ミスコンで場面緘黙を克服

4月中旬に入って、イギリスでは晴天の暖かい気候が続いています。明るい陽光をうけて季節の花が次々と開花。季節がどんどん移りかわり、新緑が美しい初夏を思わせる陽気になってきました。

    手鞠のように固まって咲く八重桜が散り始め、ライラックやりんごの花が満開に。中央左の写真は生徒さんのお母さんからいだいたお庭の桜

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ASDを持つイギリス初のミスコン優勝者

今春、ミス・スプラナショナルのイギリス代表に選ばれたニアム・テイラーさん(Niamh Taylor )。イギリスにおける全国規模の美人コンテストにおいて、ASD(自閉症スペクトラム症)であることを公表した初の優勝者として注目を集めています。

      4度目の挑戦で晴れて優勝したニアムさん (28歳)。児童教育分野の学位を持ち、SNSマーケティングのビジネスを展開中

場面緘黙や不安障害の症状も

ニアムさんはかつてから不安障害に苦しんでいたといいます。特に食事や人との交流に不安が強く、パニック発作を起こしたことも。20代半ばまで場面緘黙にも悩まされ、特定の社交場面で話すことが困難だったそう。

「一番怖かったのは、知らない人ばかりの部屋に入って、そこで話さなければならないこと。ミスコンテストに出場する前は、それが私の最大の悪夢でした。集団の中で自信を持って話すことなんて全く無理。買い物に行く時でさえ、誰かに付き添ってもらわないと不安でした」

また、聴覚処理障害にも苦しみ、母親は彼女が幼いころ耳が聞こえないと思っていたとか。人に話しかけられて返事をしないことはあったものの、実際には数秒後に理解し、その後は相手の言っていることがちゃんと聞こえていたといいます。

「幼い頃は、周りの人から無知だとか失礼だとか思われていて…。それがさらに不安やストレスに繋がって、悪循環に陥っていました」

不安を克服するために

美人コンテストへの挑戦は、これらの不安に打ち勝つためでした。良い成績を取ることよりも、自分の殻を破るきっかけが必要だったといいます。

ニアムさんがミスコンに挑戦し始めたのは18歳の時のこと。まずは出身地であるランカシャー州から始め、マージーサイド州チョーリー地区のミスコンで優勝。ここ4年間はミス・スプラナショナルの全国大会に出場し、7位、3位、2位と好成績を収め、今年ついに優勝を果たしました。

「初めてコンテストに出場した時は本当に怖かったけれど、ミスコン界の人たちはみんな優しくて理解があって、本当に感謝しています。ここまで来るのに10年、全国大会の決勝に進出できるまでには長い道のりでしたが、今の私があるのはミスコンのおかげ。感謝してもしきれません。

人前で話せるようになっただけでも信じられないのに、ましてやステージで審査されるなんて。コンテストでインタビュー部門の最優秀賞を受賞できたのは、本当に驚きです。5年前は話すことすら大変だったんですから」

ニアムさんはかつて、自分が経験していることはすべてGAD(全般性不安障害Generalized anxiety disorder)のせいだと思っていたそう。でも、年齢を重ねるうちに自閉症について公に語る人が増え、少しずつ自分の特性を理解できるようになったといいます。

NHS(国民保険サービス)の順番待ちで検査までに2年かかりましたが、昨年ASDの診断が下りました。ニアムさんが正式な診断を求めたのは、自分自身への理解を深めるためだったといいます。

「ASDと診断されたことで、多くのことが腑に落ちました。周りの人にASDのことを話したら、誰も驚かなくて。自閉症を否定的に捉える人もいると思いますが、私にとってASDであることはスーパーパワーなんです。

私はとても強い興味を持つタイプで、幼い頃からミスコンテストにも興味がありました。コンテストについて研究し、何が効果的なのかを分析することが大きな強みとなりました。ネガティブな面ばかりに目を向けないで、自閉症の長所を探ることが大切だと思います」

スウェーデンのカロリンスカ研究所では、男子は女子に比べて幼少期にASDを診断される可能性が最大で4倍高いと解析。しかし、20歳になると男女の診断率はほぼ同等になるという結果も。これは、女の子が症状を隠そうとする傾向があるためと考えられています。

「女の子のASDの兆候は見過ごされがちです。女の子は感情を爆発させる代わりに、症状を隠したり、心を閉ざしたり、黙り込んだりする傾向があるためです。私の場合、不安感に強く影響され、食事や食生活にも支障が出ました」

それでも、ニアムさんは自分の何かを『直す』必要はなかったと語ります。「自閉症は治せるものでも、治すべきものでもありません。ただ、自分自身についてもっと深く理解し、様々な対処法を身につけていけます」

自身のSNSマーケティング会社を運営するニアムさんは、現在自身のプラットフォームを通して同じような境遇の人を力づけることに情熱を注いでいます。

ソース:https://www.lancs.live/news/lancashire-news/former-chorley-beauty-queen-becomes-33511834

ミスコンで場面緘黙を克服したといえば、2013年のミスイングランド、カースティ・ヘイズルウッドさんも同じでした。彼女が日本のTV番組『ザ! 世界仰天ニュース』に出演したことを、覚えていらしゃる方もいるかもしれませんね。

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10月は場面緘黙の啓発月間

気がつけば、もう今月も半ばに突入。昨日、10月10日は世界精神保健連盟(WFMH)が定めるメンタルヘルスデーでした。10月はメンタルヘルスの啓発月で、イギリスでは毎年この時期になると場面緘黙がメディアに取り上げられます。今回ご紹介する記事は昨年3月にBBCエセックスニュースに掲載されたものですが、よりインパクトが強いと思い翻訳してみました。

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場面緘黙:『人は私のことを礼儀知らずとみなすけど、本当は恐怖で凍り付いてるの』

英国エセックス州に住むデイジー・メイさん

デイジー・メイさんが成長していく中、家族は彼女がただ内気なだけだと思っていました。しかし、見知らぬ人の前での頑ななまでの沈黙は、実は場面緘黙(SM)だったのです。

この不安障害のため、エセックスに住む12歳のデイジーさんは、両親以外の人とほとんど話すことができません。

NHS(英国国民保健サービス)によると、場面緘黙は特定の社会的状況でフリーズ反応を引き起こす外的な症状で、本人は不安やパニックに陥っていると言われています。

この症状のためにデイジーさんは友達を作ることができません。しかしながら、ダンスやオンライン動画を通して演技をすることに情熱を見出し、自分を表現して自信を持つことができるようになりました。

メールで行われたインタビューで、デイジーさんはSMが日常生活にどのような影響をもたらしているか、自分自身の言葉で語ってくれました。

楽しみは、ダンスとオンライン動画制作で自分を表現すること

「想像してみてください。毎日の生活の中で人と交流する時、体はそこにあるのに口が動かず、不安で言葉が出ません。頭の中は空っぽなの。周りの人たちが話しているのを見ても、自分は話せない――行き詰まってしまう。トイレに行きたくても、どこにあるのか訊ねることさえできません。

これが場面緘黙を抱える私の人生。

ただただ言葉が見つからない。家の外では、たとえ言葉が浮かんだとしても、怖すぎて固まってしまうんです。何の助けも求めることができず、笑ったりおしゃべりすることもできない。

周りの人は、私のことを無関心でフレンドリーじゃないと思っています。不愛想な子だと。まるで、自分たちと同じ世界の人間じゃないみたいに。

私は一人ぼっち。

友達は1人もいません。私は「友達はいらない、1人でいたい」と言っています。でも、友達同士が一緒にいるのを見ると、いいなって思う。でも、誰とも話せないから、私には無理でしょうね…。家族ともまともに話せず、人と会った後はすごく疲れてしまいます」

 母親のルイーズさんと一緒に舞台に立つことで、演技を通して自信を深めてきた

「昨年パントマイムに出演した時は、母とは更衣室が別でした。他の子たちはゲームをしていたけれど、私は参加できず側で見ているだけ。話すことも参加することもできないから、ただ傍観するだけでした。

でも、私は人真似がすごく得意で、家に帰って母に彼らの会話の内容を全部説明できるんです。皆が何を言っていたかちゃんと覚えています――皆は私が関心を持ってないと思っているかもしれないけれど、すごく興味があるので。

でも、演技をしている時は別。話すことはまだできなくても、その力があるように感じじられるんです。皆と一緒にショーに参加している時だけが、何かできるように思える唯一の時間です。一人ぼっちじゃない。

私は人と一緒にいること、そして大勢の観客の前で演技することが好きです。大勢の人がいるけれど、彼らは私が話しかけることを期待していないし、しっかりリハーサルするから演技には自信があります。

私は耳栓をしなければならないけれど、音楽が好きなんです。観客が笑顔になって、拍手してくれて、私を見てくれるのが好き。そうしたら、私も笑顔になれて、違う人間になれるから。

今月初め、「Uniquely Me(ユニークな私)」というチャリティ・タレントショーを開催しました。何週間も練習して、なんとか短いスピーチもすることができたんです。

彼女は今後、もっと多くの募金活動や啓発イベントを開催したいと考えています。

「特に、私と同じような人たちに才能を発揮する機会を持ってもらいたいと思って、タレントショーを開催しました。誰でも参加できて受け入れられる場――私がいつも感じる疎外感がない場を。

参加してくれた子どもたちは、様々な背景、文化、障害を持っていましたが、皆で一緒に幸せに過ごすことができました。イベントが上手くいって、人々に場面緘黙について知ってもらえたのがとても嬉しくて、また開催したいと思っています」

デイジー・メイさんは緘黙のせいで他の子どもたちと話すことができないため、友達はいらないと自分に言い聞かせようとしてきました。

「誰も場面緘黙症が何なのかを理解してくれません。私が話さないと大騒ぎするか、完全に無視して諦めてしまうかのどちらかです。人付き合いが悪いわけじゃなくて、人は好きなんだと説明できればいいんですが…。

場面緘黙と書かれたストラップを首から下げて、周りの人に理解してもらいたいです。自閉症の人と同じように。手話を習おうとしましたが、誰かの前で固まってしまうと腕も何も動かないから、難しいです。

私は自閉症なので、将来のことはあまり心配していません。将来のことを話したり想像したりするのが苦手だからあまり考えませんが、ママがすごく心配していることは知っています」

デイジー・メイさんの母親、ルイーズさんは、『Uniquely Me』の後、他の保護者たちから、このショーが子どもたちの自信を高めるのに役立ったという手紙を受け取りました。

ルイーズさんは娘が見逃してきたものについて心配しています。

「私は毎日娘の将来を案じています。デイジー・メイは何でも私に頼っているから。娘はお店で簡単なことさえ頼むことができないんです。緊急事態に自分で対処できないだろうと思うと、ひとり放っておくことはできず、本当に辛いです。

娘は一度も友達と遊んだり、お泊まりに行ったこともないから、どこかで何かを頼んだり、自分の要求を伝えたりすることはできないでしょう。もし私に何かあったら彼女はどうなるのかと、不安でなりません」

BBCエセックスニュース 記者:レイチェル・マクメネミー

https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-essex-68388212

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