場面緘黙が増加の傾向?

先月の場面緘黙啓発月間では、場面緘黙が多くの新聞・ラジオに取り上げられました。その中で、特に気になったのが10月26日のDaily Telegraph紙で紹介されたこの記事です。リンク: http://www.telegraph.co.uk/wellbeing/health-advice/selective-mutism-health-parent-child-advice

Isla母親のシャーロッテ・マダムスさんと場面緘黙の娘アイラちゃん 写真: ©Andrew Crowley

『 場面緘黙の子どもを持つということ(What it means to have a child with selective mutism)記者:インディア・スタージス』と題された記事に登場するのは、6歳の場面緘黙の少女、アイラちゃんと母親のシャーロッテさん。場面緘黙になったのは3歳のころです。

アイラちゃんの緘黙の原因は、生まれもった抑制的な気質に加え、気管支系が弱く幼少の頃から病院通いをしたことが関与しているのでは、とシャーロッテさんは考えています。というのは、アイラちゃんが最初に話さなくなったのが医者だったとか…。

喘息と乳製品などのアレルギーを持つアイラちゃんは、学校で吸入器やアレルギー薬が必要になっても先生に言えません。以前、喘息の発作を起こした時は、お迎えの時間まで2時間も咳続けたとか。それ以来、「吸入器をください」「喉が乾いた」「トイレに行きたい」などのキューカードを使って意思表示をしています。

シャーロッテさんはインターネット検索で「場面緘黙」を探しあて、言語療法士と小児心理士に相談。学校で唯一口をきけるのは11歳の姉だけでしたが、今ではTA(教育補助員)とディナーレディ(給食のお世話係)に囁やけるようになったそう。

↓ この記事で特に興味深かったのは、下記の記述です。

”What’s more, Alison Wintgens says instances of selective mutism in this country are on the rise.

There is no doubt there are more stresses and pressures around,” she says. “Schooling has become more verbal because of changes to the curriculum. You can’t be a silent achiever any more; you have to work in groups, give speeches and present experiments. While a good thing (selective mutism aside) it puts pressure on those who struggle with social interaction.”

「『場面緘黙リソースマニュアル』の共著者、アリソン・ウィンジェンズさんは、イギリスにおける場面緘黙の発症率は増加の傾向にあると語っています。

その原因として、子どもへのストレスやプレッシャーが増えたこと、カリキュラムの変更により、学校教育で口語に重点がおかれるようになったことをあげています。今や、大人しいけれど勉強ができるだけでは不十分—-グループワークでの貢献、スピーチや実験の結果発表なども要求されます。(緘黙の問題を別にすれば)これは良いことではありますが、社会的な交流が苦手な子どもにはプレッシャーになります」

この傾向は、多分場面緘黙だけではなく、自閉症スペクトラムや学習障害、ADHD、協調運動障害、不安障害などを含めた全般的な発達に関わる障害&発達凸凹でも同じではないか—-と私は思っています。その理由は、今までTAをした4つの小学校の各クラスにおいて、いずれも30人程度のクラスに、5人くらいグレイゾーンの子どもがいたから。

「あれっ、この子は別に問題がないようにみえるのに、どうして授業についていけないのかな?」という子どもが必ず4~6人いるんです。多くないですか?例えば、活発で話し言葉には全く問題がないのに、何度教えても自分の名前を判別できない5歳児とか、簡単な足し算ができない5年生とか…。地方でずっとTAをしている友人に訊いてみたところ、「そうなのよ。すごく増えてると思う」という答えが返ってきました。

これはイギリスだけではなく、多分世界的な傾向なんじゃないでしょうか?杉山登志郎著の『発達障害のいま(2011年講談社現代新書)』では、第一章「発達障害はなぜ増えているのか」の中で、その理由が詳しく記述されています(この本に関連する記事は下記のリンクをクリックしてください)。遺伝子やらDNAやら、環境要因やらが複雑に絡まっているよう。多分、住居や食べ物に使われている化学物質とか、ライフスタイルや家族・コミュニティ形態の変化なども影響してるんでしょうね…。

もうひとつ目新しいなと思ったのは、犬を使ったアニマルセラピー。緘黙の子と犬を引きあわせて、「お手」や「お座り」などの言葉がけをさせるというもの。人間相手ではなく、可愛い犬と一緒だったら、不安度がぐっと減りそうですね。

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秋から冬へ

11月に入ってからもう9日間が過ぎてしまいました。今年はエルニーニョ現象の影響なのか、例年よりかなり暖かな気候が続いています。ここのところ雨が多く、毎日どんよりした曇り空ばかり。でも、10月中はイギリスには珍しいほど、気持よく晴れた日が何日も続きました。

そんないい天気に恵まれた10月の半ば、ブルガリアから友人家族がやってきました。10日間ほどうちに滞在して、休みをとった主人と一緒にロンドン巡り。昔の思い出の場所だそうで、リスの餌を持ってセントジェームスパークに何度も行ったとか。ロンドンに公園多しといえど、セントジェームスパークほど人馴れしているリスがいる公園はないかも…。なでられるほど至近距離まで近づいてきたり、人の手から食べ物をもらうリスもいます。

ある日の午後、彼らの三歳になる娘を男性陣に任せて、女二人で散歩に出かけることに。彼女に初めて会ったのは、5年ほど前にブルガリアに行った時。山登りが好きな彼ら(当時はまだ子どもがいなかった)は私たち家族をリラ山脈に案内してくれたのですが、これが本当にキツかった(笑)。朝10時に山小屋を出て、夜10時に戻るまで誰も一度もトイレに行かず、延々と歩き続けた想い出は一生ものです。今回は、澄みきった高い秋空のしたいつもの散歩コースをぶらぶら歩きながら、お互いの5年間について語り合うことができました。

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今は使われていない鉄道高架橋と沼に潜むワニ(誰のイタズラ?)

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週末には一緒にグリニッジ天文台まで行ってきました

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 ヴィクトリア&アルバート博物館のコスチューム館。コムデやヨージヤマモトも

IMG_20151014_151720IMG_20151014_162318IMG_20151014_160838     自然史博物館はとにかく広くて、1日かけても観きれない!ムーミンみたいなマナティー(海牛)に遭遇

彼らが帰った後、急に気候が変わって横殴りの激しい雨が振りました。そしたら、あれっ、寝室の天井から雫が…雨漏りだ~!エドワード王朝時代に建てられた我が家は、住宅が棟続きになった「ロンドン長屋」と呼ばれるテラスドハウスのひとつです。築100年以上経った家の張り出し窓の平屋根は、5年毎くらいに大修理してるんですが、先回10年間保証と言われたにもかかわらず、またまた同じ場所から雨漏り…。

そして、ロンドンでは屋根専門業者というか、評判の業者や腕の良い職人は予約がいっぱいで、なかなか捕まらないんです。しかも、カウボーイと呼ばれる素人まがいのペテン師も多くて…。見えない場所だけに「ここも修理が必要」とふっかけられても、判断が難しい。何度か引っかかって、「ああやられた。今度こそ」の繰り返しなのです。

先日、やっと二人の業者が見積もりに来てくれて、そのひとりに臨時で補正修理をしてもらいましたが、根本的な問題は据え置き状態…予約がいっぱいなうえに天気が悪すぎて仕事が溜まっていく一方のようです。

それ以来、家も、家庭も、仕事も、あっちこっちで色々な問題が起きて、今あっぷあっぷしているのでした…。

それでも、先週の木曜日には息子と一緒にベルギー人の音楽家、ヴィム・マーテンズ(Wim Mertens)のコンサートに行き、すこし息抜きできました。ピアノと管弦楽カルテットかなと思っていたら、ピアノソロ。時々歌も入るのですが、高音の歌声はちょっと苦手かも…。

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フランドル地方出身のこのアーティストの作品を吹き込んだカセットテープ(前世紀ですね)をくれたのは、もうずっと前に亡くなった女友達…。ピアノ中心のミニマルだけど情緒的な旋律を聴いていると、心に様々な情景が浮かんできます。

潮風に吹かれながら彼女と一緒に歩いた伊良湖岬の海岸。もう決して帰ってこない時間や季節…懐かしい人たち。

偶然見つけてチケットを衝動買いし、初めてコンサートに行ったんですが、やっぱり生演奏っていいですね。吹奏楽をやっている息子(友だちが行けなくなって、ピンチヒッターで付き合ってくれた)が「ステインウェイのグランドピアノだ」と教えてくれたものの、私には??? でも、ピアノの音色に包まれるような様な心地よさというか、音に触れられそうな感覚でした。キラキラした音から深みのある音色まで、感性のままに自由自在に操れるってすごい。

   1時間半の予定でしたが、複数曲のアンコールが3回も。しかも、一番最後の曲は観客のリクエストに答えて、多分最も有名なこの曲を弾いてくれました

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コンサートの後にCDサイン会に参加。今年出した最新アルバムを無視して、好きな曲が入ったCDを購入。よく見てみたら、何と83年の作品だったのでした!

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イギリスの場面緘黙啓発月が終了しました

イギリスでは、先月が場面緘黙を一般に広めるための啓発月間でした。どうやら、同時にADHDやダウン症、乳ガンなど他に9つの症状・疾患の啓発月間でもあったようです。ということは、大声で主張しないと注目度が低い状況だったのかな…。

そんななか、場面緘黙はラジオや新聞を中心に多くのメディアやSNSで取り上げられ、また少し知名度があがったように思います。支援グループSMiRA経由で申し込まれた各種メディアの取材に多くの会員が応え、自分の住むエリアのラジオ局や地方紙に登場していたのが印象的でした。それぞれが、学校での緘黙児の問題や家族の悩みなど、支援の必要性を具体的に訴えていました。実名での、しかも家族や緘黙児の写真入りの記事というのは、とても勇気がいることだと思いますが、だからこそ説得力があるのかもしれません。

SMiRA (Selective Mutism Information Research Association)では、10月15日(木)に本拠地レスターで一般参加型のオープンイベントを開催。市議会委員でレスター市長アシスタントのマニューラ・スードさんを招き、歴史あるギルドホールで講演会と懇談会を行いました。

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  チューダー王朝時代に建てられた歴史あるギルドホールと中庭のからくり時計

私も参加させていただいたのですが、SMiRA役員、保護者、教育関係者など、参加者は30名ほど。週中だったためか、思ったより小規模なイベントでした。会長のアリスさんの挨拶から、和気あいあいとした雰囲気の中でプログラムが進行。

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      開会の挨拶をする会長のアリスさんと、学校での支援方針について話す学校心理士のルィーズ・サンダーさん。

<プログラムの内容>

  • SMiRA会長、アリス・スルーキンさんによる挨拶
  • レスター市長アシスタント、マニューラ・スードさんによる挨拶
  • SMiRA役員、シャーリー・ランドロック-ホワイトさん講演『場面緘黙とは何か』
  • レスター市学校心理士、ルィーズ・サンダーさん講演『レスター市の緘黙支援』
  • 保護者ジェーン・ディロンさん講演『保護者の視点』
  • 懇談会

なかでも、SMiRA役員シャーリーさんによる最新の場面緘黙の簡潔な説明が良かったです。SMiRA会員にアンケートを取ったところ、緘黙状態になっている時、実際に喉が締まるような、身体的な症状のある人が多いという統計が出たそう。身体面で何らかのサポートができないか、今後の課題として追求したいとのこと。

息子に訊いてみたところ、緘黙している時は安心なんだそう。喉が詰まったようになったり、体が固くなるのは、話さなければいけない状況に立たされた時だということ。息子が5歳の頃、「ずーっと黙ってるなんて、不安だし怖いよね。強いね」と言ったら、「色々空想してるの。そんなに怖くないよ」とアッサリ言われ、「えっ、そうなの?」と驚いた記憶があります。どうなんでしょう?

また、学校心理士のルィーズさんの講演では、予算が打ち切られた後も、場面緘黙の傾向を持つおとなしい子どもを含めたスクリーニングを実施しているという現場の声が。さすがSMiRAのお膝元のレスター市だけあるなと感心していたら、手を挙げて「うちの学校では何もしてくれない」と訴える保護者が…。場面緘黙の支援が進んでいるといわれるイギリスですが、まだまだ全国で規定に沿った支援とまではいきません。学校、先生、専門家、そして資金によって支援の内容はまちまちなのが現状。もっともっと広く場面緘黙を知ってもらい、すぐ充実した支援に繋げられればいいなと願っています。

色々と忙しかったため、記事の更新が大幅に遅れてしまいました。啓発月間で取り上げられた場面緘黙の番組や記事については、これからもちょこちょこ付け加えていきたいと思っています。

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場面緘黙から登校拒否に

前回のBBCラジオ・スリーカウンティ局の番組に関する記事の続きです。

クレアさんの娘さんの緘黙は、残念ながらセカンダリースクール(12~16歳)にあがってから悪化してしまいました。入学したばかりの1学期の前半は先生や友達とも話し、質問にも答えていたそう。それが、後半に入ってから状況がガラリと変わってしまったのです。

イギリスのセカンダリースクールは1学年6クラス以上あるマンモス校が多く、日本の大学のようなシステムです。教科ごとに先生が変わるのみでなく、ベースになる教室がないため、常に鞄を持って教室を移動しなければなりません。全ての先生が全校生徒と保護者の顔と名前を知っている、小規模でアットホームな雰囲気の小学校とは対照的。宿題も週に1、2回程度から、いきなり毎日に複数の教科の宿題が出るように。

頑張ればポイントが加算され、家に労いの葉書が届いたりする反面、宿題や教科書を忘れたり、遅刻したりすると、罰として居残り――というアメとムチ政策。小学校ではユルユルだった授業体制から、ぐんと厳しくなるため、勉強の仕方に戸惑う子も大勢いると思います。

また、自分の教室や机がないということは、休み時間毎に居場所を確保しなければならないということ…。まだ友達がいなかったり、自信のない子どもには、かなり辛いのではないかな…。イギリスの小学校では不登校は殆どないのですが、セカンダリーでドロップアウトする子は多いようです。

クレアさんの娘さんは、学校生活のプレッシャーが大きすぎて、次第に不安が募っていったそう。教科ごとに変わる教師、成績やクラスの人間関係――そして毎日の宿題が大きなストレスになったといいます。

緘黙児は完全主義の傾向が強いといいますが、クレアさんの娘さんもそうでした。全部正解と思えなければ不安で、宿題ができない状況に…。そのうちに、毎日学校へ行かせるのが難しくなり、ついには登校拒否に陥って7ヶ月間学校を休むことに…。

学校側は、娘さんの頑固な性格に問題があるとみなし、クレアさん夫婦は周りから「育て方が悪い」と責められたこともあったとか。家庭内で大きな問題を抱えて、ただでさえ辛いのに、周囲が追い打ちをかけるなんて…。これって、あまりに理不尽すぎる…。

しかも、家に引きこもってしまった娘さんが、家族に向かって感情を爆発させるようになったそう。責任の重い夜勤の仕事をしていたクレアさんは、仕事を辞めざるを得なくなってしまいました。どうにかして娘さんを外に連れ出そうと、犬の散歩の仕事を見つけるなど、様々な努力をしたそうですが、家庭が荒れて本当に大変だった様子。

現在はというと、状況はかなり改善してきているとのこと。医師に相談して4ヶ月前に抗鬱剤フルオキセチン(Fluoxetine)を服用し始めたところ、速攻で効果があったそうです。以前より楽観的になり、少しずつ自信が持てるようになってきたとか。学校も、クレアさんの緘黙に理解を示してくれる、規則がゆる目のアカデミー系に転校。再び勉強し始め、料理クラスなどにも参加できているそう。学校外では話せる友達がいるものの、残念ながら学校内では未だ話せていません。

クレアさんの願いは、娘さんが一日一日をしっかり重ねて、少しずつ自信をつけ、不安を対処できるようになることだといいます。そして、充実した人生を過ごせるようになればと…。その気持、ものすごく解ります。他人と比べたりせず、ゆっくりマイペースで歩くことで、道が拓けてくるといいなと願わずにはいられません。

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緘黙のスペクトラム?

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緘黙のスペクトラム?

場面緘黙啓発月間の広報活動の一貫として、10月7日にはBBCラジオ・スリーカウンティ局が、場面緘黙を特集しました。

メンタルヘルスをテーマにした’Shrink Wrapped’という番組で、たっぷり1時間のあいだ場面緘黙の話題に集中。SMiRAの会員(保護者)2名をスタジオに招き、DJのルィーザさんがそれぞれのケースについて話を聞いています。精神科医のチェトナ・カングさんの解説つきで、とても分かりやすい内容になっていました。後半には、 SMiRAコーディナーターのリンジーさんとミスUKのカースティ・ヘイズルウッドさんの電話インタビューも。

http://www.bbc.co.uk/programmes/p032l5nk#play

(↑ リンクです。クレアさんのインタビューは8分くらから。日本でも聴けるかどうか不明ですが、リンクは25日間有効です)

まずは13歳の娘を持つクレアさんの話から。娘さんは入園前のプレイグループでは誰とも口をきかず、ママにべったりだったそう。幼稚園(3歳から)では2人くらいの友達に囁やけたということ。ただ、大人に対しては全くダメで、親族の中にも話せない人が大勢いたようです。小学校(4歳~11歳)では初日に先生に囁くことができ、質問に答えることもあったそうですが、自分から何かいうことはありませんでした。

「少しは話せる状態でも、場面緘黙なのか?」この問に対して、チェトナ医師は「他の精神疾患と同様に、症状が白黒はっきりしている訳ではなく、グレ-のスペクトラム状に広がっていると考えられる」と答えています。囁けるといっても、どこでも誰にでもという訳ではなく、話せるようになる保証はないため、やはり支援が必要です。

セカンダリースクール(12~16歳)に進学する前、学校の提案で心理士に会ったところ、「ものすごく心配症の子ども」と診断され、それでおしまい。フォローアップは全くなかったそう。これって、うちの息子が4歳で受診した時と同じです――イギリスでも6、7年ほど前までは場面緘黙を知らない専門家がいて、サポートを受けられないことも多かったのです。

幸運なことに、うちの場合は診察アポを待っている間に「場面緘黙」という疾患(?)があることを発見。事前にSMiRAに連絡し、アドバイスを得ることができました。診察のあと、2人の心理士に「場面緘黙だと思うんですが…」と自己申告し、主人と一緒に「言語療法士に紹介してください。お願いします!」と必死で頼み込んだのでした(国民保険を使用する場合は、紹介状がないと受診できません)。

話をクレアさんの娘さんに戻すと、かなり活発な子で、水泳やガールスカウトなど複数のアクティビティに参加していたそう。でも、学校外のこういった活動では全く話せませんでした。5年ほど前、緘黙のドキュメンタリー番組を観たスカウトのリーダーから電話があり、クレアさんはその時初めて「場面緘黙」を知ったのです。

興味深いなと思ったのは、娘さんが家族にも自分の気持ちを言葉にしない(できない)こと。それから、学校外の活動でも、ボディランゲージが変わり、スピードが落ちることです。誰でも緊張すると普段通りにできないものですが、緘黙児は緘動とはいかないまでも、動作が鈍くなり、スピードが落ちる傾向が強いように思います。

想像してみてください。魚みたいに泳げる娘が、スイミングスクールでは水に入るのを怖がる。やっと入ったと思ったら、今度は隅っこでいつものようには泳がない――親としてはフラストレーションがたまりますよね…。

クレアさんは緘黙を知らなかったため、良かれと思って娘さんをプッシュしてしまったと反省していました。親としては、もう少し頑張らせたいのは当然ですよね。でも、このインタビューの当日に、本人から「(ママ達が)私にしゃべらせようとして、酷かった」と言われたとか――そう言われちゃうと本当にショックです。

ところで、娘さんは校庭の片隅で遊んでいて緊張が溶けることもあり、大声で叫んだり、はしゃいで話したりしていたとか。だから、周囲も彼女がしゃべれることは知っていたのです。そのために、いつも上級生に「なんでしゃべらないの?」と責められるハメになったよう…。娘さんには幅広い友達がいたけれど、特別な仲良しを作るのは難しかったと回想しています。

不安のために話せないだけではなく、動作も遅くなって、しかも家で普通にできることができなくなってしまう…。たとえ、少し話せたり、囁やけたりしても、やはり持って生まれた抑制的な性格は変わらないのです。「この子は症状が軽いから」と思って、周囲がプッシュしすぎたり、支援がなかったりすると、状況次第では症状が悪化してしまうことも…。超敏感な子どもへの接し方は、本当に難しいと思います。

話が長くなってしまったので、次回に続きます。今ブルガリアの友達家族が遊びに来ているため、なかなか時間が取れなくて支離滅裂になってしまい、すいません。

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おとなしい子 vs 緘黙児

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大人しい子  vs  緘黙児

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イギリスでは先週から場面緘黙啓発月間が始まり、メディアや精神医学関係機関、SNSなどを中心に盛り上がりを見せています。初日には、SMiRAの本拠地であるレスターのBBCラジオ局が、場面緘黙を取り上げました。

http://www.bbc.co.uk/programmes/p0322npy

(6分50秒くらいから。日本でも聴けるかどうか不明ですが、リンクは今月末まで)

10分ほどのスロットに、SMiRAコーディネーターのリンジー・ウィティントンさんと15歳になる緘黙の少女の母親、エマ・ガスキンズさんが出演。リンジーさんが場面緘黙について解説し、エマさんは娘について語っています。ちょっと時間がないので翻訳はしませんが、興味深いなと思ったところだけ。

「場面緘黙って何?」とDJのエイディ・デーモン氏に訊かれ、リンジーさんは「不安によって起こる症状」と答えました。使ったのは、”disability (障害)”でなく、”condition (症状)”という単語。やはり、イギリスでは「恐怖症」と同様で、「症状」という捉え方になってきているようですね。

背景には様々な原因があって特定できないものの、不安によって話せなくなる状態が場面緘黙。入園・入学時に発症することが多く、話さない状態が2・3週間も続いたら要注意です。なるべく早い段階で言語療法士(SLT)にアセスメントをしてもらい、不安を取り除いてからスモールステップで支援を始めるよう勧めていました。

日本だと心理士や児童精神科医に相談すると思うのですが、イギリスでは場面緘黙といえば言語療法士です。これは、言葉に関わる問題だからという理由に加え、子どもの言語に問題がないかチェックする必要もあるから? 緘黙治療の第一人者と言われるマギー・ジョンソンさんがSLTなので、SLT界では緘黙に関する知識が豊富というのもあるかもしれません。

スモールステップでの治療については、それほど難しいものではないため、やり方さえ理解できていれば、専門家でなくても教師やTAで充分と説明。私は、治療の要は子どもとの相性と愛情と、とにかく根気じゃないかな、と思っています。

(ところで、緊張すると実際に喉が締まったようになって、声が出しにくくなることって普通の人でもありますよね?ネットで探してみたら下記のページを見つけました。「首筋の肩甲舌骨筋が膨らむことによって、声が圧迫される」とあります――これが緘黙の正体??)

→ http://ure.pia.co.jp/articles/-/17026?p

DJのエイディは、「小学校のクラスに、レセプション(準備学年)から6年生まで、7年間ずっーとしゃべらない女の子がいた」と回想。その子が話さないことに周囲がヤキモキして、教師までもが「恥ずかしくないよ。話せば?」と本人に言ってたそう…。自分がしゃべらないことをみんなに注目されて、すご~く嫌だったでしょうね…余計話せなくなっちゃいそう…。

エマさんの娘さんは、緘黙傾向の強い恥ずかしがり屋だった?

イギリスでは3歳から幼稚園、4・5歳から小学校が始まるので、緘黙の発症年齢は通常3~5歳くらいなのですが、エマさんの場合は、娘さんが15歳で学校を変わってから「全く話さない」と宣告されたということ。自分の娘に問題があると認めるのが、ものすごく辛かったと話しています。

エマさんもご主人もシャイで、娘さんも小さい頃から外では大人しくて恥ずかしがり屋――多分学校では少し話せていて、先生たちはそれほど深刻に捉えてなかったのでしょう。緘黙傾向がある恥ずかしがり屋でも、学校で少しはしゃべれて、友達がいて、表情がよく、勉強面で問題なければ、親も先生も「おとなしい子」で安心してしまうことが多いのかも。エマさんの娘さんのように、家でとてもおしゃべりな場合は、特に。

「うちの子は恥ずかしがり屋で、クラスで発言ができない」くらいに思っていたのが、いきなり全く話せなくなったら、それはものすごいショックですよね…。なんだか、身につまされるものがあります。

実は、リンジーさんの娘さんも元緘黙児だったのですが、リンジーさんは子どもが幼児の頃から「何か違う」と感じていました。赤ちゃん時代はよく笑う、おしゃべりでハッピーな子だったのに、1歳半頃からガラリと変わり、極度の引っ込み思案に。知らない人に話しかけられると固まるようになり、その度合いがどんどん悪化していったそう。

場面緘黙になるかならないか、いつなるのか――性格や環境に加えて、子どもをめぐる人間関係や出来事にも大きく左右されそうですね。とにかく、親は諦めず、根気よく、気長にサポートするのみ。でも、決してひとりじゃないので、一緒に頑張りましょう。

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イギリスでは10月が場面緘黙啓発月間です

 

 

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イギリスでは10月が場面緘黙啓発月間です

 

イギリスでは場面緘黙を一般に広く知ってもらうため、毎年10月が啓発月間となっています。3年ほど前に始まり、期間中はTVや新聞・雑誌などメディアでのPRの他、イギリス各地でイベントや広報活動が行われます。

SMiRA 2015年キャンペーン公式ビデオ

イギリスの支援団体SMiRAでは、5月頃からキャンペーンの準備を始めていました。メインとなるのは、10月15日(木)に本拠地レスターのギルドホールで開催されるオープンイベント。私もお手伝いを兼ねて参加させていただく予定です。ロンドンでのイベントも調整中だそうで、10月末か11月頭になりそうとのこと。

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キャンペーン用の新しいロゴと啓発グッズ各種

啓発キャンペーン初日には、コーディネーターのリンジーさんと当事者の家族がBBC地方ラジオ局のインタビュー番組に出演(スタジオ録音?)する予定。この他にも、新聞・雑誌の特集やラジオ番組など、多くのメディアで取り上げられるようです。

携帯電話を使った支援キャンペーンも実施中。会員に呼びかけて、それぞれの地区の学校や関係施設へのリーフレット配布など、草の根的な活動にも力を入れています。無理することなく、できる人ができるところで協力するというスタンスがいいですね。私も何かしたいなと思って、公式ビデオに日本語字幕をつけさせてもらいました。

SMIRA3携帯電話キャンペーンでは、メッセージと支援金を募集中

ここ3年ほど、SMiRAの活動はFacebook中心になっていたんですが、さっきのぞいてみたら、サイトがリニューアルオープンしていました!ガラリと雰囲気が変わって、とても見やすくなったと思います。ティーン&成人用の新資料もあり、SLTマギー・ジョンソンさん著の段階的な克服法をダウンロードできます。

http://www.smira.org.uk/index.html

今月は色々なメディアで場面緘黙が取り上げられると思うので、見つけたら(ちょっと時間がかかるかもしれませんが)報告していくようにしますね。

 

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9月ももう終わりですね

冷夏の年は、9月に学校が始まるくらいから天候が回復するパターンが多いのですが、今年はとても変わりやすい天候でした。ここ2週間ほど、日中よく晴れて気持ちのいい日が続き、夜になるとかなり冷え込むように。中秋の名月だった昨夜は、ロンドンでも満月がとてもきれいでした。10月の扉がもう目の前までやってきて、何だか焦っています。

ここのところ、週末ごとにロンドン中心部で人と会うことが重なり、しばらく行ってなかった観光スポットを再訪する機会にも恵まれました。

8月最後の土曜日は、夏の名残を思わせるような快晴。久しぶりに友達家族と待ち合わせて、テムズ河南岸のサウスバンクへ。まだ水遊びができるほど暖かく、おあつらえむきのお散歩日和でした。

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   まず川岸を少し散歩してから、サウスバンクセンターのルーフガーデンにあるカフェへ。この頃はまだオリーブの枝が茂り、ヒマワリが満開

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   気温は20度くらいでしたが、噴水遊びをしている人がいっぱい。みんな、ちゃんと着替えを持ってきたのかな…

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観覧車ロンドンアイやアクアリウムなどがあるテムズ河沿いの道は、人気の観光スポット。メリーゴーランドなどの乗り物もあり、大道芸人も大勢いました

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大きなシャボン玉に、子どもも大人も大喜び

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向こう岸には大時計ビッグベンと国会議事堂が見えます

9月中旬には、予期せず岐阜県の故郷にかかわる人たちと会う機会が2度もありました。ひとりは、知り合いの息子さんで、何とロンドンの一流ギャラリーで展示会をしたのです!もうひとりはイギリスの大学で勉強するため、単身で留学しているママさん。

お洒落なチェルシー地区にある有名ギャラリー、 Saatchi Gallery で展示会を行ったのは、東京で活動しているアートグループChim↑ Pom。”Prudential Eye Award 2015”という国際的な賞を受賞し、個展をする栄誉に預かったそう。でも、ドイツや東南アジアなど、すでに世界的な活動をしてるグループなんですね。

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おお、すごい行列!と思ったら、同時にコンテンポラリーアート販売展もあったからでした

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左のピカチュウを模したネズミと映像『スーパーラット』で一躍知られるようになったとか。壁の作品『Puzzle』は、各国で集めた写真やアイテムをパズルのように組み合わせたもの

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メンバーのひとり、同郷の水野俊紀さん。グループに美大出身者はいないそうで、観る側の視点を持ち続けながら、日常の気になることに向き合って作品作りをしているとか。社会問題も身近に感じさせてくれる視点とコンセプトがユニーク

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『広島!』の作品の一部。折り鶴の山は平和記念資料館から借りてきたもの。メンバーのエリイがひとつひとつの鶴を開き、それを展示会に来た人が再び折ることで、量は増やさずに祈りを2倍にするというコンセプトだそう

単身留学中の女性と会った日は、あいにくの土砂降りでした。ランチまで少し時間があったので、10年ぶりくらいにトラファルガー広場にあるナショナルギャラリーへ。古典画の中でも宗教画の大作が多く、長いこと足が遠のいていたのです。

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13世紀から1900年までの作品を2300点以上所蔵していて、センズベリー館にはルネサンス期の名画がいっぱい。ダ・ヴィンチの『岩窟の聖母』と『聖アンナと聖母子と洗礼者聖ヨハネ』はとても見応えがあります。

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初期フランドル派の画家、ヤン・ファン・エイク『アルノルフィーニ夫妻像』。いつも思うのですが、この絵の男性ロシアのプーチン大統領に似てません?

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大移動して人気の印象派の部屋へ。名画がこんなに近くで観られて、しかも無料というのがイギリスの文化だなあと思います

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モネとルノワールは数点ずつあります。雨の日の『睡蓮』がなんだかとても心に残りました。

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託児所体験 - 息子の緘黙・幼児期2~3歳(その5)

 

すっかり忘れていたんですが、息子は2歳8ヶ月から3歳になる頃まで1週間に2回ほど託児所に通っていました。そこは、仲良しの日本人のママ友が推薦してくれた、イギリス人女性が自宅で経営するモンテッソーリ式の小さな託児所。子供の数は多い時でも5、6人と聞いていたので、息子にはちょうどいいと思ったのです。

この頃、仕事が少し忙しくなったためもあったんですが、息子の性格を考えて入園前に英語環境に慣らしておきたかったんですね。チャイルドマインダーさんに預けた時は長続きしなかったので、幼稚園でちゃんと集団生活できるのか心配でした。

幸か不幸か、息子が通い始めた頃は特に人数が少なく、息子を含めて3人たらず。初日から泣かずに過ごすことができ、わりと早くお弁当持参で一日過ごせるように。モンテッソーリ式というのを特に意識した訳ではなく、先生が「この人なら任せても大丈夫」という姉御肌の女性だったのが決め手でした。

チャイルドマインダーさん宅と比べると、家も庭も広々としていて玩具も多く、とても良い環境。なによりも、ゆったりとした雰囲気が魅力でした。ある日迎えに行ったら、息子がりんごを手に持ってニコニコしながら出てきたのを今でも懐かしく思い出します。裏庭に大きなりんごの樹があって、この日はみんなでりんご拾いをしたんだとか。

今考えると、こういうのんびりした小さなところが息子には合ってたんでしょうね…。息子は人を選ぶ傾向が強く、多分この先生には気を許せたんだと思います。抑制的な気質の子どもにとって、人と環境は特に重要で、それによって緘黙になる可能性にも影響が出てきそうです。

ところで、イギリスの公立幼稚園は3歳から始まり、5歳になる歳に小学校にあがるまでの期間です。通常は1日に2時間半で、午前の部か午後の部かどちらか。延長保育の条件はかなり厳しく、毎日は預かってもらえません。しかも、午前の部からランチタイムを挟んで午後の部までなので、3時半くらいにはお迎えに行く必要があります。まあ、無料なのでその点はとても助かるんですが…。

なので、企業で働く女性が職場復帰するためには、私立の幼稚園・保育園や託児所かチャイルドマインダーに頼るしかありません。でも、これがかなり高額なのです。評判のいい園は1日1万円するところもあり、母親のお給料がまるまる保育代になってしまうケースも…。

ちなみに、イギリスではインファント(幼児部4~7歳)と呼ばれる小学校低学年までは、保護者か責任者が学校に子どもを迎えに行くことが義務づけられています。これは子どもの安全確保のためで、子どもだけの登下校は許されていません。(日本では、ひとりで電車通学する小学生もいるというと、すごく驚かれます)。ということで、子どもがジュニア(中等部8~12歳)にあがってから、フルタイムの仕事に戻る女性も多いのです。

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日本男児と台湾男児現る! - 息子の緘黙・幼児期3~4歳(その6)

 

その後息子は、ミニカー好きのS君とだんだん親しくなっていき、彼のママも時々私に声をかけてくれるようになりました。日本語を話せる研修生は2週間ほどしかいませんでしたが、英語環境にも慣れてきたよう。もう付き添いは全くいらないかなと思い始めた矢先、予期せぬ出来事が起こりました。

ある朝、息子のお絵描きを見守っていた時のことです。私たちの近くに初めて見る東洋人の母子がやってきました。「あれ、日本人?」と思って挨拶をすると、「渡英したばかりです。どうぞよろしく」と、若くておしゃれなママさん。

「あ~、やっと日本人の子に巡り会えた~!」と嬉しかったのですが、お子さんはツヤツヤの黒髪が日本人形みたいに可愛らしい女の子。内心がっかりしていると、「男の子です。Tといいます」と言われ、もうビック!。え~っ、可愛すぎる。

同じ日本人のよしみか、息子とT君はすぐ打ち解けた雰囲気に。それまで教室で小さくなっていたのが、緊張が溶けて少しリラックスしてきたように見えました。当時は「園生活に慣れて仲良しもできたから」と思っていたのですが、今考えるとやはり言葉の問題が絡んでますよね…。

もともと、この幼稚園を希望した理由のひとつは、駐在員のお子さんが複数人いると聞いていたからでした。日本人もいる幼稚園だったら、英語環境の中で日本語もキープできて一石二鳥と思ったのです。でも、蓋を開けてみるとクラスに日本人はおらず、なかなか馴染めず――やっとのことで英語だけの環境に慣れてきたところだったので、少々複雑な心境でした。

T君は息子と同じでちょっと繊細な感じの子。それに加え、何といっても異国での初めての幼稚園生活です。最初はやはりママがいないと不安そうでした。でも、息子と双子のようにくっついて行動しているためか、慣れるのは随分早かったように思います。母親同士も親しくなり、1週間くらいして「もう付き添いはいいよね」と話していた時、またまた新人君が!

今度は台湾人の男の子M君。T君と同じで、M君も全く英語ができず――しかも、3歳になったばかりでした。活発な感じでしたがママから離れられず、まだ赤ちゃんの妹を抱っこしたママはつきっきりで辛そう…。同じアジア人だし、新人さん友の会ということで、声をかけてM君も息子たちと一緒に遊ばせました。

それからすぐ、私はT君のママと一緒にとうとう付き添いを卒業。教室の前で子どもとバイバイして帰宅できるようになり、近くのカフェでお茶を飲む余裕もできました~。M君ママも誘って幼稚園の帰りに一緒に出かけたり、お互いの家を行き来したりと、やっと園生活をエンジョイできるようになったのでした。

蛇足ですが、M君のママが2週間ほど赤ちゃん連れで付き添いをしていたところ、保育士さんに「お母さん、もう帰ってください」と言われたとか。M君はお母さんが帰った途端、大泣きして大暴れ!が、翌日から大泣き・大暴れを受け止めてくれた保育士さんが大好きになり、ママがいなくても全く平気になったのです。

何で私にはそういう提案がなかったのかな――と少々羨ましくもあったのですが、多分息子が入園した当時は新しく入った児童が多くて手一杯だったのでしょう。それとも、息子の性格を見抜いて、「この子は母親が付いてたほうがいい」と判断したんでしょうか?いずれにしても、息子はM君のようにはいかなかったろうなと思います。

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