マギー・ジョンソンさんの講演から『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その1)

この3月に開催されたSMIRAコンファレンスで、イギリスの緘黙治療の第一人者、マギー・ジョンソンさんが、緘黙で苦しむ小学校中・高学年生&ティーンの支援方法について講演されました。その内容をKnetと拙ブログに公開する許可をマギーさんから得ましたので、概要を少しずつ翻訳してご紹介したいと思います。

内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。なお、年が上の子どもへの支援については、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』で詳しくカバーされていますの第二版(2015年春/夏出版予定)に新項目として掲載される予定です

《緘黙に苦しむ小学校中・高学年生&ティーンの支援》

場面緘黙アドバイザリーサービス 言語療法士マギー・ジョンソン著                         ケント州コミュニティヘルスNHSトラスト

成功の鍵となる指標 (社会不安障害の予防)

  1.  自己評価をあげる
  2. 場面緘黙を理解し、自分でコントロールできる”症状″と捕らえる
  3. 自分が変わるための触発剤(事象/目標/人)
  4. 家庭と学校の協力的な環境
  5. 専門家を含む支援ネットワーク
  6. 話すことへの恐怖を克服する戦略

*みく注: まず自己評価をあげ、子どもを取り巻く環境を整えてから、支援を開始します。その際、子ども自身が自覚を持って場面緘黙に向き合う必要があります。第三者の大人の支援者を得、できれば専門家にバックアップしてもらい、しっかりした戦略を立てて「話す恐怖」を克服していくというのが理想。でも、全部の条件を満たすのは難しいため、できるだけ多く組み合わせて、ということ。

特別支援教育が浸透しているイギリスの学校においても、条件をそろえることはなかなか難しそうです。というのも、学業に支障がなく問題を起こさない緘黙児は、放置されてしまう傾向が強いからです。イギリスでも、特別支援の予算やマンパワーが限られているため、後回しにされるケースが多いよう。まだ特別支援制度が徹底していない日本の学校で、環境を整え、支援ネットワークを作るのは、かなりハードルが高そうです。

1) 自己評価をあげる

★大人のメンター(保護者以外の指導者・支援者)を得る

  • 純粋にその子が好きな人/子どもとの関係を楽しめる人
  • 子どもに自分の価値を解からせることができる人
  • 子どもを信じ、子どもの自信を養わせることができる人

*みく注: 保護者では関係が近すぎるため、第三者の頼れる大人との繋がりを作ることが重要とのこと。保護者以外の大人に認められることは大きな自信になります。また、将来自立していくための足がかりにもなるでしょう。

イギリスでは、運が良ければ学校でTA(教員助手)が緘黙児の支援に当たります。日本では、学校でどんな支援を受けられるかは、担任の力量による部分が大きいかもしれませんね。

学校外で親しい親戚や知人などの協力を得られるといいんですが、多忙な暮らしの中で密に連絡を取るのは難しいかもしれません…。面倒見のいい習い事の先生、信頼できる家庭教師なども助けになりそうです。

★友達関係を広げる

  • 社会的な適性の確認
  • 同世代の子どもとのふれあい/会話の経験

<友達を作る方法>

  • 目的のある活動や共通する興味を通じて
  • 大人の仲介を通して
  • (ASDが併存する場合は)場面緘黙を認識させた後、特定のソーシャルスキルや会話練習のグループを通じて

*みく注: 仲の良い友達がいるかいないかが、子どものメンタルヘルスに影響してきます。子どもが好きなこと、得意なことを伸ばすように努め、共通の趣味や目的を持つ仲間を見つけることができるといいですね。学校の友達もですが、習い事や趣味関係の友達、違う学校に通う幼馴染、従兄弟など、学校外で自分を理解してくれる同世代の子がいれば、自己評価も随分違ってくると思います。

親にはバカバカしいと思える知識が、子どもの間では尊敬されることも。例えば、ASD児専門校に遊戯王博士と呼ばれる子がいるんですが、共通事項があれば違う学年の子とでも話が弾み、方々の大会に参することで行動範囲も広がっています。何より、好きなことが生活の楽しみ・励みになっています。子どものやりたいことを尊重し、奨励しましょう。

ASDやその傾向がある子どもは、将来の円滑な人間関係を築くためにも、ソーシャルスキルを学ぶことが重要になってくると思います。