遺伝的な要因 – 行動抑制的な気質

前のエントリーでいきなり息子の遺伝的な要因を書き込んでしまったのですが、場面緘黙の遺伝的な要因といえば、第一にくるのが「抑制的な気質」です。

緘黙の本をのぞいてみると、

緘黙児の多くは、不安になりやすい気質、つまり「抑制的な気質」を生まれながらに持っているのではないかと考えられています。

抑制的な気質の子どもは、脳の扁桃体(amygdalaアミグダラ)というアーモンドの形の部位の反応閾値が低く、刺激に対して過敏に反応してしまうのではないかという研究仮説があります。動物は、恐怖を感じるような出来事に出会うと、危険のシグナルを脳の扁桃体が受け取り、自分の身を守ろうとする働きがあります。この子どもたちは危険を感じる程度が、普通の人よりも敏感で繊細なために、小さな刺激に大きな不安を感じてしまうのではないかと言われています。それで、家では普通なのに、学校や人が集まる場所、特に新しい場面で、不安を感じやすいのです。

『場面緘黙Q&A』 かんもくネット著/角田圭子編 (学苑社 2008年)より引用

「ケイガン(Kagan 1989)は、乳児の気質に関する研究の中で、見知らぬ人や慣れない状況に適応するのに時間がかかる乳児を”行動抑制的”としています。全体の10~15%の子どもがこの気質を持つグループに属しており、近年の研究結果によれば、”その傾向は生涯続く”ということが示されています。

この子どもたちは変化への適応力が乏しいため、ひとつの発達段階から次の段階に進むのが難しいと考えられます。そのため、場面緘黙の発症時期がたいてい3歳頃であることは驚くにあたりません。子どもはちょうどこの時期に家庭の保護から出て、初めて不慣れで形式ばった状況の中で人と話したり、交流したりすることを期待されるからです。

『場面緘黙へのアプローチ-家庭と学校での取り組み-』(Rosemary Sage & Alice Sluckin/編著 かんもくネット/訳 田研出版 2009年)より引用

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場面緘黙という症状が現れ、それが固定化する主要因となるのが、抑制的な気質だと考えられています。今年5月に改訂されたDSM-Vでは、不安障害のカテゴリーに移行し、場面緘黙は不安がもたらす症状だということが明確になりました。

ケイガンによると、世界中の子どもの10~15%が「抑制的な気質」に生まれついていることになります。が、場面緘黙の発症率(欧米では5~7%という説が多いようです)を考えると、その全員が場面緘黙になる訳ではありません。

抑制的な気質に生まれついた子どもは、場面緘黙になりやすい要素を持っている。では、同じような気質に生まれついているのに、場面緘黙になる子とならない子がいるのは何故なんでしょう?

抑制的な気質も程度の差があり、その気質が強いほど不安の度合いが強いのかもしれません。

でも、それ以上に大きな影響を及ぼすのは、『場面緘黙Q&A』に書かれている子どもひとりひとりによって異なる「神経生物学的要因」と、「環境的な要因」のようです。