どきどきコテージと減感作療法

先週イギリスを含むヨーロッパは、シベリアからの大寒波にすっぽり包まれていました。ロンドンでは水曜日から本格的に雪が降り始め、それほどの積雪はなかったものの、とにかく零下の気温が継続。主人曰く「冷蔵庫の方が暖かい」という感じで、交通はマヒするし、私の学校も休校に…。

少し雪が積もったくらいでどうして混乱するかというと、イギリスではスノータイヤやチェーンがないんです…(例年雪が少なく、道路がデコボコになるのを防ぐため?)でも、スコットランドではかなりの豪雪となり、軍隊が出動して医療スタッフを病院に運んだり、不通になった道路の雪かきをしたり。大寒波にハリケーンが加わったウェールズでは、農家の人たちがトラクターで救助作業に当たったそう。

そんな中、主人と息子はいつも通り通勤・通学し、私だけ木・金と休みでした。先週はどういう訳か人に会う約束が多く、今日はSMiRAの定例会の予定だったんですが、全部キャンセルに…。雪道を運転するのが怖いので、ピラテスのクラスも休んでずっと家に籠ってました。

すごく楽しみにしていたんですが、こういう時もありますよね。気を取り直して、バナナケーキを焼き、大きな鍋いっぱいに野菜スープを煮、小豆とラベンダーのホットアイマスクを作りました。

      水曜の午後は息子のアレルギーチェックでパディントンの病院へ。駅の前を流れる運河も凍結。少々不格好ですが、ホットアイマスクを2個作りました

さて、先回の記事を書いた際、イギリスで放送されたTV番組のことを思い出したので追記します。

もう10年以上前になりますが、イギリスの国営放送BBCで『The House of Tiny Tearaways』というシリーズ番組がありました。様々な問題を抱える子どもとその家族3組が、同じ家で6日のあいだ衣食住を共にし、凄腕心理士のタニアさんの指導のもと、問題を解決していくという内容。

その中で、3歳半の緘黙の少年、チャーリーとその家族が出演。初めはみんなの前で全く声を出せませんでしたが、お母さんをかけ橋役にスモールステップを踏み、最終日には両親がいないところでも他の家族と話せるように!

克服方法はSLTのマギー・ジョンソンさんとアリソン・ウィンジェンズさんの共著『Selective Mutism Resource Manual』を元に、マギーさんが提案・助言したもの。スモールステップで克服していく様子を実際に映像で観ることができ(今映像が見当たらないんですが)、すごく参考になりました。

緘黙児(人)の問題は新しい状況に慣れにくいことですが、一定時期を同じ家、同じメンバー(20名以下)で過ごすことが、減感作療法(Desensitisation)となるようです。

日本では緘黙には病院治療が効果的(イギリスにはありません)といわれています。これも、一定期間同じ環境・人・場面が継続することで、減感作療法desensitisationをしているんだと思います。それほど大きくない病棟で、同じ顔ぶれの医師、看護師などのスタッフと、毎日少しずつ「コミュニケーションを取る・話す」ステップを踏んでいく訳ですね。

病院という環境ではなく、どきどきコテージみたいな環境でこれができるといいなと思います。また、親戚の家に泊まりに行ったり、来てもらったりするのも同じ効果が期待できますね。後は、どうやってその人にあったステップを踏んでいけばいいのかかな。

緘黙克服に大きなプレッシャーはNGですが、常に小さなプレッシャー(挑戦)に立ち向かうことが必須です。経験からいって、抑制的な気質の子どもは挑戦を止めてそのまま時間が経つと、以前の状態に戻ってしまう傾向が強い。言葉が出始めていたのに、途中で夏休みが入ったことで、また元に戻ってしまったというような例が多いんです。プレッシャーとは感じないまでも、CBTの感覚で「今日はこれに挑戦してみよう」という目標を持ち、コツコツ実行し続けていくことが大切だと思います。

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『バリバラ』の続編を観て

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2月も今日で終わりです。ラッパ水仙の一番花が咲き、春の兆しが感じられるようになったと思ったら、シベリアからの大寒気が。先週から最低気温が氷点下の日が続いています。今朝はロンドンも雪景色となり、午後は大雪警報…でも、こういう日に限って外出しなければならない用事がいっぱいという…。

1月下旬に放送されたNHK『バリバラ』の『どきどきコテージ』(前・後編)を観ることができました。

場面緘黙と吃音に悩む全国の若者たちに声をかけ、「コミュニケーションは苦手だけど人と関わりたい」と集まった男女8名。場面緘黙の女性と吃音の男性各4名が、三重県の海辺の町にあるどきどきコテージで2日間を一緒に過ごします。

昨年の場面緘黙特集に出演したユリエさんとサナさんも参加。吃音を抱える男性4名のうち、特に症状が顕著なトモヒロ君が、ムードメーカー的な役割を果たしていました。

1日目は顔合わせと自己紹介、そして2手に分かれての活動。写真が好きで緘黙の本も出版しているエリさんのグループは写真撮影に、もう一つのグループは横並びで釣りに挑戦。が、無言の女性たちに男性たちはどうやって対応していいのか分からず、まだまだぎこちない雰囲気…。

4人という小グループ、「カメラ」という媒体を通じたコミュニケーション、「横並び」という位置関係――こういった作戦いいですね!

緘黙の人は直接顔を見ながらのコミュニケーションが苦手です。人に感情を見られるのが怖くて、自分の気持ちを顔に出せず無表情になってしまう…。反応が薄いため、相手はどうしていいか判らず、「自分とやり取りしたくないんだ」という誤解を与えがち。

ワンクッション置いたコミュニケーションからスタートすれば、安心できますよね。そこから徐々に慣れて、少しずつ顔を見ながらのコミュニケーションに移行できればいいと思います。

1日目の夜、夕食を囲んで和やかな雰囲気にと思いきや、女性たちはとても緊張した様子。緘黙児(人)は人前でものを食べることが苦手なことが多いんですが、症状がひどい場合は「会食恐怖症」(せせらぎメンタルクリニックのサイトで詳しく説明されていました eseragi-mentalclinic.com/deipnophobia/」)だと思います。

イギリスでは場面緘黙を恐怖症のひとつとして捉える考え方が主流になっていますが、会食恐怖症も恐怖症のひとつ。CBTのスモールステップで少しずつ克服していく方法は、場面緘黙の治療法と同じです。

1日目の夜、男性たちはエリさんの本を読むなどして、場面緘黙についてより深く理解します。翌日は、筆記、カメラを通じてなど様々なコミュニケーションを許容し、女性たちのアシスト役に。

写真が好きなエリさんは、自らの写真アルバムを皆に見せ、筆談のスピードも分量もアップ。1日目に自分から話せなくて輪の中に入れなかったマイさんは、「一緒に言おう」と協力してくれた男子のおかげで一歩を踏み出すことができました。ユリエさんとサナさんも自分なりのペースと工夫で参加。

2日目は水族館へ。ここでも二手に分かれて行動しましたが、魚という媒体を通してのコミュニケーションはかなり和んだいい雰囲気に。最後に一緒にピザを作って食べる過程も、前日よりスムーズでグループとしての一体感ができていました。女性たちを気遣う男性たちの目が、とても温かかったです。

1泊2日はちょっと短いかなという気がするので、彼らが今後も個人的なお付き合いをしていけたらいいですね。

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身体的な緊張をほぐすには?

自己肯定感を培う

自己肯定感を培う

ふと気づけば、既に2月も半ば過ぎ。バレンタインデーももう終わってしまいましたね。

2018年の出だしは、受験生君がクリスマス休みからインフルで体調が悪く、赤信号のスタート。元々家で全く勉強しない/できないうえ、授業も休みがちになってしまいました。やっと治って通常運転になったと思ったら、2学期のハーフタームに突入。その間、確定申告や他の仕事が入って、気持ち的にアップアップ…。

ということで、前回の投稿からずいぶん時間が空いてしまいました。

さて、前回の続きです。緘黙のために身についてしまった無表情や身体の緊張を、まず家で改善できないか?――家では普通に話してるんだから、関係ないと思われるかもしれません。

でも、緘黙の人にとって、家は唯一普通の自分でいられる場所。いわば陣地です。身に着けてしまった自分を守る殻を、いきなり外で破るのはハードルが高いですよね。まず、陣地で「自分を認める」「自己肯定感を持つ」ことから始めるのがいいと思うんです。

まずは、自分を認めて好きになることから。「私は大丈夫」「なんとかなる」という基盤がないと、何をやっても不安がつきまといます。最近つくづく思うのですが、自分という存在がこの世に生を受け、今ここにいるってまさに奇跡。誰かに廻り遭うのもそうとうな奇跡ですよね。だから今ここにいる自分を大切にして欲しいです。

1) 自分に優しく

私には、自分は「すごく内向的」と宣言している友達がいるんですが、実は彼女の仕事は大勢の会社役員や大企業のビジネスマン・ウーマンを相手に講義したり、指導することなんです。自分の内向性と対峙するため、今までに様々なセラピーを試してきたそう。以前、SE(Somatic Experiencing ソマティック・エクスペアリエンシング 体細胞療法)について書いたのですが(『出生時のトラウマ体験と不安になりやすい気質』をご参照ください)、彼女がSEについて興味深いことを教えてくれました。

SEは主にトラウマの解消に効果的といわれていますが、彼女は「自己調勢力」を養うことを学んだそう。

「自己調勢力」というのは、簡単にいうと「心のバランスを調整する力」という感じでしょうか。例えば、落ち込んでいる時って気持ちがネガティブになりますよね?そういう時に、天気が悪いと余計に気分が落ち込んだり、家族のふとした言葉が気に障ったり…。すべてが自分に反するように感じて、負のスパイラルに陥りがちです。

(特に、不安の強い人は、悪い方へ、悪い方へと考えがちじゃないでしょうか?私自身その傾向があって、被害妄想気味でした)。

悩んでいる時に、何故こうなってしまったのか?どうして自分が?--などと嘆いたり、原因を追究するよりも、まず心を落ち着かせて、居心地をよくすることが大切だと。

少しでも気持ちを楽にするために、お気に入りの音楽をかけたり、好きな飲み物を作ったり。ペットの猫を抱っこしたり、好きなものに囲まれて、心の持ちようを変えてみるんだそうです。

滅入った気分はいつか自然に晴れますが、ただ待ってるだけでは先が見えません。誰かに慰めてもらいたくても、そういう時に限ってあまり声をかけてもらえないことが多いし…。というのも、内向的な人って自分自身の問題を人に打ち明けられない傾向が強いように思うんです。そういう点では、かなり損してますね。

「自分なんかダメだ」から、「なんとなく大丈夫かな」になれたら、問題を違う角度から見ることもできるはず。心が落ち着いていると視野も開けてくるし、チャンスが来た時にすぐ動けると思うんです。

2) いつもより積極的に

自分から家族に話しかけたり、いつもより長く話したり、家事を手伝ったりして、コミュニケーションを多くとりましょう。また、アプリや電話を使って声を出す練習をしてみてください(過去記事『声を出す練習を』を参照してください)

3) 大声で歌ってみる

おもいっきり大声で気持ちよく歌ってみましょう。大音量で音楽をかけられる状況だったら、一緒に歌っても恥ずかしくない?安心できる人(兄弟姉妹や親)と一緒にカラオケに行ってみるのも楽しいかも。

4) ひとりで外に出てみる

まずはコンビニやスーパーでの買い物など、外に出る機会を多く作りましょう。家族に声をかけて、一緒に外出してください。知り合いに遭遇することが怖いかもしれませんが、会釈できればOK。犬を飼っている方は、散歩係を引き受けてみては?少しずつ行動範囲を広げていくことで、自信がついて次のステップに進みやすくなると思います。

またとりとめのない文章になってしまいましたが、もう春がそこまで来ています。早春の花々の生命力を見て、感じて、パワーに変えたいですね。

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『バリバラ』を観て--身体的な緊張

身体的な緊張をほぐすには?

身体的な緊張をほぐすには?

NHK Eテレの『バリバラー場面緘黙編』を観た後、身体的な緊張をほぐすにはどうすればいいのか考えてみました。

緊張すると喉が閉まったような感じになって、体までいうことをきかなくなる…。そんな体験を重ねる毎に、話せず動けない自分が人にどう見られているかが怖くて、人と接する機会を避けるようになってしまう。

緘黙で苦しんでいる本人は、普通に人と接して話したい・友達を作りたいのに、ものすごく理不尽な状況ですよね…。

でも、事情を知らない人は、無言・無表情で身体を固くしている緘黙の人に、正直どう対処していいのか分からないんじゃないでしょうか?自分が受け入られていないように感じ、それこそ不安になって、そのシチュエーションを回避しようとするかもしれません。「この人は私と接したくないんだ」と誤解されることも多いかも…。

だからこそ、場面緘黙がもっと一般に広まって、もっともっと理解が深まることを願わずにはいられません。ひとりでも普通に接してくれる人が傍にいれば、周囲の見方や反応も変わってくるはず。

それにしても、緊張による無表情やぎこちない身体の動きを改善する方法ってないものでしょうか?

番組を観ていて、人と接する時の緊張度が低いほど、顔の表情やふるまいがより自然な感じになるのが判りました。人前で恥ずかしそうに黙っているのと、無表情でカチンコチンに固まっているのとでは、印象が随分違ってくると思うんですよね。

たとえ無言でも、「あの人感じいいな」と思ってもらえれば、相手の態度も違ってくるんじゃないでしょうか?

緘黙のために身についてしまった無表情と身体の緊張を、なんとか家で改善する方法はないものかと、色々探していたところ、次のような動画に巡りあいました。

ご存知かもしれませんが、大愚元勝という和尚さんの人生相談です。

ひとつめは、ほぼ引きこもりでニートの女性へのアドバイス。

話すことだけがコミュニケーションではなく、ボディランゲージ、絵を描くこと、歌うことなど様々な表現方法があるという言葉に、ハッとさせられます。

また、できないこと・持っていないものばかり追うのでなく、今できること・持っているものを磨くことを提案しています。

うまく話せなくても、素敵な笑顔があれば、思いやりのある手紙が書けばそれでいいと。処方箋として、鏡の前で笑う練習をすること(動画の10分あたりから)をあげています。

実は、私もこれを実行していた時期がありました。

息子が赤ちゃんだった頃、夜泣きが酷くていつも機嫌が悪く、母親の私の方が相当参ってました。睡眠不足で疲れはててしまい、一日を乗り切るのが精いっぱい。当時は、めっちゃ暗い顔をしていたと思います。

相談した保健婦さんのアドバイスは、「息子さんはちゃんと育ってるし、こんなに可愛いじゃない?あなたはよくやってるわよ。毎日鏡を見て、にっこり笑って自分に『頑張ってるね』って言ってあげて」というもの。

で、実際にやってみたら、ほんのりと暖かい気持ちになれたような…(息子の夜泣きは睡眠スペシャリストに相談したり、専門書を読んで、なんとか解消)。自己暗示かもしれませんが、一定の効果があったと思ってます。

気休めかもしれないし、何も変わらないかもしれませんが、気は持ちよう。まず試してみては?大愚和尚は、特に「女の子は」と言ってますが、男の子も是非試してみてください。

ふたつめは、何もしていないのにイライラのはけ口にされるという30歳の女性へのアドバイス

緘黙の人と状況は違うのですが、毎日5分正座をすることによって、身体を変える(22分あたりから)ことを提案しています。

私は昨年からピラテスを始めたんですが、やっているうちに姿勢が良くなったように感じています。みなさん若いんだから、試してみる価値大ありです。

みっつめは、精神的な多汗症に悩む18歳の男子高校生へのアドバイス

こちらも状況は全く違いますが、その元凶は不安です。自分の身体に起こることのしくみ(なぜ緘黙状態になるのか)を理解し、緊張した時にはそのことを考えるのではなく、何か別のことに集中することが問題の解決になるのではと説明しています(15分あたりから)。

大愚和尚さんの言葉、とても愛情がこもっていると思います。話だけでも聞いてみてください。

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『バリバラ』を観て--身体的な緊張

『バリバラ』を観て――身体的な緊張

明けましておめでとうございます。

えっ、もう2018年になっちゃったのか~という感じで始まった新年、もう6日目に入り、今日はクリスマス飾りをかたづけました。

そして、仲間の好意で昨年10月に放送されたNHK Eテレの『バリバラー場面緘黙編』を観ることができました。

10~20歳代の、いわば大人(ひとりは学生)の当事者さんと経験者さん計4名が出演。番組では長期間緘黙で苦しんだ・苦しんでいる人の問題が浮き彫りにされたように感じました。

私の印象に残ったのは、「話せないこと」よりも、身体的な緊張です。

不安や緊張を隠すため(?)に長年身に着いてしまった無表情な顔、そして委縮した身体の不自然な動き…。

無表情だから、困っていてもあまり困ったように見えない…。手足や体の動きがぎこちなくて、話さないことよりもそれ自体が目立つような…。

緘黙のせいで「話せない」だけでなく、他人と接する場面で身体が思うように動かなくなってしまう――そのため外出したり、誰かと会うこと自体が怖くなり、家の外に出ること自体を避けるようになってしまう…。社会生活と直結しているだけに、ものすごく深刻です。

出演したのは、母親と祖母としか話せない加藤さん(男性)、小学校時代に緘黙で今も雑談が苦手な田中さん(女性)、学校ではほとんど話せないほのっぴさん(女性)、外ではほとんど話せない遠藤さん(女性)。

学校や外でほとんど話せないのに、明るいライトに照らされたスタジオで、大勢の人の視線を浴びながら自己紹介?!

と思いきや、ほのっぴさんも遠藤さんも、少し時間はかかりましたが声を出すことができて大感動!

みんなが固唾をのんで見守る中、ものすごい勇気だなと思いました。

きっと、出演者たちの中で「変わりたい!話せるようになりたい!」という気持ちがめっちゃ強かったんだろうなと…。

自己紹介したとき、司会者たちの方を見られたのは、緘黙経験者の田中さんだけでした。

番組冒頭で普段の様子を取材された加藤さんは、音声アプリを使用。無理に声を絞り出そうとはせず、自分が「これなら出来る」と安心できる方法でコミュニケーションしました。

彼は新聞配達の仕事や講演会などの啓蒙活動もしていて、チャレンジ精神がすごいです。まず自分ができそうなことから始めて、行動を広げてきたようですが、そこでは得意のケン玉が大いに役立っているとのこと。やはり好きなこと・得意なことがあると強いですね。「好き」「やりたい」というエネルギーが、緘黙の殻を破る力につながるんだと思います。

専門家の高木先生が言われるように、同じ場面緘黙でもひとりひとり本当に違います。「この人ができるから私も、うちの子も」という訳にはいきません。

声を出せそうな人は音声アプリに頼らない方がいいと思うのですが、音声アプリで自信を得てから、声を出すことに挑戦という人もいるでしょう。信頼できる人に協力してもらい、自分の緘黙・不安状態をしっかり把握することが大切だと改めて思いました。そのうえで、その人に合う方法で少しずつステップアップしていくのが一番かと。

加藤さんの場合は、自宅でも、勤務先の新聞販売所でも、スタジオでも、カメラの前では笑顔は見られませんでした。小学低学年までは話せたそうですが、緘黙になった当時は朝自分の席に座ったら、トイレも行けず、給食も食べられず、一日中ずーっとそのままの姿勢で過ごしたとか…。完全な緘動状態で、毎日緊張でヘトヘトだったのでは?

小学校高学年になると自意識が強くなり、他人の目が気になります。「みんなに変に思われる」と余計に緊張しがち。そのため、緘黙・感動状態が定着する傾向が強くなってしまうのです。

彼の中で、人に声を聴かれることと同じように、感情を外に出すことが一番怖いのかもしれません。母親と二人きりで会話しているシーンでは、言葉が普通にでるだけでなく、身体の動きもずっと自然です。そこに取材スタッフが入ると、すっかり固まって手や腕の動きまでぎこちなくなる…。

そんな彼が、新聞配達の仕事を3年間続けて周囲の信頼を得、講演会や啓蒙活動を通して大勢の人と接しているのは、本当にすごいと思います。

ところで、新聞販売店の所長の「加藤君は大事な戦力」という言葉――本人はもちろん、緘黙の人やその保護者たちにも本当に希望が持てて嬉しいですよね。

どんどん自信をつけて、緘黙克服の力をため込んで欲しいです。

一方、ひとりでの買い物に挑戦した遠藤さんは、自宅で母親が隣にいる状態だと、緊張もそれほど強くないよう。言葉も出やすく、表情も和らいで笑顔に近い…。話すとき、スタッフと視線を合わせているな、というのが判ります。

買い物チャレンジでは、すっとお店に入って店員に会釈も。ただ、事前の分析で緊張レベル2(ふつう)と思っていた「服を選ぶ」行為が、実際やってみたら最難関のレベル5だということが判明。でも、スタッフの所にきて首振りでやり取りしている遠藤さんの緊張度はそれほど高くないように見えました。

急遽、服を決めることだけ母親と一緒にしたのですが、母娘で歩いている時はほっとして嬉しそう。服を決めた時言葉が出て、ひとりで試着した後に店員さんに笑顔で「大丈夫です」と言えました。

新しい洋服、とっても似合ってましたね。

気に入った洋服を手に入れるというワクワク感が、不安に勝ったように見えました。これからも、ひとりでお買い物したり、カフェに入ったりする挑戦をどんどん繰り返してステップアップして欲しいです。もし不安が強い場合は、最初だけお母さんにお店の外で待っててもらったり、店の近くにいてもらえばいいんじゃないかな。

和らいだ表情だと、周りの人も親しみが持てて、とっつき易いですよね。

次回は、どうやったら身体的な緊張をほぐせるか考えてみたいと思います。

クリスマスまであと2日

今年もクリスマスまであと僅かとなりました。ここのところ、クリスマス会や忘年会が続いたうえ、カード書きと家族&親戚へのプレゼント選びに追われる日々…。やっと9人分のプレゼント(各自複数個)を買い揃えてラッピングを終え、恒例のクッキーも焼き、ほっと一息ついたところです。

    今年最後の授業は水曜日に終了。教室の近くにある森の樹木はすっかり葉を落として冬の様相。

家々のドアには、それぞれ趣向を凝らしたリースが飾られて

   フルーツを使った香り高いクリスマス飾り。赤ワインにオレンジなどの柑橘類やスパイスを入れた暖かいモルドワインが出回る時期です

年の瀬を迎える12月はどこの国でも慌ただしいと思うのですが、イギリスではクリスマス前がそのピーク。海外でクリスマスホリデーを過ごす人も多く、美術館などの観光スポットがひっそりする時期でもあるのです。ゆっくり鑑賞できるうえ、ショップもカフェも人がまばら。プレゼント選びもできるので、一石二鳥です。

      

クリスマス飾りが施されたテート・ブリテンの正面玄関

昨年も出かけたのですが、冬休みに入った息子に付き合ってもらい、テムズ河南岸にあるテート・ブリテンへ。彫刻家、レイチェル・ホワイトレッドの個展と普仏戦争を逃れてロンドンに亡命したフランス印象派アーティスト達の作品展(1870~1904年にイギリスで制作されたもの)を観てきました。

レイチェル・ホワイトレッド(1963年~)のインスタレーション

その昔―イーストエンドでハウスシェアをしていたのですが、1993年に地区開発のため近所にあった一連のテラスドハウスが壊された際、1軒だけ残した家を利用して彫刻を造ったのがこのアーティストでした。作品『家』は、家の内側に液体コンクリートを流し込んで型を取り、外側にある家自体を全部取り壊したもの。当時、賛否両論を呼んで大きな話題に。ガランとした空間に巨大なコンクリートの箱を積み上げたような家がポツンと立っていたのが印象的でした。

    何だかガランとしていますが、準備中の荷物みたいなのが彼女の作品です

今日は、仕事納めをした友人と南ロンドンにあるダリッジピクチャーギャラリーまで足を伸ばしました。お目当ては、かのムーミンを生み出したトーベ・ヤンソン展。本当はイラストレーターではなく、画家を目指していたんですね…。小規模な展示会でしたが、複数の自画像やムーミンの原画、ムーミンが生まれるきっかけとなった第二次世界大戦中の雑誌の表紙絵など、貴重な作品を観ることができました。

ボケボケですいません…

会場は撮影禁止だったので、廊下にあったステッカーを撮影

イギリス人の友人も大のムーミン好きで、ショップで何を買おうかと迷うことしきり。私は自分へのクリスマスプレゼントに、絵本と塗り絵付きの日記帳を購入しました。

     追記:購入した絵本と日記帳とトランプ。青い表紙の絵本『誰がトッフルを慰めるの?(Who Will Comfort Toffle?)』は、ムーミン谷を背景になかなか周囲になじめない孤独な少年、トッフル を描いた物語です。なかなか自分に自信が持てないお子さんに読んであげるといいかもしれません。

それでは、みなさん素敵なクリスマスをお過ごしください。

 

 

クリスマスの季節再び

早いもので、今年も残すところあと一ヶ月を切りました。クリスマスが近づくにつれ、ロンドンの街全体が心浮き立つ雰囲気に包まれます。年の瀬で気ばかり焦るのですが、クリスマスの飾りつけもカードも、贈り物の購入もまだスタート地点に立ったまま…。

先週、友達に誘われて久しぶりにロンドン中心部のオックスフォード・ストリートに行ってきました。デパートが立ち並ぶこの通りは、ロンドンで最も賑わうショッピングストリートのひとつ。いつ行ってもすごい人混みなので、用事がある時以外は避ける場所です。

 

  各デパートがクリスマス商戦を競い、ウィンドーを覗くのが楽しみ

待ち合わせは庶民的なデパート、ジョン・ルイスの屋上。ルーフトップガーデンにクリスマス飾りを施したログキャビンが出現し、ドリンクや食事を楽しめるのです。私は初めて行ったのですが、繁華街のデパートの屋上とは思えない、ほのぼのとしたムードでした。

 

ジョン・ルイス店内のクリスマスデコレーション

   

4時半を回って辺りが薄暗くなると、電飾が輝いてなかなか幻想的。メインのカフェに入り、ホットチョコレートで乾杯しました。カフェの外壁は透明のプラスティックで覆っただけなので、風が吹く度に冷たい隙間風が…。防寒対策のブランケットがあって大助かりでした。平日だったためか空いていて、「カウントダウンに入ると混むから、今のうち」と日付を決めた友達の狙い通り。久しぶりのおしゃべりを楽しむことができました。

   すっかり暗くなった大通り。節約のためか昨年のクリスマスライトを再利用

  

リージェント通りの天使のイルミネーションも昨年と同じ

クリスマスまであと20日あまり…仕事や用事をはやく済ませて、クリスマスホリデーをゆったりと過ごしたいものです。

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その16)トイレの問題

緘黙児が学校でトイレに行くのを我慢することは、かなり多いようです。息子も例にもれずそうでした。帰宅するなりトイレに駆け込むことが多かったです。

担任に訊いたところ、「トイレタイム」を設けて、行きたい子は行くよう促しているとのことでしたが…。本人がそのことに触れられるのを嫌がるので、「ちゃんとトイレに行こうね。怖くないよ」と言ってあげるくらいしかできませんでした。

息子は普段からあまり頻繁にトイレに行く子ではなかったのですが、我慢するのに慣れたのか間隔がより長くなったような…。学校に毎日持参する水筒の水はあまり減ってなくてー多分、トイレに行かなくていいように水を飲むことを控えてたんでしょうね。

お粗相をしたことはなかったので、先生もそこまで気にかけてなかったと思います。もし学校でお漏らししてしまったら、4、5歳といえど本人はすごく傷つくはず。親としては、極力阻止したいですよね。

緘黙児は話せないから「トイレに行きたい」とは言い出せないし、基本的に目立つことを極端に嫌うため、自分から行動することは難しいのです。「トイレカード」を使うという方法もありますが、自主的にカードを見せてトイレに行ける子は少ないのでは?

先生が時間を見計らって誘ってあげたり、クラス全体にトイレタイムを促したりする方が、本人は行きやすいと思います。目立たないように、さり気なくがポイントです。

ちなみに、私が3年ほど前にレセプションクラスで自閉症の男の子のお世話をした時は、様子を見つつ1時間半おきくらいにトイレに誘ってました。毎日お漏らししていたのが殆どなくなって、本人も私もほっと一安心。心なしか、クラスでのびのびできるようになったような…。

あと、教室で緘動状態に陥り、大人が手を添えないと何もできないという緘黙児もたまにいます。声を出すことだけでなく、体を動かすことも、酷くなると机から動くことすらできなくなってしまうのです。

緘黙と同様、時間が経てば慣れて動けるようになるという保証はありません。「そのうち慣れる」と放置しておくと、症状が定着してしまう恐れもあります。年齢があがると、パニック障害など他の不安障害を併発する可能性も出てくるので要注意。

緘動の子どもには、声掛けをしたり、手を添えたり、着替えの手伝いをしたり、優しく見守ってくれる大人が不可欠だと思います。

イギリスの学校だと、担任の他にTAがいるので大人が介入しやすいですが、これも学校の方針や予算、クラスの状況次第。緘動が長引くと学業や社会性に大きく影響してくるので、SENCo(特別支援コーディネーター)が個別教育プランを立てたり、CAMHS(Child and Adolescent Mental Health Service)への受診を勧められるケースが多いよう。

私が知っているイギリスの緘黙児の中には、緘動状態が1年以上も続いたため、保護者が学校にかけあった末、EHCplan(Education, Health and Care Plan 教育・健康ケアプラン)に申請をした子もいます。認可されれば、地区の教育委員会から特別予算がおりるので、その子のためにTAを雇うことが可能になります。

日本だとクラスに大人は担任ひとりということが多いと思うのですが、どの程度の支援をしてもらえるんでしょう?

学校で動けない・話せない本人は本当に辛いと思うので、保護者も積極的に学校と連絡を取り合って状況を改善させて欲しいと思います。子どもは親にとっては唯一の存在ですが、学校では「クラスの中のひとり」でしかありません。忙しい担任や学校がどのように対処しているのか見定めて、「これはマズイ」と思ったら、早めに介入してください。

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息子の緘黙・幼児期4~5歳(その15)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その15)今見ても切ない…

この春やっと改築工事が終わったうちの屋根裏部屋は、17歳になった息子が陣取っています。2階の部屋から移った際、「もう要らないから」と山積みにしたのは、本箱の片隅にとっておいた幼稚園時代からの絵や学習帳など…。

捨てちゃったら、大人になってから懐かしく見返すことができないのに――。

(ものを捨てられない私は、むかしから整理整頓が苦手。対して、主人と息子は実にキッパリと持ちものに「不用」の烙印を押し、ネットオークションで売ったり、捨てたり、人にあげたり。後で、「あーっ、しまった!」と後悔することも少なくありません)。

ちゃんと箱に入れて物置にしまおうと思いつつ、ずーっと手つかずのまま…。中を見てみたら、学校が作ってくれたレセプション時代の記録ブックが出てきたのです。

当時4歳の息子の絵や写真に加え、先生の言葉も書かれています。最初のページには、2005年2月上旬の写真が。1月後半に入学してその2週間後、場面緘黙になり緘動もあったころです。

「一日のほとんどカーペットに座ったままで、周囲の子ども達のすることを見ています。仲間に入ろうとせず、大人の誘導が必要」と担任の言葉。

床のカーペットにひとりポツンと座り込み、困ったような顔で周りを見ている息子の姿…。

今見ても、とても切ないです…。

 

知らない子達の中、不安で自分からは動けないんです。

仲間に入りたくても、入れないんです。

緘動だったんです。

同ページのもう1枚の写真には、「大人が何度も声掛けしても、自分の名前を書くのに30分以上かかりました」とあります。名前は幼稚園の頃に書けてたのに…。

(幼稚園の記録ブックを見ると、親友と遊んでいる写真が多く、この頃は緘動ではなかったことが判ります)。

でも、次のページには活動テーブルに座ってジグソーパズルをしたり、字を書く練習をしたり、玩具で遊んでいる写真があって、ほっ。

日付は2月下旬頃からのもので、よく見るとお隣にいつも同じ男の子がいるのです。入学して2週間弱、「やっとお友達ができました」と担任に言われたB君でした。

(B君も早生まれで1月に入学。後にB君ママから聞いたのですが、息子が緘黙・緘動になった頃、B君は水疱瘡にかかって10日ほど学校を休んでいたとか。やっと親しくなりかけた子が突然いなくなったことも、息子の心理に影響したかもしれません)

レセプションクラスは就学準備コースのようなものなので、幼稚園とほとんど変わりません。子ども達は好き勝手に教室内の複数の活動テーブルや専属の中庭を移動して、遊びながら学びます。その中に、算数や国語の基礎をやらせる活動もあり、先生やTAが「サイコロを転がして、1から6までの数字を書く」というような課題をさせます。

みんなが好き勝手にあっちこっち動き回り、複数の課題を簡単にこなしているのに、息子は活動テーブルに行くのも最初はTAに誘導されていたよう…。B君となら一緒にいても大丈夫らしいと気づいてくれ、同じ活動をさせる配慮してくれたのだと思います。

緘黙ではなくても、不安を感じている子どもにとって安心できる環境作りは本当に大事。今考えても、とってもありがたいです。

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息子の緘黙・幼児期4~5歳(その1)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その2)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その3)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その4)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その5)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その6)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その7)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その8)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その9)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その10)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その11)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その12)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その13)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その14)

息子の緘黙・幼児期4~5歳(その14)褒めて自信をつけさせる

この秋は例年に比べ暖かでしたが、11月に入ってさすがに冷え込みが厳しくなってきました。森の中の散歩道は、高い樹々からハラハラ散る葉っぱで埋もれています。イギリスでは落葉樹はそれほど紅く紅葉せず、黄色くなって散ることが多いよう。

     しーんと静かな森に、時折カサコソとリスが動き回る音が

さて、息子の緘黙の続きです。

学校も、母親の私も、どうして息子が教室で固まって動けなくなったのか理由が判らないまま、支援がスタートしました。

以前、教室で息子と一緒に過ごした際、息子の顔が能面のようになったのを見て心底驚いたことを書きました(詳しくは『息子の緘黙4〜5歳(その10)』をご参照ください)。これに加え、もうひとつ驚いたのは、息子の描く絵が変わったこと。

息子は割とお絵描きが好きで、黄色やオレンジなど明るい色彩を使ってカラフルな絵(線画っぽい)を描くことが多かったのです。でも、この時期に学校から持ち帰ってくる絵は、まるで別人のもの。色使いが黒っぽくなり、人や動物などの対象ではなく細い線でグルグルと塗りつぶしたような感じに…。

一番ショックだったのは、赤黒いボールペンで一面を塗りつぶしたような絵。たまたま近くにあったボールペンを手にしただけかもしれませんが、「えっ、なにこれ?!」と不安になりました。もしかしたら何か心理的な問題を抱えているのかもと、怖くなったのです。

この頃、息子と同じような子はいないものかと、毎日深夜までネットサーチをしていました。自閉症児のお母さん達が綴るブログを読み漁って、その子育ての大変さに驚かされ、ふと気づくと午前1時を周っていたり…。でも、なんか違うんですよね。

主人は親身になってくれないし、ひとりぼっちで暗いトンネルの中にいるような心持ち。寝不足も手伝って、毎日が不安でたまりませんでした。

でも、癇癪は増えたものの、家での息子は以前とあまり変わりません。学校に行きたくないとは一度も言ったことがなく、毎日普通に登校してました。学校が終わって教室から出てきた後、クラスが違う幼稚園時代の親友T君と校庭を駆け回る姿を見るのが救いでした。

T君のママには、息子がクラスで動けなくなってSENCOとミーティングをしたことは黙っていました。放課後は以前と変わらず動けて遊べているので、なんとなく言い出せなかったのです。

ある日、教室で保護者が子どもの様子を見学できる日がありました。たまたま担任が息子の側にいたんですが、二人の女の子がやってきて、「先生、◯◯君はどうしてやらないの?」と息子が課題をしないことに触れたのです。

すると、先生は「◯◯君は準備ができたら自分でするから、放っておいてね」とにっこり。女の子たちは納得したのか、すぐどこかに行ってしまいました。その言葉に、「さすが個人主義の国だな」と妙に感心した記憶があります。

担任は大学を卒業したばかりの若い先生でしたが、姉御肌というか、包容力があってとても頼りがいのある女性。よく泣いてる子を膝にのせて(本当はダメなんですが)いたのを覚えています。

「日本語で”It’s all right”は何ていうの?」と私に訊いてくれて、息子にはよく「大丈夫、大丈夫」と日本語で声かけしてくれていたよう。それから、息子が何かできた時には、ご褒美の黄色いCertificate(頑張った子への証書)を気前よく出してくれました。

毎週何枚かCertificateをもらってくるのですが、ある日の放課後クラスの子が寄ってきて、「あ~、僕まだ1枚しかもらったことない!いいな~!」と羨望のまなざし。後でクラスのママさんに訊いたら、普通はそんなに頻繁には出してもらえないんだとか…。全然知りませんでした。

イギリスではよく「褒めて育てろ」と言うんですが、不安を抱えている息子に自信を持たせようとしてくれてたんですね。

そんな温かい支援のおかげと、学校生活への慣れもあってか、息子はなんとか動けるようになり、徐々に課題もこなせるようになっていきました。緘黙は続きましたが、緘動は1、2ヶ月で脱出できたようです。

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