元緘黙のアーティスト、クリスティーナさん(その1)

昨日、夏休み中の息子と一緒に、テムズ河南岸のサザックにあるギャラリーに行ってきました。今年のSMiRAコンファレンスでプレゼンをした、元緘黙のアーティスト、クリスティーナ・キム=シムズさん(24歳)の初の個展『Liberation Through Nature(自然を通しての解放)』を観るためです。

 

   個展のポスターと受付をするクリスティーナさん(右)と友人のナターシャさん(左)

クリスティーナさんは、今年イーストアングリア大学でアートの修士課を卒業予定。繊細なタッチの油絵の多くは、森や公園、野原、海岸などの自然の中に、黒いシルエットの人物像を描いたもの。彼女の描く風景は写実的でありながらも色彩や明暗が強調され、はっと目を見張るような強い印象を放っています。

絵の中の人物はクリスティーナさん自身だったり、男性だったり――どの人物もこちらに背を向け、たったひとりで自然の風景の中にいます。黒いシルエットが放つ孤独な影を、自然の雄大さ、静けさ、美しさが優しく包みこんでいるかのよう。

人物像に自らを投影することで、自分もその風景の中に入って、光や風、空気感、季節が語りかけてくる言葉を聞いているような気持ちになります。

どの作品でも、人物像は光のさす方向を向いていて、不安からの解放や癒しを求めるクリスティーナさんの葛藤や心情がうかがえるような気がしました。

クリスティーナさん自身の言葉から:

 I want to reflect a narrative of the mental dialogue between human and landscape. I hope this dialogue might enhance the importance of our natural environment, our personal engagement with it and the benefits it can bring to our wellbeing.

「人間と風景の間に交される精神的な対話の物語を反映したいのです。この対話を描くことで、私たちに自然環境の大切さ、自然との個人的な関わり合い、そして自然が私たちの健康や精神にもたらす恩恵の重要性を強調できたら」

*           *            *

クリスティーナさんとナターシャさん(心理学専攻)は、同じ大学で学びならが互いに支え合ってきました。ふたりとも十代後半から緘黙を克服し始め、現在に至っています。まだ完全に克服したとはいえず、時には家から出られない日もあるとか。でも、スモールステップで小さな自信を積み重ね、着実に未来に向かって歩いているよう。

SMiRAコンファレンスでは話す機会がなかったのですが、人が多かったこともあり、ふたりとも緊張していたように見えました。今回は静かなギャラリーに私たちだけ。ふたりとも微笑みを絶やさず、ごく自然によどみなく話してくれました。

実は、息子が9月から大学に入るために家を出る予定で、ふたりにアドバイスをお願いしたんです。息子は社会的な不安がまだまだ強く、自分を出せないところがあるので。そうしたら、無理に周囲と歩調をあわせず、マイペースでやっていれば気の合う子が見つかるはず、と励ましてくれました。

静かな口調ですが、しっかり自分の意見を述べるふたりに対し、息子の方が緊張して言葉が少なかったです(笑)。

この個展、多くの方に見てもらえますように。クリスティーナさんのアーティストとしての更なる飛躍が楽しみです。

クリスティーナさんのサイト:www.christinaartist.com

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