ASD児と緘黙児--類似する特性?

先週の金曜日、ASD児専門校の子ども達に付き添って、近隣の名門私立校に行ってきました。学校同士の交流があり、わが校のセカンダリー(12~16歳)の子ども達を対象にしたワークショップを開催してくれたのです。うちのクラスからも、6年生の子が3人参加しました。

地下鉄利用ということもあり、総勢16名の子どもに付き添いの大人がぞろぞろ…。スタッフの息抜きも兼ねた、学年末のイベントのひとつだったよう。

16世紀から続くという歴史ある名門校を訪問してみて、学校施設や人材の充実ぶりに驚かされました。広々とした敷地内に立派な校舎や専門の施設が点在し、専用のテニスコートやアスレチックグランドも。入学試験の難度が高く、学費もかなり高額らしいのですが、この充実度だったら納得という感じ。いや、ケタ違いにすごい!

最初に案内されたスポーツグランドではテニスの授業中でしたが、体育の先生じゃなくて、テニス専用のコーチが教えてるんです。生徒数は20名ほどなのに、助手が2名。各教科についても、えり抜きの優秀な教師陣と助手を揃えているだろうことは、容易に想像できました。

ワークショップはスポーツコーチ、D&T(デザイン&技術)教師、そして科学者(後で調べたら、結構有名な方でした!)が担当。スポーツで汗を流した後は、立派なD&T教室でミニLED懐中電灯作りに取り組みました(PC搭載のレーザーカッターで製作したキーホルダーのお土産つき)。最後の科学講座は、液体窒素などを使って次から次へと実験を繰り広げるスリリングな内容。おしまいに子ども達を部屋の隅に退去させ、ものすごい大音響で風船を爆発させたのには度肝を抜かれました。

どのセッションもプロ意識の高さが伝わってくる内容で、毎日こういう授業を受けてる子ども達がイギリスの将来を担っていくんだなと、感慨深かったです。予算の少ない公立の学校では、こうはいかないでしょう…。

話は変わりますが、このイベントを通じて感じたのは、緘黙児と似た傾向の子がいるということ。

スポーツイベントでソフトフハードル走をした際、付き添っていたグループの女の子が逃げ腰に…。やったことがないと不安がるので、「柔らかいハードルだから当たっても痛くないよ」 「一緒に走ろうか?」と声をかけ、手をつないでスタート。ひとつ目のハードルを飛び越えた後、ひとりで走っていくことができました。その後の競技でも「また一緒に来て」と頼まれて、一緒に走ったのですが、私の方が遅かったので自信がついたと思います(笑)。

また、最後の記念撮影では、ひとりだけ撮影拒否の子が…。いくらスタッフが誘っても頑として動かないので、そのままに。でも、担任が「じゃあ、写真撮って」と声をかけ、撮影側として参加させることに成功しました。

緘黙児と大きく違ったのは、D&T教室で男子生徒が我先にと手を挙げて質問に答えていたこと。得意分野に関する知識は、半端ないものがあります。実に堂々と答えるので、何だか誇らしかったです。

2011年にマギー・ジョンソンさんの緘黙支援ワークショップに参加した際、「緘黙児とASD児の特性は重なるところがあるので、ASD児に有効な支援はSM児にも役に立つことが多い」と話されてました。その資料とメモを見つけ出して、もう少し詳しく説明できたらいいなと思ってます。

 

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息子の緘黙・幼児期2~3歳(その3)

引っ込み思案が定着?

息子が生後6ヶ月を過ぎた頃から、少しずつ少しずつ仕事に復帰し始めました。幸いにも殆どが在宅ワークで、外出する日数は限られていたので、最初は夫と義母、そして親しいママ友に頼んでやりくりしていました。自宅に来てもらえれば、大体は機嫌よく過ごせていたと記憶しています。

2歳半になった頃、近くに住むチャイルドマインダーさんに1週間に1度預けることにしました。お弁当を持参し、彼女の自宅で同年代の女の子と2人一緒に一日お世話してもらうというもの。初めは、「今日もいい子にしてたわ」と、ほとんど問題はありませんでした。

が、2ヶ月目に入ったところで、「急に泣き出して、全くおさまらず本当に困った」と、迎えにいった途端に訴えられ…(その気持は痛いほど解るけど)。この日は新メンバーが入り、いつもと違う環境だったとか。

「普段他の子ども達と遊ばせてるの?」と訊かれ、ちょっとカチンと来てしまいました。息子が集団に溶け込めるよう、私なりに頑張ってきたのに~!

翌週は少しマシだったようですが、息子が行くのを嫌がるようになったため、預けるのを断念。次からは、必要な時だけ臨時でベビーシッターさんに来てもらうようにしました。若い日本人女性が来てくれた際は、もうべたべたに甘えまくり!彼女が帰る時に大泣きするという事態も発生しました。

こうして、公の場では引っ込み思案、でも気を許せると思った人とはすぐ親しくなって自己主張する、という不思議なパターンができあがったのでした。

この頃から、親しかった日本人の友達が3歳になって私立の幼稚園に通うようになり、今までのように頻繁に遊べなくなってしまいました。また、それまで通っていた小規模のプレイグループが閉鎖し、少し遠くですが日本人もいる規模の大きいグループに参加することに。

大体2時間半くらいの会で、前半は私の側を離れず、大抵はミニカーで遊ぶというパターン。おやつタイムを挟んだ歌の時間は、みんなで集まって円座に座り、曲に合わせて振りをつけながら”Old McDonald”などの童謡を歌います。でも、息子はやる気全くナシ…。仕方がないので、ずーっと手を添えてやらせていました。

それが家に帰ると、お気に入りのアニメ番組の曲を大声で歌いながら踊ってたりするんですよね….。君は一体何なんだ~?! その後も、できないのかと思っていたら、人目につかないところでやってたりと、母親としてはフラストレーションがたまる状況が重なりました。

さて、プレイグループも後半になると徐々に緊張も解けてくるのか、だんだん行動範囲が広がります。そして、お片づけの時間になって母親達が玩具を倉庫に運び始めると、やる気全開になって、他の子ども達と追いかけっこごっこに夢中になるという…エンジンがかかるのが遅すぎ。

このプレイグループが公園に面した教会で開かれていたので、帰り際に公園で残った子達と少し遊ぶのが楽しかったようです。

その頃、日本人親子が集まる絵本の会にも参加していたんですが、スイカ割り大会ではただ一人頑として動かず…涙。その後、誕生会でスイカ割りをしてみたら、先頭に立ってやってました….やぱり、公の場だと 「できないかも?」「失敗したら嫌」という不安が人一倍強いようでした。

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息子の緘黙・幼児期2~3歳(その1)

息子の緘黙・幼児期2~3歳(その2)

 

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DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その2)

ASDや広汎性発達障害と診断される緘黙児の割合が大きい--これは日本における場面緘黙の研究で、頻繁に見られる結果です。発達障害を専門とする医師の間では、場面緘黙は決して珍しくないとも言われているよう…。

DSM-Vで新たに設けられた、「社会的(実践的?語用論的)コミュニケーション障害(Social (pragmatic) communication disorder)」は、場面緘黙とどのような関連があるのか?とても気になっています。

新たな分類 「社会的(語用論的)コミュニケーション障害(Social (pragmatic) communication disorder)」は、下記のように神経発達障害(Neurodevelopmental Disorders)カテゴリーの2) に含まれています。

Neurodevelopmental Disorders(神経発達障害)

  1. Intellectual Disabilites (知的障害)
  2. Communication Disorders (コミュニケーション障害) ←★ここ
  3. Autism Spectrum Disorder (自閉症スペクトラム障害)
  4. Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD)
  5. Specific Learning Disorder (学習障害)
  6. Mortor Disorders (運動機能障害)

2) のコミュニケーション障害に含まれるサブカテゴリーは、

  1. Language disorder (言語障害)
  2. Speech sound disorder (音韻障害)
  3. Childhood onset fluency disorder (stuttering) (小児発音障害(吃音))
  4. Social (pragmatic) communication disorder (社会的(語用論的コミュニケーション障害) ←★ここ
  5. Communication Disorders not otherwise specified (特定不能のコミュニケーション障害)

DSM-IVでは、アスペルガー障害(Aspergar’s Disorder)及び特定不能の広汎性発達障害(PDDnos)と診断された人たちは、いずれも広汎性発達障害という自閉症関連をくくった大カテゴリーに含まれていました。それが、DSM-Vでは、「社会性の障害」はあるが「常同性」はないとみなされると、自閉症スペクトラム症(ASD)ではなく、コミュニケーション障害に該当…。

(なお、DMS-IVにおける特定不能の広汎性発達障害(PDDnos)の定義は、他の広汎性発達障害の定義に当てはまらないケースで、「社会性の障害」もしくは「常同性」のひとつが該当すれば診断されるというもの)

平たくいうと、このグループに移行する人たちは、自閉症ではない(なかった)ということですよね?もしかしたら、広汎性発達障害やアスペスガーと診断された場面緘黙児の多くは、このカテゴリーに入るんじゃないでしょうか?また、広汎性発達障害の傾向やグレイエリアと診断された緘黙児は、ASD傾向ではなく、コミュニケーション能力に発達凸凹があるのかもしれません…。

例えば、相手のボディランゲージが読めなくて黙っている場合と、相手のボディランゲージが読めても、相手の反応が不安でどうしたらいいのか判らず黙っている場合では、ちょっと違うような気がするんですが…。特に、緘黙期間が長く閉じこもりがちになると、コミュニケーションスキルが向上しないため、年齢に見合う社会的コミュニケーションを取るのが難しくなると思うんです。病院など、馴染めない環境でコミュニケーションを取ることの不安もあると思いますし、このあたりのことは、診断にどう影響しているんでしょう?

話は変わりますが、最近イギリス人の言語療法士(SLT)から「専門分野で活躍するSLTの間で、治療に当たったASD児が実は重度のコミュニケーション障害児だったという話が良くでている」と聞きました。子どもがオルタナティブなコミュニケーション法を身につけると、徐々にASDの特性がなくなることが多いんだとか。

イギリスではWHOによる国際疾患分類、ICD-10を診断基準にすることが多いので、DSM-5における変更はあまり問題視されていません。でも、研修中のASD児専門校に通う子どもの中には、「常同性」はないように見える子もいて、その子達には違うアプローチが必要なんだろうか? などと考える今日この頃です。

最後に、DSM-Vの診断によって、この新しいサブカテゴリーに移行する人はどの程度の割合なんでしょうか?

2012年1月に『ニューヨークタイムズ』紙が、アスペルガーと診断されていた3/4の人たちがASDと診断されなくなるという記事を掲載し、世界中で物議をかもしたようです。これは、イェール大学のフレッド・ヴォルクマー教授他による予測ですが、10%程度という予測もあり、かなりバラつきがあるようですね。

“about three-quarters of those with Asperger syndrome would not qualify; and 85 percent of those with P.D.D.-N.O.S. would not(アスペルガー症候群の約3/4が、そしてPDDnosの85%が(ASDと)認定されない)”

NYタイムズの記事 → http://www.nytimes.com/2012/01/20/health/research/new-autism-definition-would-exclude-many-study-suggests.html?pagewanted=all

自分の中でよく整理できておらず、チンプンカンプンな独り言のようになってしまいました…。ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。多分、誤解している部分も多々あると思うので、お気づきの方はご指摘ください。

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DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その1)

 

 

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DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その1)

昨年5月に、アメリカ精神医学会による診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)が改定されたのは、周知のところです。最新版のDSM-Vでは、場面緘黙が含まれるカテゴリーが「通常、幼児期・小児期、または青年期に初めて診断される疾患」から、「不安障害」へと移行しました(詳しくは場面緘黙とは?(その2)をご参照ください)。

もうひとつ注目したいのは、この改訂版で自閉症に関する概念や定義が大きく変わったこと。これまで日本で「広汎性発達障害(PDD)」と診断された緘黙児は少なくなかったと思うのですが、「広汎性発達障害」というカテゴリー自体が廃止されたのです。

「広汎性発達障害(PDD)」がなくなり、自閉症関連の診断は「自閉症スペクトラム症(ASD)」に統合。そのうえ、何と「アスペルガー症候群」というお馴染みのサブカテゴリーもなくなってしまいました!(研修中のASD専門校の生徒は殆どがアスペっ子なので、なんだかショックでした)

しかも、「な~んだ、これからは全てASDでいいんだ」と思いきや、そうでもない様子。というのは、これまでPDDのカテゴリーに入っていた全ての診断がASDに統合された訳ではなく、別カテゴリーに移行したものと、別カテゴリーで新たな診断名がついたものがあるからなんです。

DSM-IV(1994年)では、

広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders)

  1. 自閉性障害(Autistic Disorder)
  2. レット障害(Rett’s Disorder)
  3. 小児期崩壊性障害(Childhood Disintegrative Disorder)
  4. アスペルガー障害:(Aspergar’s Disorder)
  5. 特定不能の広汎性発達障害:(Pervasive Developmental Disorder not otherwise specified(PDDnos))

↓ 改定

DSM-V(2013年)では、

 自閉症スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)

  • ただし、2の「レット障害」はX染色体異常で、自閉症とは関連がないため、診断から除外
  • また、4と5の中で、「社会性の障害」と「常同性」がある場合はASDのカテゴリーに、「社会性の障害」のみの場合は、ASDでなく「社会的(実践的?語用論的)コミニュケーション障害(Social (pragmatic) communication disorder)」となる

厚生労働省のホームページでアスペルガー症候群を調べてみると、

- 自閉症の3つの特徴のうち、「対人関係の障害」と「パターン化した興味や活動」の2つの特徴を有し、コミュニケーションの目立った障害がないとされている障害です。言葉の発達の遅れがないというところが自閉症と違うところです。知的発達に遅れのある人はほとんどいません- とありました。

厚生労働省のホームページ e-ヘルスネット「アスペルガー症候群について」より http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-006.html

あれっ?コミュニケーションの目立った障害がない??? アスペも自閉症も、基本的には「社会性」・「コミュニケーション」 ・「想像力」の3分野に障害があるのでは…。私は、アスペの子は知的発達や言語に遅れがないんだと思ってましたが、どうも医師や団体によって、定義が少しずつ異なっているようですね…。

「常同性」というと、手をヒラヒラさせたり、ぴょんぴょん跳んだり、同じ遊びや何かをする順番に執着したり--でも、年齢によって改善するケースも多いし、はっきり「常同性」と区別しにくいケースもありそうです。

この間、休み時間に校庭で男性のTAと話していたら、そこにクラスの子がやってきたんです。私と話していたTAに、PCゲームのことでやけに詳しい質問をし、よどみなく長いやり取りをしました。彼が行ってしまった後、「あの子の知識はすごいよね。話し言葉も自然だし、ぱっと見だとASDだとは思えない」と言ったら、「実は毎回僕のところに来て、全く同じ質問をするんだよね」と…。これも「常同性」なんでしょうか?

また、特定不能の広汎性発達障害(PDDnos)について、wikiで下記のような興味深い記述を見つけました。

- 東京大学名誉教授医学博士)の栗田廣氏は、「海外ではPDD-NOSとして診断される障害者がPDDの2分の1であるのに対して、日本ではPDD-NOSはほとんど診断されず、アスペルガーとして診断され ている。実際、信頼できるイギリスの診断結果の報告文によると、比率的にPDD-NOSがやはりPDDの2分の1、アスペルガーはPDDの13%(全人口 の0.1%)にすぎない。どちらも高機能であり、診断は難しいが、日本でアスペルガーとして診断されている障害者(全人口の0.3 – 0.4%)の多くは実はPDD-NOSではないか」という旨の疑問を呈している -

こちら → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E4%B8%8D%E8%83%BD%E3%81%AE%E5%BA%83%E6%B1%8E%E6%80%A7%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3

あれれ、何だかアスペや広汎性発達障害の診断も、医師や病院、属する機関によって少しずつ違うのかも…。

長くなってしまったので、いったん切りますね。ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございます。

なお、発達障害の説明については、「軽度発達障害フォーラム」というサイトが詳しく、解かりやすいと思いました。

こちら → http://www.mdd-forum.net/pdd_teigi04.html

 

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緘黙になりやすい子?

6月19日に記載した『再び、場面緘黙は発達障害なのか?』の記事に、マーキュリー2世さんからコメントをいただきました。

「緘黙は発達の問題というよりも、心の問題(心因性の精神障害)だと思う」と書いたのですが、「精神疾患は脳の病気という考え方もあり、心の問題と神経系(脳だけでなく、迷走神経なども含む)の問題を切り離すのは問題のすり替えにしかすぎない」、というご指摘でした。

全くその通りです。脳と心(精神)は密接に関連しているため、切り離して考えることはできませんね…。チキンとエッグの論争に似てますね。

(自閉症の脳科学的診断については、マーキュリー2世さんがご自身のブログに詳しい記事を載せておられます。 こちら→ http://smetc.blog120.fc2.com/blog-entry-183.html

ただ、言い訳ではないんですが、私が言いたかったのは、場面緘黙という疾患(症状)が日本で一般的にいう狭義の発達障害(ASD、PDD)とは異なるのではないか、ということです(知識及び語彙不足のため、上手く説明できなくて、すみません)。

ちょっと古いですが、下記のサイトの分類が理解しやすかったので、参照したのでした。この分類だと、場面緘黙は精神障害であり、発達障害ではありません。まあ、DSM-5では「不安障害」に、世界保健機関(WHO)では「小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害」に含まれ、どちらも発達障害ではないんですが…。

【障害のある学生へのサポートブック(金沢大学障害学生支援委員回保健管理センター 2007年版)】

こちら → http://www.adm.kanazawa-u.ac.jp/ad_gakusei/campus/kousei/soudan/syogai/010.html

  1.  感障害         感覚器官の機能に障害がある場合
  2. 運動障害      身体運動の機能に障害がある場合
  3. 言語障害      聞くこと、 話すことなど言語の機能に障害がある場合
  4. 内部障害      身体障害のうち、 主として内臓の機能障害
  5. 精神障害      医療の対象としての精神疾患を含み、 ある程度以上の精神的偏りがある場合     障害がそれぞれ独立して存在し、 かつ相互に影響するなど、身体障害とは異なる障害の構造がある
  6. 知的障害      先天的な問題、発達期中( 一般的には 18歳以下)の頭部外傷や病気などによって生じた知的発達の遅れ
  7. 発達障害      何らかの生物学的な要因があり、発達の遅れや偏りが生じた状態            家庭環境や養育環境・態度など心理的な要因で正常に発達しなかったというものではない。広汎性発達障害 (自閉症、アスペルガー症候群)、 LD、 ADHDなどがある

しかし、国際的な基準も含め、国や機関によって精神疾患の分類方法が異なっているような…。それだけ複雑で難解な分野ということなんでしょうね。(な お、この5月から日本精神神経学会により、病名が「障害」→「症」に変更されましたが、解かりにくいので以前の名称を使っています)。

簡単にいうと、発達障害(ASD)と場面緘黙には下記のような違いがあると思います。

  • 発達障害(ASD)は治せない
  • 脳の構造が違う(認知の仕方が異る) → 心理的な発達が通常とは異なる
    療育により、社会性やコミュニケーションの問題に対処していくことはできるが、根底にある認知の違い(歪み)は治せない。

これに対して、

  • 場面緘黙は治すことが可能
  • 発症要因が特定されていない → 定型の子でも、発達障害の子でも、言語・発音・コミュニケーションなどに問題を持つ子でも発症する
  • 不安や抑制的な気質、言語・発音・コミュニケーションの問題、バイリンガル環境など、様々な要因があるとされる(*抑制的な気質の子どもは、アミグラダと呼ばれる脳の篇桃体が刺激に対し過敏反応するのではないかという研究仮説があるが、抑制的な気質の子ども全員が緘黙になる訳ではない)    支援・環境・本人の努力などにより、学校をはじめ、それまで話せなかった人・場所・活動で徐々に話せるようになることが多い。しかし、緘黙期間が長く、社会的な体験やコミュニケーションの経験が不足したままだと、大人になってもごく一部の人としか話せなかったり、対人関係が苦手だったり、社会不安症などの精神的な問題を抱えることになる人もいる。また、緘黙を克服できても、言語・発音・コミュニケーションに問題を抱える子(ASD児を含む)は、その問題自体が解決される訳ではない。

《場面緘黙になりやすい子は?》と考えると、

★生まれ持った気質・性格

  •  抑制的な気質(不安や恐怖を感じやすい)

★生物学的(神経生物学的/発達的)な要因

  •  話し言葉や言語に苦手意識がある(表出性&受容-表出混合性言語障害を含む)
  •  言葉の発音に苦手意識がある(吃音、音韻障害を含む)
  •  コミュニケーションに苦手意識がある(ASD、特定不能のコミュニケーション障害を含む)

*上記の他にも、身体的・知的な問題があって、人前で注目されることへの苦手意識がある場合も、抑制的な性格の子だったら、緘黙になる可能性がありそうです。

更に、バイリンガル環境や環境の急激な変化など、環境的な要因も大きく関与してきます。コミュニティや家庭内での会話やコミュニケーションが極端に少なく、年齢に見合う言語・コミュニケーション能力が育っていないと、会話やコミュニケーションに苦手意識を持つようになる子もいるかと思います。

同じ子どもでも、環境や人間関係によって、緘黙になる場合もあれば、ならない場合もあると思うんですね。それを考えると、やはり意識の問題というか、気にしいの性格という部分が大きく影響してくるような気がするんですが…。

例えば、うちの息子はバイリンガル環境も要因ですが、小学校入学時に幼稚園時代の日本人の親友と同じクラスに入っていたら、寡黙ではあっても、緘黙にはならなかったと思っています。また、直接引き金要因となった滑り台事件がなかったら、そのまま非常に大人しい子でいたかもしれません。

ついでに、WHOによる国際疾患分類、ICD-10による精神障害の分類を載せておきますね。

  • F0  症状性を含む器質性精神障害--痴呆症その他のいわゆる脳器質性精神障害を含む
  • F1  精神作用物質使用による精神および行動の障害--アルコールや麻薬・覚醒剤等に関連した障害を含む
  •  F2  統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害--統合失調症(精神分裂病)やその類縁疾患を含む
  •  F3  気分障害(感情障害)--双極性感情障害(いわゆる躁うつ病)、うつ病エピソード(いわゆるうつ病)等を含む
  •  F4  神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害--恐怖症性不安障害(いわゆる恐怖神経症)、パニック障害、強迫性障害(いわゆる強迫神経症)、外傷後ストレス障害(PTSD)等を含む
  • F5  生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群--摂食障害(いわゆる拒食や過食)、睡眠障害、性機能不全(性欲の低下など)等を含む
  •  F6 成人の人格および行動の障害--いわゆる人格障害や性行動に関する問題などを含む
  •  F7 精神遅滞 精神発達遅滞
  •  F8 心理発達の障害--学習能力の特異的発達障害(いわゆるLD)や広汎性発達障害(いわゆる自閉症)等を含む
  • ★F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害--多動性障害(いわゆる多動児)や行為障害、チック障害等を含む
  •  F99 特定不能の精神障害--以上の分類に当てはまらないもの全て

厚生労働省のホームページから http://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/index.html

だらだらと長くなってしまい、すみません。最後までお付き合いいただいた方、ありがとうございました。

関連記事:

再び、場面緘黙は発達障害なのか?

場面緘黙の要因(カテゴリー)

 

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息子の緘黙・幼児期2~3歳(その2)

初めての室内遊戯場

息子が2歳半のころ、初めて大型の室内遊戯場に連れて行きました。かなり広い空間に、年齢別のソフトプレイエリアが複数あり、カフェも併設。よちよち歩きの幼児から、7・8歳くらいの子どもまで、大勢の子どもと母親達でごったがえしていました。

最初に受けた印象は、人の多さと騒音のすごさ。天井が高いので雑音や子どもの声が反響して、厚い雑音の壁の中にすっぽりはまり込んだような感じでした。

一緒に行った日本人の友達は、遊具を見るなりすぐ駆け出して行きました。彼のママも後を追って行ってしまい、ポツンと取り残された息子と私。でも、息子はちっとも動こうとしません。大好きな車の乗り物があるのに、私の傍らを離れないのです。いつもなら、私の手を引っ張って連れていくのに…。

慣れてないからと思い、まずは一緒にフカフカの滑り台へ。色々誘ってやってみたのですが、全然のってないんですよね…30分くらいして、やっと大好きな車の乗り物にチャレンジしたものの、いつものようには楽しめてない様子…。ノロノロと車を動かしていたら、よその子が押してきた車にぶつけられ、半ベソ状態。

ノリノリで汗をかきながら走り回っている友達と比べ、息子はもう家に帰りたいモードで、ちょっと情けなく…。お昼に大好きなハンバーガーとポテトを食べて、やっと元気を取り戻したところで、帰途に着いたのでした。

後で気づいたのですが、遊技場の騒音が息子にはキツかったんだと思います。初めは私でも耳障りだったくらいだから、彼の敏感な耳にはもっと大きく、恐ろしく聞こえたでしょう。騒音に囲まれていると、不快感から不安になることもありますよね。

また、他の子ども達がエキサイトして動き回っているあの雰囲気に、溶け込むことも難しかったのでしょう。普通だったら、すぐに慣れて順応するのに対し、感覚過敏のある抑制的な気質の息子は、慣れるのにかなりの時間を要するようでした。

ちなみに、2度目からは、出だしは遅いものの楽しく遊べるようになり、ほっとしました。というのも、冬場は公園だと寒いので、室内遊技場は手ごろに子どもを遊ばせられる、お助けスポットなんですよね。

こんな調子だったので、3歳から4、5歳くらいまで、子どもだけで遊ぶ遊園地のような場所では、場の雰囲気に慣れるのに時間がかかりました。やっと元気に遊べるようになる頃には、他の子が帰る時間になっているのです…。うちでは長丁場になるのを覚悟して、子どが満足できるまで付き合うようにしてました。

不安が強い抑制的な気質の子でも、慣れてくれば楽しめることが多いと思います。最初は親が付き合って、少しずつ慣れてきたら、体も心もリラックスしてくるはず。「うちの子はこういう場所が嫌いだから」と連れて行かないと、いつまでたっても慣れないし、行動範囲も広がりません。親も一緒に楽しんで、ポジティブな体験を積み重ねていくことができたらいいですね。

人は人、うちはうち。子どもが楽しければ親は嬉しいし、人生は長いんだもの、マイペースでいきましょう。

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息子の緘黙・幼児期2~3歳(その1)

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再び、場面緘黙は発達障害なのか?

<イギリスの見解と日本の見解>

以前、『緘黙は発達障害なのか?』と題した記事を書きました。イギリスの専門家のあいだでは、「場面緘黙≠自閉症スペクトラム症(ASD)」という見解で一致しているようです。

調べてみたら、イギリスの国民保健サービス(NHS)による緘黙の説明に、下記のような記述がありました。

Another common misconception is that a selectively mute child is controlling or manipulative, or that the child has autism. There is no relationship between SM and autism, although the two conditions can occur in the same child.

(その他のよくある誤解は、緘黙児は強情・狡猾というものや、緘黙は自閉症であるというもの。この2つの症状を併せ持つ子どもはいますが、緘黙と自閉症の間に関連性はありません)。

NHSホームページ 病気A-Z 場面緘黙のページから

こちら→http://www.nhs.uk/conditions/selective-mutism/pages/introduction.aspx

一方、日本では広汎性発達障害やASD、グレーゾーンと診断される緘黙児が多いという研究結果が複数出ています。そのためか、「場面緘黙=広汎性発達障害・ASD」と捕らえる傾向があるよう。

<ASDの人の脳>

先回の記事でご紹介したアスペルガーの女性、ロビンさんは、まず最初にASDの人と普通の人の脳の写真を提示しました。ASDは先天性の脳の機能障害であり、普通の人とは脳の構造が違うというのです…私は知らなかったのでビックリ。

日本語の説明はないかなと探してみたら、『日刊アメーバニュース』の「早期発見がポイント―子供の「自閉症」、MRIで診断可能に」という記事に出くわしました。

こちら → http://news.ameba.jp/20131026-160/

脳の構造が違うため、初めから認知の仕方が普通の人とは違う。だから、心理的な発達も通常とは異なってくる--社会性が育たないのはこういう理由からなんですね。

場面緘黙はというと、発達の問題というよりも、やはり心の問題(心因性の精神障害)だと思うんです。心因性ということは、普通の子、ASDの子に関係なく、特定の心の問題を抱えたときに緘黙になるということではないでしょうか?

家では普通にしゃべれるのに、学校など公の場でしゃべれない--「公の場」では家で使う話し言葉以上のものが求められます。それは、社会的な場で使う「話し言葉」とソーシャルスキルを伴う「コミュニケーション」。さらに、これらは年齢に見合うものでなければなりません。

家だったら、家族に「あれ取って」と言えば通じますが、学校で先生に向かってそうは言えません。また、複数のクラスメイトとの対話では、適切なタイミングで適切なことを言う必要があります。家で使ってる言語&コミュニケーションと比べると、ぐっとハードルが高くなるのです。

言語や発音に問題がある子、コミュニケーションや社会性に問題のある子にとって、学校で話すことはかなりの難題です。授業で上手く答えられなかったり、クラスメイトに何か言われたら、子どもはひどく傷つき、学校で話すことが不安になるでしょう。繊細で不安が強い子は、特にその傾向が強いのではないでしょうか。

ASD児は社会性がなく、コミュニケーションが苦手なため、緘黙になるケースが多くみられるのではと推測しています。特に、自己主張せず、苦手な部分を隠したがるタイプの子が…。日本では診断を受けることなく、ずっと理解・支援なしで普通クラスに在籍しているASD児(傾向の子)も多いようで、学校生活が辛そうです。

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緘黙は発達障害なのか?

 

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息子の緘黙・幼児期2~3歳(その1)

イギリスでは2歳児のことを”Terrible Twos”というんですが、日本では「魔の2歳児」と呼ぶようですね。第一次反抗期が始まり、何でも「イヤイヤ」と駄々をこねて、親の言うことをきかない時期…。

ご多分に漏れず、うちの息子にも魔の2歳がやってきました。2歳になりたての頃、人前で何度かものすごく激しく駄々をこねて、ほとほと困り果てた思い出があります。

一度は、プレイグループにあったミニカーの玩具がひどく気に入り、それを手放すのが嫌で大絶叫!見かねた責任者さんが、「来週返してくれればいいから、持っていけば?」と親切に言ってくれたのに、ちゃんと躾けねばとお断りしたのが間違いでした。

玩具を返し、バギーに乗せてしばらく歩いても、全く泣き止まないんです。サイレンの様に泣き叫ぶ息子を連れて、大通りを歩く私….またもや穴があったら入りたい、の心境でした。

いつまでたっても泣き止まないので、根負けして途中にあったオモチャ屋さんに駆け込み、同じような消防車のミニカーを買ったのでした。弱い母です…。

その次は、風邪を引いて連れて行ったクリニックで、またもや電車の玩具を見つけて放さず…。「さ、おうちに帰るから、電車は返そうね」と言った途端に、バギーの中で体をのけぞらせて大泣き!今では想像もつかないのですが、その声がすごくデカイんです。

また、いつまでもいつまでも泣き止まないのかと思っただけでゲンナリしてしまい、今度は勇気を出して、受付の女性に「すみません、必ず返しますから少しお借りしていいでしょうか?」と訊いたのです。すると、「子どもを甘やかしちゃ駄目!」と注意されてしまいました…。

(イギリス人って、結構ストレートにものを言う人が多いです。見ず知らずの人に、しつけが悪いと注意されたことが何度かあるんですが、この時は初めてで大ショック。それでも、大謝りに謝ってお願いし、玩具を借りて帰りました)。

息子はなんというか、「これが欲しい」、「こうしたい」と心に決めると、それについてどんどん想像を膨らませるクセがあるようでした。そのせいか、それが適わなかった時の癇癪は半端なかったです。いつまでも、いつまでも、しつこく泣き叫ぶのです。そういう時は、何を言おうと、どう優しくなだめようと、全く効果なし…。

このしつこさの故に、「こだわりが強い、頑固な子」と思ってました。その反面、自分にとって大切ではない事柄については、あまり執着しません。何が癇癪の原因になるのか良く判らなくて、混乱したものです。

しつこいくらい頑固な性格は、反対にいうと柔軟性がないということで、この性格も緘黙になった一因なんだろうなと思っています。思い込みが激しいというか…。よく、緘黙児には完壁主義者が多いといいますが、息子もそうでした(今は成長したためか、自分なりに折り合いをつけられるようになりました)。

ちなみに、緘黙症状が重かった4歳半~6歳くらいは、癇癪も輪をかけて酷かったように記憶しています(家でのみ)。あまりに激しいので、小1(5歳)の頃から癇癪を起こした時は、「自分の部屋に行って頭を冷やしてきなさい」と2階に行かせるようにしました。ひとりになると冷静になれるのか、割とすぐに泣き止み、5分くらいで落ち着いてダイニングキッチンに戻ってくるのです。

息子は元来とてもオシャベリで、常に話しかけてきたり、歌を口ずさんだりと、小学校までは一緒にいると煩いくらいでした。一人遊びに夢中になる反面、結構淋しがり屋のところがあり、人と一緒にいたがる傾向も強かったように思います。

(余談ですが、幼い頃こんなに癇癪がすごかった息子は、13歳のいま、世を悟った老人のごとく落ちついています。カースティーさんのお母さんが、「カースティはうちで一番落ち着いてるの。何があっても慌てず、頼りになるのよ」とおしゃってましたが、よく考えるとうちもそうかも….。第二次反抗期は、いつ来るんでしょう?)

 

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衝撃のロビンさん

もう先学期のことになってしまったのですが、研修中のASD児専門校で、アスペルガーの女性、ロビン・スチュワード(Robyn Steward )さんの講演会がありました。

講演は小学生の部(9~12歳)とセカンダリー以上の部(11~18歳)に分けて、少し違う内容で1回ずつ行われました。私は両方視聴させてもらったのですが、まず彼女の出で立ちにビックリ。

ラメが光るパープルの帽子と紫のメガネ、自らハンドペイントしたというジーンズ、足元はDr Martin’sでも珍しい、パテントの青いワークブーツ。一度見たら忘れられない、鮮烈な印象!

ロビンさんのサイトはここ→ http://www.robynsteward.com/knowing-me-knowing-autism/

彼女の肩書きは、

  • ASDの専門家のトレーナー
  • ASD児のメンター
  • ASDコンサルタント&啓発者
  • ライター (著書に『The Independent Woman’s handbook to super safe living on the Autistic Spectrum』など)
  • アーティスト
  • ミュージシャン

現在28歳のロビンさんは、7ヶ月の未熟児で生まれ、アスペルガーを筆頭に10種類の障害を併せ持っているそうです。小児脳性麻痺のため真っ直ぐに歩けず、相貌失認症(prosapagnosia)のために、何と人の顔を認識できないのだとか。

道でお母さんに会っても、お母さんと判らない。むこうで知人が手を振っていても、一体誰だか見当もつかないんだとか…。自分の顔も同じで、写真に写った自分の顔が判別できないそう。うわ~、めちゃくちゃ大変そう。

なのに、本人は「帽子を見て自分だって判るの」と涼しい顔。なるほど~、だから他の人が選ばないような、ちょっと奇抜な帽子をかぶってる訳なんですね。自分以外の人はというと、何と履いてる靴で見分けてるんだそう!

かつて、自分が21歳になる頃には、麻薬中毒のホームレスになってるかもしれない、と将来を悲観していたロビンさん。

アスペルガーの特性で小学校の頃からクラスに馴染めず、長い間いじめに遭い、学校のトイレが怖くて行けなかったり、先生やクラスメイトに理解されなくて問題を起こしたり…。結局、セカンダリースクールから放校されてしまいました。

そんな彼女を救ったのが、何とか入ったカレッジ(大学へ行く前の段階)のICT教師。ICTが好きで放課後毎日ICT教室に通い、この教師を相手に話しまくったとか。教師は、ただただ彼女の話に耳を傾けてくれたといいます。

緘黙も同じだと思うのですが、やっぱり根本にあるのは信頼関係なんじゃないかな…。誰かが自分のことを解かってくれる、自分の話(悩みでなくても)を聞いてくれるというのは、本当に心強いことだと思うんです。

これを機に、彼女はどんどん自信をつけ、苦手な人間関係もなんとかこなし、自分のやりたいことに向かってまい進できたそう。大学に進学後、経験者としてASDを啓発すべく世界に飛び出しました。

今でも抱えている問題が消えてしまった訳ではなく、次々と新しい壁にぶつかることは容易に想像できます。それにどうやって対処するか--自分で考えてひとつひとつクリアすることで、「大丈夫、やれる」というポジティブな姿勢になれるそう。

どんな問題を持って生まれたにしろ、子どもはそれに対処していく力を持ち合わせている--そんな風に思わせてくれた講演会でした。

 

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平等ってなに?

息子がイギリスの学校に入学して、つくづく日本と違うなぁと思うことが沢山あります。中でも全く違うと思ったのは、「平等の概念」でした。

個人主義の国というのもあると思うんですが、イギリスでは「人はみな平等」ではなく、「人は不平等に生まれつくから、できるだけ平等になるように」という考え方のように思えるんです。

イギリスは歴史的に移民を多く受け入れてきました。今でも海外からの移住者や移民が多いため、英語を母国語としない子どもが大勢います。ロンドンには特定の民族が集中する地区があり、英語を母国語とする白人の子が20%に満たない学校も!

例えば、息子が通っていた小学校では、EUが拡大したためか東欧からの転校生が目立っていました(特に、小5、6年ころ)。驚いたことに、両親がまだ経済的に自立できていない場合は、優先して学校に入れてもらえ、給食費やその他の経費が免除に!さらに、英語を母国語としない子どものために、特別な英語のクラスが設けられているんです。

こういった政策に反対しているイギリス人もいるし、移民が増えすぎて社会問題にはなっているものの、一般的には「仕方ない」という受け取め方のよう。クラスのママさん達の中で、文句を言ってる人はいませんでした。鷹揚というか、気にしないというか…。英語ができないんだから、支援するのは当たり前という感じ。

こういう状況なので、特別支援が必要な子どもや授業についていけない子に対しても、支援は当たり前というスタンスです。例えば、低学年のクラスにはTA(教育補助員)がいるんですが、TAはたいてい特別支援(SEN)が必要な子どもやできない子をアシスト。特別な小グループ活動をしたり、1対1の指導をすることもあり、その他の子を個別にアシストすることは殆どありません。

その一方で、”Gifted”と呼ばれる、高い能力を持つ子達が、特別な授業を受けることもあります。運動能力のある子どもを集めて強化チームを作り、地区の競技会に出場させたり、楽器が得意な子を集めてオーケストラを作ったり。

以前の記事にも書いたのですが、支援や強化をする子どもを選ぶプロセスについては、選ばれた子どもの保護者だけにしか通知されないことが多いんです。学校が毎週発行するスクールレターで、「陸上大会で○○君が優勝」、「学校のオーケストラが受賞」などという報告を見て、「えっ、そんな大会があったの?!」と初めて知ることに(笑)。

大雑把にいうと、特別上と特別下の子どもにはエクストラの支援が与えられ、真ん中のその他大勢は通常授業のみという状態…。

これって日本だったら考えられないと思うんですね。日本でいう「平等」って、どの子も同じように扱うことじゃないでしょうか?

例えば、子どもの友達が放課後特別に授業を受けているのに、自分の子は受けられなかったら、保護者は「あの子だけズルイ」と、思うのでは?

日本で学校に緘黙の支援をお願いしたら、「特別扱いはできません」と言われたという話を耳にしたことがあります。学校や担任に支援をお願いする時、「みなさんに悪いな」と遠慮される保護者もおられるのではないかと思います。

クラスに担任がひとりしかいないこともあり、特定の生徒により多くの時間を割くことが問題視される風潮があるような気がします。

日本の学校における緘黙治療の難しさは、こういったところにもあるような気がしています。イギリスの学校も千差万別で、受けられる緘黙支援はピンからキリまでなんですが…。先生に迷惑をかけるとか、他の保護者から迷惑に思われると気にしてしまうと、かなりやりにくいですよね。

関連記事:

イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その6)

イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その7)

 

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