再々度、緘黙は発達障害 or 障害なのか?

日本では、場面緘黙=発達障害というイメージが強いことについて、再び考えてみました。全く専門家ではないので、いち素人の考えとして受けとめてください。

(以前に書いた記事はこちら → 『緘黙は発達障害なのか?』『再び、緘黙は発達障害なのか?』)

大前提として、緘黙は「発達障害」ではなく「不安障害」のカテゴリーに含まれています。そういう意味では発達障害ではないといえますが、発達障害の子が緘黙になるケースもあるし(詳しくは、「場面緘黙とは?(その3)」をご参照ください)、学校や病院など公の場で緊張状態にあるため、家庭での本来の姿が見えにくく、判定が難しいのではないでしょうか?

特に、緘黙児とASD児の持つ特性がオーバーラップする部分があるため、(詳しくは、『ASD児と緘黙児--類似する特性?(その2)』をご参照ください)、見分けがつきにくいというのが現状ではないかと。病院など不慣れな場所で、不安を抱えながらWISCなどの発達テストを受ける場合、本来より低い判定が出たりしないんでしょうか?

私は息子が場面緘黙になった時、緘黙は「障害」なのか「症状」なのか、ものすごく気になりました。というのも、「障害」というと「治らない」というイメージが強かったから。

例えば、「睡眠障害」というと重篤な印象ですが、「不眠症」というとそれほど重い感じはしませんよね。でも、正確には「睡眠障害」という大きなくくりがあり、その中のひとつが「不眠症」なのです。

では、「障害」とは何か? 障害者基本法の定義には、「この法律において、障害者とは身体障害、精神薄弱又は精神障害(以下「障害」と総称する)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう」と書かれています。(「長期に渡り」の「長期」がどれくらいの長さなのか調べてみないと判らないのですが、多分1ヶ月以上からではないかなと…)。

緘黙の場合、話せないことにより長期に渡って日常・社会生活に制限を受けるわけなので、定義からすれば障害に分類されるのかもしれません。ただ、緘黙が起こる場所が学校を中心とした公の場で、家庭では制限を受けないことも多いので、ややこしいですね。

精神障害の中でも「うつ病」や「パニック障害」など治るものもあれば、「てんかん」など生まれつきで治らないものも。脳の機能的障害により引き起こされる「発達障害」は後者です。場面緘黙については、治る不安障害のひとつと考えればいいのかな?

発達障害の定義を調べてみると、「脳機能の発達に関係する障害」とあり、具体的には主に広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)をあげています。(他に、トゥレット症候群と吃音が含まれます。知らなかったのですが、吃音は2005年から発達障害の対象となったよう。ということは、吃音は治る部類の発達障害なんでしょうか??)。発達障害とは、子どもが成長する過程において、基準の発達段階に到達しない状態。発達期間中いつでも開始し、通常生涯を通じて続くとされています。

参考: 政府広報オンライン『発達障害って、なんだろう?』http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/index.html

なお、欧米では「PDD(広汎性発達障害)」ではなく、主に「ASD (Autism Spectrum Disorder 自閉症スペクトラム障害)」という名称を使っています。DSM-5(アメリカ精神医学会による診断・統計マニュアル)では、「アスペルガー症候群」というサブカテゴリーが無くなりました(詳しくは、『DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その2)』をご参照ください)

どうしてまた場面緘黙と発達障害について取り上げたのかというと、緘黙の背景にある問題を早期に見極めることの重要性を感じているから。発達障害だけじゃなくて、言葉に問題があるケースなど、早期に発見できれば早く対応することができます。また、緘黙が障害であれ、そうでなかれ、抑制的な気質を持つ緘黙児に対しては、通常とは違う配慮が必要だと思うのです。

性格的なものは変えられないことが多いし、たとえ完治しない問題があったとしても、環境を変えたり、対処していくことで、日常&社会生活はずっと楽になるはず。性格であれ完治しない問題であれ、一生つき合うのなら、早くから気づいて自分なりの対処法を身にけるのがベストではないかと。

こんなことをいうのは、私が日本語を教えているASDのティーン達(全員アスペ男子)を見ていて、早期対応がいかに大切か実感できるからなんです。みんな(今登校拒否中の一人を除き)マイペースで、学校生活をそれなりに楽しんでる感じ。まあ、30人位しかいない特別支援校で、先生やTA達とも気軽に話ができる環境ではありますが…。

生徒はそれぞれ、ASD以外にもADHDやLDなど複数の障害を抱えています。公立校で仲間外れにされたり、問題を起こして転校してくる子も多数。が、特別校ではなんとか自分の居場所を見つけ、自信を回復しているよう。友達を作り、得意科目の成績を伸ばし、趣味のゲームに没頭したり、ジョークを飛ばしたり。学校生活に不安を感じず、ノビノビしてる子が多いように感じます。

例えば、A君は「僕はADHDだから集中力ないよ。ちょっと休んでいい?」と主張。D君は「ディスレクシアだから読むのが遅いんだ」とか「もっと論理的に」と、自分が納得するまで質問したり、課題をこなすのに時間がかかってもメゲません。私の英語の発音やスペルミスは、嬉しそうに速攻で指摘してくるし(恥)。自分の特性をちゃんと理解して、自分なりに対処している様子。

この学校でも、常に何らかの問題は起きています(特に、小学部)。感情をコントロールできず、反省室に入れられるエピソードは頻繁に起きるし、昨年は怒りに任せて窓ガラスを割ってしまい、手を負傷した子も。でも、みんなある程度自己主張しながら学校生活を送れている印象。不安や緊張感がないということが、自信にも繋がっているように思います。そして、この自己肯定感こそが、社会の中で生きる上で一番大切ではないかと思う今日このごろなのです。

長々とひとりごとを聞いていただいて、ありがとうございました。次は抑制的な子どもへの対処法について考えてみたいとい思っています。

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緘黙は発達障害なのか?

再び、緘黙は発達障害なのか?

ASD児と緘黙児--類似する特性?(その2)

7月6日に書いた記事の続きです。2011年に行われたマギー・ジョンソンさんのワークショップの資料を掘り起こしてみたら、ノートにこんなメモがありました。「ASD児とSM児の持つ特性はオーバーラップするところがあり、ASDとSMを併発しているケースは以前考えられていたほど少なくない」。”not so rare as previously thought” とあるので、「多くはないけれど、時々見られる」程度の感じじゃないかと思います。

これは、「日本では広汎性発達障害と診断されるSM児が多いようなんですが、イギリスではどうですか?」という私の質問に対する答えでした。ここ数年来、マギーさんは主にセカンダリー(11歳~16歳)以上の子どもの治療を担当していて、あまり改善が見られない場合は、ASDが併存しているケースが見られるとも…。

緘黙の治療効果は小学校中学年から緩やかになり、年齢があがるにつれて回復が難しくなると言われています。特に、小学校高学年から中学までは、プレ思春期と思春期が重なるため、周りの目が最も気になる時期。高校や大学進学を期に自力で立ち直るケースも多いようなので、改善が見られないからASDということではありません。特に、日本では保護者と学校・専門家が連携して治療に当たるのが難しいため、年齢が上の子の緘黙治療はより困難といえそう…。

下記は私がとったメモからの抜粋です。急いで書き写したので、間違いがあるかも…。

<SM児とASD児のオーバーラップする特性>

  1. 根本的な気質(same underlying disposition 不安になりやすい抑制的な気質?)
  2. 自分なりのルールへのこだわり(rule bound 食べ物、服装などを含む)
  3. 感覚過敏 (sensory sensitivity)
  4. 視覚的な説明やチェックリストが必要 (need visual explanation/ checklist SM児の場合、不安のため情報を受信できないこともある)
  5. コミュニケーション量の問題 (issues with communication load認識プロセスのレベルに問題があるため、一度に大量のコミュニケーションを処理できない)                           ASDを併発しているSM児の中には、多量で複雑なコミュニケーションを処理できないため、緘黙傾向に陥る子もいる。解決法 → 一度に大量の情報を与えないよう、「コミュニケーション量」を減らし、混乱しないように早めに助け舟を出す。自分で選ばせるなど、子ども自身に主導権を与える。

*注:どのSM児も1~5までの特性を全て持っているということではありません。上記の事項が類似していることが多いということだと思います。また、上記が当てはまるからといって、自閉症スペクトラムという訳ではありません。④⑤には言語の問題が含まれるかもしれませんね。

例えASDが併存する場合でも、治療や支援のアプローチは同じということ。ただ、純粋な緘黙と比べて回復はゆっくりになります。また、緘黙を克服してもASDが治る訳ではないので、ASDに対する支援も必須です。とにかく、緘黙とその背景にある問題を早期に発見し、早期介入することが大切ということでした。

うちの息子の場合を考えてみると、1、2(特に服装と髪型!)、3、そしてう~ん、同時に複数のことをするのが苦手なんですが、5 の傾向もあるのかな?視覚優位でもあるようだし…。

「ASD児に有効な支援はSM児にも役に立つことが多い」ということで、1~5 に問題がある時は下記のような対策が立てられるかなと思います。

  • 不安を減らす呼吸法や自分なりの対処方法を考えさせる
  • こだわりを責めず、徐々に納得させて自分なりに対処できるようにする
  • 新行事などがある時は、予め予定を伝えておく
  • 写真や絵、物を使って具体的に説明する
  • 指示する時は短かめに、解かりやすく
  • 一度に沢山のことを言わず、ひとつずつ順番に

もっとたくさんの対処法があると思うので、自分の子どもに合うような対策を考えられるといいですね。

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ASD児と緘黙児--類似する特性?

 

ASD児と緘黙児--類似する特性?

先週の金曜日、ASD児専門校の子ども達に付き添って、近隣の名門私立校に行ってきました。学校同士の交流があり、わが校のセカンダリー(12~16歳)の子ども達を対象にしたワークショップを開催してくれたのです。うちのクラスからも、6年生の子が3人参加しました。

地下鉄利用ということもあり、総勢16名の子どもに付き添いの大人がぞろぞろ…。スタッフの息抜きも兼ねた、学年末のイベントのひとつだったよう。

16世紀から続くという歴史ある名門校を訪問してみて、学校施設や人材の充実ぶりに驚かされました。広々とした敷地内に立派な校舎や専門の施設が点在し、専用のテニスコートやアスレチックグランドも。入学試験の難度が高く、学費もかなり高額らしいのですが、この充実度だったら納得という感じ。いや、ケタ違いにすごい!

最初に案内されたスポーツグランドではテニスの授業中でしたが、体育の先生じゃなくて、テニス専用のコーチが教えてるんです。生徒数は20名ほどなのに、助手が2名。各教科についても、えり抜きの優秀な教師陣と助手を揃えているだろうことは、容易に想像できました。

ワークショップはスポーツコーチ、D&T(デザイン&技術)教師、そして科学者(後で調べたら、結構有名な方でした!)が担当。スポーツで汗を流した後は、立派なD&T教室でミニLED懐中電灯作りに取り組みました(PC搭載のレーザーカッターで製作したキーホルダーのお土産つき)。最後の科学講座は、液体窒素などを使って次から次へと実験を繰り広げるスリリングな内容。おしまいに子ども達を部屋の隅に退去させ、ものすごい大音響で風船を爆発させたのには度肝を抜かれました。

どのセッションもプロ意識の高さが伝わってくる内容で、毎日こういう授業を受けてる子ども達がイギリスの将来を担っていくんだなと、感慨深かったです。予算の少ない公立の学校では、こうはいかないでしょう…。

話は変わりますが、このイベントを通じて感じたのは、緘黙児と似た傾向の子がいるということ。

スポーツイベントでソフトフハードル走をした際、付き添っていたグループの女の子が逃げ腰に…。やったことがないと不安がるので、「柔らかいハードルだから当たっても痛くないよ」 「一緒に走ろうか?」と声をかけ、手をつないでスタート。ひとつ目のハードルを飛び越えた後、ひとりで走っていくことができました。その後の競技でも「また一緒に来て」と頼まれて、一緒に走ったのですが、私の方が遅かったので自信がついたと思います(笑)。

また、最後の記念撮影では、ひとりだけ撮影拒否の子が…。いくらスタッフが誘っても頑として動かないので、そのままに。でも、担任が「じゃあ、写真撮って」と声をかけ、撮影側として参加させることに成功しました。

緘黙児と大きく違ったのは、D&T教室で男子生徒が我先にと手を挙げて質問に答えていたこと。得意分野に関する知識は、半端ないものがあります。実に堂々と答えるので、何だか誇らしかったです。

2011年にマギー・ジョンソンさんの緘黙支援ワークショップに参加した際、「緘黙児とASD児の特性は重なるところがあるので、ASD児に有効な支援はSM児にも役に立つことが多い」と話されてました。その資料とメモを見つけ出して、もう少し詳しく説明できたらいいなと思ってます。

 

DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その2)

ASDや広汎性発達障害と診断される緘黙児の割合が大きい--これは日本における場面緘黙の研究で、頻繁に見られる結果です。発達障害を専門とする医師の間では、場面緘黙は決して珍しくないとも言われているよう…。

DSM-Vで新たに設けられた、「社会的(実践的?)コミュニケーション障害(Social (pragmatic) communication disorder)」は、場面緘黙とどのような関連があるのか?とても気になっています。

新たな分類 「社会的(実践的?)コミュニケーション障害(Social (pragmatic) communication disorder)」は、下記のように神経発達障害(Neurodevelopmental Disorders)カテゴリーの2) に含まれています。

Neurodevelopmental Disorders(神経発達障害)

  1. Intellectual Disabilites (知的障害)
  2. Communication Disorders (コミュニケーション障害) ←★ここ
  3. Autism Spectrum Disorder (自閉症スペクトラム障害)
  4. Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD)
  5. Specific Learning Disorder (学習障害)
  6. Mortor Disorders (運動機能障害)

2) のコミュニケーション障害に含まれるサブカテゴリーは、

  1. Language disorder (言語障害)
  2. Speech sound disorder (音韻障害)
  3. Childhood onset fluency disorder (stuttering) (小児発音障害(吃音))
  4. Social (pragmatic) communication disorder (社会的(実践的?コミュニケーション障害) ←★ここ
  5. Communication Disorders not otherwise specified (特定不能のコミュニケーション障害)

DSM-IVでは、アスペルガー障害(Aspergar’s Disorder)及び特定不能の広汎性発達障害(PDDnos)と診断された人たちは、いずれも広汎性発達障害という自閉症関連をくくった大カテゴリーに含まれていました。それが、DSM-Vでは、「社会性の障害」はあるが「常同性」はないとみなされると、自閉症スペクトラム症(ASD)ではなく、コミュニケーション障害に該当…。

(なお、DMS-IVにおける特定不能の広汎性発達障害(PDDnos)の定義は、他の広汎性発達障害の定義に当てはまらないケースで、「社会性の障害」もしくは「常同性」のひとつが該当すれば診断されるというもの)

平たくいうと、このグループに移行する人たちは、自閉症ではない(なかった)ということですよね?もしかしたら、広汎性発達障害やアスペスガーと診断された場面緘黙児の多くは、このカテゴリーに入るんじゃないでしょうか?また、広汎性発達障害の傾向やグレイエリアと診断された緘黙児は、ASD傾向ではなく、コミュニケーション能力に発達凸凹があるのかもしれません…。

例えば、相手のボディランゲージが読めなくて黙っている場合と、相手のボディランゲージが読めても、相手の反応が不安でどうしたらいいのか判らず黙っている場合では、ちょっと違うような気がするんですが…。特に、緘黙期間が長く閉じこもりがちになると、コミュニケーションスキルが向上しないため、年齢に見合う社会的コミュニケーションを取るのが難しくなると思うんです。病院など、馴染めない環境でコミュニケーションを取ることの不安もあると思いますし、このあたりのことは、診断にどう影響しているんでしょう?

話は変わりますが、最近イギリス人の言語療法士(SLT)から「専門分野で活躍するSLTの間で、治療に当たったASD児が実は重度のコミュニケーション障害児だったという話が良くでている」と聞きました。子どもがオルタナティブなコミュニケーション法を身につけると、徐々にASDの特性がなくなることが多いんだとか。

イギリスではWHOによる国際疾患分類、ICD-10を診断基準にすることが多いので、DSM-5における変更はあまり問題視されていません。でも、研修中のASD児専門校に通う子どもの中には、「常同性」はないように見える子もいて、その子達には違うアプローチが必要なんだろうか? などと考える今日この頃です。

最後に、DSM-Vの診断によって、この新しいサブカテゴリーに移行する人はどの程度の割合なんでしょうか?

2012年1月に『ニューヨークタイムズ』紙が、アスペルガーと診断されていた3/4の人たちがASDと診断されなくなるという記事を掲載し、世界中で物議をかもしたようです。これは、イェール大学のフレッド・ヴォルクマー教授他による予測ですが、10%程度という予測もあり、かなりバラつきがあるようですね。

“about three-quarters of those with Asperger syndrome would not qualify; and 85 percent of those with P.D.D.-N.O.S. would not(アスペルガー症候群の約3/4が、そしてPDDnosの85%が(ASDと)認定されない)”

NYタイムズの記事 → http://www.nytimes.com/2012/01/20/health/research/new-autism-definition-would-exclude-many-study-suggests.html?pagewanted=all

自分の中でよく整理できておらず、チンプンカンプンな独り言のようになってしまいました…。ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。多分、誤解している部分も多々あると思うので、お気づきの方はご指摘ください。

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DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その1)

 

 

DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その1)

昨年5月に、アメリカ精神医学会による診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)が改定されたのは、周知のところです。最新版のDSM-Vでは、場面緘黙が含まれるカテゴリーが「通常、幼児期・小児期、または青年期に初めて診断される疾患」から、「不安障害」へと移行しました(詳しくは場面緘黙とは?(その2)をご参照ください)。

もうひとつ注目したいのは、この改訂版で自閉症に関する概念や定義が大きく変わったこと。これまで日本で「広汎性発達障害(PDD)」と診断された緘黙児は少なくなかったと思うのですが、「広汎性発達障害」というカテゴリー自体が廃止されたのです。

「広汎性発達障害(PDD)」がなくなり、自閉症関連の診断は「自閉症スペクトラム症(ASD)」に統合。そのうえ、何と「アスペルガー症候群」というお馴染みのサブカテゴリーもなくなってしまいました!(研修中のASD専門校の生徒は殆どがアスペっ子なので、なんだかショックでした)

しかも、「な~んだ、これからは全てASDでいいんだ」と思いきや、そうでもない様子。というのは、これまでPDDのカテゴリーに入っていた全ての診断がASDに統合された訳ではなく、別カテゴリーに移行したものと、別カテゴリーで新たな診断名がついたものがあるからなんです。

DSM-IV(1994年)では、

広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders)

  1. 自閉性障害(Autistic Disorder)
  2. レット障害(Rett’s Disorder)
  3. 小児期崩壊性障害(Childhood Disintegrative Disorder)
  4. アスペルガー障害:(Aspergar’s Disorder)
  5. 特定不能の広汎性発達障害:(Pervasive Developmental Disorder not otherwise specified(PDDnos))

↓ 改定

DSM-V(2013年)では、

 自閉症スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder)

  • ただし、2の「レット障害」はX染色体異常で、自閉症とは関連がないため、診断から除外
  • また、4と5の中で、「社会性の障害」と「常同性」がある場合はASDのカテゴリーに、「社会性の障害」のみの場合は、ASDでなく「社会的(実践的?)コミニュケーション障害(Social (pragmatic) communication disorder)」となる

厚生労働省のホームページでアスペルガー症候群を調べてみると、

- 自閉症の3つの特徴のうち、「対人関係の障害」と「パターン化した興味や活動」の2つの特徴を有し、コミュニケーションの目立った障害がないとされている障害です。言葉の発達の遅れがないというところが自閉症と違うところです。知的発達に遅れのある人はほとんどいません- とありました。

厚生労働省のホームページ e-ヘルスネット「アスペルガー症候群について」より http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-006.html

あれっ?コミュニケーションの目立った障害がない??? アスペも自閉症も、基本的には「社会性」・「コミュニケーション」 ・「想像力」の3分野に障害があるのでは…。私は、アスペの子は知的発達や言語に遅れがないんだと思ってましたが、どうも医師や団体によって、定義が少しずつ異なっているようですね…。

「常同性」というと、手をヒラヒラさせたり、ぴょんぴょん跳んだり、同じ遊びや何かをする順番に執着したり--でも、年齢によって改善するケースも多いし、はっきり「常同性」と区別しにくいケースもありそうです。

この間、休み時間に校庭で男性のTAと話していたら、そこにクラスの子がやってきたんです。私と話していたTAに、PCゲームのことでやけに詳しい質問をし、よどみなく長いやり取りをしました。彼が行ってしまった後、「あの子の知識はすごいよね。話し言葉も自然だし、ぱっと見だとASDだとは思えない」と言ったら、「実は毎回僕のところに来て、全く同じ質問をするんだよね」と…。これも「常同性」なんでしょうか?

また、特定不能の広汎性発達障害(PDDnos)について、wikiで下記のような興味深い記述を見つけました。

- 東京大学名誉教授医学博士)の栗田廣氏は、「海外ではPDD-NOSとして診断される障害者がPDDの2分の1であるのに対して、日本ではPDD-NOSはほとんど診断されず、アスペルガーとして診断され ている。実際、信頼できるイギリスの診断結果の報告文によると、比率的にPDD-NOSがやはりPDDの2分の1、アスペルガーはPDDの13%(全人口 の0.1%)にすぎない。どちらも高機能であり、診断は難しいが、日本でアスペルガーとして診断されている障害者(全人口の0.3 – 0.4%)の多くは実はPDD-NOSではないか」という旨の疑問を呈している -

こちら → http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%B9%E5%AE%9A%E4%B8%8D%E8%83%BD%E3%81%AE%E5%BA%83%E6%B1%8E%E6%80%A7%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3

あれれ、何だかアスペや広汎性発達障害の診断も、医師や病院、属する機関によって少しずつ違うのかも…。

長くなってしまったので、いったん切りますね。ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございます。

なお、発達障害の説明については、「軽度発達障害フォーラム」というサイトが詳しく、解かりやすいと思いました。

こちら → http://www.mdd-forum.net/pdd_teigi04.html

 

緘黙になりやすい子?

6月19日に記載した『再び、場面緘黙は発達障害なのか?』の記事に、マーキュリー2世さんからコメントをいただきました。

「緘黙は発達の問題というよりも、心の問題(心因性の精神障害)だと思う」と書いたのですが、「精神疾患は脳の病気という考え方もあり、心の問題と神経系(脳だけでなく、迷走神経なども含む)の問題を切り離すのは問題のすり替えにしかすぎない」、というご指摘でした。

全くその通りです。脳と心(精神)は密接に関連しているため、切り離して考えることはできませんね…。チキンとエッグの論争に似てますね。

(自閉症の脳科学的診断については、マーキュリー2世さんがご自身のブログに詳しい記事を載せておられます。 こちら→ http://smetc.blog120.fc2.com/blog-entry-183.html

ただ、言い訳ではないんですが、私が言いたかったのは、場面緘黙という疾患(症状)が日本で一般的にいう狭義の発達障害(ASD、PDD)とは異なるのではないか、ということです(知識及び語彙不足のため、上手く説明できなくて、すみません)。

ちょっと古いですが、下記のサイトの分類が理解しやすかったので、参照したのでした。この分類だと、場面緘黙は精神障害であり、発達障害ではありません。まあ、DSM-5では「不安障害」に、世界保健機関(WHO)では「小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害」に含まれ、どちらも発達障害ではないんですが…。

【障害のある学生へのサポートブック(金沢大学障害学生支援委員回保健管理センター 2007年版)】

こちら → http://www.adm.kanazawa-u.ac.jp/ad_gakusei/campus/kousei/soudan/syogai/010.html

  1.  感障害         感覚器官の機能に障害がある場合
  2. 運動障害      身体運動の機能に障害がある場合
  3. 言語障害      聞くこと、 話すことなど言語の機能に障害がある場合
  4. 内部障害      身体障害のうち、 主として内臓の機能障害
  5. 精神障害      医療の対象としての精神疾患を含み、 ある程度以上の精神的偏りがある場合     障害がそれぞれ独立して存在し、 かつ相互に影響するなど、身体障害とは異なる障害の構造がある
  6. 知的障害      先天的な問題、発達期中( 一般的には 18歳以下)の頭部外傷や病気などによって生じた知的発達の遅れ
  7. 発達障害      何らかの生物学的な要因があり、発達の遅れや偏りが生じた状態            家庭環境や養育環境・態度など心理的な要因で正常に発達しなかったというものではない。広汎性発達障害 (自閉症、アスペルガー症候群)、 LD、 ADHDなどがある

しかし、国際的な基準も含め、国や機関によって精神疾患の分類方法が異なっているような…。それだけ複雑で難解な分野ということなんでしょうね。(な お、この5月から日本精神神経学会により、病名が「障害」→「症」に変更されましたが、解かりにくいので以前の名称を使っています)。

簡単にいうと、発達障害(ASD)と場面緘黙には下記のような違いがあると思います。

  • 発達障害(ASD)は治せない
  • 脳の構造が違う(認知の仕方が異る) → 心理的な発達が通常とは異なる
    療育により、社会性やコミュニケーションの問題に対処していくことはできるが、根底にある認知の違い(歪み)は治せない。

これに対して、

  • 場面緘黙は治すことが可能
  • 発症要因が特定されていない → 定型の子でも、発達障害の子でも、言語・発音・コミュニケーションなどに問題を持つ子でも発症する
  • 不安や抑制的な気質、言語・発音・コミュニケーションの問題、バイリンガル環境など、様々な要因があるとされる(*抑制的な気質の子どもは、アミグラダと呼ばれる脳の篇桃体が刺激に対し過敏反応するのではないかという研究仮説があるが、抑制的な気質の子ども全員が緘黙になる訳ではない)    支援・環境・本人の努力などにより、学校をはじめ、それまで話せなかった人・場所・活動で徐々に話せるようになることが多い。しかし、緘黙期間が長く、社会的な体験やコミュニケーションの経験が不足したままだと、大人になってもごく一部の人としか話せなかったり、対人関係が苦手だったり、社会不安症などの精神的な問題を抱えることになる人もいる。また、緘黙を克服できても、言語・発音・コミュニケーションに問題を抱える子(ASD児を含む)は、その問題自体が解決される訳ではない。

《場面緘黙になりやすい子は?》と考えると、

★生まれ持った気質・性格

  •  抑制的な気質(不安や恐怖を感じやすい)

★生物学的(神経生物学的/発達的)な要因

  •  話し言葉や言語に苦手意識がある(表出性&受容-表出混合性言語障害を含む)
  •  言葉の発音に苦手意識がある(吃音、音韻障害を含む)
  •  コミュニケーションに苦手意識がある(ASD、特定不能のコミュニケーション障害を含む)

*上記の他にも、身体的・知的な問題があって、人前で注目されることへの苦手意識がある場合も、抑制的な性格の子だったら、緘黙になる可能性がありそうです。

更に、バイリンガル環境や環境の急激な変化など、環境的な要因も大きく関与してきます。コミュニティや家庭内での会話やコミュニケーションが極端に少なく、年齢に見合う言語・コミュニケーション能力が育っていないと、会話やコミュニケーションに苦手意識を持つようになる子もいるかと思います。

同じ子どもでも、環境や人間関係によって、緘黙になる場合もあれば、ならない場合もあると思うんですね。それを考えると、やはり意識の問題というか、気にしいの性格という部分が大きく影響してくるような気がするんですが…。

例えば、うちの息子はバイリンガル環境も要因ですが、小学校入学時に幼稚園時代の日本人の親友と同じクラスに入っていたら、寡黙ではあっても、緘黙にはならなかったと思っています。また、直接引き金要因となった滑り台事件がなかったら、そのまま非常に大人しい子でいたかもしれません。

ついでに、WHOによる国際疾患分類、ICD-10による精神障害の分類を載せておきますね。

  • F0  症状性を含む器質性精神障害--痴呆症その他のいわゆる脳器質性精神障害を含む
  • F1  精神作用物質使用による精神および行動の障害--アルコールや麻薬・覚醒剤等に関連した障害を含む
  •  F2  統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害--統合失調症(精神分裂病)やその類縁疾患を含む
  •  F3  気分障害(感情障害)--双極性感情障害(いわゆる躁うつ病)、うつ病エピソード(いわゆるうつ病)等を含む
  •  F4  神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害--恐怖症性不安障害(いわゆる恐怖神経症)、パニック障害、強迫性障害(いわゆる強迫神経症)、外傷後ストレス障害(PTSD)等を含む
  • F5  生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群--摂食障害(いわゆる拒食や過食)、睡眠障害、性機能不全(性欲の低下など)等を含む
  •  F6 成人の人格および行動の障害--いわゆる人格障害や性行動に関する問題などを含む
  •  F7 精神遅滞 精神発達遅滞
  •  F8 心理発達の障害--学習能力の特異的発達障害(いわゆるLD)や広汎性発達障害(いわゆる自閉症)等を含む
  • ★F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害--多動性障害(いわゆる多動児)や行為障害、チック障害等を含む
  •  F99 特定不能の精神障害--以上の分類に当てはまらないもの全て

厚生労働省のホームページから http://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/index.html

だらだらと長くなってしまい、すみません。最後までお付き合いいただいた方、ありがとうございました。

関連記事:

再び、場面緘黙は発達障害なのか?

場面緘黙の要因(カテゴリー)

 

再び、場面緘黙は発達障害なのか?

<イギリスの見解と日本の見解>

以前、『緘黙は発達障害なのか?』と題した記事を書きました。イギリスの専門家のあいだでは、「場面緘黙≠自閉症スペクトラム症(ASD)」という見解で一致しているようです。

調べてみたら、イギリスの国民保健サービス(NHS)による緘黙の説明に、下記のような記述がありました。

Another common misconception is that a selectively mute child is controlling or manipulative, or that the child has autism. There is no relationship between SM and autism, although the two conditions can occur in the same child.

(その他のよくある誤解は、緘黙児は強情・狡猾というものや、緘黙は自閉症であるというもの。この2つの症状を併せ持つ子どもはいますが、緘黙と自閉症の間に関連性はありません)。

NHSホームページ 病気A-Z 場面緘黙のページから

こちら→http://www.nhs.uk/conditions/selective-mutism/pages/introduction.aspx

一方、日本では広汎性発達障害やASD、グレーゾーンと診断される緘黙児が多いという研究結果が複数出ています。そのためか、「場面緘黙=広汎性発達障害・ASD」と捕らえる傾向があるよう。

<ASDの人の脳>

先回の記事でご紹介したアスペルガーの女性、ロビンさんは、まず最初にASDの人と普通の人の脳の写真を提示しました。ASDは先天性の脳の機能障害であり、普通の人とは脳の構造が違うというのです…私は知らなかったのでビックリ。

日本語の説明はないかなと探してみたら、『日刊アメーバニュース』の「早期発見がポイント―子供の「自閉症」、MRIで診断可能に」という記事に出くわしました。

こちら → http://news.ameba.jp/20131026-160/

脳の構造が違うため、初めから認知の仕方が普通の人とは違う。だから、心理的な発達も通常とは異なってくる--社会性が育たないのはこういう理由からなんですね。

場面緘黙はというと、発達の問題というよりも、やはり心の問題(心因性の精神障害)だと思うんです。心因性ということは、普通の子、ASDの子に関係なく、特定の心の問題を抱えたときに緘黙になるということではないでしょうか?

家では普通にしゃべれるのに、学校など公の場でしゃべれない--「公の場」では家で使う話し言葉以上のものが求められます。それは、社会的な場で使う「話し言葉」とソーシャルスキルを伴う「コミュニケーション」。さらに、これらは年齢に見合うものでなければなりません。

家だったら、家族に「あれ取って」と言えば通じますが、学校で先生に向かってそうは言えません。また、複数のクラスメイトとの対話では、適切なタイミングで適切なことを言う必要があります。家で使ってる言語&コミュニケーションと比べると、ぐっとハードルが高くなるのです。

言語や発音に問題がある子、コミュニケーションや社会性に問題のある子にとって、学校で話すことはかなりの難題です。授業で上手く答えられなかったり、クラスメイトに何か言われたら、子どもはひどく傷つき、学校で話すことが不安になるでしょう。繊細で不安が強い子は、特にその傾向が強いのではないでしょうか。

ASD児は社会性がなく、コミュニケーションが苦手なため、緘黙になるケースが多くみられるのではと推測しています。特に、自己主張せず、苦手な部分を隠したがるタイプの子が…。日本では診断を受けることなく、ずっと理解・支援なしで普通クラスに在籍しているASD児(傾向の子)も多いようで、学校生活が辛そうです。

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ASD児の不安と緘黙児の不安

クラスの5人の子ども達に共通しているのは、「自閉症の三つ組」と呼ばれる特性です。子どもによって三つ組のバランスや現われ方は違いますが、程度の差はあれ全員これらの特性を持ちあわせているなあ、と納得しているところです。

1) 社会性の質的な差異

年齢相応の常識や社会性を身につけるのが難しく、場の空気を読んだり、人の気持ちを察して行動することが苦手

2) コミュニケーションの質的な差異

適切な言葉やボディランゲージを使って人と交流することが難しい

3) イマジネーションの質的な差異

目の前にない事柄(もの・情報・可能性など)について推測したり予測したりすることが困難

研修初日にクラス担任に言われたのは、「この子達は、時間や空間といった抽象的な概念を捉えるのが苦手だから、教室の移動やスタッフの顔ぶれが変わるだけでも不安になりやすいの。だから、スケジュールが変わる時は要注意」ということでした。

「抑制的な気質」を持つ緘黙児も、新しい状況に慣れるのに時間がかかり、未知の体験・環境・人に対して不安になると言われています。また、ASD児と同様に、感覚過敏がある子も少なくないようです。それでは、ASD児とSM児の感じている不安は同種類のものなのでしょうか?

以前、『Selective Mutism in Children(2003)』の著者のひとりであるトニー・クライン教授にこの質問をしたところ、「SM児とASD児では、抱えている不安の質が違う」という興味深い返事が返ってきました。

彼によると、SM児の不安は「自分が話しているところを人に見られたくない=人前で失敗したくない、目立ちたくない」という社会不安であり、ASD児の不安は「予測がつかない事態への不安」だということ。

これまで体験入学でやってきた子のお世話を何度かしたのですが、どの子も「次はなにをするの?」と質問してきます。担任が事前に必ず作成しておくのが、その子用の時間割。最初に時間割の説明は済ませているのですが、訊かれる度にそれを見せて、「今この授業をやってるから、次はこれだよ」と説明すると、みんな安心するのです。

(ちなみに、教室内には仕切りのついた個別のブースが5人分あり、それぞれの子どもに机とPCが与えられ、壁にはラミネート加工したその日の時間割が貼ってあります(曜日毎に貼りかえます)。驚いたのは、子どもによって時間割の表記が異なること。数字と教科を記しただけのシンプルなものもあれば、時計の絵と教科のシンボルマークが入ったもの、1教科終わるごとに閉じて、その時やっている教科と時間が明確になるものなど、実に工夫に富んでいて感心します)。

朝の会では、まず最初に担任がその日のスケジュールと変更事項などを説明するのですが、これが子ども達の不安を低減するのに役立っているよう。また、ひとりひとりの子どもに対し、その日の具体的な目標を確認(例えば、発言する時は手を挙げるなど)するのも、どう行動すればいいか解りやすいと思います。

子ども達には、普段心配そうだったり、不安そうにしている様子は見られません。何か嫌なこと、したくないことがあって不安になった場合は、即座に「嫌だ」、「やりたくない」と強い拒否反応を示すことが多いかな…。ASD児はとても正直なので、嫌な時、不安な時、困っている時はストレートに言動に現われるように思います。

学校にはホールがあって、ランチや全校集会、屋内体育の授業などに使用するのですが、全校集会に出ることを嫌がる子がいました(現在はあまり問題ありません)。途中で転校してきたこの子は、ランチの時間は全く平気なのに、全校集会の時だけ時々問題児に…。聴覚過敏で騒音が気になる部分もあったようですが、何をするのか予測がつかない部分と前の学校での嫌な体験が不安に繋がっていたようです。

皆と一緒にベンチに座っていたのに急に立ち上がって教室に戻ろうとした時もあれば、問題なく話を聞いていた時、嫌がってホールに入らず教室のドアを蹴飛ばして大声で叫んだ時もあり、何が原因なのか??? そうかと思うと、うちのクラスが発表会をした時には、皆の前でPCを操作し、堂々と発言するという…。

その時々の雰囲気や心理状態などが強く影響しているという印象で、すごく波がありました。人にどう思われるかを気にする面は、あまり大きくなかったような…。

一方、息子も全校集会を酷く嫌がっていた時期(小3の頃)があったのですが、理由を訊いてみたら、「もし校長先生に呼ばれたら、何か訊かれるかもしれない。怖い」と。更に、様々なシチュエーションを想像して、もし何か失敗したらどうしようと、心配しているのです。ちょっと考えすぎ、想像しすぎじゃないのと思えるくらいに。

全校集会では、その週に頑張った子ども達を校長先生が表彰(といっても、とても簡単なもの)する習慣があって、大勢前に出て行って簡素な表彰状をもらい、大抵は”Thank you”を言う程度だったと思います。何とかそういう場でも返事ができるくらいまで回復していた時期でしたが、まだまだ不安は大きかったよう。実際に体験してみて、「あっ、思ったほど大変じゃなかった」と実感することで、徐々に慣れていくことができたように思います。

この2つのケースを比較してみて、不安の質が違うというのはこういうことなのかなと考えていますが、どうなんでしょうか?

 

イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その8)

これまでイギリスの小学校の制度や教育システムを長々と綴ってきましたが、ASD児が場面緘黙を発症しにくいと考える根拠をまとめてみます。

<イギリスの学校の利点>

●登校しぶりや登校拒否が少ない = 適応障害を起こしにくい環境

イギリスでは小学生の登校しぶりや登校拒否が殆ど話題になりません。実際にかなり少ないようですし、私の身近でも聞いたことがありません。その背景には、能力に合わせた学習体制に加え、支援の多い馴染みのあるクラス環境があると思います。学校に対する不安や恐怖、学校生活のストレスが少ない環境は、ASD児はもちろん全ての子どもに優しい環境といえます。

(ちなみに、この国で社会問題となっているのは、ワーキングクラスや移民の子どもが集まる地区の学力低下の問題。いまだに階級制度が存在し、英語が第二言語の子どもが多いため、地区や学校によって学力の差が激しいのです。また、イギリスでもセカンダリースクール(12~16歳)にあがると、登校拒否やドロップアウトの問題が出てきます。セカンダリーでは急に学校の規模が大きくなり、大学のようなシステムに変化し、学校と保護者の繋がりが希薄になることが原因と考えられます)。

●特別支援システムが浸透していて、保護者と学校の繋がりが強い

イギリスの学校には専属のSENCO(特別支援コーディネーター)が存在し、ひとりひとりの子供にIEP(個別教育プラン)を立てて支援します。支援は学習の遅れや態度・行動の問題から、何らかの障害がある子どもまで、かなり広範囲。学校の予算と子どものニーズに合わせ、心理士や言語療法士、作業療法士といった専門家の支援を追加することも(その多くは学校ベースで行われます)。

SENCOを中心に、担任とTA、必要であれば専門家、そして保護者で支援チームを結成します。こう書くと理想的なようですが、学校によってサポートの質や量が大幅に違うのが難…。それでも、問題が起きた時の対応は日本より早いのではないかと思います。

IEPがあると、周囲の大人が子どもの持つ問題や特徴、支援方法を把握することが可能です。それが、他の子ども達へのフォローや、子どもがクラスに溶け込めるような支援に繋がるように思います。

保護者と学校との連携が義務づけられ、通常は学期末にSENCO(+担任や専門家)と保護者がIEPの達成度をチェックし、次の目標を決めます。インファントでは送り迎えが必要なので担任と顔を合わせる機会が多く、ジュニアでも普段から担任やSENCOに相談しやすい雰囲気があります。

<ASDの二次障害としての緘黙>

●二次障害の定義

子どもが抱えている困難さを周囲が理解して対応しきれていないために、本来抱えている困難さとは別の二次的な情緒や行動の問題が出てしまうもの。

●ASDの特徴

社会性、想像力、コミュニケーションに障害があり、対人関係で問題を起こしやすい傾向があります。また、発達の凸凹が大きいため、学習面でできることとできないことの差が大きかったり、学習障害などを併発していることも。環境の変化に弱く、集団生活に不安を感じる子が多いようです。

●ASD児が場面緘黙になるケース

ASD児の中でも、やはり抑制的な性格や学校への不安が大きい子、比較的受動的な子が場面緘黙になりやすいのではないでしょうか?不安の少ない学校環境で、対人関係に対する大人の支援やフォローが多いことを考えると、ASD児が場面緘黙を発症する頻度は、日本の小学校と比べ少ないのではと思います。

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イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その5)

イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その6)

イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その7)

 

イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その7)

3) クラス運営と特別支援のシステム

<クラス運営について>

イギリスの公立小学校は1~6年生(6~11歳)の前にレセプションクラス(5歳)を加えた7年制。通常、クラスの定員は30名です。一体どんな基準でクラス編成するのか不明ですが、息子の学校では、7年の間ずっとクラス替えなしでした。ちなみに、担任は1年ごとに交代します。

最初、「えっ、友達関係がうまくいかなかったら、ずっとそのまま!? おとなしい子が自分の殻を破るチャンスがないのでは?」と、すごく心配だったのですが、息子の場合はこのシステムがプラスに働きました。

7年間も同じクラスだと、仲間意識が強くなり、子ども達はそれぞれの個性を当たり前に受け止め、認め合うようになります。困った時どんな風にフォローすればいいのか皆解っているので、自然な助け合いができるというか…。例えば、杖をついている子がいたら、一緒に歩く時にどんな風に振舞えばいいのか自然に身につく感じです。多分、マイナス面もあると思うのですが、総合すれば利点は大きいように思います。

SM児もそうですが、ASD児は変化に弱く、新しい環境に馴染みにくいのが特徴のひとつ。また、内気な子どもにとっても、日本のように毎年クラス替えをすることは随分負担になるのではないでしょうか?

<特別支援教育について>

イギリスの公立校ではインクルージブ教育(健常児と障害児の統合教育)システムを採用していて、全ての子どもが普通クラスで学ぶ体制になっています。もちろん例外もあって、何らかの重い障害がある子どもは、保護者の希望などにより特別学校に行くケースも。

息子の学校では、他校と比べて特別支援が必要な子どもを多く受け入れていました。発達の障害や身体的な障害がある子が、クラスに1~2人くらい。校内では、杖をついて歩く子や車椅子の子の姿も(校内にエレベーターがあるのです!)。基本的に、特別支援用の通級クラスというのはありません。それぞれの子どものIEP(個別教育プラン)に合わせ、定期的に授業を抜け出して小グループ活動、個別の学習セッションやセラピーを受けに行くという感じです。

ちなみに、インファント(5~7歳)では各クラスに担任とTA(教員補助)がつく体制。特別支援(SEN)を必要とする子どもの中でも、症状が重くステートメントと呼ばれる法的評価を受けている子に対しては、地方の行政局から学校に予算が下りるので、専属のTAがつくことが多いです。加えて、科目によってはエキストラで学習支援員がついたり、保護者ボランティアが参加したり。

息子をイギリスの公立校に通わせてみて、子どもに能力以上の無理をさせないようなシステムという感想を持ちました。学習面では能力別にグループ学習させることが多いと前の記事で書きましたが、体育とかも同じなんです(笑)。例えば、逆上りや縄跳びをする場合、全員ができるように支援するというのが日本。でも、イギリスはそうじゃないんです。

小3の時に学校で縄跳びの授業があったんですが、息子を含めできない子が複数人いました。で、担任に相談したら、「男の子は跳べない子も多いから」と言われ、なんの対処もなし….。結局、夏休みに家で練習して跳べるようになったんですが、学校ではできるまで支援という発想はないようでした。

私の感触では、「できる子はもっと、できない子はそれなりに」というシステムかな…。これって保護者にとっては困った傾向ですが、子どもにはストレスが少ないと思います。

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