはじめとする専門家たちや緘黙支援団体のSMiRAが全国的な活動を行っていました。そのイギリスで発達障害との関連について議論されていないのに、どうして日本では?と不思議に思っていたのです。

そこで、『日本では発達障害と見なされやすい(1-6)?』という記事で自分の見解を書いた訳です。

ところが、ここ5、6年ほどの間に随分様相が変わりました。SMiRAのFB掲示板でもSMとASDの併存についての話題がぐっと増えてきたのです。

今ではASDとSMが併存することは周知の事実。ただし、これはSM=ASD/ 発達障害ということでは決してありません。ただ、SMの背後に潜んでいるかもしれないASDや他の発達障害、言語の問題等の可能性を慎重に考慮すべきという姿勢になっていると思います。

最近、SMiRAのFB掲示板に特別支援教育の関係者から下記のような質問がありました。

質問者は複雑なニーズを持つ子どもたちを担当。彼女の職場では、子ども達が話さないために5/6歳で行ったASDの診断テストの評価をすることができなかったそうです。子ども達が10、11歳になった現在、心理士達はASDの評価を行うことに消極的なのだとか。その理由が、SMの診断基準ではASDは存在し得ないと規定されているため。両方の診断マニュアルによると、ASDとSMの両方を持つことができないというのです。それで、実際のところはどうなのかと。

この質問に対して多くの反響があり、当事者1人と29人の緘黙児の保護者が「子ども(自分)にはSMとASD両方の診断がおりている」と返答。更に、「SMだからASDの診断ができないというのはおかしい」という書き込みが多くありました。

保護者たちの回答から、子どもたちの診断パターンが2つに別れているのが分かりました。ひとつは幼児期にSMの診断がおりて、複数年後(長くて10年ほど)にASDの検査をして診断がおりたケース。もうひとつは、ASDの診断が先におり、数年後にSMの診断がおりたケースです。SMとASDの診断が同時におりたケースはなく、何故なのか気になっています。別々の専門機関で診断してもらう必要があるんでしょうか?

次回はアメリカ精神医学会による診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)DSM5と国際疾病統計マニュアル(ICD 11)におけるSMとASDの規定を比べてみたいと思います。

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ウィーンの旅・珍道中(その2)

滞在3日目は、ウィーンパスを思い切り活用して主に美術館巡りをする予定でした。まずベルヴェデーレ宮殿でクリムトの『接吻』を観てから、アルバティーン美術館で印象派絵画を。そこから歩いて、ホーフブルグ王宮内にある国立図書館へ。世界一美しいと言われるバロック様式の図書館は、大理石の円柱や天井画が見事。が、なんか既視感があるなと思ったら、昨年見たダブリン大学の図書館と酷似してました^^;

   宮殿内の美術館にはクリムトの『接吻』や風景画、他アーティストの作品が

 

   アルバティーン美術館では大好きなエルンストの作品も発見。豪華絢爛な図書館は高さ20m、蔵書は20万冊以上だそう

お次は、これも世界的に有名な国立オペラ座の劇場内ガイドツアーへ。30名ほどのグループだったんですが、最後にステージ前で写真撮影をしているうちに(他の人達からも頼まれた)、なんと取り残されてしまいました!! 残った6人で迷路のような廊下を右往左往し、10分位かかって外に出たのでした^^;

この時すでに午後1時半近く。オペラ座の前がホップオンバスの発着場なので、2つ先のミュージアムクォーターまではすぐ。と思いきや、友達のひとりが「このまま1周して観光スポットを全部網羅しよう」と言い出して…。

「え~っ、この暑いのに!!」と思ったものの、前日フェリーの船着き場に2人を引っ張っていったのは私…文句は言えません。プラスティックの屋根越しにガンガン陽の当たるダブルデッカーバスの2階で、耐えること1時間ちょっと(私だけ少し日陰になる席に座ったんですが^^;) それでも、暑い!暑すぎた!!

やっと美術館が集まるミュージアムクォーターで下車した時はもうクタクタ…。友達もやっぱり暑すぎたそうで、大失敗でした(バスは一方通行で循環してるので、途中で降りて引き返せない)。

まずは、世界最大のエゴンシーレ・コレクションを誇るレオポルド美術館に入ったのですが、ここでまたひと悶着。 私のパスが何故か作動せず…。なんとかゴネて入れてもらい、目的のシーレ作品群を観ることができました。他にも、クリムトやウィーン工房の工芸品なども展示されていて見どころいっぱいだったものの、もうグッタリ…。

    1階コンコースではローマ法王が回って踊るパフォーマンス(写真1枚め)が😲 シーラの作品群は風景画もお馴染みの色調と筆遣いでした

お隣の近代美術館mumokに行く前に、手前のカフェで軽食と冷たい飲み物で一息ついくと、もう動きたくな~い!友達が近代美術館に行っている間、ひとりで休憩してました^^;

  

夕方、予約してあった近くの人気レストランGlacis Beislへ。 緑がいっぱいのテラス席は雰囲気がすごく良かったんですが、うーんメニューが少ない…。伝統的なビーフグーラッシュを注文したら、味が濃くて野菜がぜんぜん入ってない….。その後、レオポルド美術館の屋上にあるテラスバーで夕陽を眺めてから帰途についたのでした。

最後の日の午前中は、オーストリアの画家・建築家、フンデルトヴァッサー(1928-2000)がデザイン・設計したクンストハウス博物館とカラフルな市営住宅のある地区へ。 残念ながら、博物館は改装中で入れませんでしたが、近隣地区で彫刻などの野外展示会を開催中。グレーを基調にした伝統的な街並みに、カラフルで遊び心あふれる建物が印象的でした。

   ガラスや金属、木材、陶器などの多様な素材遣いやミロの絵のような色遣い、曲線や不規則なラインが楽しい

ラテを飲んで一休みしてからトラムでホテルへ戻り、電車で空港へ。こうして私たちのウィーンの旅は終わりを告げたのでした。

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ウィーンの旅・珍道中(その1)

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ウィーンの旅・珍道中(その1)

学校が夏休みに入った7月21日から4日間、ウォーキング友達2人とオーストリアの首都、ウィーンに行ってきました。ウィーンを選んだのは行ったことがなかったのと、それほど暑くならないと思ったから。

  

イギリスでは7月に入ってから冷夏になったのですが、南ヨーロッパでは前代未聞の猛暑に!私達がウィーンに滞在した間は28〜34℃と、けっこう暑かったです

古都ウィーンは、神聖ローマ帝国の王位を継承し中世ヨーロッパで勢力を振るったハプスブルグ家の主要な居城都市。モーツアルトやベートーベンなどの音楽家、クリムトやシーレなどの画家が活躍した芸術の都でもありますね。

さて初日。空港からホテルまで電車で25分ほどのところ、なぜか駅名を間違えてかなり手前で下車^^; 周囲の人に聞きまくって、トラムで1時間ほど遅れてホテルへ。

 

ホテルのラウンジで遅いランチを食べて(このサンドと水で1,500円くらい!高っ!)から、再びトラムに乗って国立オペラ座へ。事前に予約しておいた街歩きツアー(無料)のガイドさんと合流。

彼女の案内でオペラ座からアルベルティーナ美術館(階段のパステル画が素敵だった)、スペイン式宮廷馬術学校、高級ブティックが集中するコールマルクトなどをそぞろ歩き。ちと疲れたので、1860年創業、宮殿の一部として使われていたという人気のカフェツェントラルへ。軽食を楽しみながらガイドさんと色々な話をしました。ウィーン生まれの彼女は建築家で、月に一度ガイドをしているのだとか。

 

    行列ができていたカフェツェントラル(写真左)は優雅な雰囲気。カイザーシュマーレン(Kaiserschmarrn 梅ソース添)というパンケーキの量が半端なかった!ケーキ類は重くて甘そうで、クリームがのったウィンナコーヒーともに触手が伸びませんでした…。日本でも有名な老舗カフェ、デメル(右)にも長い行列。ウィンドーにはお菓子作りをしているシェフの姿が

  

2日目は、ホテルでしっかり朝食を摂ったあと、まずは「ウィーンの胃袋」と称されるナッシュマルクトへ。 土曜日に立つ蚤の市も見て回りました。

ここから、ホップオン&オフバスに乗って世界遺産に指定されているショーンブルン宮殿に向かいました。 が、バスを降りたあとに大きなミス。 事前に購入しておいたウィーンパスで簡単に入場できると思いこみ、パス専用のチケットオフィスを通り過ぎて、宮殿の門をくぐり庭園(無料)で涼んだのでした。

さて宮殿内へと思った時点で、入場チケットはどこで入手するの?! と3人ともパニック! バスの停留所まで逆戻りしてチケットを発行してもらった時には、なんと2時間半待ち…。宮殿訪問の後にクリムトのアトリエを訪ねて、ドナウ河で遊覧船に乗る予定だったのに…。

この宮殿、1688年の第一案ではヴェルサイユ宮殿を凌駕するものを建てる気まんまんだったものの、ハプスブルグ家の財政難によって縮小。18世紀に完成し、1762年には鏡の間で当時7歳だったモーツアルトがマリアテレジアの前でピアノを演奏したとか。

この後、ドナウ河で遊覧船に乗るためにバスで船着場に向かうも、最後の船に間に合わず…というか船着場とガイドとでは発着スケジュールが違ってた…。

 

気を取り直して、友達がガイドブックで見つけたというアート&クラフトマーケットへ。さんざん迷ったあげく辿り着いたら、その住所にマーケットはなし。でも、雰囲気のある路地にレストランが並んでいたので、そこでウィーン名物、シュニッエルを食べることができました。お味はーーう~ん、まあまあでした^^;

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緘黙だった教え子のAちゃんが卒業しました

もう2週間が過ぎようとしていますが、7月に教え子のひとり、Aちゃんが卒業していきました。 私が勤務している学校は、高機能ASD(自閉症スペクトラム障害)の子どもを専門とする特別支援学校。Aちゃんは高等部で日本語のGCSE(国家試験)コースを選択したので、3年間の付き合いでした。

 

        最後の授業の日にAちゃんにもらったカード、とても嬉しかったです。右は彼女が作った日本語すごろくのイラストの一部

このAちゃんが場面緘黙(だった?)と知ったのは、なんと教え始めて1年ほど経ってからのこと(詳しくは『教え子が緘黙だった!!』をご参照下さい)。

私の授業では何ら問題がなかったので、彼女が緘黙だということに全く気づかなかったのでした^^;  ただ、いつも声が出るまで少し間があくのが気になっていました。

声を出そうと緊張しているのは解っていたため、5秒くらい待つことにしていました。日本語を選択している生徒は1つのクラスに片手で数えられる程。だから時間をかけられたんですね^^;

Aちゃんの最初のクラスはなぜか寺子屋スタイルで、一時期レベルが違う生徒4人が一緒に授業をしていたことも。が、Aちゃんが黙ってしまったことは一度もありませんでした。

その理由は小人数で安心度が高かったためか、自分の知識に自信があったためか?それとも、負けず嫌いの一面が影響したのか…。

負けず嫌いといえば、日本語3年目の生徒と一緒に会話の練習をした際、Aちゃんの声のほうが大きかったのが印象的でした(習ったばかりの箇所だったので、自信もあったはず)。

GCSEのクラスに変わってからは、もうひとりの生徒に負けじと自主的に応えることも多くなっていったのです。

日本では、よく場面緘黙時に英語を習わせるといい、と言いますよね?外国語の方が母国語より話しやすいと感じる緘黙児は多いようです。考えてみれば、語学学習の初期は、復唱や回答が決まっていることがほとんど。自分で答えを考えて言うよりは随分楽です。

この3年間でAちゃんに変化がありました。質問をふると、応える時に微笑むことが多くなり、応えた後もニコニコしているのです。応える時の間もほとんどなくなり、応えるスピードも上がりました。

(まあ、これは試験用の「会話」の練習をした成果かもしれませんが)

外国語のGCSE(国家試験)で試されるのは、「会話」「読解」「聞き取り」「作文」の能力。「自分」「将来の希望」「地域・旅行」など5つのテーマがあって、自からの意見を表明することが重要になってきます。

だから、彼女の趣味がPCゲームで K&J-ポップのファンであることや、将来の夢など、授業で聞き出して、それをテーマに会話の練習をすることも多かったんです。興味のあることを話すのは、誰でも楽しいですよね?

Aちゃんの唯一の欠点といえば、欠席がものすごく多かったこと(ストレスに弱い?)。試験前後もかなり休んで焦ったのですが、勉強は家で続けていたよう。なんとか無事に試験を終えることができました。

そして、卒業間近になって彼女のTAから連絡がありました。

卒業式の日にAちゃんを送り出す祝辞を述べなければならないのに、言うことが見つからないというのです…。

「クラスでは何も話さないし、褒めるべきことが何もないから、良いところを教えてほしい」と。

えーっ、良いところはいっぱいあるのに!

そして、いまだクラスで話せてなかったということがショックでした…。

2年前、彼女が緘黙であることを偶然耳にした時、1対1なら話すけどグループ活動やクラスでは声が出せていないと聞いて、

「まずは一番仲の良い子とスライディングイン法をしてみれば」と提案し、その後も、時々クラスでの様子を訊ねたりはしていたのですが…。

でも、私には生徒のケアをする役割は与えられていないし、講師の分際で口出しすることも憚られ…。そして、カリキュラムの遂行や細かな授業計画・各生徒の学習状況報告の要求に追われて、いっぱいいっぱいの状況。

もっと何かしてあげられなかったのかと、今とても悔やまれます。

殆どの卒業生たちは9月から学校近くのカレッジに通うんですが、Aちゃんは自宅に近いカレッジに1人で電車通学する予定。

知っている人が誰もいない全く新しい環境で、Aちゃんが希望に満ちた新たなスタートを切れます様に!!

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教え子が緘黙だった!!

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息子の緘黙・近況報告

一昨日、息子の大学の卒業式に行ってきました。当日はあいにくの雨で最高気温が19度と肌寒く、薄手のコートを着ていって大正解。イギリスでは6月に例年より大幅に暑くなり、7月に入ってから通常運転に。一方、南ヨーロッパは40度超えの猛暑に襲われていて、まだ雨のほうがマシかなと思ってしまった私でした^^;

   

実は、イギリスの公立学校って日本のような入学・卒業式のようなフォーマルな式典ってほとんどないんです。校長がちょっと挨拶して、保護者が普段着で集まるような感じで。息子の小学校(5~11歳)とセカンダリースクール(12~16歳)では入学式もなし…。

だから、学士のガウンと帽子を纏って、格式ある卒業式に出席するのは息子の人生初。私達親にとってもフォーマルな装いで式に参加というのは初めて^^; だから、感激もひとしおでした。日本のように大切な区切り区切りで正式な式典を行うのって、人生の折り目を実感できてとてもいいと思います。

  

息子の大学はヴィクトリア女王が開校したイギリス初の女子大(現在は共学)で、ロイヤルの名がついています。そのためか、卒業式では4名の近衛兵がトランペットを演奏してビックリ。大学がある町のお隣がウィンザーなので、ウィンザー城から出張してきたものと思われます。

  

息子たちの学年は運が悪く、コロナ禍と大学生活がもろに重なってしまいました。専攻がコンピューターサイエンス科だったためか、授業はいち早くオンラインに。対面授業を充分に経験しないままの卒業となったのですが、今度は大学職員のストで卒業試験の採点が式典に間に合わず…。なので、成績が出る前に式を済ませることになったのでした^^;

それでも、小学校低学年のころは緘黙のため学校ではほとんど話せなかった息子が、こうして無事に大学を卒業するのか(多分)と思うと感無量。

 

息子が場面緘黙症を発症したのは小学校入学してすぐのこと(4歳6ヶ月、詳しくは『息子の緘黙・幼児期4~5歳  滑り台事件おこる』をご参照ください)。それからSMiRA(英国の場面緘黙支援団体)の助けをかりて、スモールステップのサポートを続けました。

緘黙を克服することができたかなと思えたのは、友達グループが固定し、出席の返事ができるようになり、教室でみんなの前で話せるようになった小学4年生の頃から。

でも、昨日本人に訊いてみたら、「小学校時代の幼馴染たちと別れ、新しい学校で自分から話しかけて友達を作れるようになった16歳ころかな」と言っていました。

色々なことを考慮して、「違う学校でもいい」という息子の意見を却下して、幼馴染たちと一緒のセカンダリスクールに進学させた私達。偶然にも同じクラスで5年間を過ごすことになったのですが、新しい友だちを積極的に作っていく彼らに引け目を感じていたよう(一緒にいたので、息子も仲間に入れてもらっていた様ですが)。

もしかしたら、親が先回りしすぎちゃったのかも…。

人前で話したり、必要な時に自発的に話すことはできても、息子の引っ込み思案な性格は今でも変わっていないような気がしています。自意識過剰で人目を気にしすぎるところも。

息子の交際範囲がちょっと狭いのが気になるところ――といっても、私の交際範囲もかなり狭いので人のことは言えませんが…。

どこで独り立ちさせるか親としては難しいところですが、親元を離れて地方の大学に行ったことで、自分なりに人間関係を築き、料理や洗濯もできるようになりました。でも、卒業後は当分ロンドンの我が家で暮らすことになりそうです。

イギリスは今物価の上昇が激しく大不況に見舞われているため、就職したら独立して部屋やフラットを借りるという通常のパターンは大崩れ。特にロンドンは家賃が高騰しているので、よっぽどサラリーが良くないと独立できません。昨年、息子より早く卒業した小学校時代の友達も、実はみんな実家にUターンしているのです。

イギリスでは日本のように在学中に就職活動を行い、卒業前に就職先が決まっているということはめったにありません。息子の友達の殆どはまだアルバイト生活で、本格的な就職を後回しにしているのが現状。

息子がこれからどうするのか不安ではありますが、自分で考えて進んでいってくれたらと願うばかりです。

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