場面緘黙は遺伝する?

もうクリスマスが目前ですね。それなのに、私はここに来て初めてコロナに感染してしまいました~(^^;  月曜日の午後、友達とテート美術館にセザンヌ展を観に行って、そこで咳が出始めて何だか疲れたな~と…。帰宅後、しばらく会っていない友達から「とうとう感染しました」と連絡が。そこで心配になってテストしてみたら、陽性!!(2週間前に主人が、その後息子が酷い風邪をひいたものの、二人ともコロナ陰性だったので油断してました!!)一緒に出掛けた友達に感染させたかもと、罪の意識でいっぱいです…。昨日からは殆ど症状もないのですが、家の中で家族3人が隔離生活中です。我が家のクリスマスはどうなることやらですが、皆さん、素敵なクリスマスを。

   隔離生活で外に出られないので、クリスマスの飾りつけを終えてて良かった…。

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先の3つの記事では、大人になるまで緘黙や不安障害などをひきずり、生まれた娘2人も場面緘黙になったというエイブリーさんについて書きました。

以前にも何度か話題にしたと思うのですが(随分昔のことなので思い出せない(^^;)、親子そろって場面緘黙になったという話は時々ききます。

でも、それは場面緘黙が遺伝する訳ではなく抑制的な気質が遺伝して、環境などの影響で子どもにも緘黙症状が出ているのだと思います。

(そういう私も場面緘黙ではありませんでしたが、高校時代まで「内弁慶・恥ずかしがり屋」と言われ続けていました。学校をはじめ公の場では借りてきた猫状態。その一方で、安心できる場所(家やその近所)ではかなり自を出せていたのです。知りあいが誰もいない他県の大学に入ったことが、自分の殻を破るきっかけとなりました)

元緘黙の大人がよく「緘黙の後遺症」として挙げるのが、人付き合いなど社会性の問題。抑制的な気質の人は引っ込み思案なことが多く、新しいことに挑戦するのに苦手意識があります。また、新しい状況に慣れるのに時間がかかるという特性も。

話せるようになっても、とまどっている内に人の輪の中に入れなくなってしまうこともあるかと思います。そして、一度できた輪の中に入っていくのは結構難しい…。自意識過剰で人の目が気になる上に、自分から働きかけることが苦手なんですね。

緘黙は克服したのに人との関係を築くのが難しい――特に、2人以上のグループでの何気ないおしゃべりが難しいという人が多いのです。仕事だったら、ある程度話題が限られてきますが、普段のおしゃべりは話題が流動的。人数や関係性などによって、何を言い・どんな反応をするか瞬時に決めなければならず、よく考えると複雑極まる対応をしなければならない訳です。

特に、日本では角を立てないために曖昧な表現を使うことが多く、「場の空気を読んで、求められている反応をする」必要性がすごく大きい。また、人の気持ちを配慮する「気配り」の文化があるため、反応が鈍いと誤解されてしまう傾向も。

緘黙児は学校で話せない・思うように行動できない子が殆どですが、社会性が発達する成長期に緘黙になると、社会的な経験を積むことが難しくなります。学校や社会の中で色々な体験をして、どんどん経験を積み重ねて自信をつけていく時期なのに、その体験がすっぽり抜けてしまうからです。

大人とのやり取りもそうですが、同年齢や年が違う友だちとの交流は特に重要。というのも、話し言葉やコミュニケーションに関しても、体験しながら習得していくものだからです。

話し言葉・言語・コミュニケーションの発達は、高校生になってからも続きます。どんどん語彙が増え、文章が長くなり、内容も複雑化していきます。こうしたスキルは、比喩や隠喩を含め、実際に使って相手の反応を見ながら学んでいくもの。ゼスチャーも同じことです。

輪の中で・輪の近くで、見て・聞いて・自分で使ってみて、成功と失敗を重ねながら習得していくのです。十分な会話の練習ができなければ、自信を持って言葉やゼスチャーを使うことはません。

学校で話せない緘黙児にとっては、家庭はもちろんですが、学校外の友達、親戚関係、習い事のサークルなど、なんでもいいので同年代の子どもとの繋がりを持つことが大切かと思います。学校の外で「話せる自分」がいれば、自信や自尊心にも繋がると思うので。また、兄弟・姉妹がいる子は色々話せる間柄だと助かるし、両親とも十分な会話ができれば安心ですよね。

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SM H.E.L.P. 2022年10月サミット(その4・エイブリーさん)保護者も変わる

イギリスは先週から寒気に包まれ、今日は最低気温がマイナス5度、最高気温が2度という経験したことのない寒さです。ロンドンでは日曜日の夜から初雪が降り始め、あたり一面真っ白に。気温が低いので雪が溶けず、踏み固められてアイスバーンに…。10センチ雪が積もったくらいで、交通が麻痺したり、学校が休みになったりというパニックに加え、郵便局・看護師・鉄道などのストで国が機能してない?!

初雪が積もった我が家の小さな中庭に、キツネがやってきました

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エイブリーさん自身の変化

特筆したいのは、娘たちの支援を続けるうちに、エイブリーさん自身にも変化が訪れたこと。子どもが進歩するにつれ、自分も変わらなければと強く感じるようになったそう。

子どもに自信をつけさせるためには:

  • 自分がもっと自由で幸せを感じ、人間関係を充実させて自信を持つ
  • 娘のお手本になる

自分がやっていないことを、子どもにやらせるのは難しいと実感し、上記の2つが必要だと感じたのです。

成人してからも社会不安や場面緘黙を引きずっていたエイブリーさん。何度もセラピーにかかりましたが、なかなか改善しなかったそう。でも、スモールステップで常に小さな挑戦を続けることで、自分自身を変え、社会不安を乗り越えることができたとか。自らの深層心理を見つめ、新しい挑戦に飛び込むのは簡単ではありませんでしたが、最終的には公衆の前でスピーチしたいとまで思うように。

そして、努力を続けた結果、ついに「こうありたい」と思うような人生に切り替えることができたといいます。

社会不安を克服するトレーニングを始めて、自分を愛すること、自分の声を持つこと、自信や自尊心を育てることができるようになったそう。

現在、エイブリーさんは「サンシャイン・マインドセット」というビジネスを立ち上げ、他の保護者や子ども達が内なる光を探し当てる支援をしています(セラピストではなく、米国のICF(International Coaching Federation)の資格を持つコーチ)。

https://sunshine-mindset.com/

エイブリーさんからの言葉

ネガティブに「私は内気だから」「できない」と言っていると、脳はそれを信じてしまいます。まず、「できる」「大声で叫べる」と思うこと。ネガティブな思考からポジティブな思考へと変えること。楽しいと思えた時、それが自信につながるんです。

小さな子どもにとっても、それは同じ。「大丈夫、〇〇ちゃんは勇気があるんだから」と口に出して言うことで、子どもは変わっていけます。

みく感想:

「子育て」は「親育て」といいますが、エイブリーさんはこの言葉通り、自分を変えて満足できる人生を得たようです。社会不安が強かった彼女が、学校や医療関係者に自分からアプローチすることは、どんなに勇気がいったことか。でも、娘たちの支援を勝ち取るために、必死で強くなっていったんでしょうね。小さな成功を積み重ねることで、母と子が少しずつ自信をつけていく姿が見えるようです。

緘黙児の保護者は自らも抑制的な気質の人が多いと思うので、自分から働きかけることが本当に難しい…。でも、子どものためと思えば、結構できてしまうもの。私も試行錯誤の末に色々鍛えられて、強くなれたような気がしています。理解されるのが難しくても諦めずに粘っていれば、なんとか道が開けてくるはず。頑張ってください。

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SM H.E.L.P. 2022年10月サミット(その3・エイブリーさん)親子の緘黙

イギリスでは12月に入って急に冷え込んできました。夕方4時頃になるともう薄暗くて、長~い冬の到来という感じです。光熱費や食料品、ガソリン代などが高騰していて、鉄道、郵便局、医療スタッフや救急車まで、クリスマスにかけてストが目白押し…人々の暮らしがどうなってしまうのか、本当に心配です。

散歩する公園のカフェに温かな光を灯すクリスマスツリーや飾り

<エイブリーさんが行った支援>

長女:4歳ころには緘黙などの症状があるのに気づくが、診断がおりたのは6歳。特に、社会性の問題が顕著だった

次女:2歳半~3歳くらいの時から兆候があり、入園の際に極端な母子分離不安が判明

<小児科・ソーシャルワーカーとの取り組み>

長女の症状に気づいてからすぐリサーチを始め、「場面緘黙」という症状名を発見。小児科医に連絡し、病院を通してソーシャルワーカーと2年ほど取り組みを続けた。しかし、少し進歩したところで、「娘さんは私には話すから場面緘黙じゃない。外でも一言二言話せるから、もう私のサポートは必要ない」と支援を打ち切られた。

<心理士との取り組み>

元主人が長女の学芸会をひとりで観に行き、娘の状態を危惧。「全然動かなくて無表情だった。絶対に何かおかしい」と、心理士を受診することを提案。

心理士とCBTを中心にしたセラピーを続けることで、少しずつ改善。誕生会などではしゃべれないが、先生に質問されたら小さな声で短く答えられるように。

それから次女が誕生。入園したあと、何もせず、何も食べられず、他の子達と一緒に座ることさえできない状態だった。

心理士に相談したところ、長女の症状の他に、社会恐怖や全般性不安障害も。より深刻で、園にいる間は全くしゃべらず、わずかに口を動かすだけ。そこからのスタートだった。

<学校での取り組み>

学校や園でもできる限りの支援を求めた。長女は小学校1年生から、次女は幼稚園からIEP(個人支援プラン)を作成してもらうことに成功。オハイオ州ではIEPのある子どもに予算がつくため、これが大きな転換点に。次女は幼稚園で週に3回TA(教育補助員)がつき、心理学者と相談して決めたゴールを目標に、スモールステップの取り組みを実施した。

保護者は子どもの学校での様子が全く分からないから、学校とのコミュニケーションは大切。子どもの可能性を違う視点で見ることもできる。

<心理士からのアドバイス>

・就学前に担任に会う

・教室内でその時々のゴールを子どもに確認させる

・学校と家庭間のコミュニケーションを密に

<講習会などへの参加>

場面緘黙の講習会にも積極的に参加。学んだ知識や情報をもとに、より効果的な治療法を探って、心理士の治療と並行して取り組んだ。NYで開催しているBrave Buddy’sにも参加した。

次に、娘たちを連れて1週間のSMキャンプに参加。母子分離不安がある次女は最初は嫌がったが、常にオープンに話していたことで心の準備はできていたと考えている。

長女にはキャンプの効果大で、初めてなのに全ての挑戦をクリアできた。その反面、次女には難関だったが、その後も諦めずに3年ぐらい参加した結果か、囁き声で話せるように。

SMキャンプには保護者の講習会もあり、緘黙への理解、取り組みを継続することの重要性、各ステップの実施、不安がどのように機能するか、していい事いけないことなどを学習。不安を抱える保護者にとって、緘黙は改善できるという希望を持てた。キャンプ終了後に普段の生活で何をすればいいのか学べたのも収穫。

成功のモメンタム(勢い)を継続させるため、高額だったが心理士を2人に増やした。場面緘黙を専門とする心理士と月に1度オンラインで話し(母親のみ)、取り組みや対処法を細かく計画。もう一人の心理士に取り組みを実践してもらう方法で、数年間続けた。

<専門家を味方につけること>

母子で取り組みをしていると、母と子の関係がセラピストと緘黙児の関係に変わってしまうことがある。だから、第三者の心理士がいるのはとても大切。その上に、学校関係者と専門家を含めたチームを作ることができれば、異なる場所(家と学校)での子どもの状態や進歩を確認できる。

<薬の服用について>

薬は最後の手段にして、まずできることを全部やってみた。次女の場合はSMキャンプを数年続けたが、心理士に「話す時だけでなく、通常でも不安が強い」と言われ(ASDの可能性も考えている)、服用に踏み切ることに。プロザックを低量から開始。

服用3日目に「私、話してる。どうしてこんなに話せるの?ママ、友達に言って」と、娘から言ってきた(この状態は継続した訳ではなかったよう)。これが、自分から友達に電話する挑戦を後押しすることに。

自分が「声を出せる」「話せる」と解った時、「自分はできるんだ」と考え方が変わり、自信が持てる。色々治療を試してみて、超えられない不安の壁があると解ったら、薬を試してみてもいいのではと思う。

(またまた次回に続きます)

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SM H.E.L.P.2020年10月サミット(その2)

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SM H.E.L.P. 2022年10月サミット(その2・エイブリーさん)親子の緘黙

天気が変わりやすい灰色の日々が続くイギリス。時どき青空が見えると、本当にほっとします。

    勤務先は小高い丘の上。母と小学生の子ども達による通勤路の街路樹アートはまだまだ続く

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さて、SM H.E.L.P.の秋サミットの続きです。

講演者: アメリカ在住のエイブリー(Avery Sunshine)さん。緘黙体験者で2人の娘の緘黙を支援しているうちに、自らの緘黙の過去を断ち切り理想としていた自分になることに成功。現在、他の子ども達や保護者が内なる太陽を見つけられるよう支援を行っている。エイブリーさんのサイト:sunshine mindset

<成人しても緘黙に苦しんできた>

私は人生のほとんどを社会不安、分離不安、場面緘黙に悩まされてきました。そんな私が変わったのは、幼い娘たち2人に同じ兆候があると気づいたとき。娘たちには自分とは違う未来を歩んで欲しい――勇気を奮い起こしてサポートしている内に自分自身も変わることができたんです。今では、かつて理想としていた人生を送れています。

<場面緘黙と社会不安>

私は幼少の頃から、極端に内気で不安の強い子どもでした。それは大人になってからも変わらなかったわ。これらの症状は場面緘黙の人なら誰でも持っているという訳ではないけれど、重なる部分も多いのでは?

<場面緘黙と社会不安の違い>

場面緘黙と社会不安との違いは、SMは話すこと・口語でのコミュニケーションに対する恐怖症。一方、社会不安は自分がいつも舞台の上にいるような気持ち――常に人に見られていて、どう判断されることへの恐れです。この2つが併存していることは多いのではないでしょうか?

<幼少期の思い出>

小さい頃は社会不安が大きくて、両親としか話せなかった。自分から友達を作れなかったから、母が友達を連れてきてくれたけど、すごく孤独でした。

中学では虐めにあって「ミュート(唖)」と呼ばれて…。特にひとりに虐めのターゲットにされて、髪にガムをつけられたり、持っている本を落とされたり。どうしていいか判らず、とにかく忙しいふりをしていたの。ひとりで座ったり、誰かのグループに入ったりする勇気がなかったから、用事もないのに学校の公衆電話から母親の職場に電話したり…。すごく大変だった。

高校では少しマシになったけど、個人発表やグループプロジェクトが苦痛で。1000%正しいと解っていても、挙手できない。個人の発表が迫ってくると、仮病で学校を休むすこともしばしば。課外活動を見学に来た母が、誰にも話をせず・かかわらず、何もしない私を見て狼狽していたのを覚えています。

<子どもの心情を理解して>

保護者や教師たちが子どもの心情を理解することは本当に大切。「恥ずかしがり屋なだけ。成長したら治るから大丈夫」と客観視するのは危険です。子どもは心の中で多くの葛藤を抱えている。独りぼっちでいたくないのに、自分からグループに混じることはできない――どうしたら輪の中にいるよう見えるのか、絶えず心配し心を痛めていました。それなのに、傍からは「平気そうだから大丈夫」とみられてしまう。誰かに判ってもらえるだけで、全然違うと思います。

<子どもが抱えている違和感>

「私はみんなとどこか違う。どこがいけないの?」と自分でも判ってました。実は、私の家庭は機能不全で健全ではなかったから、家族からのサポートや手引きを受けるのは無理だったの。「もし支援を受けられていたら、自分の人生はどう変わっていたんだろう」とよく思います。

娘たちが生まれるまでは、自分はこんな家庭で育ったからこんな風なんだと思い込んでいた――娘たちが私と同じパターンの行動を取るようになるまで。その時点で、やっと自分が場面緘黙で不安障害と分離不安も抱えていたことを発見したの。私が娘たちに注いでいる愛情や支援が、私の両親にはまったくなかった。大きな困難を抱えていたのに…。支援や支援チームがあるかないかとでは、子どもの未来が全く変わってくると思います。

(長いので次回に続きます)

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緘黙支援 電話でのスモールステップ

もう8月に入ってしまいましたね。今年はコロナの規制が外されたからか、世界中の人たちが動き回っているよう。私のところへも日本とイタリアから友達がやってくる予定です。嬉しいけれど、色々なことが一気に動き出したようで、なんだか目まぐるしい毎日です。

    先週末、ウォーキング友達2人とダブリンで珍道中を楽しんできました(^^; Ashling Hotelは各部屋ダブルかキングサイズで朝食も美味♡

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場面緘黙から抜け出せても「いまだに電話が苦手」という人は意外と多いようです。元緘黙児だった2013年のミスイングランド、カースティー・ヘイズルウッドさん(詳しくは『ザ! 世界仰天ニュース』(その1)』をご覧ください)もそう述べていました。

やっぱり、電話をかけてきた相手が誰か判らないのが一番の不安なんでしょうか? まあ、今だったら携帯に名前が出るから、相手が誰か判る訳ですが。あと、緘黙児は自分からアクションを起こすことが苦手なので、電話をかけるのが苦手というのは頷けますね。

帰省中の元緘黙の息子に訊いてみたら、「今は全く苦手意識はないよ」とのこと。考えてみれば、息子の世代はセカンダリースクール(12~16歳)から自分の携帯を持ち、コロナ禍の大学生活ではオンラインレッスンとビデオチャットが主流だったので、慣れもあるかもしれませんね。

(息子は緘黙だった頃のことは殆ど口にしないし、「もうあまり覚えてない」といいます。辛かったからもう思い出したくないのか、それともその記憶を頭の片隅に追いやってしまったのか…。それとも、私と話をするのが面倒なのか(^^;

そういえば、小5、6年の頃に、緘黙の過去のことや当時の自分の気持ちを唐突に伝えてきた時期がありました。徐々に話せるようになってきて、その安心感と自信から自分の中にため込んでいたものを吐き出したくなったのかも。初めて聞いて、目から鱗のことも多かったです)

本題に戻ると、息子も緘黙症状が顕著だった小学校低学年の頃は、大の電話嫌い。頑として受話器を取ろうとしませんでした。電話が鳴る度にナーバスになっていたような…。「ダディからだよ」と受話器を渡そうとすると、どこかに逃げていってしまうんですよね。

そんな息子が電話に出られるようになったのは、小2(6歳)の2学期に入ったある冬の日。急用で郵便局に行かなければならなくなったのですが、息子は一緒に行きたくないと…(ちなみに、イギリスでは小さな子どもを一人で留守番させることは不可。でも、必要に迫られてました)。いつも混みあう大きな郵便局なので「時間がかかるかもしれないけど、家で待ってて」というと、息子の顔がにわかに曇りました。

――行きたくないけど、長時間一人にされたくない――そんな不安な気持ちだったんでしょう。

「マミー、郵便局から電話して…」と思いもよらないリクエストが! これはまたとないチャンス!

何分ごろ電話するか時間を決め、3回鳴って一度切れたら私だから、また3回鳴ったら電話を取るという約束に。

そして、本番! 受話器から「Hello」という声が聞こえてきた時は、本当に感激しました!

「今並んでるから、あと15分位で帰れるよ」

「ウン」

超短い返事だったけど、ちゃんと電話で答えることができました。帰宅してから、さりがなく褒めたらちょっと自慢気。

翌日、主人が息子を買い物に誘うと、また行きたがらず(いきなり環境が変わるのが嫌?!)。さっそく次のチャンス到来とばかり、主人にスーパーに着いたら息子に電話をしてくれるよう頼みました。息子のチャレンジは買ってきて欲しいおやつの名前を言うこと。

この時何をリクエストしたのか覚えていないのですが、主人も息子と初めて電話で会話ができたと感激していました。

緘黙児は少し時間が空くと元の状態に戻ってしまうことも多いので、それから電話での受け答えの機会を増やしていきました。

この年の春休みには家族で帰国。最初は照れて私たちと英語だけで話していましたが、息子は割とすぐに祖父母に馴染み日本語で話せるように。この時は、子ども向けのTV番組から色々な単語や言い回しをどんどん覚えて、ビックリしました。

更に、イギリスに戻ってきてから生まれて初めて日本の祖父母と電話で話すことに成功!! 亡父が「初めてだなぁ」と感激していたのを、今でも忘れることができません。2007年当時はまだSkypeが普及しておらず、実家にPCはあれどモデムに繋げる技術がないという状態で、電話でしか声が聞けなかったのです。

<電話での取り組み要点>

  • 緘黙児は自分から行動するのが難しいので、電話をかけるより取る方が楽
  • 話せる人(保護者や友だちなど)からの電話なら安心度が高い
  • 予め電話がくる時間を決めておくとより安心
  • 会話は最初は 一言 ⇒ 言葉数を増やす(「はい」「いいえ」で応えられる閉じた質問 ⇒ 開かれた質問へ)
  • 自分から電話をかける時は、まず安心して話せる人(日時や話す内容を決めておくと安心)、もしくはピザの注文などセリフが決まっている会話を
  • 始めたらあまり時間を空けず、慣れて定着するまでスモールステップを繰り返す
  • 家で電話ごっこをして慣れる(息子は玩具のトランシーバーを使用)

子どもによって得意苦手が違うので、一番安心できる人・環境・話題からスタート。様子を見ながら、少しずつステップアップを測りましょう。どの子にも「これならできるかも」という時期があると思うので、子どもの反応を見ながらスモールステップに工夫を加えるといいと思います。

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緘黙支援 放課後の教室でビデオを活用

CBTってどうやるの?(その1)

SM H.E.L.P マギー・ジョンソンさんの講演(その1)

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緘黙支援 放課後の教室でビデオを活用

イギリスでは今週から3学期が始まりました。学校へ向かう途中、八重咲の並木道が迎えてくれて心がほっこり。花と同時に出てくる葉っぱを見ると、いつも桜餅を食べたくなります。

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私は息子が小1(5歳・担任の参加なし)と小2(6歳・担任の協力あり)の時に放課後の教室訪問を試みました。その結果はというと、う~ん効果があったのか、なかったのか、明白にはいえません。

ただ、「自分は教室/ 学校で話すことができる」という概念を子どもが持つことで、自信につながったのではと思っています。また、言葉が出なくても、「不安が少ない状態で教室にいる自分」に慣れる機会では?

イギリスでは授業が終わると生徒は校舎から出ることが原則になっているので、教室に生徒が残ることはめったにありません。また、教室で翌日の授業の準備をする先生もいますが、スタッフルームに引き上げることがほとんど。

IEPに緘黙支援が入っている場合、支援セッションは原則的に放課後ではなく授業中。それは教室の片隅だったり、別室(子どもは通常の授業を抜けます)だったり。放課後は先生たちが自由に使える時間――だから、教室で担任やTAと何らかのセッションを行いたい場合は、学校側にお願いすることになります。

日本だと校則が厳しそうなので、保護者が学校内に入ること自体が難しいかもしれませんね。そして、支援が受けられるかどうかは担任次第のところが大きそう…。

担任が参加してくれるか・くれないか、セッションの回数や時間など、条件は様々でしょう。教室での活動については、これらの条件を考慮して事前に綿密な計画をたてる必要があります。

ここでは実際の活動内容は省きますが、放課後や学校の休みに教室を使わせてもらえるなら、その機会を利用してビデオ活用をお勧めしたいです。今はスマホがあるので簡単ですよね。ただし、事前に学校に許可をもらうことを忘れずに。

(なお、この設定は小学校低学年までくらいを想定しています)

ビデオ撮影のお勧め

1) 言葉が出ない場合

  • 子ども自身にスマホを持たせて、自由に好きなものを撮影させる。帰宅してから、一緒にビデオを観て撮影したものの説明をしてもらう。
  • 子どもが撮影している間、反応をみながら展示物などについて「これ図工の時間に作ったんだね」などと話しかけてみる。応答があるようなら、「〇〇の席はどこ?」「この絵はいつ描いたの?」など質問してみて。短い返答が返ってくるかもしれません。無理に答えさせようとはしないこと。

家で教室の映像を何度も見返して、教室に慣れさせる。学校のこと、クラスのこと、先生のこと、好きな友だちのことなど、子どもの様子を見ながら気軽におしゃべりできたら、不安を減少させることができるかも。

2) 言葉が出る場合

  • 教室で話している子どもの姿を撮影する
  • 子どもとおしゃべりしながら、子どもの席を含む教室のあちこちを撮影する

家で映像を何度も見返して「◯◯ちゃん、ちゃんと教室で話せてるね」と言葉がけをする。あとは1)と同様に、学校に関して楽しくおしゃべりする。

3) 担任が参加してくれる場合

  • 担任が子どもに挨拶や質問するところをビデオに取らせてもらう

家で映像を見返して、挨拶や返事の練習をする

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緘黙児の特徴のひとつに、場所・人・活動に馴染むのに時間がかかるというのがあります。夏休みなど長期の休みが入ると、それまで馴染んでいた学校環境がまたまた縁遠くなってしまうのです。新学期に学校に戻ると、またはじめからやり直す感じになることも…。

もし放課後や学校の休みに教室や校庭を使わせてもらえるなら、教室だけでなく校門、校庭、昇降口、子どもの下駄箱、廊下、トイレなど、子どもが毎日使っている場所の写真を撮ってください。その写真を使って、本人の解説が入った学校の本を作ってみてください。特に、休みの間に見返すと効果的です。

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息子の緘黙・幼児期5~6歳(その20)放課後の教室

息子の緘黙・学童期6~7歳(その4)小2の放課後の教室

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SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その6)

ついに日本でもオミクロン株の一日の感染者が10万人を超えてしまいましたね…。イギリスでは、ここ3週間ほど8~11万人を行ったり来たり(1月31日は政府のサイトにデータが記載されず…何故???)。オミクロンのピークもピークアウトも早いと言われていたのに、欧米ではまだ下がりきってません…一体どうなっているんでしょう?

  

晴れの日は空が春めいてきました。学校へ向かう途中で出会う猫ちゃん

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さて、マギ-・ジョンソンさんの講演の続きです。

★保護者への助言:自らが不安を抱える17歳の娘さんを支援した経験から

「こうしてみたら? ああしてみたら?」と親が言い続けることで、子どもは親が自分に対して失望していると感じます。「今のあなたではダメだから、変わらなくちゃ」と言われているように感じてしまうのです。親が助言すればするほど、子どもは「あなたはこのままではダメ」というメッセージを受け取ることに…。

ティーンにまだ準備できていない時、親が手を差し伸べようとすると反発しがち。親への拒絶反応を起こすこともあります。

保護者ができるのは場面緘黙が恐怖症であることを説明し、いつでも支援する準備ができていると伝えること。「話すこと」だけに集中しないで。「小さなステップを少しずつ踏んでいけば、絶対克服できるよ。いつでも支援するからね」と伝え、子どもを信じて待ってください。

(なお、本人に気づかれないよう、保護者がしてあげられることはたくさんあります)

親は心配ばかりせずに、子どもと一緒に過ごす時間を楽しんで。将来が心配でも、今のこの時間を大切にして、子どもとの時間を満喫しましょう。

なんでもOKです。例えば、一緒に映画を見たり、料理をしたり、ガーデニングしたり、ウォーキングをしたり。子どもが興味を持っていることを探し出して、子どもの興味に沿って一緒に楽しみましょう。そこから「自分が変わりたい」というモチベーションが生まれてくるかもしれません。

★主導権を持たせることでティーン(子ども)は安心できる

言わないかもしれませんが、どの子も「自分はこれをやりたい」という夢を持っています。どうしたらその夢を叶えられるか――親は子どもを人として尊重し、そのままの子どもを愛してあげてください。子どもには恐怖症があるけれど、それが一生続くわけではありません。必ず克服する道を見つけられるはず。

子どもがモチベーションと緘黙を克服する決意を固めるのを辛抱強く持ちましょう。

情報は与えて、でも押しつけないこと。

★ティーンとの接触を持つための具体例:

緘黙のティーンとのセッションでは、パワポの作り方やどうしたらもっと良いプレゼンになるかを訊いたり、助言してもらったりするとか。そして、「完成したものをPCで見て欲しいから電話してもいい?いつだったら時間がある?」と自然に切り出すのです。こうして、PCを観ながら電話でコミュニケーションを取るきっかけを作るのだとか。

こういった間接的な方法だと顔を見合わせずにすむので、やり取りしやすいそう。まずPCの画面を見てもらい、修正した方がいい点を書いて送ってもらうことからでOK。

ティーンの得意な分野を見つけ、何気なく手伝いを頼むことで、自信をつけさせモチベをあげることが可能です。あくまで本人主導であることを忘れないで。

長い講演だったので、また次回(最終回)に続きます。

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大人の緘黙ー緘黙啓発月のSM H.E.L.P. から

第2回 SM H.E.L.P オンラインサミットから(その1)

第2回 SM H.E.L.P オンラインサミットから(その2)

第2回 SM H.E.L.P オンラインサミットから(その3)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その1)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その2)

SM H.E.L.P.2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その3)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その4)

SM H.E.L.P.2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その5)

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SM H.E.L.P.主催、ケリーさんのスモールステップ(その2)

イギリスでは1週間ほど前から急に天候が崩れて、雨、雨、雨の毎日。最高気温も16度くらいまで下がってしまい、肌寒い日が続いています。コロナのデルタ変異種が全国に蔓延してきていますが、ロックダウン疲れとワクチン信望から規則に従わない人も多いよう…。これからどうなってしまうのか、まったく見当がつきません。

 

激しい雨が来る前に庭のイングリッシュローズを切りました

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さて、ケリーさんのスモールステップの続きです。

ケリーさんは買い物の時だけでなく、幼稚園や自宅でのプレイデート、公園遊びなどでも同時進行でスモールステップを行ってきました。

●幼稚園でのチャレンジ(例)

娘さんは幼稚園で口をきくことができませんでしたが、友達と話したい気持ちが強かったそう。そこで以下のような作戦をたてました。特に園で緘黙状態が深刻だったので、ゆっくり時間をかけたようです。

  1. 誰が一番話しやすいかリストを作成。まず、一番話したい子と視線を合わせる
  2. 「ハイ」と書いたフラッシュカードを友だちに見せる 失敗  カードを持つことも拒否 ← 娘さんに謝罪
  3. 登園時に駐車場で友だち家族の車が来るのを待ち、車の窓から友だちに手をふる
  4. 園の待合室で、やってきた友だちに手をふる  これは長期間かかったとか

先生に慣れさせるため、入園前(夏休み)に週1で先生が話しかけてくれるビデオを見せた。また、園にスモールステップ計画と成果表を渡し、できたらステッカーを貼ってもらって進歩をチェック。

●プレイデート

  1. 先生や他の保護者に連絡して娘の状態を説明し、遊びに来てもらう(一番話したい子ひとりから)
  2. どんな会話をするか娘に事前に相談し、練習する。ゲームを利用して、どうしたら子どもに合うステップを踏んでいけるかを考える

話題:好きな動物、好きな色、やりたいゲームなど

●カードゲームでのスモールステップ例(話す言葉を多くするためのステップ)

  1.  「はい」「いいえ」をうなずきで答える
  2.  色を言う、色の種類の数を言う等
  3.  閉じた質問に答える(「はい」「いいえ」/ 数語で返答可)
  4.  開かれた質問に答える(「はい」「いいえ」/ 数語で返答不可)

●公園で年下の子と話す練習(小さい兄弟がいたので、年下の子どもにアプローチするのに慣れていた)

  1. 公園で見つけたケムシを見せる
  2. 母親もついて行って「このケムシ何色?」「蝶々になるのかしら?」など、間に入って子どもたちに話しかける。娘の不安が下がったら、話し始めるきっかけを作る
  3. 他の子どもや保護者が集まってきたら、娘の様子を見ながらコミュニケーションの機会を作っていく

みく注:うちの息子もそうでしたが、同年代の子より年下の子の方が話しやすいという緘黙児は多いよう。母親がすぐ側にいてアシストすることで、子どもの不安は随分下がります。また、相手の視線を自分ではないもの(この場合はケムシ)に集めることにより、不安を下げることが可能に。それ故、猫や犬などのペットを飼うこともお勧めです。

買い物チャレンジでも、進歩に合わせたスモールステップを。ステップ毎に子どもに合う目標を立て、慣れるまで同じステップを踏むことがコツ。

●店員に挨拶する

  1. レジに置いてある募金箱にコインを入れる
  2. レジの店員と視線を合わせる
  3. 募金箱にコインを入れる時に視線を合わせる
  4. 店員に挨拶する

●ショップで話す練習

  1. まずは周囲の人や店員の前で母親と話す ①決まった質問:「兄弟は何人?「歳はいくつ」など指で答えられるもの ②「名前は何?」など言葉で答えなくてはいけない質問   まずは車の中で練習 → 外で → 人が聞いてない店の中で → 人の近くで  → 店員の近くで
  2. レジの店員に「Brave voice の練習をしているんだけど、娘に名前を聞いてくれる?」とお願いし、チャレンジ開始  最初は口の中でモゴモゴ → 少しずつクリアに → 慣れてきたら「もう一回言ってみて?」と、慣れるまで何度も繰り返す。口の中でモゴモゴ言っているだけでも大進歩と捉え、チャレンジできたらその都度褒める。

そのうち娘さんもやりたがるようになったとか。店員に名前を言えるようになるまで1年ほどかかったそうで、工夫と忍耐と根気が必要ですね。

スモールステップの際、成功したら勇気券 (brave ticket) をわたし、チケットが何枚かたまったらご褒美。スモールステップの梯子を細かく細かく組み立てたといいます。

ケリーさんは娘さんの診断が下りてから2、年間エクスポージャー法を実践(4歳半~6歳半)。その後ミネソタ州に引っ越して転校することに。小学校では2日目にクラスメイトや先生と話すことができたとか。

ケリーさんの例を見ていても、常にチャレンジし、スモールステップを踏み続けることの大切さが解ります。スモールステップは発話だけが目的ではありません。それぞれの子どもの苦手意識を克服し、自信を持たせることが重要。まず苦手な場面(人前にでる)ことから始めて。発話が最終目的ではなく、不安や緊張を感じずに人とコミュニケーションを取れるようになることがゴールです。

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SM H.E.L.P主催者、ケリーさんのスモールステップ(その1)

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SM H.E.L.P.主催者、ケリーさんのスモールステップ(その1)

 

イギリスは晴天のいい天気が続いています。が、やはりデルタ変異種が蔓延傾向にあり、6月21日のロックダウン完全解除は4週間ほど延期となりそう…。政府はワクチン頼みですが、ワクチンだけでは予防できません!分析によるとデルタ変異種で亡くなった方43人中14人は1回以上の接種済。その中には、2回接種済みの方も複数。ファイザー社のワクチンだと1回接種で予防効果率は50%くらい、2回目で90%近くになるよう。でも、接種後2週間経たないと効果がでません。みなさんも、どうぞお気をつけて。

…………………………………………………………………………………………………………………………

Selective Mutism H.E.L.Pは米国の保護者ケリー・メルホーンさんが主催するオンラインサミット。2年目となる今年は5月中旬に開催され、専門家や緘黙体験者9名が場面緘黙や不安に関して話した他、ケリーさん自身がスモールステップ体験を語ってくれました。

ケリーさんの娘さんは現在7歳。4歳半で場面緘黙と診断され、すぐ専門家を探して治療を始めました。治療法のひとつがCBTのエクスポージャー法で、実践して学びながら娘さんのペースをつかんだよう。前回までがエクスポージャー法の話題だったので、ケリーさんのケースと照らし合わせてみました。

エクスポージャー法でスモールステップに取り組むにあたり、大切だと思われる点:

1)  子どもの不安度を人・場所・環境に分けて細かくチェック(学校の内外)

2)  その子に合うスモールステップを計画・実行する(子どもを参加させ、高学年からは主導権を握らせる)

3)  ステップ毎に克服できそうな目標を定める(無理な目標は禁物) 

4)  モチベーションや明確な目標を持たせる

5) 1回10~15分ほど、推進力を失わないため週に3回以上(『場面緘黙リソースマニ ュアル』より)

6)  不安度の低い挑戦から始め、徐々にハードルをあげていく

7)  そのつど柔軟に修正しながら、小さな成功体験を積み重ねていく

8) 実践の後には必ず振り返りをし、成功・不成功の内容を分析。反省点を次のステップに生かす

ケリーさんのスモールステップ

最初の挑戦:お店でお菓子をひとつ選び、レジカウンターまで持って行く。

結果:カウンターまで行くことができず、通路に座り込んで泣き出した

振り返り:「自分はいったい娘に何をしてしまったんだろう?!」と、驚きと困惑でいっぱいに。母娘ともに、次のチャレンジが怖くなった。

1)  子どもの不安度を人・場所・環境に分けて細かくチェック

ケリーさんは娘さんの不安度を把握しておらず、これなら簡単にできるだろうとステップを設定。ハードルが高すぎたことが判明したと同時に、子どもの緘黙の深刻さも理解することに。緘黙児はひとりひとり違うので、試行錯誤しながら模索していくしかないと思います。

でも、そんなことでは怯まなかったケリーさん。SNSで他の保護者たちに相談し、娘さんができそうな、もっと細かなステップを考案し、実践していきました。

二度目の挑戦:一緒にカートを押してレジカウンターまで行き、ケリーさんがカートから買うものを出して隣にいる娘に渡し、娘がそれをレジのコンベアベルトに置く

結果:成功

振り返り:できたけれど、娘はまだ不安な様子 → 慣れて不安がなくなるまで、数週間続ける

2)  その子に合うスモールステップを計画・実行  

~   8)  実践の後には必ず振り返りをし、成功・不成功の内容を分析。反省点を次のステップに生かす

娘さんに合う挑戦を見つけ出し、娘さんのペースに合わせてそれを繰り返しています。子どもによって不安度も進みぐあいも異なるので、とても重要なことですね。ステップ実行の前に、「どのくらい難しい?」「私が隣にいたらできそう?」と確認し、一緒に計画を立てたとか。

モチベーション:4回できたらアイスクリームがご褒美、少しずつ難しいステップへ。

4)  モチベーションや明確な目標を持たせる

4歳半の子どもなので、好きな食べ物や玩具をご褒美に。ステッカーチャートなどでも効果があります。

…………………………………………………………………………………………………………..

<ケリーさんのスモールステップ計画全容>

① ひとりでお菓子をレジまで持っていく  失敗

② 一緒にレジに行き、ケリーさんがカートから買うものを出して隣りにいる娘に渡し、娘がそれをレジのコンベアベルトに置く  数週間繰り返し  クリア

③ 母親の隣でなく向かい側に娘を立たせ、買うものをコンベアベルトに乗せさせる(母親のほうが店員に近い位置) しばらく練習   クリア

④ 娘が店員の近くまで行って、買うものをコンベアベルトに乗せる クリア

⑤ 最終目標: 店員にクレジットカードを渡す ← ここでも更に細かな計画を立て、時間をかけた  クリア

ケリーさんの言葉:

子どもが成長していく段階ごとに、これほど幅広いエクスポージャー法があると知らなかった。また、娘のSMがどれだけ深刻なのかもやってみるまで判らなかった。

スモールステップは一回でうまくいくものではない。マラソンのように長期戦になると心得たほうが良い。子どもが慣れるまで何度も繰り返す必要も出てくる。子どもを励まし、小さいステップができたら褒めること。常にチャレンジし続けることが重要。

本当に小さなチャレンジでいいんです。週に3回くらい、買い物などのついでに親子で頑張ってみてください。不安に対する耐性を身につけるには、不安と向き合うしかないのです。

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CBTってどうやるの?(その5)

5月末から急に初夏の気候に変わり、庭のイングリッシュローズが一気に咲きそろいました。例年は1輪ずつ開く花を楽しむところ、今年は複数のつぼみが一斉に開花した感があります。

Abraham Darby、Queen of Sweden、Mary Rose とピンク系バラが先に開花

同時にピクニックシーズンが到来。やっと緑の中で寝そべったり、ピクニックランチを楽しんだりできるようになりました。

   

ロンドン南部にある鹿のいる王立公園、リッチモンドパーク

今週は学校のハーフターム休み(1週間)だったので、久しぶりに泊りがけで旅行を楽しんだ家族も多かったよう。でも、その間あっという間に変異種デルタのコロナ感染が広がり、6月21日のロックダウン完全解除は無理そう…。ワクチンだけに頼らず、感染予防をしっかり強化して安全第一でいってほしいです。

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さて、自己流CBTの続きです。

5) 定期的にコツコツ成功体験を積み重ねる

『場面緘黙リソースマニュアル』では、推進力を失わないよう1回10~15分ほど、週に3回以上のスモールステップ実施を勧めています。というのも、時間が空くと抑え込んだはずの「恐怖」や「不安」が頭をもたげ、以前の状態に逆戻りしてしまう傾向が強いから。

「なーんだ。それほど怖くなかった」「できた」を繰り返し実感することで、だんだん自信がついて、次の段階に進むことができるのです。同時に自己肯定感も育っていきます。

6)  不安度の低い挑戦から始める

ステップは不安度の低い挑戦から始め、徐々にハードルをあげていくのが基本。いきなり高不安度のステップに挑戦したら、できてしまったという子もいるかもしれません。でも、失敗してショックを受けると自信を失い、次に挑戦するのが怖くなってしまいます。

でも、同じ挑戦の繰り返しではなく、少しずつハードルを高くしていくことが求められます。毎回少し不安だけれど、可能なステップを計画すること。

次のハードルに進むのか、それとももう少し同じ挑戦を繰り返して自信をつけるのか、子どもを良く見て柔軟に判断して。

7)  そのつど柔軟に修正を加える

スモールステップの意義は、小さな成功体験を積み重ねて自信をつけていくこと。だから、「できたね」と声を出して褒めたり、「あとちょっとだよ」と励ますことも忘れずに。

子どもが自分で進歩を確認できるようチャートを作成するのも一案です。毎回、子どもが「できた」「次はできるかも」と肯定感をもって終われるようにできればベスト。

失敗した時は、大体はハードルが高すぎることが多いのです。人・場所・環境や子どもの特性をチェックしなおし、子どもと相談しながら、さらに細かいステップに組みなおす必要があります。

なお、もっと挑戦したいという意欲が高い時は、ハードルを少し高めに設定しても大丈夫かも。でも急がせるのは禁物、子どものペースに合わせて。

8) 実践の後には必ず振り返りをする

実践した後は、振り返って成功・不成功の内容を分析しましょう。成功の理由を確認したり、反省点を次のステップに生かしたりすることができます。

緘黙児は繊細で敏感な子が多いので、親や伴走者の失望を鋭く感じ取ります。失敗も前向きに捉え、次からのステップのヒントに。子どもが安心できるよう、声掛けを忘れないようにしましょう。

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