春休みの最終日

今年の春休みも今日でおしまい。日本語を教えている特別支援学校でも明日から授業再開なので、今その準備にかかっています。どういう訳か先学期の途中から生徒が2人増えたため、他の生徒たちとどうやって歩調を合わせていくか、頭が痛いところ…。

この春休みは天候が変わりやすく、朝晴れていたかと思うと、お昼から雨降りという毎日でした。先週の金曜日、久しぶりに会う友だちとキングスクロス駅界隈を散策する計画を立てていたのですが、あいにくの雨模様。

それでも、傘をさしながら駅から5分のところにある小さな自然保護区、Camley Street Natural Park に行ってきました。都心部の真ん中にあるこの緑のオアシスは、わずか2エーカー程度(正方形にすると一片が90m弱)。運河と道に挟まれた細長いスペースですが、そこだけ自然が手付かずに残っているのです。

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池へと向かう小径。雨の中緑がきれいでした

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雑木林の中をぐるっと一周。あちこちにブルーベルの花が

ここには野外カフェしかなかったため、リージェントカナル(運河)に沿って10分位の距離にあるときいていたCamden Garden Centreへ。無事にたどりついて花や植物を見て回ったあと、2階のカフェで長い長いおしゃべりを楽しみました。

IMG_7632IMG_7628                   雨が降り止む気配はなしIMG_7630

写真を撮り忘れたのですが、Camden Garden Centre の植物・雑貨の品揃えは抜群でした

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帰り道で遭遇したインダストリアルな鏡のモニュメント?

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帰宅したら、窓辺のミニ水仙が大量に咲いてました

日曜日には、3年ぶりにウェンブリーにあるIKEA(イギリスでは”アイキア”と発音します)に家族で出かけました。キッチンの照明が壊れてしまい、代わりのを買うためでしたが、いつ行っても混み合っているので、足が遠のいてたんです。

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よーく目を凝らすと、Iの文字の左側にウェンブリースタジアムのアーチが見えます

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今季のメインディスプレイはガーデンがテーマ

でも、一旦ストアに入ってしまえば楽しいディスプレイがいっぱい。天気のいい日曜日だったためか、珍しく人出はそれほどでもありませんでした。で、いろいろ見て回りたかったのに、買い物が大嫌いな主人と息子は必要な物だけゲットして、さっさと先へ…。レストランで食事する予定だったんですが、主人が「まだお腹空いてないよ」というので、一旦駐車場まで荷物を置きに行くことに。

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ストアに戻ってレストランに入ると、お昼時なのに珍しくガラガラ

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夫が買ってきた3人分のランチ。「お腹空いてない」割に、かなりの量じゃない?

 IMG_20160417_122045IMG_20160417_122110         夫は写真左のメニュー+アップルパイ、息子は特大ミートボール+チーズケーキ

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私はこのフィッシュ&チップスでした

多分、ミートボールは絶対あると思うけど、日本のIKEAとではメニューも値段も違うんじゃないかな?ちなみに、普通サイズのミートボールメニューは760円くらい。お会計は、飲み物も合わせて合計£25(3800円くらい)でした。安上がりのランチになるはずだったのに、そうでもなかった(笑)。

帰りは、お隣にある巨大スーパー、TESCOで食料の買い出し。主人と息子は車の中から動こうとしないので、私ひとりで行きました。

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日本食の品数が多くてビックリ。うちの近くの支店はこの3分の1くらいかな

2016年の春休みは、家でまったりしながらガーデニングと読書と散歩で終わったような気がします。

 

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トリイ・ヘイデンさんの緘黙治療法

14日から次々と伝わってくる熊本地震のニュースに、胸がふたがれる思いです。昨日未明の本震で再び大きな被害が出たうえ、いまなお余震が続いているようですね…。被災地のみなさんに心からお見舞い申し上げるとともに、亡くなった方々のご冥福をお祈りします。一日も早く余震が収まりますように。

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この間チャリティショップに立ちよったら、トリイ・ヘイデンさん著の『Ghost Girl (日本語タイトルは『幽霊のような子』)』が目にとまりました。なんだか懐かしさを感じて、75ペンス(約120円)でそのペーパーバックを購入。先週ガーデニングの合間に読んでいました。

トリイ・ヘイデンさんという作家のことを知ったのは、2005年に息子が4歳半で場面緘黙になってから。会ったことがない義伯母が、義母を通じて「読んでみれば」と勧めてくれたのです。当時はイギリスでも場面緘黙はまだ広く知られておらず、それまで義母にとっては”社交的でおしゃべり”だった孫が急に話さなくなり、びっくりして義姉に相談した結果でした。

最初に読んだのは『Silent Boy(日本語タイトルは『檻の中の子』)』でした。次に『Beautiful Girl(日本ではまだ翻訳されていない?)』をやはりチャリティショップで見つけて購入。その後、帰国した際に『よその子』の文庫本を買って読んだので、今回で4冊目ですね。

トリイさんは特別支援教育の現場でキャリアを積み、場面緘黙(まだElective Mutismと呼ばれていたころ)の研究にも力を入れていました。彼女のノンフィクションの中には多くの緘黙児が登場し、いずれも早い段階で話せるようになっています。

1970・80年代には、まだ場面緘黙の治療法は確立されていなかったはず。子どもが「話せない」のではなく、故意に「話さない」と考えられていた時代――トリイさんの本にもそういう記述があるんですが、自らの経験からいち早く独自の治療法を見つけ出していたようなのです。

マギーさんの基準と照らし合わせると、トリイさんの作品に出てくるのは「複合的な場面緘黙」のために長期間話していない子どもたち?どの子もそれぞれ育った家庭環境に問題があり、読み進めると場面緘黙の背景にある問題が解き明かされていく、という形になっています。

  • 『檻の中の子』の15歳の主人公、ケヴィン――8年間ずっと緘黙。4年前ホームに入所してからは机と椅子で檻を作り、その中に閉じこもっている
  • 『幽霊のような子』の8歳の少女、ジェイディ――園や学校ではひとことも話さず、感情を顔に表すこともない。背中が不自然に曲がっている
  • 『Beautiful Child』のヴィーナスは7歳――学校では全く話さず、時々他の子どもに対して凶暴になる

通常だったら、複合的な緘黙の治療にはかなり時間がかかるとされています。それなのに、どの子も比較的早い段階で話し始めているのです。これってすごい!

『幽霊のような子』には、トリイさんの緘黙治療法について下記のように書かれています(原書しかないので訳が違っていると思いますが、その点は悪しからず)。彼女がリサーチの結果たどり着いた治療法は、ごくごくシンプル。

“子どもが初めて会う大人が、子どもが話すことを前提に、即座に有無をいわせず答えを言わせるようにする”というもの。子どもの沈黙が習慣になってしまう前に行うことが重要。

この方法を使って、トリイさんは初日にジェイディから言葉を引き出し、会話をしています。重要なのは、事前にジェイディに下記のことを告げ、信頼関係を結ぶきっかけを作ったことかなと思います。

  • 今までにジェイディのように話さない子を治療してきた
  • 自分の気持ちを話せないことがどんなに辛いか理解している
  • 話せるようになるよう助けてあげられる

『檻の中の子』では、自身も檻の中に入ってケヴィンとの信頼関係を築きます。シェイピング法を使い、まず”Haa”という音を出すことからスタート。数日で話し始めることに成功しています。

『Beautiful Child』に関しては、探したんですが本が見つからず、あらすじもうろ覚え…。確か、休み時間に1対1で人形を使ってロールプレイをすることで、徐々に声が出るようになったと記憶しています。こちらは、もう少し日数がかかっていたような。

緘黙治療の鍵となるのは、大人が真摯に子どもと向き合い、信頼関係を築いていくことにあるような気がします。

 

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ガーデニングの春休み

今年のイースター(復活祭)の週末は、例年より早く3月末にやってきました。これまでは、4月の第1週目の週末に当たることが多く、その後に学校の春休み(イースターホリデー)が続いて丸々3週間くらい休みというパターン。でも、今年はイースターの週末とは別に、先週から2週間の春休み中です。(私が日本語を教えている特別支援校は私立なので、イースターの週末から長~い春休みに突入しました)。

昨年の4月は家族で帰国したのですが、息子の全国試験が間近に迫ってきたこともあり、今年は2週間家で過ごすことに。この春休みのプロジェクトは、ずーっと放ったらかしにしていた中庭の手入れです。

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今年も小豆色のあけびの花が満開。1本の苗が5年でこんなに成長しました

我が家の庭は、イギリスの平均的な家の中庭と比べると、3分の1くらいの大きさしかありません。家屋は別名「ロンドン長屋」と呼ばれる、テラスドハウスのひとつ。同じ外観の建物が棟続きで並ぶ中の1軒なんですが、大通りに近いせいか、設計上しかたかなったのか、庭がものすごくコンパクトなんです。

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ロースト料理に便利なローズマリーも花ざかり

こちらでは、100年以上前に建てた住居を、修繕しながら延々と使い続けるのがふつう。住む人はどんどん移り変わり、その間に植えられた木樹が大木化してることも多いんです。うちはエドワード王朝時代(1910年頃)の住宅なんですが、引っ越してきた時は小さめの木が1本あったのみ。その木も虫がついてしまい、結局は伐採しました。

5年前に庭を大改造した際、ミミズ&ナメクジ系が苦手な私は、あまり庭仕事をしなくても済むように、三方の塀に沿って花壇を作ってもらいました。芝生は手入れが面倒なので、庭の大部分は敷石にしたのです。

でも、この敷石がくせものだった!1年、2年と経つうちに、だんだん石の色が黒ずんできました。パティオ専用の洗剤があるんですが、うちの場合は流した洗剤がすべて花壇に入ってしまう――ということで、昨年はブラシでごしごし擦って水洗いしたのでした。でも、薄汚れた感じは否めず…。

今年こそなんとかしなきゃと思っていたら、息子が「この間、ダディがもらってきた圧力洗浄機を使えばいいじゃん」と。シェッド(納屋)に変な機械がおいてあるのには気づいてたんですが、それが洗浄機だったとは。ということで、息子が担当して敷石を洗浄してくれることになりました~。

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ここのところ天候が変わりやすかったので、雨の合間をぬって毎日少しずつ作業。           洗浄した箇所は違いがこんなにくっきり

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最後に敷石の隙間に砂を入れて完成。

以前、セントポール大聖堂の建物が黒ずんで汚れてしまったため、長期間かけて大々的な洗浄作業を行いました。その時は「ふ~ん」と思っただけでしたが、うちの敷石の汚れも車の排気ガスや大気汚染のせい?私達家族ってそんなに悪い空気の中で暮らしてるんだ~と複雑な心境になりました。

その後、花の苗を求めてガーデンセンターめぐりをしたんですが、欲しかった多年草はけっこうなお値段…。まずは前庭用のラベンダーを3本と、花壇の隙間用にロベリアやバーゲンの小花の鉢をゲット。

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ラベンダーは鉢植えに。花壇はまだスカスカですね…                        窓辺に飾ったミニ水仙は1ポンド(約160円)でした

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     昨年、カタツムリと毛虫に食べられてしまったクレマチスにも芽が!            今年こそ無事に成長しますように

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手作りクッキーでコーヒータイム

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マギー・ジョンソンさんの講演から――代弁はOK?

この8月に出版予定『場面緘黙リソースマニュアル』改訂版。言語療法士のマギーさんとアリソンさんが実体験や指導結果から導き出した緘黙支援・対処方法が、こと細かに解説されているようです。SMiRAの講演では、その一例として緘黙児の代弁をすることについて簡単に触れました。

友だちや親に代弁者として代わりに応えてもらうのが、緘黙児にとっていいことなのか、悪いことなのか?慣れすぎてしまうと、自分で話そうという気持ちや機会が失われてしまうのでは?そういう疑問を持つ保護者も多いのではないでしょうか。

<同年代の子どもの場合>

家の外でも、仲良しの友達や兄弟姉妹とだけなら囁ける・話せるという緘黙児も多いかと思います。マギーさんは緘黙児が「友達を通じて話す」ことを容認し、”架け橋”として使うことを奨励しています。

  1. 緘黙児への質問は友達を介して行う  例:「○○ちゃんに、何が飲みたいかきいて」「○○ちゃんは、何をして遊びたいかきいて」
  1. 最初は緘黙児が安心して話せるようその場から立ち去る、時間をかけて徐々に子どもたちの近くへ移動し、緘黙児が目の前で友だちとナイショ話しても平気になるようにする
  1. そのうちに第三者の存在に慣れ、緘黙児の声が徐々に大きくなってくる
  1. 第三者のいる前で、友だちに向かって直接聞こえる声で返事をするようになる
  1. 子どもが第三者に直接応えるようになる
  1. 友だちを介さずに、1対1で会話を始める   まずは、Yes/Noで答えられる質問から始め、徐々に長い答えを引き出していく

イギリスの小学校では席をグループで固めることが多く、支援の一貫として緘黙児の隣に話せる友達を座らせたり、同じグループにします。日本と比べると授業中もガヤガヤした雰囲気で、私語も多い(笑)。とてもインフォーマルな雰囲気なので、友達を”架け橋”役に使いやすいと思います。

日本の小学校では難しいかもしれませんが、幼稚園や保育園でならできそうですね。園だけでなく、例えば祖父母が兄弟姉妹を”架け橋”役に使えば、緘黙の孫とのコミュニケーションを改善していけるんじゃないかな?

注:上記はまだ緘黙が定着していない、園児や小学校の低学年向けと思われます。

 

<保護者の場合>

医者、買い物、親戚との会話など、母親が子どもの代わりに返事をしてしまうことって多いんじゃないでしょうか?特に、緘黙期間が長いと、それが習慣になってしまっているかもしれませんね。

マギーさんは、人から何か訊かれた時、親は返事ができない子どもを”救済”するのではなく、子どもが会話に加わる際に”不安を減らす”役割を担うよう提案しています。子どもへの重要なメッセージは、「誰かに何か訊かれたら、できたら答えればいい。でも、もし答えられなくても大したことじゃない。誰も気にしない」というもの。

  • 人に何か訊かれたら、子どもの返事をまず5秒待つ
  • 質問を繰り返していう、もしくは二者選択の質問にして子どもに訊く
  • 5秒待つ
  • 親に囁いたり、最初は非言語でも答えられればOK。徐々に言葉がでるようにしていく。子どもが答えない場合は、「ちょっと考える時間をください」「また来ます」とその場を立ち去る。もしくは、話題を変える

こうすることで、緘黙児が親に代弁してもらうのでなく、自分で答えることに慣れるのが大切ということ。親が代弁してくれることに慣れてしまうと、家庭外で話す機会がどんどん少なくなってしまうので、その通りだなと思いました。

ケント州のNHS(国民保険サービス)で言語療法士として働いているマギーさんは、保護者やTA(教育補助員)を集めて定期的に懇談会を行っていてるそう。ディスカッションや個人的なアドバイスも活発に行われているということで、大変羨ましい環境です。マニュアルの対処・支援法は、こうした場でのフィードバックや情報にも裏付けされているとか。

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期待大!『場面緘黙リソースマニュアル』改訂版

イギリスで緘黙治療のバイブルと呼ばれているのが、言語療法士のマギー・ジョンソンさんとアリソン・ウィンジェンズさんが共著した『場面緘黙リソースマニュアル』。場面緘黙の状態把握と学校での対処・支援において、最も効果の高い実用書として知られています。大版で312ページもあるうえ値段も高いため、保護者は購入をためらうことも多いよう。でも、言語療法士(SLT)やSENCOといった専門家の間では、必要不可欠な参考書なのです。

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そのマニュアルが改訂され、第2版としてこの8月に出版される予定です。

3月上旬に開催されたSMIRAコンファレンスでは、マギー・ジョンソンさんが講師として招かれ、改訂版の特別プレビューが行われました。

注目すべきなのは、オリジナル部分が修正された訳ではなく、下記の追加項目が加わったこと。

  • 家庭、学校外での支援
  • ティーンと大人の支援

改訂版の総ページ数はなんと、なんと900ページに及ぶそう!そのうち書籍として印刷されるのは500ページ、残りの400ページはインターネットでアクセスする仕組みです。書籍を購入するとアクセスコードがもらえて、資料を閲覧・ダウンロードできるとか。

緘黙状態を表すスケール(段階)表は4つの部門に着目。より的確なサポートができるよう、緘黙児が到達しているコミュニケーション状況をさらに細かく分けたということです。

第1版ではイギリスの学校における支援が中心でしたが、改訂版は日本でも充分に活用できそう。家庭や学校外での有効な支援法が解れば、保護者が中心になってどんどん支援の輪を広げていけるかも。また、まだまだ資料が少ないティーンや大人の支援法にも大いに期待したいところです。

ところで、先回のエントリーから随分日数が経ってしまいました。その間に仕事が集中したのと、復活祭の連休で主人の実家に出かけていたのとで、バタバタしていてなかなか更新ができず、すみません。

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復活祭というとお花はやはり水仙ですね

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3家族、合計9名が集まってローストランチを楽しみました

その間に桜の季節はすっかり終わり、今は沿道の黃水仙が満開です。義母の庭では忘れな草やムスカリが可憐な花を咲かせていました。

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場面緘黙の成人、サブリーナさんのプレゼンテーション

昨年の夏、イギリスの国営放送BBCで場面緘黙の特集があり、サブリーナ・ブランウッドさんという35歳の緘黙の女性が登場しました。(詳しくは『BBCが大人の場面緘黙を紹介』を参照してください)。そのサブリーナさんが、今回のSMiRAコンファレンスでプレゼンを行ったのです。

偶然、私の後ろの席に妹(?)さんと一緒に座っていたので、図々しくも声をかけてしまいました。そうしたら、無言でしたが、はにかんだ笑顔で応じてくれたんです。TVで観た時の殻に閉じこもったような印象はなく、ずっと穏やかな表情になっていました。

サブリーナさんのプレゼンは、小さい頃から現在までの写真&映像アルバムに、字幕で短い説明をつけたもの。本人は前に出ずに、最後列の自分の席に座ったままでした。

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一番手前のポニーテールの女性がサブリーナさん。

写真の中のサブリーナさんは、ずっと微笑みを絶やしません。途中、「あれっ?」と思ったら、サブリーナさんが車を運転しているんです!そこに、「運転免許を取りました」と字幕が。次に、「NHS(国民保健サービス)でボランティアをしています」と…。

プレゼンを観ているうちに、BBCが取材する前からSMiRAとマギー・ジョンソンさんが介入していたことが判明。それから、ひとり暮らしを始め、運転免許を取得して、今ではボランティアの仕事もしてるんです。実家に閉じこもりがちだったサブリーナさんが、外に出てどんどん交際範囲を広げている!

最後の方では、特にお世話になったというマギー・ジョンソンさんやSMiRAの役員に対するお礼の言葉が。サブリーナさんの隣に座っていたマギーさんが、感極まってウルウルしていたのが、とても印象的でした。

サブリーナさんは今でも、初対面の人に対して普通にしゃべれる状態にはなっていません。でも、実家から出て自分ひとりで行動できるようになったんです。これって、すごくないですか?

長期間場面緘黙が続くと、社交・社会不安が高まって、外に出て働いたり、活動することを怖れる傾向が強くなります。その結果、就職できても長続きしなかったり、自宅に引きこもりがちになる人も多いんじゃないでしょうか?

このプレゼンは、緘黙の成人でも適切なサポートと周囲の理解が得られれば、ちゃんと自立できるという証明だと思いました。長い間自分を閉じ込めていた心の枷から抜けだして、自由になることができるんだと。

勇気を出してSMiRAコンファレンスに来てくださったサブリーナさんに、会場から惜しみない拍手が送られました。

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ポーランドから場面緘黙の画期的な治療法?

<感情的なスピーチブロック(発話の壁)を打ち破る>

SMIRAコンファレンスの2人目の講演者は、ポーランドのシレジア大学で「言語と感情」について研究しているソニア・ツァラメック-カルツ(?)教授。吃音も場面緘黙も「感情的な発話の壁」に阻まれて起こる症状であり、全く新しい発声・発話方法を習得することによって、緘黙を克服できるというもの。

最初におことわりしておきたいのですが、私はこの講演の内容について、実はよく理解できていないのです。いきなり「吃音」と「場面緘黙」が出てきて解りづらかったうえ、ポーランド語訛りが強い英語と私の聞き取り能力のなさが重なって、最後まで??でした。後からメールで確認して、多分こういうことだろうと思って書いています。

私は吃音症については全く知識がありません。なので、吃音症の子ども/人が、ある場面ではスラスラよどみなく話せるのに、ある場面では吃ってしまうものなのか--また吃音の程度が場面によって違うものなのか、その辺りがよく判らないのです。場面緘黙の場合は、だいたい学校などの公の場で言葉がでないことが多いのですが、話せる相手も場所も人によって違いますよね?

ソニア教授は、吃音や場面緘黙の症状が起こるのは、「Emotional Speech Block Syndrome」(直訳すると「感情的なスピーチブロック症候群」)のためと捉えています。最初は吃音が原因で場面緘黙になった子どもや人のケースを話しているのかなと思い、会場で質問したのですが、なんだか要領を得ないまま…。で、メールで確認した結果、どちらの症状も同じように感情的な要因が大きいと理解しているとのことでした。

場面緘黙は不安のために「話せない」訳ですが、「言葉がうまく出てこず吃ってしまう」のも不安のせい?どちらも原因はメンタル面にあるんでしょうか?「うなく話せない」と焦れば焦るほど、吃音がひどくなる傾向にあるのは解るような気がするんですが…。そして、何故Psychological (心理的/心理的)Speech BlockでなくEmotional(感情的)という単語を使っているのか?

ソニア教授のチームは、体を完全にリラックスさせ、従来とは異なる新たな発声・発話方法を習得することで、吃音や場面緘黙を克服するというユニークなプログラムを発案。すでに多くの子どもや大人に試して、成功例を重ねているようです。

人は恐怖や不安に襲われると、声帯が閉まったようになって声が出にくくなります。場面緘黙になるきっかけも、こういった不安体験が絡んでいそう。もしくは、声を出そうと不安のなかで頑張りすぎて、どうしても声がでない状態で固まってしまい、緘黙症状が持続することもあり得るのではないでしょうか?

そう考えると、体と心を完全にリラックスさせれば、声帯もリラックスするため、声は出しやすくなりますよね。映像で新たな発声方法を見せてくれたのですが、最初は言葉を長く発音し、徐々に普通の長さに調節していくという感じだったように記憶しています。

早い人では2日くらいで、遅くても12日間で声が出るようになるということ。Youtubeの”Nowa Mowa”というチャンネルで映像を観ることができます。が、ポーランド語なので何を行ってるのか分からないんですよね…。

下の映像は新たな発話方法によって吃音が治った例のようです。

なお、4月2~4日にポーランドのカトワイスで「言語と感情」と題した国際的なコンファレンスが開催される予定だそう。シレジア大学の主催でソニア教授も講演する他、『場面緘黙リソースマニュアル』の共著者であるアリソン・ウィンジェンズさんの講演も予定されています。場面緘黙治療の新しい方向性を示唆するものになるかもしれませんね。早く英語の翻訳が欲しいです。

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SMIRA2016年コンファレンス(その2)– 二人の少女の例

言語療法士のリビー・ヒルさんの講演の続きです。

<治療例2>

小学校低学年のスージーちゃん: 話せるのは唯一お母さんのみ。父親とも、親しくしている3人の叔父とも全く話せない。

このケースでは、犬の調教を利用したスライディングイン法の説明をしてくれました。スライディングインというのは、通常は緘黙児が話せる大人(母親やTA)と言葉ゲームをしているところに、徐々に第三者(大人もしくは子ども)を入れていき、緘黙児が自分の声を聞かれる・言葉を交わすことに慣れさせていくという手法。学校や自宅の一室で行うイメージが強いですが、スージーちゃんの場合はアニマルセンターで犬を介して行いました。動物が好きな子にはぴったりですね。

どの段階で、犬の調教をセラピーとして取り入れたのかは不明ですが、多分お父さんや家族に話せるようなってからかな?まずは、スージーちゃんが、「来て」「お座り」「待て」など言葉をかけ、ラルフという名の犬をしつけました(どれ位で声がでるようになったかは不明)。慣れてきた頃、スージーちゃんとセラピストがいる部屋に叔父さんがひとりずつ入り、スージーちゃんがラルフに話しかけるところを見せました。最後は3人の叔父さんたちが見ている前で、「Come! 来て!」と大きな声を出せたそう!

<治療例3>

4歳のミリーちゃん: 家庭外では全く話せない。母親との分離不安あり。2歳半の時にリビーさんのセンターで治療を開始。

まず、関係者の教育・啓発からスタート。まず、「ただ内気なだけ」と考えていた父親や幼稚園の先生たちに、本や映像を使って場面緘黙について説明しました。遠方に住んでいたため、Skypeを利用してファミリーセラピーを行ったそう。

イギリスでは5歳になる年から小学校のレセプション・クラスが始まります。ミリーちゃんはまだ4歳ですが、昨年9月に同じ建物内にある幼稚園から小学校に進学。進学前に、新しい教室に慣れさせるため、幼稚園の教室から小学校のレセプションクラスに何度も足を運んだとか。また、新しい教室を中心に、これから使用する施設の写真を撮って写真付ストーリーブックを作成。上級生の女の子にお世話係を頼むなど、スムーズに小学校生活に移行できるよう計らいました。出席を取る際は、名前を呼ばれた子が「I am here(ここにいます)」というべき返事を、クラス全員に言わせるという工夫も。

<まとめ>

  • 取り組みは常に計画通りにはいかない。子どもの心によりそって、じっくり構える
  • 子ども、保護者、学校のスタッフのサポート体制が整っているか、省みることが必要
  • どの子も違うので、決まったルールはない。柔軟な対応を心がける

以上が、リビーさんの駆け足の講演内容でした。なお、この講演については資料が配布されず、私のメモと記憶からお伝えしているため、誤りがあるかもしれません。その点はどうぞご容赦ください。

リビー・ヒルさんのサイト Small Talk http://www.private-speech-therapy.co.uk

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SMIRA2016年コンファレンス―― 子どもにあう多面的なアプローチ

《場面緘黙とスピーチセラピー:効果的な治療を組み合わせて》 言語聴覚士&アニマル関連セラピスト、リビー・ヒルさん

SMIRAの2016年コンファレンスにおける講演の内容を、できるだけ簡潔にお伝えしたいと思います。一番バッターはSLT(言語療法士)のリビー・ヒルさん。イングランド中部にあるスタフォード州に言語療法センターを構え、アニマルセラピーやCBT、学校との連携などを含む、多面的なアプローチで子どもの話し言葉、言語、コミュニケーションの改善に取り組んでいます。なお、このセンターは場面緘黙が専門ではなく、言語の問題からASDや学習障害を抱える子までを幅広くカバー。私立の施設ならではの、細やかな治療例について話してくれました。

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まず、最初に強調したのは「子どもはそれぞれ違うから、その子にあった治療法が必要」ということ。場面緘黙の発症率は150人にひとりとされていますが(昨年夏にBBCの情報番組で発表された最新の数字と同様。詳しくは、BBCの最新データをご参照ください)、学校とNHS(国民保健サービス)だけでは対処しきれず、プライベートの治療にたよるケースも多いのが現状のよう。

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17歳のエイミーさん: 幼稚園から現在まで学校では全く話せず、直接話せるのは家族のみ。友だちとはスカイプやSNSを通して会話するものの、人との集まりを避け、自分の部屋に閉じこもりがち。

年齢がうえの子どもやティーンについては複合的なケースが多いため、カウンセリング的なアプローチを用いるそう(リビーさんはマギー・ジョンソンさんの場面緘黙ワークショップで研修し、CBT(認知行動療法)の資格も持っています)。

エイミーさんのケースは「話す」ことよりも、「今後何をしたいか目標をたてチャレンジする」ことに焦点を当てました。これはマギーさんによる、年齢がうえの子への支援と同じですね。

エイミーさんのやりたいことは、以下の3つでした。

  • アルバイトをする
  • 運転免許を取る
  • カレッジで勉強する

人前で長年話せていない、引っ込み思案のティーンがどうやってこんな目標をかなえられるのか?

まず、セラピストに目標を打ち明け、どうすればいいか話し合う(多分、最初はキーボードを使用したんだと思います)ことで、エイミーさんのモチベーションをあげました。

詳細は判りませんが、「ほとんど話さなくてもいい」仕事探しをスタート。やりたい仕事を見つけたら、まず文書で自分の緘黙状況を説明してから応募するという方法を取ったとか。「そんな仕事あり?」って思ってしまいますよね?でも、ものすご~くいっぱい探した後に、見つかったそうです!それはネットで見つけたオンライン貸し衣装(コスチューム)の仕事。ネット上で注文を受けるため、顧客と話す必要はなく、職場は物静かな人とふたりだけ。あまり話をする必要はなく、注文のチェック&発注といった作業を淡々とこなせばOKの仕事だそう。実は、応募したのはエイミーさんのみで、めでたく採用となった模様。人生、何事もやってみなければ分からないものですね。

こうしてお小遣いが手に入るようになったエイミーさんは、次に運転免許取得に着手。まず、あまり話さなくてもいい教官を探すことから始めました(イギリスには自動車教習所がないため、プライベートの教官を雇って、いきなり路上で練習します)。口コミで探した末、ビデオで予習させてくれる女性教官を見つけ、実際あまり話しをせずに実技をマスター。その教官が試験官に事情を説明してくれて、エイミーさんはなんとか合格できました!(事前に動画サイトを見まくって、試験のパターンを学んだそう)

そして、最後がカレッジで勉強すること。イギリスでは18歳まで勉強する権利を保証されているため、カレッジとかけあってSkypeでのインタビューに挑んだそうです(結果はまだ出ていないそう)。

目標にタックルしている間、リビーさんはCBTでエイミーさんの考え方を徐々に前向きなものに変えていきました。その成果もあり、着実にスモールステップに取り組むことができたよう。また、実際にインタビューの練習をしてコツを覚えるなど、話す経験を積むことが自信に繋がりました。

エイミーさんが今どれだけ話せるようになったのか、そのあたりは曖昧でした。が、「話すこと」でなく、まず明確な目標を持たせて、「自分の力で目標をかなえる」ために動けたこと、人との信頼関係を築けたことが大きかったんじゃないかと思います。その過程で自信をつけ、自然と「話すこと」にもチャレンジする精神が培われたんじゃないでしょうか?

心のなかで「これがしたい」と思っている → 誰かにその思いを伝える

些細な事ですが、これだけでもかなり違うと思うんです。自分の思いを言う・書くことで、客観視もできるし、まずはコミュニケーションの始まりですよね。

なお、この講演については資料が配布されず、私のメモと記憶からお伝えしているため、誤りがあるかもしれません。その点はどうぞご容赦ください。

リビー・ヒルさんのサイト Small Talk http://www.private-speech-therapy.co.uk

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SMIRAの2016年コンファレンス

BBCの最新データ

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年とティーンの支援』

 

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SMIRAの2016年コンファレンス

先週の土曜日2月20日に、イギリスの場面緘黙支援団体SMIRA(Selective Mutism Information Research Association)の定例総会に行ってきました。今年も全国から、緘黙児の保護者や家族、言語療法士を主とする専門家やTA(教育補助員)など、合計61名が参加。特に、場面緘黙の成人3名が友だちや姉妹と参加していたのが印象的でした。会場は例年とおなじくSMIRAの本拠地、レスターにある教会のホール。2階では参加者の子どもを集めた活動が行われ、午後になると上階でドタドタ走り回る音が聞こえたので、子どもたちも楽しめたようです。

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今年のプログラムは:

  • 場面緘黙とスピーチセラピー:効果的な治療を組み合わせて(SM & Speech Therapy: Doing what it takes)by 言語聴覚士&アニマル関連セラピスト、リビー・ヒルさん
  • 場面緘黙とスピーチブロック (SM & Speech Blocks) by シレジア大学(ポーランド)ソニア・ツラメク・カーツ教授と研究員
  • プレゼンテーション by サブリーナ・ブランウッドさん(場面緘黙の成人)
  • 『場面緘黙リソースマニュアル』第2版のプレビュー by 言語聴覚士、マギージョンソンさん
  • 啓発キャンペーンの成果発表 by SMIRAコーディネーター、リンジー・ウィティントンさん

特に、犬を使ったアニマルセラピーやCBTを組み合わせた多面的なアプローチ法と、大幅に改定されたという『場面緘黙リソースマニュアル』第2版のプレビューが興味深かったです。このマニュアルは今年8月に出版予定ですが、今回は家庭や学校外での取り組みを総括的にカバーし、学校での取り組みと平行して行う内容だとか。教育システムが違う日本でも、大いに活用できそうで期待大です。

なお、定例会の内容については、追ってかんもくネット掲示板とこのブログでお伝えしていく予定です。

 

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