環境的な要因

環境的な要因には、家庭環境及び社会的な環境の要因が考えられます。

『場面緘黙Q&A』では、環境的な要因を下記のように説明しており、引越しや入学など、環境の変化による要因も全て含めています。

緘黙の発症にかかわる環境要因は、長期間にわたり継続的、あるいは断続的に影響を与えたものから、ある時期作用したもの、1回の出来事まであり、実際にはそれらが組み合わさっています。環境要因は、子どもの主観的体験がどうだったかという視点で考えることが必要と思われます。

  • 急激な環境の変化
  • 恐怖体験
  • 社会的要因
  • バイリンガル環境
  • まれに不適切な家庭環境

『場面緘黙Q&A』 かんもくネット著/角田圭子編 (学苑社 2008年)より引用

一方、マギー・ジョンソンさんの分類では、環境的要因は子どもの素因的要素に含まれ、環境の変化や恐怖体験などは、引き金となる誘発的要素として分けられています。

1) 素因的要素

  • 行動抑制的な性質(遺伝的&環境的要因
  • 心配性、繊細(神経質)、完全主義的な傾向
  • 家族や親戚に内気な人や場面緘黙だった人がいる
  • 不安障害など、家族に心理的な病気を抱える人がいる

 2)   誘発的要素(引き金となる要因)

  • 入学や入園
  • 別離や事故などの出来事やトラウマ
  • 引越し
  • 社会的/文化的な違いに関する気付き
  • 言語の遅れに関する自意識の芽生え
  • 他の児童からのからかいなど、否定的なリアクション

ここでは、狭い意味で「素因的な要素」としての環境的な要因をあげてみたいと思います。

  • 家庭内に内気な人が多く社交的ではないため、人と接する機会が少ない
  • 親戚縁者や友達との付き合いが少なく、親しい大人や子どもが少ない
  • 園や小学校に入る前に、児童館や公園などで他の子どもたちと接する機会が少なく、子ども同士の交流に慣れていない

大人や子どもに接する機会が少ないから緘黙になりやすいという訳ではありません。が、抑制的な気質の子どもは新しい人や環境に慣れにくいという特性を持っています。自分から話しかけたり、集団の中に入っていくのが苦手な子が多いのです。そのため、入園や入学、引越しといった環境の変化が、大きなストレスになります。

抑制的で引っ込み思案な子どもには、幼い頃から同年代の子と遊ばせたり、小グループの活動を体験させるなど、子供同士の交流や人に会う機会を多くしてあげることが大切ではないかなと思います。園や小学校に入る時、同じクラスに仲良しや知り合いの子がいれば、新しい環境から受けるストレスを少しでも和らげることができるのではないでしょうか。