ASD児と緘黙児--類似する特性?(その2)

7月6日に書いた記事の続きです。2011年に行われたマギー・ジョンソンさんのワークショップの資料を掘り起こしてみたら、ノートにこんなメモがありました。「ASD児とSM児の持つ特性はオーバーラップするところがあり、ASDとSMを併発しているケースは以前考えられていたほど少なくない」。”not so rare as previously thought” とあるので、「多くはないけれど、時々見られる」程度の感じじゃないかと思います。

これは、「日本では広汎性発達障害と診断されるSM児が多いようなんですが、イギリスではどうですか?」という私の質問に対する答えでした。ここ数年来、マギーさんは主にセカンダリー(11歳~16歳)以上の子どもの治療を担当していて、あまり改善が見られない場合は、ASDが併存しているケースが見られるとも…。

緘黙の治療効果は小学校中学年から緩やかになり、年齢があがるにつれて回復が難しくなると言われています。特に、小学校高学年から中学までは、プレ思春期と思春期が重なるため、周りの目が最も気になる時期。高校や大学進学を期に自力で立ち直るケースも多いようなので、改善が見られないからASDということではありません。特に、日本では保護者と学校・専門家が連携して治療に当たるのが難しいため、年齢が上の子の緘黙治療はより困難といえそう…。

下記は私がとったメモからの抜粋です。急いで書き写したので、間違いがあるかも…。

<SM児とASD児のオーバーラップする特性>

  1. 根本的な気質(same underlying disposition 不安になりやすい抑制的な気質?)
  2. 自分なりのルールへのこだわり(rule bound 食べ物、服装などを含む)
  3. 感覚過敏 (sensory sensitivity)
  4. 視覚的な説明やチェックリストが必要 (need visual explanation/ checklist SM児の場合、不安のため情報を受信できないこともある)
  5. コミュニケーション量の問題 (issues with communication load認識プロセスのレベルに問題があるため、一度に大量のコミュニケーションを処理できない)                           ASDを併発しているSM児の中には、多量で複雑なコミュニケーションを処理できないため、緘黙傾向に陥る子もいる。解決法 → 一度に大量の情報を与えないよう、「コミュニケーション量」を減らし、混乱しないように早めに助け舟を出す。自分で選ばせるなど、子ども自身に主導権を与える。

*注:どのSM児も1~5までの特性を全て持っているということではありません。上記の事項が類似していることが多いということだと思います。また、上記が当てはまるからといって、自閉症スペクトラムという訳ではありません。④⑤には言語の問題が含まれるかもしれませんね。

例えASDが併存する場合でも、治療や支援のアプローチは同じということ。ただ、純粋な緘黙と比べて回復はゆっくりになります。また、緘黙を克服してもASDが治る訳ではないので、ASDに対する支援も必須です。とにかく、緘黙とその背景にある問題を早期に発見し、早期介入することが大切ということでした。

うちの息子の場合を考えてみると、1、2(特に服装と髪型!)、3、そしてう~ん、同時に複数のことをするのが苦手なんですが、5 の傾向もあるのかな?視覚優位でもあるようだし…。

「ASD児に有効な支援はSM児にも役に立つことが多い」ということで、1~5 に問題がある時は下記のような対策が立てられるかなと思います。

  • 不安を減らす呼吸法や自分なりの対処方法を考えさせる
  • こだわりを責めず、徐々に納得させて自分なりに対処できるようにする
  • 新行事などがある時は、予め予定を伝えておく
  • 写真や絵、物を使って具体的に説明する
  • 指示する時は短かめに、解かりやすく
  • 一度に沢山のことを言わず、ひとつずつ順番に

もっとたくさんの対処法があると思うので、自分の子どもに合うような対策を考えられるといいですね。

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