息子の緘黙・幼児期5~6歳(その25)水泳の授業

先週は息子の誕生会もかねて、湖水地方での夏休みを楽しんできました。イギリスでは7月中旬に1週間ほど真夏日が続いたあと、秋のような気候に。夏の雰囲気を楽しめないまま、夏休みが終わってしまいそうです。コロナ感染は相変わらず世界トップ5を走り続けていますが、政府はもうロックダウンは考えず、予防は個人任せでコロナと共存していく方針のよう…。

  

   天気が悪かったためか、水をやらなくても庭の植物が元気で助かりました

赤しそが大豊作で、収穫後もこんな感じ

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すっかり忘れていたのですが、息子の学校には温水プールがあって、1年生から水泳の授業が始まりました。実は、息子はその1年ほど前にプール恐怖症になっていたのです(詳細は『息子の緘黙・幼児期(4~5歳)プール恐怖症になる』をご参照ください)。

「はたして水に入れるのか?」と心配でしたが、「学校の授業でみんなとやるなら、大丈夫かもしれない」という期待も。

また、私が付き添って市民プールに行き(最初に主人と行かせたら、嫌がってすぐ戻ってきてしまいました😢)、身体を支えて水に浮く練習、顔を水につける練習、バタ足の練習などはしていました。だから、水に入る恐怖は少し減っていたんじゃないかなと。

プールに入れるようになってから、水泳を習いに行くよう何度誘ったことか…。でも即座に拒否されてました。

忘れもしない水泳の授業の初日。朝、息子のおなかに蕁麻疹のようなブツブツができているのを発見し、「これじゃあ、水泳は無理だね。今日は見学させてもらおう」と、息子に言ったのでした。

それで、水着を持たずに学校に行き、担任(見返してみたら、名前を書かずにずーっと「担任」ですませてましたね(;^_^A)に事情を説明したところ、

「ああ、原則的に医者の手紙がないと休めないのよ。それくらいなら大丈夫」

「えっ?でも、すごい湿疹だし、水着を持ってこなかったんですが…」

「学校のを使えばいいわ」

という感じで、きっぱりと押し切られてしまいました…。水泳の授業は1時間目だし、水着を取りに行く時間はもうない。

「息子よ、頑張れ~!」と、心の中で祈りつつ家路につきました。

心配しつつ午後のお迎えに行くと、息子は割と平気なかお。でも、水泳の授業についてはまったく触れません。多分、不安で嫌だったものの、授業だから仕方なく水には入ったんだと思います。

帰宅して学校で借りた水泳パンツを洗濯しようとビニール袋から出してみると、「えええっ?!」めっちゃ大きい! Sサイズの子がLサイズのパンツをはいているような感じで、これじゃ水の中で脱げちゃうよねという大きさ…。

「授業の間ずり落とすことなく、どうやってはいてたんだろう????」とプール恐怖症のことより、こっちの方が気になったりして。

それ以降も、息子は水泳の授業には欠かさず参加しましたが(通学に関してはいつも皆勤賞)、その話題についてはひと言も触れないので、授業中に一体どうしてるのか全く分からず。

担任に訊いても、「大丈夫」と言われるだけで、実態は不明のまま。水泳の先生は常勤ではないので、多分話す機会もあまりなかったんだと思うのですが。

それでも、「水に入らなくて困ります」とか「問題があります」などと注意されることはなかったので、プールに入っていたことは確かでしょう。本人のプライドもあるし、息子が自分からいいだすまで、こちらからは訊かないことにしていたのですが。

でも、2年生の終わりに判明したのは、息子はその時点でも10m・25m・50m泳げたという証書がもらえていなかったということ(クラスでも数少ないひとりだったはず)。本人は何も言わないし、ママ友の話題にものぼらなかったので、そのままにしておいたんですが…。ちっとも進歩してなかったんですね(;^_^A。私は証書の存在すら知りませんでした。

水泳の先生はものすごく大柄の怖そうな中年女性(男性みたいだった)で、学校で出会う機会はほとんどなく、声をかけずじまいで2年間が終わってしまったという。

息子本人は自分は水が怖くて泳ぐところまでいかず、きっと肩身の狭い思いをしたり、コンプレックスになっていたと思います…。

息子が泳げなくて困っていたのなら、親に伝えてくれていたらなあ、と今でもせつないです。

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緘黙児の気持ち

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その1)祖父母の反応

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その2)社会的な機会を増やす

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その3)1年生に進学

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その4)先生が僕を喋らせようとする

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その5)学校外でのスモールステップ

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その6)もうひとりの緘黙児

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その7)1学期の個別指導プラン

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その8)初めて声が出た!

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その9)教室内で囁き始める

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その10)S君宅に招かれる

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その11)初めての言語テスト

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その12)誤解されてた!

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その13)目からウロコ

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その14)誕生会とF君の涙

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その15)個別指導プランNo1

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その16)校庭で声が出た!

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その17)緘黙息子の仮装大会

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その18)個人指導プラン No2

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その19)初めてのSMiRA定例会

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その20)放課後の教室

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その21)しゃべれない親族

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その22)みんなの前で声が出た!

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その23)トランジションの支援

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その24)小1の夏休み

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息子の緘黙・学童期6~7歳(その3)2年生1学期の指導プラン

もう8月に入ってしまいましたね。イギリスでは7月中旬に猛暑日が1週間ほど続いたあと、「もう夏は終わっちゃったの?!」と感じるような肌寒い気候に。地中海周辺では記録的な猛暑で山火事が多発しているのを考えると、まあ文句は言えないんですが…。

サリー州のヴァージニアウォーターにて。雨が降る前にピクニック

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なんとか学校で息子をサポートできればと、私はこの学年でも週1回の保護者ボランティアを引き受けることにしました。また、新担任たちが落ち着いてきたら、放課後の教室を訪問する許可を得ようと待ち構えていたのです;^_^A。

1年生からの進歩が少し後退し、大人に対しては囁き声に戻ってしまったとはいえ、息子はそつなく学校生活をおくっていました。クラスメイト達は息子の緘黙状態に慣れているので、通常運転ですね。

11月に入ってやっと2年生最初のIEP(個人指導プラン)が作成されました。

2006年11月からのIEP Y2・No1

ターゲット1: 大人に聞こえるよう、もっと大きな声で話す

  • 達成目標:異なる小グループ活動で3回
  • リソース/ テクニック:小グループでのディスカッション
  • 作戦:聞き手を意識して、より明確に、人に聞こえるように話すよう促す
  • 担任とTAへの提案:グループ内で発言するよう促したり、テープレコーダーを使ってみる(これは一度も試されなかった)

ターゲット2: 大人に聞こえる場所で、友達と小グループでゲーム遊びをする

  • 達成目標:5回
  • リソース&テクニック:ロール(役割)プレイ、ドラマ、小グループでのディスカッションやゲーム
  • 作戦: 仲のいい友達といっしょに座らせ、安心して話す自信がでてくるまで待つ。参加できたら褒める。
  • 担任とTAへの提案:小グループでロールプレイを使い自信を持たせていく。トライできたら肯定的なフィードバックを返す。

この時のIEPミーティングには、担任のE先生とSENCo(特別支援コーディネーター)と私が出席。SENCoは息子が新しい担任に慣れてきたら、だんだん声が大きくなると楽観視していました。が、私としては1年生で「囁き声」から普通の声に進歩したのに後退してしまってモヤモヤ。また、あまり熱心には見えない担任たちになんとなく不安を感じていました。

このミーティングで、放課後に教室を訪問してもいいか話を切り出したところ、E先生はあまり乗り気ではない様子…。前担任のF先生は学年主任をしていたため、教室で会うことはほとんどありませんでした。が、E先生とL先生は放課後少し教室に残って、翌日の引継ぎなどの仕事をすることが多いとのこと。

先生が教室にいるのなら、先生たちと話すことに慣れるチャンス!

ずうずうしくも、「仕事のお邪魔はしないようにします。でも、できたら10分くらい会話をする時間を作っていただけないでしょうか?」と頼み込んだのでした。

E先生は相変わらず渋い顔でしたが、SENCoがいた手前か「週に1回くらいなら」とOKを出してくれました。やった! L先生にも伝言してくれるということで、翌週から放課後に教室訪問ができることになったのでした。

<関連記事>

息子の緘黙・学童期6~7歳(その1)小学2年の心構え

息子の緘黙・学童期6~7歳(その2)進歩の停滞

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第2回 場面緘黙 H.E.L.Pオンラインサミットから(その3)

<5月中旬に開催されたオンラインサミット、第2回Selective Mutism H.E.L.Pから>

緘黙体験者、ジェイミー・ラゴさん

ダンスの振り付師で緘黙絵本の著者でもあるジェイミー・ラゴさんは、幼少のころから20歳ぐらいまで場面緘黙でした。そんなジェイミーさんを救ってくれたのが踊ること。サミットでは緘黙になった時の状態を詳しく説明し、自分なりの対処法を語ってくれました。

ジェイミーさんは入園するまでただ内気な子と思われていました。でも、実は家族の中で打ち解けて話せたのは母親だけ。入園時のスクリーニングテストで言葉が出ず、場面緘黙症と判明しました。感覚過敏やADHD、ASDなどの診断はなかったそう。

園では周囲の子どもたちと交わることなく、ただ遠巻きに観察する毎日。遊びに参加したいのに身体が動かない――環境に馴染んで大丈夫と感じられるまでに、時間がかかりすぎたのです。

自分が普通に話せると解っているのに、どうして声がでないのか?そのメカニズムは不明でした。母親に「今日は園どうだった?」と訊かれる度に、「まあまあだった」と答えていたとか。

自らの緘黙状態を「冷凍庫の中にいるような感覚」と回想――頭が空っぽになって、自分の名前もわからなくなる…。本当にパニックになりそうな恐怖を感じていたといいます。

そんな恐怖の中で大人から矢継ぎ早に質問されても、何も言えないのは無理もありません。

「動けない恐怖から逃れられるなら何でも良かった。幼いころは、パーティーやお出かけなどで居心地が悪くなると、どこでも眠りこんでしまったわ」。

成人してから、「この不安を処理するには、ただ時間をかければいい」と自分なりのリカバリー法を発見。凍りついた瞬間をやりすごすことができれば、話せる状態になると判ったのです。

それからは、極度の不安に襲われることは稀になりました。でも、時間をかけても恐怖を処理しきれない時は今でもお昼寝するんだとか。「それが場面緘黙に対して起こる、私の身体の反応なんでしょう」とにっこり。

ジェイミーさんの場合、帰宅してからメルトダウンを起こすことはありませんでした。7歳のころからダンスを習っていたため、踊ることでフラストレーションを発散できていたと推測しています。

母親がダンスを始めさせた時、本当はやりたくなくて母親を憎んだそうです。でも、それは新しいことへの不安の裏返し。

当時、話せる仲良しの友達がいて、4人で一緒に習い始めたことが功をなしました。ひとりで参加していたら、続けられなかっただろうと振り返ります。

「チームスポーツだけど、自分で自分の体をコントロールできるから娘に合いそう」と、ダンスを選んだお母様。先見の明がありましたね。

小学校時代は『ジェイミーはシャイで内気』とレッテルをはられているようで、本当に嫌だったそう。園と小学校のメンバーが同じで、そのイメージを払拭するのは困難でした。

「小1の時が一番ましだったかな。みんなが私を変な目で見ないから、友達も一番できたの。でも、学年があがる度にクラスが変わって、話せる子と離れ離れになって、年々友達を作るのが難しくなった…」。

毎年慣れた頃に時計がリセットされる――違うクラス、先生、教室、クラスメイトたち――環境に慣れるのに時間がかかる緘黙児には辛い状況です。

学生時代を通して、緘黙を理解してくれた先生もいれば、そうじゃない先生も。

テストに関しては、ひとり別室で受け時間を延長してもらっていたとか。周囲のことが気にかかり、問題を処理するのに時間がかかったといいます。

学校や心理士を通して何度も検査を受けましたが、正式な治療プログラムを受けられたのは成長してから。場面緘黙症を克服できたと感じたのは20歳のころでした。

学生時代ジェイミーさんが習慣にしていたのは、不安を感じた時にそれを書きとめること。そのメモを心配箱(Worry Box)に入れると、少し安心できたといいます。

「後で心配箱を開けてみたら、メモに書いてあったのは取るに足りないことばかり。それでも、書くことで不安に対処できていたんだと思う」

なんでもいい、ジェイミーさんのように自分が安心できるなんらかの対処法を持てるといいですね。

場面緘黙症で苦しんでいるティーンへのメッセージ:

自分は自分のままでいい。言葉でなくても自らを表現できるものを探すことが大事。あなたはひとりじゃない。サポートグループやインターネットで仲間を探して、仲間を作って。

保護者へのメッセージ:

子どもが自分自身を発見できるように、十分な時間や機会を与えて辛抱強く見守ってほしい。

*          *            *

ジェイミーさんは26歳になった現在も、まだ場面緘黙(の後遺症?)に苦しむことがあるといいます。社会的な場面、特に大勢の人や同年代の人が集まる場では、自分に自信が持てなかった過去を思い出し不安になることがあると。

彼女の絵本『ウィローの言葉 Willows Words』は、話せない少女が踊ることで言葉をとりもどすというお話。この絵本を通じて緘黙の子ども達や保護者に希望をもってもらえたら、と願っています。

https://willowswords.com/willows-words/

なお、この記事はかんもくネットが発信しているnoteの記事に手を加えたものです。

https://note.com/kanmoku_net/

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SM H.E.L.P主催者、ケリーさんのスモールステップ(その2)

第2回  場面緘黙H.E.L.P.オンラインサミットから(その1)

第3回  場面緘黙H.E.L.P.オンラインサミットから(その2)

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喜びも悲しみも

先週の日曜日は私の23回目の結婚記念日でした。ロンドン北部のハムステッドにある歴史記念館、Burgh Houseで式を挙げた私たち。記念日にはそのガーデンカフェでランチを楽しむのが恒例となっています。コロナ禍が続く中、今年も木陰のテーブルで家族そろって記念日を祝うことができました。

     イギリスは先週末から猛暑(最高気温30度前後)が続き、私が小学生だったころの日本の夏を思い出しています

下の写真はBurgh Houseの向かい側に飾られていたストリートアート。パネルの上部はピンクの造花のバラで埋め尽くされ、下部には詩/ 言葉が。読みながら、「うんうん、これって人生の哲学だなぁ」としみじみ。

   

良いことは悪いことと共に受けいれなければならない

悲しい時は微笑んで

今持っているものを愛しみ、かつて持っていたものを記憶しておこう

常に許そう、でも忘れないで

過ちから学ぼう、でも後悔はしないで

人は変わり、状況は悪くなるもの

ただ、これだけは覚えていよう――それでも人生は続く

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話は変わりますが、私が勤めている特別支援学校は先週水曜日に終業しました。5年間日本語を学んでくれたアニメ好きの教え子2人が卒業。それこそ、良い時も悪い時もつきあってきたので、とても感慨深い別れとなりました。

驚いたのは、それぞれの最後の授業で2人とも送別のギフトをくれたこと!!  ひとりは出るはずだった運動会をドタキャンして「最後だから」と授業に来てくれました。予期していなかったので、本当に感激しました。

(私からは手紙と日本食・雑貨店の商品券を贈ったのですが、彼らからなにかをもらうなんて思ってもみませんでした)

カードとポルトガル語のフレーズブックをくれた生徒は、幼少期をポルトガルで過ごしてからイギリスに移住(元は中東から?)。TVでポルトガル語版『ドラエモン』を観て育ち、日本に興味を持ったんだとか。

私が「いつかポルトガルに行きたい」と言ったのを覚えていてくれたんですね。

彼がお母さんと片面ずつびっしり書いてくれたカードには、こんな言葉が、

「日本語を始めた時は個人的にすごく大変な時期だったから、真面目にやらない時もあったし、いい生徒じゃなかった。でも、それでも忍耐強くつきあってくれたよね。日本語の授業もだけど、会話をしてる時が一番楽しかった。大好きな日本のアニメや音楽や文化について話すと、いつも興味を持って耳を傾けてくれたから」

この子は小学部の騒がしい雰囲気やクラスになじめず、うつ状態になって一時期不登校に(詳しくは『ひとりじゃない』をご参照ください)。

高等部用の別校舎ができてから登校できるようになったのですが、最初は普通の授業は無理…。そのころ何をしていたかというと、折り紙をしてたんです!

私は紙風船やツルしかできないのに、彼が興味を示すのはクノイチの短剣とか龍とかなんですよね (;^_^A ハードル高すぎ! で、動画を探して練習して、折り方の説明を英訳して。彼は手先が不器用なので、細かい部分は全部私がやらねばならず、とくかく形になるように必死だったなあ…。でも、喜んでくれるのが嬉しかったし、彼の忍者や龍についての知識には舌を巻きました。

そうこうしている内に、彼は新しい校舎と学友に馴染み、アニメ好き&日本食好きの友達ができたのでした。おまけに日本語の国家試験にも合格したんです。

もう一人の子はADHDと微細運動発達障害も併発していて、14歳ころかな、ちょっと荒れた時期がありました。私の授業では特に問題を起こしませんでしたが、一度だけフラストレーションを爆発させて壁をおもいきりパンチ!壁にボッコリ穴をあけたことが…。

どちらも今では良い思い出。来年はカレッジで新コースに挑戦しますが、学校やTAの補助はありません。その後、無事に社会に出ていけるよう、健闘を祈りたいです。

ところで、普通だったらシミジミと別れを惜しむところですが、2人とも「それじゃ、バイバイ」と、とってもドライ(;^_^A でも、そこが彼ららしいんです。

 

追記:ネットで東京オリンピック・パラリンピックの開会式音楽を担当していた小山田氏の辞任騒動を知りました。

うちの学校は高機能ASD児&ティーン専門の特別支援校で、公立校にうまく馴染めず転入してくる子も多数。この間、「好きな/ 嫌いな+名詞」の練習をしていて、たまたま「嫌いな人は誰ですか?」と生徒のひとりに訊いたんです。そうしたら、「キランです」ときっぱり。

この子は大人しくてあまり感情を外に出さず、ぱっと見ただけではASDとは判りません。前の学校ではこのキランという子にずっといじめられていたと教えてくれました。みんなに知られない様に、陰に隠れて執拗にいじめ続けたと…。

いじめられた側は、それが心の傷になって一生残ります。特に、ASD児&ティーンはフラッシュバックで追体験することが多く、嫌な記憶が昨日のことのように蘇ることも。

コロナ禍で人々の心が荒涼としている現在、誰もいじめたり、いじめられたりしないような世の中になって欲しいと心から思います。

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第2回Selective Mutism H.E.L.Pオンラインサミットから(その2)

ぐずぐずした天気が続くなか、イギリスのバラの季節が終わってしまいました。雨の合間に出会ったバラたちの美しい姿を、ここに留めておきたいと思います。

<5月中旬に開催されたオンラインサミット、第2回Selective Mutism H.E.L.Pから>

今回のサミットでは、子どもが「話せない」ことの根底に潜む問題にスポットを当て、作業療法やサウンドセラピー、感覚統合に関わるスピーカーも招いていたのが特徴的でした。その中に、内耳にあって重力と直線加速度を司る働きをする前庭器官(vestibular system) についての話が出て、とても興味深かったです。

私が勤めている高機能ASD児とティーン専門の特別支援校には、作業療法士と言語聴覚士が常勤。生徒たちの運動能力や言語・コミュニケーション力、情緒面など総合的な発達を支援しています。今まで粗大運動などの不器用さが、前庭器官と関係しているとは知りませんでした。

◎ジョリーン・ファーナルドさん:米国の音声言語病理学者(Speech & Language Pathologist)、DIR-SMモデル(Developmental, Individual-differences, & Relationship-based model  発達段階と個人差を考慮に入れた相互関係に基づく緘黙治療のモデル)を考案し、独自の治療方を持つクリニックを運営。著書に『The Comprehensive Guide to Selective Mutism』がある。

*            *             *

ジョリーンさんが場面緘黙症と向き合うことになったのは、娘さん(今年20歳)が3歳で場面緘黙症を発症したから。それまでは大学で少し学んだ程度で、緘黙とトラウマを結びつけていたそう。でも、それが間違った知識だということにすぐ気づきました。

緘黙治療といえばCBTのエクスポージャー法が定番ですが、ジョリーンさんが最初に採用したのは、ソーシャルワーカーとの遊戯療法(箱庭療法?)。社会的な場で固まって動けなくなる娘を見て、まずは遊びで不安を下げようと考えたのです。

次に、作業療法(OT: Occupational Therapy)を追加していく過程で、大きな変化があったといいます。(作業療法は人の感情的、社会的、身体的ニーズに影響を与える障壁を下げるための療法)。

「基本的に娘の行動が全く変わったのよ。前庭は私達の身体を統制する窓口のような器官だけど、それが正常に働いていなかったのね。だから、脳から出た司令を体に伝えるシステムが上手く機能していなかった」

脳は身体が受ける感覚的な刺激を統制していますが、その情報が脳にきちんと伝わらないと、闘争か逃走か反応(fight or flight)、フリーズ反応(freeze)、疲労感覚(fatigue)のシステムが誤作動してしまうといいます。緘黙は喉がしまったような感じになって声がでないのが特徴ですが、一部の緘黙児がそうであるように娘さんも体全体が硬直。また、感情の統制がうまくいかず、学校から帰ると癇癪を爆発させ、社会的な場に出ると疲労が激しかったとか。

それ以外にも、課題が見えてきました。

「娘にはまず自分自身の感情を理解する必要があった。それから、人の感情を理解することも」(ジョリーンさんは子どもの情緒面の発達を支援することの大切さを訴えています)。

「6歳のころに人の絵を描かせてみたら、大きな頭から短い手足が直接出ているだけ。胴体も首もなかった。普段の行動からみて、空間における自分の身体の位置がきちんと把握できていないようだったわ」

作業療法を続けることで、娘さんの不安の根底に何があるかを理解できたといいます。「話せないことは氷山の一角でしかない。それがよく解ったの」と回想。そこからは、薬も考慮に入れた総合的なアプローチに目を向けたそう。その過程で出会ったのが発達心理学者、スタンレー・グリーンスパン博士によるDIRモデル(ASD児の治療プログラムとして有名)でした。

緘黙児の中には音声や言語、コミュニケーション、感覚処理、運動機能、視覚空間など様々な問題を抱えている子がいます。その複雑さ考えると、障害のすべての側面に対処するDIR/ Floortime のような包括的な治療モデルが必要。

それぞれの子どもの発達に合わせて、音声や言語、運動や感覚の処理などを含む個人差を考慮したうえで、家庭・学校・地域での相互関係を通じて、社会性や情緒面の発達をサポートしていく。それがジョリーンさんの治療方針です。

追記:

緘黙児でなくても感覚過敏があったり、ちょっと体が硬かったり・バランス感覚が悪かったり、文字を書くのが苦手だったり、というようなことがあるかと思います。イギリスの公立学校では、5歳になる歳で入学。1年目はレセプションと呼ばれ、1年生になる前の準備コースのような感じです。

この学年中に、入学した子どもたちに対して、ひとりずつ身体面・情緒面(社会面を含む)・言語面・学習面(数字の観念や指示に従えているかなど)などの発達状態を調査。気になる点がある子に関しては、SENリストに載せ、保護者に連絡を入れ対策を考えます。

例えば、息子のクラスでは35人のうち半数以上がリストに。ASDや身体的な障害を持つ子から、話し言葉が不明瞭だったり、友達に譲ることができないといった情緒的な面まで幅広くカバーされていたよう(息子ももちろん入っていて、小児クリニックで診察を受けたため、IEPは「アクション+」という評価でした)。

SENリストに乗った子は、学期中は要観察。問題がないと分かるとリストから外され、レセプションが終わるころには半数以下になりました。

学校とNHS(国民保健制度)が連携しているため、気になるところがあれば学校を通じて保護者や医療機関に連絡が行きます。家庭では少々問題があってもそれを個性と捉え、保護者が気づかないこともあるかと思うので、このシステムは利点が多いと思います。

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SM H.E.L.P主催者、ケリーさんのスモールステップ(その1)

SM H.E.L.P主催者、ケリーさんのスモールステップ(その2)

第2回  場面緘黙H.E.L.P.オンラインサミットから(その1)

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第2回 場面緘黙 H.E.L.Pオンラインサミットから(その1)

イギリスでは相変わらず雨模様のさえない天気が続いています。それでも、昨年コロナで中止になったイベントが、今年はポツポツ再開されるように。先の日曜日、昔住んでいた町のフェスティバルで個人宅の庭が複数公開されたので、曇り空のもと庭巡りに行ってきました。

<5月中旬に開催されたオンラインサミット、第2回Selective Mutism H.E.L.Pから>

◎ゲイ・ジェイムスさん:保護者で緘黙本『Living beyond Silence』の著者

ジェイムスさんの息子、トレバー君が場面緘黙を発症したのは4歳のころ。今から20年近く前のことで、アメリカでもまだ専門家は殆どいませんでした。

別州で緘黙治療の経験がある小児心理士を探し当て、まず「しゃべるか、しゃべらないかで大騒ぎしないこと」とアドバイスを受けました。残念ながら治療はうまく行かず、自ら支援に乗り出すことに。多くの資料を参考に、手探りしながら下記の支援を行っていきました。

最初に行ったこと(幼児期)

  • エクスポージャー法で不安に向き合う機会を多く作る
  • フラストレーションを発散できるよう、スポーツクラブなどに参加させる
  • 同年代の子どもと接する機会を作る

友人や家族への説明

  • いくら説明しても解ってくれない人はいる。全員を説得するのは無理
  • 緘黙児は周囲の反応に敏感なので、子どもがいる場では話題を変える(「今日は話すの?」と的外れな反応をし続ける人もいたとか

園・学校が楽しいところだと教える

  • 兄がいたため、学校がどんなに楽しいかを話して聞かせていた(話さなくても友達は多かったそうで、「いい聞き手だったんだと思う」と回想)

園・学校と情報を共有する

  • 園の先生たちが緘黙に気づき、どうしたらいいか訊ねてきた(「無理に話させないこと」と伝えることができた)

帰宅後のメルトダウン(怒りやフラストレーション)対策

  • 一人になれる時間・空間が必要
  • 子どもの気持をなだめてくれる活動・対象を探す(好きだった絵を習わせ、音楽や身体を動かす活動にも参加させた)
  • 猫を飼うことで、帰宅を待ちわびるようになった

家では普通に行動し話せているのに、なぜ外では他の子と同じようにできないのか?自分の子どもに障害(心の病)があると認めるのが難しかったそう。

大きなターニングポイントが来たのは7歳のころ。誰とでも話せる訳ではありませんでしたが、先生から名前を呼ばれると応えられるように。それからも、親子での取り組みは長く続きました。

ジェイムスさんの著書『Living beyond Silence』の表紙は、グラフィックアーティストになったトレバー君の手によるもの。闇の中に立つ少年は、自分が緘黙だった頃のイメージを描いたそう。その先には明るい光があり、適切なステップを踏めば未来は明るいことを暗示しています。

現在、トレバー君は家を出て自立し、主に音楽活動を通して世界中を旅しているとか。話すことには全く問題はありませんが、緘黙は不安障害のひとつ。将来も不安が消え去ることはないだろうとジェイムスさんは考えています。

ジェイムスさんの話で特に印象に残った箇所:

1) 場面緘黙の資料や情報を集めた時、息子の立場で考えることができるようになった。大きな不安のために、声が出せないのだと共感できた。子どもがどれだけ苦しい思いをしているか――まず共感してあげることが重要。「あなたの気持ちは分かるよ」「長い間声を出せなくて、フラストレーションがたまるよね」など、頻繁に声掛けすること。

2) 子どもの気持ちを蔑ろにしないよう十分注意が必要。不安を感じたり、人目を気にしたりする子どもに、「そんなこと気にしなくていい」「そんな風に思わなくていい」というのは逆効果。自分の子どもでも、人として尊重してあげて欲しい。

3) 自分達だけで治すのは無理。子どもが不安に感じる場面で話すチャレンジをするには、周囲の協力が必要不可欠。保護者だけでは解決できない問題なので、話せる人のサークルに参加したり、第三者の専門家を巻き込むことが重要。

(ここからは私の感想です)

大人でもそうですが、口に出して共感してもらえると嬉しいものです。特に、今は世界中がコロナ禍であまり明るいニュースがない状況。緘黙児は周囲の空気に敏感なので、自分を取りまく不穏な空気に大きな不安を感じているかもしれません。厳しいロックダウンを何度も繰り返してきたイギリスでは、専門家が子どものメンタルヘルスの悪化に警鐘を鳴らしています。

日本には言葉に出さずに人の気持ちをくみとる文化が根付いていますよね?はっきり言うと角が立つことも多いし、親しい仲だと「そんなの言わなくても解る」と思いがち。反対に、欧米では「ちゃんと言わないと伝わらない」文化で、カルチャーチョックを受けたことも多くありました。「言ったもん勝ち」感も強いです(笑)。

イギリスでは母親が子どもに対して、「愛してるよ」「ダーリン」などと、常に愛情を言葉で表現します。子どもが何かできた時は、もうべた褒め(笑)。初めて見た時はちょっと抵抗感があったのですが、子どもが安心でき、自信を持つのに寄与してるかなと。「一度言ったからもう解っているはず」と思わず、何度でも言葉がけをして安心させてあげたいものです。

なお、この記事はかんもくネットが発信しているnoteの記事に手を加えたものです。

https://note.com/kanmoku_net/

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SM H.E.L.P主催者、ケリーさんのスモールステップ(その1)

SM H.E.L.P主催者、ケリーさんのスモールステップ(その2)

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SM H.E.L.P.主催、ケリーさんのスモールステップ(その2)

イギリスでは1週間ほど前から急に天候が崩れて、雨、雨、雨の毎日。最高気温も16度くらいまで下がってしまい、肌寒い日が続いています。コロナのデルタ変異種が全国に蔓延してきていますが、ロックダウン疲れとワクチン信望から規則に従わない人も多いよう…。これからどうなってしまうのか、まったく見当がつきません。

 

激しい雨が来る前に庭のイングリッシュローズを切りました

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さて、ケリーさんのスモールステップの続きです。

ケリーさんは買い物の時だけでなく、幼稚園や自宅でのプレイデート、公園遊びなどでも同時進行でスモールステップを行ってきました。

●幼稚園でのチャレンジ(例)

娘さんは幼稚園で口をきくことができませんでしたが、友達と話したい気持ちが強かったそう。そこで以下のような作戦をたてました。特に園で緘黙状態が深刻だったので、ゆっくり時間をかけたようです。

  1. 誰が一番話しやすいかリストを作成。まず、一番話したい子と視線を合わせる
  2. 「ハイ」と書いたフラッシュカードを友だちに見せる 失敗  カードを持つことも拒否 ← 娘さんに謝罪
  3. 登園時に駐車場で友だち家族の車が来るのを待ち、車の窓から友だちに手をふる
  4. 園の待合室で、やってきた友だちに手をふる  これは長期間かかったとか

先生に慣れさせるため、入園前(夏休み)に週1で先生が話しかけてくれるビデオを見せた。また、園にスモールステップ計画と成果表を渡し、できたらステッカーを貼ってもらって進歩をチェック。

●プレイデート

  1. 先生や他の保護者に連絡して娘の状態を説明し、遊びに来てもらう(一番話したい子ひとりから)
  2. どんな会話をするか娘に事前に相談し、練習する。ゲームを利用して、どうしたら子どもに合うステップを踏んでいけるかを考える

話題:好きな動物、好きな色、やりたいゲームなど

●カードゲームでのスモールステップ例(話す言葉を多くするためのステップ)

  1.  「はい」「いいえ」をうなずきで答える
  2.  色を言う、色の種類の数を言う等
  3.  閉じた質問に答える(「はい」「いいえ」/ 数語で返答可)
  4.  開かれた質問に答える(「はい」「いいえ」/ 数語で返答不可)

●公園で年下の子と話す練習(小さい兄弟がいたので、年下の子どもにアプローチするのに慣れていた)

  1. 公園で見つけたケムシを見せる
  2. 母親もついて行って「このケムシ何色?」「蝶々になるのかしら?」など、間に入って子どもたちに話しかける。娘の不安が下がったら、話し始めるきっかけを作る
  3. 他の子どもや保護者が集まってきたら、娘の様子を見ながらコミュニケーションの機会を作っていく

みく注:うちの息子もそうでしたが、同年代の子より年下の子の方が話しやすいという緘黙児は多いよう。母親がすぐ側にいてアシストすることで、子どもの不安は随分下がります。また、相手の視線を自分ではないもの(この場合はケムシ)に集めることにより、不安を下げることが可能に。それ故、猫や犬などのペットを飼うこともお勧めです。

買い物チャレンジでも、進歩に合わせたスモールステップを。ステップ毎に子どもに合う目標を立て、慣れるまで同じステップを踏むことがコツ。

●店員に挨拶する

  1. レジに置いてある募金箱にコインを入れる
  2. レジの店員と視線を合わせる
  3. 募金箱にコインを入れる時に視線を合わせる
  4. 店員に挨拶する

●ショップで話す練習

  1. まずは周囲の人や店員の前で母親と話す ①決まった質問:「兄弟は何人?「歳はいくつ」など指で答えられるもの ②「名前は何?」など言葉で答えなくてはいけない質問   まずは車の中で練習 → 外で → 人が聞いてない店の中で → 人の近くで  → 店員の近くで
  2. レジの店員に「Brave voice の練習をしているんだけど、娘に名前を聞いてくれる?」とお願いし、チャレンジ開始  最初は口の中でモゴモゴ → 少しずつクリアに → 慣れてきたら「もう一回言ってみて?」と、慣れるまで何度も繰り返す。口の中でモゴモゴ言っているだけでも大進歩と捉え、チャレンジできたらその都度褒める。

そのうち娘さんもやりたがるようになったとか。店員に名前を言えるようになるまで1年ほどかかったそうで、工夫と忍耐と根気が必要ですね。

スモールステップの際、成功したら勇気券 (brave ticket) をわたし、チケットが何枚かたまったらご褒美。スモールステップの梯子を細かく細かく組み立てたといいます。

ケリーさんは娘さんの診断が下りてから2、年間エクスポージャー法を実践(4歳半~6歳半)。その後ミネソタ州に引っ越して転校することに。小学校では2日目にクラスメイトや先生と話すことができたとか。

ケリーさんの例を見ていても、常にチャレンジし、スモールステップを踏み続けることの大切さが解ります。スモールステップは発話だけが目的ではありません。それぞれの子どもの苦手意識を克服し、自信を持たせることが重要。まず苦手な場面(人前にでる)ことから始めて。発話が最終目的ではなく、不安や緊張を感じずに人とコミュニケーションを取れるようになることがゴールです。

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SM H.E.L.P主催者、ケリーさんのスモールステップ(その1)

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SM H.E.L.P.主催者、ケリーさんのスモールステップ(その1)

 

イギリスは晴天のいい天気が続いています。が、やはりデルタ変異種が蔓延傾向にあり、6月21日のロックダウン完全解除は4週間ほど延期となりそう…。政府はワクチン頼みですが、ワクチンだけでは予防できません!分析によるとデルタ変異種で亡くなった方43人中14人は1回以上の接種済。その中には、2回接種済みの方も複数。ファイザー社のワクチンだと1回接種で予防効果率は50%くらい、2回目で90%近くになるよう。でも、接種後2週間経たないと効果がでません。みなさんも、どうぞお気をつけて。

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Selective Mutism H.E.L.Pは米国の保護者ケリー・メルホーンさんが主催するオンラインサミット。2年目となる今年は5月中旬に開催され、専門家や緘黙体験者9名が場面緘黙や不安に関して話した他、ケリーさん自身がスモールステップ体験を語ってくれました。

ケリーさんの娘さんは現在7歳。4歳半で場面緘黙と診断され、すぐ専門家を探して治療を始めました。治療法のひとつがCBTのエクスポージャー法で、実践して学びながら娘さんのペースをつかんだよう。前回までがエクスポージャー法の話題だったので、ケリーさんのケースと照らし合わせてみました。

エクスポージャー法でスモールステップに取り組むにあたり、大切だと思われる点:

1)  子どもの不安度を人・場所・環境に分けて細かくチェック(学校の内外)

2)  その子に合うスモールステップを計画・実行する(子どもを参加させ、高学年からは主導権を握らせる)

3)  ステップ毎に克服できそうな目標を定める(無理な目標は禁物) 

4)  モチベーションや明確な目標を持たせる

5) 1回10~15分ほど、推進力を失わないため週に3回以上(『場面緘黙リソースマニ ュアル』より)

6)  不安度の低い挑戦から始め、徐々にハードルをあげていく

7)  そのつど柔軟に修正しながら、小さな成功体験を積み重ねていく

8) 実践の後には必ず振り返りをし、成功・不成功の内容を分析。反省点を次のステップに生かす

ケリーさんのスモールステップ

最初の挑戦:お店でお菓子をひとつ選び、レジカウンターまで持って行く。

結果:カウンターまで行くことができず、通路に座り込んで泣き出した

振り返り:「自分はいったい娘に何をしてしまったんだろう?!」と、驚きと困惑でいっぱいに。母娘ともに、次のチャレンジが怖くなった。

1)  子どもの不安度を人・場所・環境に分けて細かくチェック

ケリーさんは娘さんの不安度を把握しておらず、これなら簡単にできるだろうとステップを設定。ハードルが高すぎたことが判明したと同時に、子どもの緘黙の深刻さも理解することに。緘黙児はひとりひとり違うので、試行錯誤しながら模索していくしかないと思います。

でも、そんなことでは怯まなかったケリーさん。SNSで他の保護者たちに相談し、娘さんができそうな、もっと細かなステップを考案し、実践していきました。

二度目の挑戦:一緒にカートを押してレジカウンターまで行き、ケリーさんがカートから買うものを出して隣にいる娘に渡し、娘がそれをレジのコンベアベルトに置く

結果:成功

振り返り:できたけれど、娘はまだ不安な様子 → 慣れて不安がなくなるまで、数週間続ける

2)  その子に合うスモールステップを計画・実行  

~   8)  実践の後には必ず振り返りをし、成功・不成功の内容を分析。反省点を次のステップに生かす

娘さんに合う挑戦を見つけ出し、娘さんのペースに合わせてそれを繰り返しています。子どもによって不安度も進みぐあいも異なるので、とても重要なことですね。ステップ実行の前に、「どのくらい難しい?」「私が隣にいたらできそう?」と確認し、一緒に計画を立てたとか。

モチベーション:4回できたらアイスクリームがご褒美、少しずつ難しいステップへ。

4)  モチベーションや明確な目標を持たせる

4歳半の子どもなので、好きな食べ物や玩具をご褒美に。ステッカーチャートなどでも効果があります。

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<ケリーさんのスモールステップ計画全容>

① ひとりでお菓子をレジまで持っていく  失敗

② 一緒にレジに行き、ケリーさんがカートから買うものを出して隣りにいる娘に渡し、娘がそれをレジのコンベアベルトに置く  数週間繰り返し  クリア

③ 母親の隣でなく向かい側に娘を立たせ、買うものをコンベアベルトに乗せさせる(母親のほうが店員に近い位置) しばらく練習   クリア

④ 娘が店員の近くまで行って、買うものをコンベアベルトに乗せる クリア

⑤ 最終目標: 店員にクレジットカードを渡す ← ここでも更に細かな計画を立て、時間をかけた  クリア

ケリーさんの言葉:

子どもが成長していく段階ごとに、これほど幅広いエクスポージャー法があると知らなかった。また、娘のSMがどれだけ深刻なのかもやってみるまで判らなかった。

スモールステップは一回でうまくいくものではない。マラソンのように長期戦になると心得たほうが良い。子どもが慣れるまで何度も繰り返す必要も出てくる。子どもを励まし、小さいステップができたら褒めること。常にチャレンジし続けることが重要。

本当に小さなチャレンジでいいんです。週に3回くらい、買い物などのついでに親子で頑張ってみてください。不安に対する耐性を身につけるには、不安と向き合うしかないのです。

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CBTってどうやるの?(その5)

5月末から急に初夏の気候に変わり、庭のイングリッシュローズが一気に咲きそろいました。例年は1輪ずつ開く花を楽しむところ、今年は複数のつぼみが一斉に開花した感があります。

Abraham Darby、Queen of Sweden、Mary Rose とピンク系バラが先に開花

同時にピクニックシーズンが到来。やっと緑の中で寝そべったり、ピクニックランチを楽しんだりできるようになりました。

   

ロンドン南部にある鹿のいる王立公園、リッチモンドパーク

今週は学校のハーフターム休み(1週間)だったので、久しぶりに泊りがけで旅行を楽しんだ家族も多かったよう。でも、その間あっという間に変異種デルタのコロナ感染が広がり、6月21日のロックダウン完全解除は無理そう…。ワクチンだけに頼らず、感染予防をしっかり強化して安全第一でいってほしいです。

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さて、自己流CBTの続きです。

5) 定期的にコツコツ成功体験を積み重ねる

『場面緘黙リソースマニュアル』では、推進力を失わないよう1回10~15分ほど、週に3回以上のスモールステップ実施を勧めています。というのも、時間が空くと抑え込んだはずの「恐怖」や「不安」が頭をもたげ、以前の状態に逆戻りしてしまう傾向が強いから。

「なーんだ。それほど怖くなかった」「できた」を繰り返し実感することで、だんだん自信がついて、次の段階に進むことができるのです。同時に自己肯定感も育っていきます。

6)  不安度の低い挑戦から始める

ステップは不安度の低い挑戦から始め、徐々にハードルをあげていくのが基本。いきなり高不安度のステップに挑戦したら、できてしまったという子もいるかもしれません。でも、失敗してショックを受けると自信を失い、次に挑戦するのが怖くなってしまいます。

でも、同じ挑戦の繰り返しではなく、少しずつハードルを高くしていくことが求められます。毎回少し不安だけれど、可能なステップを計画すること。

次のハードルに進むのか、それとももう少し同じ挑戦を繰り返して自信をつけるのか、子どもを良く見て柔軟に判断して。

7)  そのつど柔軟に修正を加える

スモールステップの意義は、小さな成功体験を積み重ねて自信をつけていくこと。だから、「できたね」と声を出して褒めたり、「あとちょっとだよ」と励ますことも忘れずに。

子どもが自分で進歩を確認できるようチャートを作成するのも一案です。毎回、子どもが「できた」「次はできるかも」と肯定感をもって終われるようにできればベスト。

失敗した時は、大体はハードルが高すぎることが多いのです。人・場所・環境や子どもの特性をチェックしなおし、子どもと相談しながら、さらに細かいステップに組みなおす必要があります。

なお、もっと挑戦したいという意欲が高い時は、ハードルを少し高めに設定しても大丈夫かも。でも急がせるのは禁物、子どものペースに合わせて。

8) 実践の後には必ず振り返りをする

実践した後は、振り返って成功・不成功の内容を分析しましょう。成功の理由を確認したり、反省点を次のステップに生かしたりすることができます。

緘黙児は繊細で敏感な子が多いので、親や伴走者の失望を鋭く感じ取ります。失敗も前向きに捉え、次からのステップのヒントに。子どもが安心できるよう、声掛けを忘れないようにしましょう。

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CBTってどうやるの?(その4)

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CBTってどうやるの?(その4)

イギリスは雨が降ったり止んだりの日々が続き、記録的に寒い5月となりました。その天候不順もようやく終わり、今週末から例年なみの天気に回復するようです。

やっとモノクロームの空とサヨナラできそう

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3)  ステップ毎に克服できそうな目標を定める

スモールステップで重要なのは小さな成功体験を積み重ねていくこと。だから、高すぎるハードルは禁物です。だからこそ、目標を立てる際に当事者である子どもの意見をきくことが大切といえるでしょう。

段階的に少しずつ不安に直面し、その状態に慣れることで不安を克服していくのがエクスポージャー法。ステップ毎に達成できそうな目標を立てることが重要です。

ハードルが高すぎて失敗すると、後退することも多々あるので要注意です。「もうやらない!」と拒絶する子もいるかも…。でも、そういう時でも粘り強く励まし続けて、一歩一歩進むしかないのです。

子どもは新たな挑戦に対して、「そんなの無理」「イヤ」としり込みするかもしれません。そんな時、もうひと押ししても大丈夫かどうか判断できるのは、一番近くで子どもを見ている保護者だと思うのです。できそうだなと思ったら、「ちょっとだけ、やってみる?」と誘って反応を見てみて。

失敗を恐れず、子どもの気持ちに沿ってコツコツ進むしかないですね。

スモールステップに挑戦したら、必ず声をかけて褒めること。褒められることでだんだん自信がついてきます。しばらく続けると、自ら「挑戦したい」という気持ちに。挑戦を続けることで、自分で計画し自主的にスモールステップを実施できるようになっていきます。これは将来とても役立つと思います。

4)  モチベーションや明確な目標を持たせる

小さい子なら、ステッカーチャートやお菓子、玩具などのご褒美が有効。星が5つたまったら、好きなお菓子や欲しいものを与えることで、モチベーションが上がります。

息子が小2(6歳)の頃、Dr WhoがTV放送されて全国で大流行し、学校中の男子がDr Whoカードやグッズを集めていた時期がありました。息子はカード欲しさに、自分から「ありがとうを言うから買っていい?」と、何度も文具店に足を運んだものです。

年齢が上の子の場合は、ご褒美というよりも自分がやりたいことや将来の希望など、現実に沿ったスモールステップ計画を本人が主体となって立てるのが望ましいよう。でも、本人に「変わりたい」という気持ちがなければ、計画を立てることは難しいかもしれません。(年が上の子の支援については『マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』』をご参照ください)。

何年も緘黙が続くと、本人も周囲も「話さない子」に慣れてしまい、行動を起こすのに多大な勇気とエネルギーが必要になってきます。周囲の雰囲気が良くサポートもあって、本人があまり困っていない場合は特に。不安が低減し居心地が悪くない状態で安定しているため、新たな変化の方がより恐ろしいのです。

こうした場合は無理強いせず、いつでもサポートできることを知らせてください。
進学や就職が近づいてきて、本人が「変わりたい」という気持ちになるまで、趣味など学校外でのスモールステップがお勧めです。ひとりで買い物する、電車に乗る、家事を手伝うなど、自立に向けた準備もできるはず。

下の図は、人が恐怖に対面した際の恐怖の度合を時間の経過ともに現したものです。赤い矢印は本人が予期する恐怖感。緑の線は1回目のトライ、紫は2回目、オレンジは3回目、ブルーは4回目と、同じ恐怖に4回繰り返して直面しています。

どの回でも恐怖感は2分でピークに達し、その後時間が経つにつれて下降。10分で半減、もしくはそれ以下に。1回目のトライでは最大90%の恐怖を感じますが、2回目は60%に軽減。4回目のトライでは最大で30%と恐怖感は1回目の1/3に。

何度も繰り返すことで恐怖の対象に慣れ、それほど恐怖を感じなくなるのです。頭の中で想像がどんどん膨らんで、不安がマックスに達してしまうのが緘黙児。実際に恐怖と対面して最初の2分間を我慢すれば、不安が徐々に軽減していくことを自ら体験することが本当に大切。

「なーんだ。それほど怖くなかった」と思えたら、次もやってみようという気になるはず。

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