R.I.P. パリス・ラッパー君

元緘黙の息子は、ミレニアム――2000年生まれです。大学生活をスタートするにあたり、今月末に家を出て大学の寮に入る予定。緘黙は10歳前に克服できていた(と思う)のですが、シャイなところはいまだ変わらず…。ちゃんと自立できるか心配だし、ひとり息子なので、やっぱり淋しい~😢

ところで、イギリスの国営放送BBCでは、2000年生まれの子ども25人の成長を追う教育ドキュメンタリー番組『Child of Our Time』をシリーズで放映してきました(『「思いやり」が育ってない?』でも取り上げたので、ご参照ください)。息子と同じ年に生まれた彼らの成長ぶりを垣間見ることを、とても楽しみにしています。

家庭環境、肌の色、考え方・生き方が異なる25組の家族の中に、フォコメリア(あざらし肢症)を持って生まれたアーティスト、アリソン・ラッパー(Alison Lapper)さんと息子のパリス(Parys)君がいます。身体的な障害を抱えたシングルマザーのアリソンさんは、介護者に支えられながらパリス君を育ててきました。

アリソン・ラッパーさんと14歳のパリス君

2003年にはアーティストとしての功績が認められ、MBE(大英帝国)勲章を受勲。2005年には彼女をモデルにしたマーク・クィン作の巨大な彫像がトラファルガー広場に設置され、一躍有名人に。2013年のシリーズ10では、12歳になったパリス君とアリソンさんの仲睦まじい様子が紹介されました。

最新作のシリーズ11が放映されたのは2017年春のこと。急速に変化する時代に16歳になった彼らの日常、SNS重視の交友関係、将来を決める第一歩、全国共通試験GCSEのプレッシャーなど、10名ほどの子とその家族の様子を紹介。アリソンさんとパリス君はGCSE試験と将来についての意見を述べただけ。その数分にも満たない映像からは、彼らの状況は全く伝わって来ず…。パリス君の頬がこけている様に見え、なんだか元気がない印象を受けたのでした。

そして、先週の日曜日、ネットでBBCのサイトを見ていたら、「パリス・ラッパー君が突然死」というニュースが…。

ショックでした!どうして? まだ19歳の彼に、一体何があったの?!

徐々に明らかになってきたのは、ドラッグ・オーバードーズによる事故死…。セカンダリースクール(12~16歳)に進学してから、母親の障害のことで虐めにあい、鬱と不安障害に苦しむようになっていたと。アリソンさんの手におえなくなり、16歳の時にメンタルヘルス法によって強制入院させられたようです(多分、前の記事のクリスティーナさんと同じ)。

彼がいつ麻薬を摂取するようになったのか、ヘビーユーザーだったのかどうかは、定かではありません。退院後は親元を離れて暮らしていたようですが、行政による保護やケアが行き届かず、軌道修正をすることができなかったよう…。アリソンさんは今後同じようなケースが出ないよう、制度の改善を訴えています。

実は、パリス君は息子の友達に良く似ていて、気になる存在でした。行政が反対する中、自分で子育てをしたいと頑張ったアリソンさん。色々なものと戦いながら19年間育てた息子を亡くしてしまうなんて、どんなに耐え難く苦しいことか…。

事故が起こる3日ほど前、二人は一緒に楽しい時間を過ごしたばかりだったといいます。

この先、どんな素晴らしい未来が待っていたかもわからないのに--パリス君の冥福をお祈りしたいです。

 

元緘黙のアーティスト、クリスティーナさん(その1)

昨日、夏休み中の息子と一緒に、テムズ河南岸のサザックにあるギャラリーに行ってきました。今年のSMiRAコンファレンスでプレゼンをした、元緘黙のアーティスト、クリスティーナ・キム=シムズさん(24歳)の初の個展『Liberation Through Nature(自然を通しての解放)』を観るためです。

 

   個展のポスターと受付をするクリスティーナさん(右)と友人のナターシャさん(左)

クリスティーナさんは、今年イーストアングリア大学でアートの修士課を卒業予定。繊細なタッチの油絵の多くは、森や公園、野原、海岸などの自然の中に、黒いシルエットの人物像を描いたもの。彼女の描く風景は写実的でありながらも色彩や明暗が強調され、はっと目を見張るような強い印象を放っています。

絵の中の人物はクリスティーナさん自身だったり、男性だったり――どの人物もこちらに背を向け、たったひとりで自然の風景の中にいます。黒いシルエットが放つ孤独な影を、自然の雄大さ、静けさ、美しさが優しく包みこんでいるかのよう。

人物像に自らを投影することで、自分もその風景の中に入って、光や風、空気感、季節が語りかけてくる言葉を聞いているような気持ちになります。

どの作品でも、人物像は光のさす方向を向いていて、不安からの解放や癒しを求めるクリスティーナさんの葛藤や心情がうかがえるような気がしました。

クリスティーナさん自身の言葉から:

 I want to reflect a narrative of the mental dialogue between human and landscape. I hope this dialogue might enhance the importance of our natural environment, our personal engagement with it and the benefits it can bring to our wellbeing.

「人間と風景の間に交される精神的な対話の物語を反映したいのです。この対話を描くことで、私たちに自然環境の大切さ、自然との個人的な関わり合い、そして自然が私たちの健康や精神にもたらす恩恵の重要性を強調できたら」

*           *            *

クリスティーナさんとナターシャさん(心理学専攻)は、同じ大学で学びならが互いに支え合ってきました。ふたりとも十代後半から緘黙を克服し始め、現在に至っています。まだ完全に克服したとはいえず、時には家から出られない日もあるとか。でも、スモールステップで小さな自信を積み重ね、着実に未来に向かって歩いているよう。

SMiRAコンファレンスでは話す機会がなかったのですが、人が多かったこともあり、ふたりとも緊張していたように見えました。今回は静かなギャラリーに私たちだけ。ふたりとも微笑みを絶やさず、ごく自然によどみなく話してくれました。

実は、息子が9月から大学に入るために家を出る予定で、ふたりにアドバイスをお願いしたんです。息子は社会的な不安がまだまだ強く、自分を出せないところがあるので。そうしたら、無理に周囲と歩調をあわせず、マイペースでやっていれば気の合う子が見つかるはず、と励ましてくれました。

静かな口調ですが、しっかり自分の意見を述べるふたりに対し、息子の方が緊張して言葉が少なかったです(笑)。

この個展、多くの方に見てもらえますように。クリスティーナさんのアーティストとしての更なる飛躍が楽しみです。

クリスティーナさんのサイト:www.christinaartist.com

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SMiRAコンファレンス(その12)

深い森の奥の『アリス』とオーナー夫妻

ここ3週間ほどの間に大切な人たちの訃報が続き、気持ちが沈んでいました。

アリスさんが旅立たれてすぐ、昨年出したクリスマスカードが「宛先不明」で日本から戻ってきて、いやな予感が…。宛先は帰国する際、できるだけ訪ねるようにしていた森の中のカフェ、『アリスの不思議のお店』でした。

オーナーの太田夫妻は殆どSNSをされておらず、ホームページもありませんでした。帰国の際に訪ねると、いつも温かく笑顔で迎えてくれたご夫妻。家族でも何度か訪れ、行くたびに息子の成長を喜んでくれたのに…。

岐阜県中津川市の山奥に佇む森のカフェ『アリスの不思議のお店』

インターネットで調べると、カフェはすでに営業を停止しているよう…。急いで電話とメールを入れましたが、どちらも不通…。

古い知り合いにメールで問い合わせたところ、何と太田氏が病気になり娘さんの嫁ぎ先に引っ越されたと――そして、昨年亡くなられたというのです。人づてに聞いたので連絡先は不明とのこと…。

すごくショックでした。信じられませんでした。

以前のエントリーでは触れませんでしたが、私は『アリス』が輸入雑貨店だった頃にアルバイトをしていて、オーナーの太田草吉さんには本当にお世話になったのです。私のイギリス行きを応援してくださり、店番をしながら色々語り合いました。おおらかで優しく博識で、ずばっと本質を衝くシャープさも。「草べさん」という愛称で、皆から頼りにされていました。

   画家のアトリエとして建てられたカフェ『アリス』は、木造りで天井が高く、広々とした居心地のいい空間。香り高いハーブティーとゆったり流れる時間が魅力でした

 

太田夫妻が心を込めて作る料理は、優しく奥行きのある味でした

  

    奥様が丹精された庭には、ハーブや四季折々の季節の花が。周囲の森に溶け込む自然な風情に心が和みます

5歳位だった息子を連れて里帰りした時は、緘黙で固まった息子にピアノを弾かせてくださり、すぐに馴染むことができました。「学校なんか1年くらい休んでも大丈夫。自信がついてから行けばいいよ」と草べさん。

アルツハイマーになった母を連れて、父の車でアリスを訪れたことも。お二人とも母に気を使いつつも、ごく普通に接してくださいました。美味しいケーキとハーブティーを堪能し、庭に出た時です。奥さんの美保さんがクリスマスローズをたくさん切って、「きれいでしょう?どうぞ」と母に持たせてくださったのです。

母の病が進行し頻繁に単独で帰国していた時期、山奥まで運転できず友達に頼んで『アリス』を訪れていました。ご夫妻の優しさに甘え、ほっとできる空間でした。

最後に訪れたのは、父を追って母も亡くなり、葬儀を済ませて実家にいた時。色々な問題を抱えて、とても落ち込んでいました。私が独りだと話すと、「アリスにおいで」と、草べさんが雪の中を迎えに来てくれたのです。

『アリス』のある森は雪が深く、冬の間は営業できません。シンシンと降り注ぐ雪の中、森の奥へ奥へと走る草べさんの車。ようやく『アリス』の温かな灯が見えた時、ほっとしたと同時に郷愁のようなものを感じました。

   

降り続いた雪がやみ、しんと静まりかえった午後

暖かな室内に

薪ストーブがパチパチ燃える音

甘いハーブティーの香り

大きな窓越しに雪景色の森を眺めながら

失ってしまった、それぞれの母親の想い出をぽつりぽつりと語り合った時間

 

今思えば、どれだけ『アリス』と太田さん夫妻に救われたことか。

それが、記憶の中の想い出になってしまうなんて、思いもしませんでした…。

もうあそこに戻ることはできないのだと思うと、淋しい気持ちでいっぱいです。

草べさん、本当にありがとう。どうぞ安らかにお眠りください。

(追記:この記事を書いている間に、草べさんの妹さんの連絡先を探し当て、電話で美保さんの住所を教えてもらいました。急いで書いた手紙の返事がくればいいなと、心から願っています)

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里山の秋

2月ももう終わり

浅田真央さん、お疲れ様でした!

一昨日、どなたかがあげてくれた動画で、浅田真央さんの引退会見を観ることができました。白いジャケットを着て髪をひとつに束ねた真央さんは、清々しくてとても晴れやかな表情。もう心の整理が済んで前を向いてるんだなと思った反面、やはりこんな形で引退となったのが残念でなりません…。

その潔さは、とても彼女らしいのですが…。

長年日本フィギュア界を牽引し続けてきた国民的なスケーターにふさわしく、氷上で惜しまれながら競技人生を終えて欲しかった。

女子では歴代5人目となるトリプルアクセル(3A)をまだジュニア時代に成功させ、以来ずーっと跳び続けてきた真央さん。調子が悪い時も、「浅田真央の代名詞」と言われた3Aにずっとこだわり続けてきました。2012年くらいから腰痛に悩まされることが多くなり、昨年は左膝に故障を抱え、滑り込みができなかったとききます。

どんな時も言い訳せず、可能な限り最高の演技を目指すアスリート魂がすごい! 頑固すぎると言われることも多かったですが、そのひたむきさ、真っ直ぐさを本当に尊敬します。

オリンピックの金メダルを獲得することはできませんでしたが、バンクーバーでもソチでも、女子シングルでは彼女の演技が一番心に残っています。

2010年バンクーバーオリンピックの前年、真央さんは絶不調だったんですよね…。シニアにあがって初めてグランプリファイナル出場を逃し、オリンピックに出場できるかどうかは、全日本選手権にかかってました(ちなみに、グランプリシリーズでは、3Aは6回中1回しか成功してません)。

日本中のファンが固唾を呑んで見守る中、全日本のショートプログラム『仮面舞踏会』では、躊躇なく3Aに挑んできました。演技を終えたあとのキラキラ笑顔が本当にまぶしかったです。(この時の3Aは解説が「大丈夫」と言ってますが、回転不足と判定され減点でした)

バンクーバーオリンピックの伝説のフリープログラムでは、ご存知のようにミスが出てしまいましたが、それを補って余りあるほどドラマチックな演技。妖精のようなイメージが強い真央さんですが、ここでは戦う阿修羅王のよう。特に、スパイラルは鬼気迫るものがありました。

  ラフマニノフが19歳の時に作曲した『鐘』は、迫りくる大火への警鐘の鐘だそう。1つの試合で初めて3Aを3回成功させ、ギネス記録となりました

2014年ソチオリンピックのフリー演技は、今後もフィギュア史で語り継がれていくんじゃないでしょうか?金メダル候補だったのに、ショートプログラムではまさかの16位。引退会見では「もう日本に帰れないと思った」と言ってましたが、想像を絶する落胆とプレッシャーだったと思います。それを跳ねのけてのあの演技!本当に感動しました!(一緒にTVを観ていた息子とグラニーが、私の力の入れようにビビッてました)

そして、演技し終わった時の涙と笑顔…。こんなドラマをオリンピックで2回も繰り返すなんて、やはり持ってる人です。

  2度めのオリンピックに再びラフマニノフを選んだタラソワさん。彼女の選曲と振り付けは、真央さんの新たな魅力と可能性を引き出したように思います。この二人が引きおこす化学反応は特別でした

(ところで、このプログラム、8回の3回転ジャンプを組み込んだ女子フィギュア史上最高の難度だったんです。合計142.71は自身の最高得点でしたが、私は「えっ、低い」と思いました。2つのジャンプで回転不足判定があって減点されてますが、技術点の基礎点は1位。でもGOE(出来栄え点)が少なく、芸術点といわれる演技構成点は5位だったんですよね…で、フリーの順位は3位。バンクーバーの後、佐藤コーチについてスケーティングもジャンプも1から見直し、滑りは格段に美しくなったと思います。でも、その努力が点数に反映されていない…。

「最終グループで滑ったら、もっと演技構成点が出た」と評論家がいってましたが、それって変じゃないですか?そして、ジャンプの判定もいまどき目視だけって時代遅れでは? 毎年のようにルールが変わり、見た目と点数が乖離してることも多いので、フィギュア観戦はモヤモヤ感が消えません)

実は、私は天才少女と呼ばれていた頃の真央さんには、あまり興味がなかったんです。昔からフィギュアを観るのは大好きでしたが、渡英してからはフィギュアのTV放送なんてなくて。忘れかけていた頃にトリノオリンピックを観て、再びフィギュア熱を取り戻したのでした。インターネットがあって、本当に良かったです。

その後帰国するたびにフィギュアの大会をテレビ観戦する機会に恵まれたんですが、男子を中心に観てたんです。ある冬(2008年かな)、真央さんが黒い衣装を着て『仮面舞踏会』を踊っているのを観て、「あの真央ちゃんが、こんなすごいプログラムをやってるんだ!」と驚かされました。

以来、割とのめり込まずに傍観してきたつもりなんですが、やっぱり唯一無二の存在だったなあと。ふわりと軽いジャンプと所作の美しさ、演技のどこを切り取っても美しく、とにかく気品がありました。常に前を向き、努力する天才でした。何といっても、スケートが大好きという気持ちが伝わってきて、彼女の生き様を見せてもらっているようでした。

彼女のほどのスケーターは、今後なかなか現れないと思います。淋しいけれど、ひとつの時代が終わりを告げたんですね。

真央さん、今まで本当にご苦労様でした。感動と勇気を与えてくれてありがとう!

今後も笑顔で前に進んでいきたいという彼女に、心からエールを送りたいです。

お知らせ

『こども脳機能バランサー』をはじめとする教育・知育ソフト、学び空間などの企画・開発を行っているレデックス社ってご存知ですか?(恥ずかしながら、私は知らなかったのですが…)同社が月2回ほど発行するメールマガジンで、『場面緘黙の子どもへの理解と対応』という連載記事が始まりました。この連載はかんもくネットの事務局メンバーが執筆を担当し、リレー方式で5回まで続く予定です。第1回目の『場面緘黙(ばめんかんもく)って何?』は私が担当させていただき、今日(29日)からレデックス社のHPで読むことができます。よろしかったら、下記のWebページをのぞいてみてくださいね。

レデックス社メールマガジン http://www.ledex.co.jp/mailmag

追伸:メルマガに登録(無料)すると、記事がメールで送られてくるので、HPより2週間早く読むことができます。

2月ももう終わり

2月ももう終わりですね。

昨年の12月に一度エントリーしてから、もう2ヶ月以上が過ぎてしまいました。
その間に、ものすごくたくさんのものを失ってしまったような気がします。

小さな頃から大切にしていたもの
私を育んでくれたもの
ずっと心の支えにしていたもの

そういったもろもろを一度になくしてしまったような
心のなかにぽっかり穴が空いてしまったような
霧の中にひとり迷いこんでしまったような

そんな気持ちから抜けだせず、なかなか前に進めないでいました。

少しずつ心の整理をしていくために、忘れることができない今年の冬の心象景色をここに貼っておこうと思います。

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里山の秋

先週の火曜日に帰国して、あっという間に1週間が過ぎました。山々に囲まれた岐阜県の故郷では、樹木が徐々に色づいて、紅葉シーズンも中盤という感じかな。昨夜はなんだか冷え込むと思っていたら、今朝は初霜が降りてました~。

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青空の下で紅葉していく樹々。今年は柿が大豊作だとか

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紅葉した葉っぱが色鮮やか。緑を背景に着物の裾模様みたいです

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金色に揺れる川岸のすすき

一昨日は名古屋から友達が訪ねてきてくれたので、知り合いのご夫婦が経営する森の中のカフェ、『アリスの不思議のお店』まで足をのばしました。車を飛ばして街をひとつ越え、村里を越え、さらにどんどん山奥へ。ときどき道脇に登場する『不思議の国のアリス』の白兎の看板が道案内です。

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山奥に突如として現れる黄色い木造のカフェは画家のアトリエとして建てられたもの

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     天井が高く、大きなガラス窓や高窓から森が見えます。ゆったりしたテーブル席や薪ストーブの暖かさ、オーナー夫妻のもてなしに、時間を忘れてお喋りに花が咲きました

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森のカレーセット(1680円)は、りんごサラダ、森のカレー、手作りケーキ、飲みもの付

一番人気の森のカレーは、スパイスから調合した手作りスープカレーです。ご飯の上に大きな海老、カボチャ、ナス、パプリカの素揚げと野菜もたっぷり。ケーキは蓬のシフォンケーキ、ベイクドチーズケーキ、チョコレートケーキがあって、どれも甘みをおさえた上品な味。オーナー夫妻はもともと同名の輸入雑貨店を経営していたんですが、料理とガーデニングの腕前もすごいんです。

ブログ開設1周年を迎えることができました

イギリスでは、先週木曜日から殆どの公立校が夏休みに入りました。そういえば、このブログを始めたのは昨年の夏休み中だったなとチェックしてみたら、昨年の7月28日がブログ開設日。細々とですが、何とか1年間続けることができました。読んでくださっている方、どうもありがとうございます。

私自身、抑制的気な質が強いためか、FBやTwitterなどのソーシャルネットワーキングはどうも苦手です。まあ、年齢的なものもありますね(汗)…。時々、こんなブログ書いてて何の意味があるのだろうと自問しつつも、やはり自己表現の場のひとつなので、今後も続けていきたいと思っています。

昨年9月から週1回のペースで研修させてもらっているASD児専門学校では、2週間ほど前に終業式がありました。18歳の3名にとっては卒業式でもあり、スタッフの激励の言葉に照れている彼らを見て、私のほうがうるうる。予期せず、ボランティアの私も両手いっぱいの大きな花束と感謝の言葉をいただきました。お世話になったクラス担任とTA達からもカードとチョコレートをいただき、大感激。教室で子ども達やスタッフとハグを交わし、3学期の最後の日を終えたのでした。

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IMG_5305            うちの庭に咲いている白アジサイのアナベルを加えてアレンジしました。                    ヒマワリ、グラジオラス、ユリ、ガーベラ、バラなどカラフルな花が多かったのですが、      活けきれず半分以上お隣へ。

9月の新学期からは、クラス担任もTAの2人もそれぞれ新しいクラスに配属されるとか。スタッフの皆さんから、「来期もまた来て」と言われ、かなり複雑な気持ちになりました…。そろそろボランティアを卒業したいと思うものの、どんどん自分の駄目さ加減が解ってくるうえ、いまだ仕事も見つからず…。

実は所属しているエージェントから、9月から近くの小学校でTAの仕事があると打診されたんです。特別支援ではなく、普通クラスの担任補佐です。でも、パートタイムとはいえ、8時半から午後1時半まで毎日勤務となると、今までやってきたフリーの仕事を続けるのが難しい…。悩んだ末にお断りしてしまい、どっぷり自己嫌悪(その前は、かなり遠方の学校の仕事が来て、どうしても車の運転に自信がなく、これも断ってしまったのでした…)。もう仕事を回してもらえないかも…。

もともと場面緘黙の子ども達を支援をしたいと思い、SENTAになりたいと思ったのですが、特別支援というとASD児のサポートが主流です。また、週2、3日のTAの仕事って殆どないような…。英語力は足りないし、他のTAのようにバシっと子どもを叱れないし、諦めた方がいいのかなと弱気になってます。

うだうだ悩む毎日ですが、天気はいいし、息子も夏休みでのんびりムード。やっと日本語を勉強する気になってくれたので、少しずつ漢字を覚えさせています。

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        息子が夏休みに入った週末、クロアチア人の友達と彼女の甥っ子たちを招いて、         手巻き寿司ランチをしました。アジとタコとイカは食べないかもと少量にしたんですが、やっぱり駄目でした。でも、生まれて初めてお刺身に挑戦した12歳と21歳男子は、サーモンとマグロをいっぱい食べましたよ。

IMG_20140727_120716        先週の日曜は、春休みに引き続き、2回目のカーブーツセール(フリマ)に挑戦。         車を止めてトランクを開けた途端、玄人バイヤーがわさわさ寄ってきて、転売できそうなものを買い叩いていきました。洋服をいっぱい詰めた大きなバッグを「全部で10ポンド(1700円くらい)だね!」と叩かれ、「いや、20ポンドじゃないと譲れない!」と戦って、勝ちました~(笑)。

IMG_20140727_132207店番中の息子。最初の10分が勝負で、後はボチボチという感じでした

IMG_20140727_133026 お昼ごはんのバーガーとチップス(イギリスではフライドポテトがチップスです)

日本は猛暑続きと聞いていますが、皆さんも体調を崩さず素敵な夏休みをお過ごしください。

新年、明けましておめでとうございます

みなさん、明けましておめでとうございます。

昨年7月末に始めたこのブログ、止まりそうになりながらも何とか細々と続けることができ、無事年を越せました。のらりくらりと遠回りしておりますが、本年もどうぞよろしくお付き合いください。

30日の飛行機でロンドンに戻る際、何故か再びチェックインで引っかかり、「30分ほどお待ちください」とのお達し…。でも、さすが日本!ロンドンのBAカウンターで日付変更をした際、帰りの便も操作したらしいのですが、時間内にきちんと処理してくれました。ヘルシンキまでの10時間弱は、足を伸ばせる壁に面した席をあてがわれ、とってもラッキー!

朝11時55分に出発し、夕方5時半過ぎにロンドンに辿りつきました。夫の実家でクリスマス休暇を過ごしていた子供と夫が迎えに来てくれて、久々に我が家へ。ほっとした反面、翌日は大晦日というのに、床は荷物でいっぱい、冷蔵庫はからっぽ…。

昨日は洗濯機を3回まわし、スーパーで食料品の買い出しをし、夜3人で鍋を囲むことができました。あまりに眠かったため食後ひと眠りして、夜10時に起きてお土産に買ってきた抹茶チョコやお煎餅を食べながら年越し。今年もテムズ河の花火は見事でした。

そして、今日元旦は雨、雨、雨…。お雑煮を食べてから出かけようと張り切っていたのに、家でゴロゴロする羽目に。勤め人の夫は明日からもう出勤です。私も今年こそはもう少し頑張りたいと思ってます。

余談ですが、最近日本に帰ると、どうも餡子のお菓子に目がいってしまいます。喫茶店よりも甘味処に惹かれる今日この頃…。

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地元でお気に入りの喫茶店。抹茶アイスの餡蜜が美味

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名古屋の友達の家で食べたイチゴ大福は最高でした

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          名古屋ではもう水仙の花が咲いていてびっくり。どんよりした曇りの日が多いロンドンに比べ、寒くてもからりと晴れるのがいいですね

2014年がみなさんにとって良い年となりますように。

ヒースロー狂想曲--こんなのアリですか?

本当は、昨日の朝11時20分の便で日本に向けて発つはずでした。

が、まだロンドンの自宅にいます….。そうです--飛行機に乗れなかったのでした。「乗り遅れた」、といえばそうなんですが、全く私の責任ではありません。

一昨日、昨日と、ロンドンは久しぶりに濃い霧に包まれました。複数の便がキャンセルになり、ヒースローは混乱気味。

霧のせい?  いえ、ヒューマンエラーだと思います。

元々フィンランド航空で予約したチケットでしたが、コードシェアをしているBA(英国航空)に変更されたということで、BAのカウンターでチェックイン。これが出発の1時間50分ほど前。ヘルシンキまでの搭乗券を印刷したところで問題が発生したらしく、階下の事務所から確認が入るまで待つことに。

新しい人達が次々とチェックインしていく中、待てども待てども呼ばれず…途中で担当者が代わり、新担当の手が空いた際2回かけあったのですが、「昨日キャンセルが続出して事務所は大混乱してるから、もう少し待って! 待ってるのはあなただけじゃないのよ」とけんもほろろ…。かなりオーバーブッキングがあった様子で、周囲には10名弱の人が集まってスタッフと押し問答に。

結局、私達は「階下からマネージャーが来て説明するから」と無視され…待つこと1時間。「えっ、もう搭乗時間過ぎてる?!」という状態になってからマネージャー氏がやってきて、「この便は定員がいっぱいになったため、搭乗は締め切りました。皆さんの便を変更します」と…。

「ええええ~っ!」と皆怒って文句を言った後、マネージャー氏が皆のアイテナリーをチェック。私の搭乗券を見た途端、「早く、搭乗しなさい!」と。でも、スーツケースも預けてないし、ヘルシンキからの搭乗券もないし、何せもう出発20分前でしょ?!

彼が無線でチェックした時、既にもうラストコール状態でした。それなのに、搭乗しろと主張するんです!一緒に待ってた中国人の女の子達に「グッドラック!」と背中を押され、走りましたよ~。

クリスマス前の忙しい時期です。セキュリティチェックには長蛇の列…係員にお願いして前へ走り、ようやくチェックを終えて、搭乗口へひた走る私。何故か高校時代に現国で習った太宰治の『走れメロス』を思い出してました(笑)。

で、やっとのことで24番ゲートに辿りつき、階段を下って搭乗口に行くと--誰もいな~い!! もう出発した後だったのです。こんなのアリですか?!

仕方なくお隣のセクションの受付に事情を話すと、「トランジットにBAのカウンターがあるから、そこに行って」とそっけない返事。同じBAの職員だけど、「私の責任じゃないから」と、誰も謝ってくれないのでした…。イギリスでは何か問題が起こると万事がこんな感じ。カスタマーサービスがしっかりしてないので、仕方ないと諦めるしかないことが多いのです(クレームするにも、自分で全部しなきゃならない)。

探し当てたBAのカウンターにはやっぱり列ができていて、待つこと40分。皆さん問題がある方ばかりで、ちっとも進まないのでした。やっと私の順番が来て事情を説明し、色々調べてもらって14日の便に振り替えた時には、正午をとっくに過ぎてました。ちなみに、この担当者は大変一生懸命やってくれて、感じも良かったです(きっと、こういうクレーム処理にも慣れているのでしょう)。

そこから、パスポート審査でまた並び、スーツケースを取り返し、カフェでひと息入れ、荷物預かり所を探して大きいスーツケースを預け、地下鉄で家に戻った時には4時を回っていました。朝家を出たのは8時20分…何のための一日だったのか…もうクタクタ。

イギリスではクリスマス時期が日本の師走と同じで、よく”run round like a headless chiken (やみくもに走り回る)” という表現を使うんですが、まさにそのもの。いい大人が必死こいて空港を走る姿は、見られたものではなかったでしょう…。

ipadを操作しながら、おやつを食べてソファで寛いでいた息子に紅茶を淹れてもらい、やっぱり家はいいな、とつくづく思ったのでした。