緘黙支援 放課後の教室でビデオを活用

イギリスでは今週から3学期が始まりました。学校へ向かう途中、八重咲の並木道が迎えてくれて心がほっこり。花と同時に出てくる葉っぱを見ると、いつも桜餅を食べたくなります。

……………………………………………………………………………………………………………………….

私は息子が小1(5歳・担任の参加なし)と小2(6歳・担任の協力あり)の時に放課後の教室訪問を試みました。その結果はというと、う~ん効果があったのか、なかったのか、明白にはいえません。

ただ、「自分は教室/ 学校で話すことができる」という概念を子どもが持つことで、自信につながったのではと思っています。また、言葉が出なくても、「不安が少ない状態で教室にいる自分」に慣れる機会では?

イギリスでは授業が終わると生徒は校舎から出ることが原則になっているので、教室に生徒が残ることはめったにありません。また、教室で翌日の授業の準備をする先生もいますが、スタッフルームに引き上げることがほとんど。

IEPに緘黙支援が入っている場合、支援セッションは原則的に放課後ではなく授業中。それは教室の片隅だったり、別室(子どもは通常の授業を抜けます)だったり。放課後は先生たちが自由に使える時間――だから、教室で担任やTAと何らかのセッションを行いたい場合は、学校側にお願いすることになります。

日本だと校則が厳しそうなので、保護者が学校内に入ること自体が難しいかもしれませんね。そして、支援が受けられるかどうかは担任次第のところが大きそう…。

担任が参加してくれるか・くれないか、セッションの回数や時間など、条件は様々でしょう。教室での活動については、これらの条件を考慮して事前に綿密な計画をたてる必要があります。

ここでは実際の活動内容は省きますが、放課後や学校の休みに教室を使わせてもらえるなら、その機会を利用してビデオ活用をお勧めしたいです。今はスマホがあるので簡単ですよね。ただし、事前に学校に許可をもらうことを忘れずに。

(なお、この設定は小学校低学年までくらいを想定しています)

ビデオ撮影のお勧め

1) 言葉が出ない場合

  • 子ども自身にスマホを持たせて、自由に好きなものを撮影させる。帰宅してから、一緒にビデオを観て撮影したものの説明をしてもらう。
  • 子どもが撮影している間、反応をみながら展示物などについて「これ図工の時間に作ったんだね」などと話しかけてみる。応答があるようなら、「〇〇の席はどこ?」「この絵はいつ描いたの?」など質問してみて。短い返答が返ってくるかもしれません。無理に答えさせようとはしないこと。

家で教室の映像を何度も見返して、教室に慣れさせる。学校のこと、クラスのこと、先生のこと、好きな友だちのことなど、子どもの様子を見ながら気軽におしゃべりできたら、不安を減少させることができるかも。

2) 言葉が出る場合

  • 教室で話している子どもの姿を撮影する
  • 子どもとおしゃべりしながら、子どもの席を含む教室のあちこちを撮影する

家で映像を何度も見返して「◯◯ちゃん、ちゃんと教室で話せてるね」と言葉がけをする。あとは1)と同様に、学校に関して楽しくおしゃべりする。

3) 担任が参加してくれる場合

  • 担任が子どもに挨拶や質問するところをビデオに取らせてもらう

家で映像を見返して、挨拶や返事の練習をする

……………………………………………………………………………………………………

緘黙児の特徴のひとつに、場所・人・活動に馴染むのに時間がかかるというのがあります。夏休みなど長期の休みが入ると、それまで馴染んでいた学校環境がまたまた縁遠くなってしまうのです。新学期に学校に戻ると、またはじめからやり直す感じになることも…。

もし放課後や学校の休みに教室や校庭を使わせてもらえるなら、教室だけでなく校門、校庭、昇降口、子どもの下駄箱、廊下、トイレなど、子どもが毎日使っている場所の写真を撮ってください。その写真を使って、本人の解説が入った学校の本を作ってみてください。特に、休みの間に見返すと効果的です。

<関連記事>

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その20)放課後の教室

息子の緘黙・学童期6~7歳(その4)小2の放課後の教室

にほんブログ村 メンタルヘルスブログへ
にほんブログ村

元緘黙児、成長しても性格は変わらず?

 ロンドンでは今桜が満開です

大学がイースターホリデーに突入し、大学のあるサリー州の田舎町に住んでいる息子が帰省しました。イギリスはまだロックダウン解除の途中ですが、フラットシェアをしていた友達が1月末に帰国してしまい、息子はそれ以来ひとり暮し中。

イギリスではコロナ変異種の感染拡大が1月にピークを迎え、世界的にも最悪な状態に。友達が感染が少ない自国に帰った気持ちも良くわかります。大学は秋からオンライン授業だし、狭いフラットにずっと閉じ込められていた訳で…。

息子だって実家に帰ってきても勉学に支障はないのですが、彼はひとりでフラットに残ることを選択しました。フラットの方が勉強しやすいというのですが、親に干渉されたくないのもあるんでしょう。

小さい時から用心深い子でしたが、変異種の感染が拡大する中、食料の買い出しに出ることを止めて、オンライン注文に切り替え。人が集まるところを極力避けて、大学(図書館は開いてる)にも行かず、友達とのコミュニケーションもほぼオンラインだけと…。

そんなに人に会わない生活で大丈夫なの?! 心配になった私たちは、ひとり暮しの人に限り他の一家族と行動を共にできるサポートバブル制度を利用して、家族でサポートバブルを結成。この2か月間に何度か息子に会いに行きました(早くコロナ禍が収まって、対面授業が始まります様に)。

息子は割と器用なのもあり、頑張って料理を作っているよう。この間会いに行った時は、初めて手料理をご馳走になりました。ローストチキンのランチ、とっても美味しかったです。

ロースト料理を良く作るというので理由を聞いてみたら、「大きい肉の塊をローストすれば、数日間食べ続けられるから」とのこと。勉強が大変なので一度に大量に料理して、手間と時間を省いているらしいのです。

オンライン授業であっても、カリキュラムは通常通りに進行しています。定期的な課題の提出やグループプロジェクトに加え、6月からは進級試験とかなり忙しそう。日本の大学より厳しい印象を受けます。

課題提出の前は時間がないからテイクアウトにしているそうで、家への連絡も途絶えがち。こちらから連絡すると「忙しいから、今週は会いに来ないで」とそっけない返事。やっぱり自立しつつあるんですね――まあ、昨年夏に20歳になったので、当然かもしれませんが。

成長してるなと思う反面、ずっと変わらないのは心配性の性格。課題が難しい時や順調に進んでいないと感じると、ものすごく不安になるらしいのです。時々、私にだけ弱音を吐くので心配になるのですが、結果的にはちゃんと提出できているという。

幼少のころから、事前に悪いことを色々想像してしまい、不安になっちゃうんですよね。イザその時になると割と落ち着いてできるケースが多くて、たいていが取り越し苦労なんですが…。その上、真面目すぎるというか、なかなかズルができない性格でもあります。

息子が緘黙になる原因となった抑制的な気質は、少しずつ改善されてきたように思っていたのですが…。ストレスがたまると、過剰に心配したり、不安になったりする部分は変えられないのかな?それとも、息子比で改善されつつあるんでしょうか?

いずれにせよ、生まれ持った性格が大きく変わることはないように思えます。

コロナ禍のイギリス暮らし(その1)

隣人の訃報に天候の悪さも加わって、先回の記事はかなり暗くなってしまいました。最悪の数字を更新し続けているイギリスですが、みんなメゲながらもロックダウン下での新しい日常を生きています。

今回のロックダウンの規則は、

  • 必需品の買い物や必須の場合をのぞき、外出禁止
  • 近隣での野外での運動は一日一回のみ。同居の家族と一緒か、もしくは一人で。一人の場合は、家族以外の人ひとりと一緒に運動しても良い
  • 社交は室内・野外ともに一切禁止
  • 他者との距離は2m取る(マスク着用の場合は1m)
  • 学校は医療スタッフなどキーワーカーの子どもと支援が必要な子ども達のために一部継続

ロックダウンも3回目だからステイホーム生活も慣れました――といいたいところですが、この冬のロックダウンはもの凄く辛い!

暗い、寒い、天気悪いーー3悪の時季に加え、変異種の猛攻撃によって運動のための外出もままならず…。週末の日課だったママ友とのウォーキングも一時中止。日暮れが早いため、仕事の後に散歩をと思っても、外はすでに薄暗いのです。

オンライン授業に切り替わったため、学校に行かなくても良くなって安堵したんですが…(なんせ1月初旬のロンドンは20~30人に一人の感染率だったので)。その反面、同僚や生徒達とも会えないし、学校近くの森の散歩もできません。散歩仲間とも会えなくなって、すごく淋しい…😢

    配達人のほか、訪問者はゼロ…。でも、先日ドアを開けたらお向かいのFluffyが。近所の人気猫なんですが、ロックダウンで遊んでくれる人がいない?

私が住んでいるのは、北ロンドンの郊外の小さな町。息子は大学のあるサリー州在住なので、一昨年の秋から夫婦二人きり。主人は在宅勤務ですが、忙しくて朝9時から夕方6時ころまで殆どオフィス(息子の部屋)から出てきません。

私は比較的時間があるので、家事のほとんどを担当する羽目に。

食料の買い出しは、混雑する土日を避けて月曜日の朝早めに行きます。通路が広い近所の大型スーパーは、この時間帯だと空いてるので。バスケット(日本より大型)に食料品を詰め込み、会計はセルフレジでカード払い。スーパーから一旦戻って玄関に荷物を置き、必要な時はご近所の八百屋さんや魚屋さん、ドラッグストアへ。

     運動のため、リュックを背負って歩いてます(;^_^A まるで戦時中みたい?! 昨日は道が凍結していて大変でした…

買い出しの後、買ってきたものをひとつずつ消毒するため、やたら時間がかかります。ドアノブや冷蔵庫などのハンドルも消毒し、使った布マスク(フィルター入)を洗って、干してと…結構忙しい。

寒いのでお昼も夕食も暖かい食事を作るので時間はかかるのですが、気分転換になっています。今は食事が一日のメインイベント?! この間、私の知らない内に主人がチョコを食べてしまい、喧嘩が勃発…なんだか次元が低くなってる…。

 

       急にお汁粉が食べたくなって、小豆缶で栗入りぜんざいを作りました。お気に入りのチョコも買いだめ

朝起きて、学校のサイトやニュースを確認して、仕事して、運動して、食べて、ゆっくりして(TVとPC)、入浴して、寝る…その繰り返し。

実は、不眠症で3日くらい全く眠れなくなってしまう時があるのですが、医者から睡眠薬(入眠剤)を処方してもらっています。眠れない時は薬を半分だけ飲んで、眠りのリズムを整えるのです。

眠れない時は、「どうして眠れないの?」から「またか、まあ薬があるから大丈夫」と気持ちを切り替えて。どうしても眠れない時は、観念して真夜中でも本を読むことにしています。通勤しなくてもいいから、寝不足でもまあ大丈夫と気持ちも楽。

日本も緊急事態宣言が出ていますが、何か楽しみを見つけ出して、辛い時をやり過ごしたいですね。

<関連記事>

悪化するコロナ禍とメンタルヘルス(その1)

悪化するコロナ禍とメンタルヘルス(その2)

悪化するコロナ禍とメンタルヘルス(その3)

悪化するコロナ禍とメンタルヘルス(その4)

使い捨てマスクの消毒法

4月5日(日)の今日、都市閉鎖中のロンドンは晴天の良い天気に恵まれています。といっても、まだ中庭で少し日向ぼっこしただけで、外には出てはいないのですが…。

BBCニュースでは、今日外出する人が急増し「2メートルの社会的距離」を保てないようであれば、「一日一回、30分程度の運動」も禁止になる可能性があるとのこと。このくらい徹底しないと、感染拡大を防げないということですね。実は、主人の知り合いが2人感染してしまい、本当に他人ごとではありません。

イギリスでは新型コロナ感染による死亡者数が毎日急増していて、昨日はなんと708人もの方が亡くなりました。その中には5歳の男の子も含まれています。感染予防のため、家族も病室に入れず最期の付き添いはできません。今のところ、参列者10人以内の簡素なお葬式をあげられるようですが、それもいつまで続くか…。

この様な状態なので、NHS(国民保健サービス)の医療関係者が最前線で戦ってくれていることを考えると、外で運動できないことくらい仕方がないのかも。ただ、身体と心の健康のためには良くありませんね。

先週、2回スーパーに買い出しに行ったところ、2回とも咳をしている人(ひとりはマスク着用)を見かけ、心底怖くなってしまいました。前回書いたように、マスクをしても感染予防はできないようです。でも、フィルター代わりにキッチンペーパーを入れた布マスクより、使い捨てマスクの方がまだマシかなと思い、ネットで購入しました。

でも、使い捨てだからすぐになくなってしまうなぁ--と思っていたところ、台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タン氏による使い捨てマスクの消毒法に遭遇。オードリー氏はIQ180を超える天才プログラマーとして名を馳せ、台湾における感染拡大の防止や国民へのマスク供給システムに貢献しています。信用度は高いと思われるので、彼のツイッターを紹介させていただきますね。

日本でも感染者数が急増していて、今ロックダウンしないとイギリスの様になるのでは、と心配です。みなさん、どうぞお気を付けて。

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その6)もうひとりの緘黙児

昨日から11月に入り、今年もあと2か月を切りました。イギリスでは先週末に時計を1時間遅らせ冬時間に突入したため、午後4時半ころになるともう辺りは真っ暗。

久しぶりに森に行ったら、紅葉はもうピークを過ぎていました。落ち葉が地面いっぱいに積もって、歩くとカサカサ音がする季節です。

  

…………………………………………………………………………………………………………………………

息子の症状が場面緘黙であることが判明したのが2005年5月、それからは息子のことで無我夢中で周りがよく見えていませんでした。

2005年9月に息子が1年生になり、私もクラスボランティアを始めて少し落ち着いてくると、息子のクラスのことが見えるようになってきました。そして、「あれっ」と気付いたことが…。

どうやら、息子のクラスには、もうひとり緘黙児がいるみたい。

記憶を遡ると、息子がレセプションに入ったばかりの2005年1月後半(緘黙傾向はあったものの、まだ顕著ではなかった)、担任が放った謎の言葉がありました。

「大丈夫、もっと重症の子がいるから」…。(詳しくは『息子の緘黙・幼児期4~5歳(その5)』をご参照ください)。

それが何のことかさっぱり解らないうちに、滑り台事件が起こって息子が緘黙・緘動状態に陥ってしまい、何とかしなきゃと必死だった日々。毎晩ネットを徘徊しているうちに「場面緘黙」という言葉に巡り合い、SMiRAに助けを求め、SENCoと担任に資料を渡して、緘黙の支援をお願いすることができたのです。

今考えると、息子への支援が最も手厚かったのが小学校1年生(幼児部4~5歳)の時でした。その理由は、学校の方針と予算によるものだったと思います。

支援の内容は:

  1. TAとの読本セッション(1対1 週1回15分ほど)(詳しくは『息子の緘黙・幼児期5~6歳(その4)』をご覧ください)
  2. ソーシャルグループへの参加(小グループ 週1回30分ほど)。ASD児のために社会性を育てる小グループに混ぜてもらい、少人数でゲームなどの活動をする
  3. クラスでの小グループ活動における配慮。学校外で話せる仲良しのB君と同じグループに、TAのいるグループにしてもらう

注:なお、1)と2)の活動は授業中に教室から別の部屋に連れ出して行われます。

新学年からこれらの支援が実施されるようになり、ふと気づけば息子と全く同じ支援を受けている男の子がいる…。それは、レセプションクラスに入ったばかりの時、担任が「もっと重症の子」と評した、同じ幼稚園出身のF君でした。

F君は身長が高く、内気ながら結構スポーツができる子でしたが、両親はともに外国人。息子もそうですが、やはりバイリンガル環境や文化の違いが緘黙の発症に影響していたものと推測されます(学校で使う言葉が母国語ではない場面、緘黙の発症率は通常より高い)

ある日のお迎え時間、F君のママが「あなたの子もTAと読本してるでしょ?」と、声をかけてくれました。短い立ち話で、支援が助かるね~と確認し合ったのです。

数日後、また話す機会があったので、「私はSMiRAの会員になって、緘黙の本や資料を持ってるから貸しましょうか?」と訊いてみたのです。そしたらすごく引かれて、「うちの子は違うから」と拒絶されたのでした…。

どうやら、SENCoは彼女に子どもの症状が緘黙だということを説明してない???ただの恥ずかしがり屋で、時間が経てば治ると言われていたようでした…(F君は早生まれの息子より半年前に入学し、その頃学校もSENCoも緘黙についての知識がない状態だったと思います)。

学校で全く話さず、息子と同じ支援を受けてるんだから、絶対緘黙だよ――そうは思ったものの、押し付ける訳にもいかず…。ちょっと凹みましたが、まあ人それぞれだし、とその後は傍観することにしたのでした。

でも、SMの知識があろうとなかろうと、F君ママも子どもの交友関係を大切にして、よく彼の友達を家に招いていたようです。

それが功をなしたのか、F君は息子より早くクラスで話せるようになりました(^^;) クラスに仲の良い友達がいて、休み時間にサッカーなどの遊びに必ず加わっていたことも、克服の助けになったんじゃないかなと思っています。

<関連記事>

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その1)祖父母の反応

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その2)社会的な機会を増やす

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その3)1年生に進学

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その4)先生が僕を喋らせようとする

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その5)学校外でのスモールステップ

元緘黙のアーティスト、クリスティーナさん(その2)

前の記事を投稿してから3週間以上過ぎてしまい、何と今日で8月が終わりです。義父が入院して緊急手術を受けたため、義両親宅に介護に行ったりと落ち着きませんでした。ふと気づくと、もう風に秋の気配がする季節に…。

さて、先回に続きクリスティーナさんの話題です。まず、BBC Storiesに掲載された彼女のインタビュー記事をご紹介します。

WHAT I CAN’T SAY BY TALKING I CAN SAY WITH MY PAINTINGS.🎨.Christina, 24, London: "When I was three years old I stopped…

Posted by BBC Stories on Monday, 29 October 2018

 

WHAT I CAN’T SAY BY TALKING I CAN SAY WITH MY PAINTINGS.🎨
話せないことを、私は絵で表現できる

ロンドン出身のクリスティーナは、現在24歳:
3歳のとき、母と祖母以外の人と話すことをやめました。これは場面緘黙(SM)と呼ばれる症状で、家族間のトラウマを経験した後に発症しました。

場面緘黙は深刻な不安障害であり、特定の状況、もしくは特定の人と話すことができません。

セカンダリースクール(12~16歳)では、事態がひどく悪化しました。自己防衛ができなかったため、苛められたのです。活動への参加を強制する教師もいて、クラスの面前で侮辱されたように感じました。

よく授業を避けてトイレに隠れたものです。最終的には、1年以上学校を休むことを余儀なくされました。

その間、うつ病と不安に苦しみ、3ヶ月間入院しました。 そんなに落ち込んでしまったのは、場面緘黙を全く理解してもらえなかったからです。

私にとってはアートが治療であり、不安から解放してくれるもの。また、オンラインのFBグループでたくさんのサポートを得ることができ、ソーシャルメディアを通してボーイフレンドとも出会いました。SNSは、顔をつきあわせて(不安で)胃が痛くなるような思いをせずに人と知り合える、より簡単な方法といえるでしょう。

場面緘黙の影響はいまだにあります。アポに臨む、お店に行く、電話をかけるといった行為で、パニックに陥ることもありますが、徐々に少なくなってきました。また、場面緘黙の良い面を見るようにすることを学んでいます。

場面緘黙は、私にもっと敏感で、共感的で、観察力のある人になること、そしてより力強いアートを生み出すことを教えてくれたと確信しています。

私は言葉で話せないことを、絵で表現することができます。私の話を共有することで、誰かの助けとなり、場面緘黙の認識を高めることができたら嬉しいです。

今場面緘黙に苦しんでいる人には、自分を表現する術を見つけ、同じ志を持つ人たちに出会うことを勧めたいです。

FBには、自分と同じように苦しんでいる人たちと話せるグループがたくさんあります。あなたは独りじゃありません。

<関連記事>

元緘黙のアーティスト、クリスティーナさん(その1)

2019年SMiRAコンファレンス(その10)緘黙のティーンの声

6月ももう半ばを過ぎたというのに、イギリスではまだ肌寒い天候が続いています。去年は春から夏まで天候が良かったので、また通常運転に戻ったかなという感じかな…。

   ケンジントンにあるデザインミュージアム。スタンリー・キューブリック展は見ごたえがありました

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「教師に伝えて欲しいこと」 SLT リビー・ヒルさん “What would you have wanted me to tell your teachers?”

リビー・ヒルさんは、CBTやアニマルセラピーなど多面的なアプローチでSM治療に取り組むSLT(言語療法士)。彼女が主催する言語療法センター、Small Talkの取り組みについては、 4年前に記事にしました(詳しくは『SMIRA2016年コンファレンス(その2)』をご参照ください)。

リビーさんは緘黙のティーンの治療にも多く関わっており、全員にかなりの改善があったと報告。今回の講演では、30名の緘黙のティーンの協力を得、治療の現場から彼らの生の声を届けてくれました。

<緘黙のティーンと保護者への質問>

1) SMを発症した時期は?

幼稚園・小学校入学時 / セカンダリースクール(12~16歳)入学時(原因:社会不安、虐め、ASDなど)

2) 今もSMの影響を感じているか

  • ティーン自身がまだSMだと感じている 22人
  • 保護者がまだSMだと感じている     6人

<緘黙のティーンの声>

  • もっと緘黙を理解して欲しい(話すことを拒否している訳ではない)
  • 緘黙症状の改善には担任の役割が大きいと感じている(75%)
  • 学校での不安を減少させることが、自信につながる(95%)
  • クラスでの席順はとても重要 → どの席がいいか訊いて欲しい
  • クラスで目立つのが嫌 → 支援も、褒める時も他の子に判らない様にして欲しい
  • 長期に渡って同じ支援スタッフをつけて欲しい。継続して関係を保ちたい(75%)
  • 自分から助けを求めることができない(100%) → 先生から聞いてくれると助かる
  • 先生に何か聞かれて応えることができなければ(非言語も含め)、とばして欲しい
  • 先生やTAとコミュニケーションを取るツールが欲しい(75% 例:WhatAppなどのSNS機能)
  • 場面緘黙であることで、周囲から好奇/哀れみの目で見られていると感じる(67%)
  • 信頼できる友達がいると安心(100%)
  • 小グループ活動の時に信頼できる友達と一緒だと安心(93%)
  • 放課後の活動に参加したいけど、できない(67%)

リビーさんから:

クラスにひとりだけでも信頼できる友人がいると、学校生活がぐんと楽になる。緘黙症状の改善には小グループ活動が効果的。休み時間、特にお昼休みはSMのティーンにとってトリッキーな時間。他の子たちと一緒にご飯を食べられないこともあるので、適切な配慮を。また、課外活動では、話せなくても役割を考慮してあげると良い(演劇部だったら、照明や音響、衣装係など裏方の仕事を)

不安を感じている状態だと、情報処理に時間がかることが多い。課題を与える時は、何を求められているかを明白にすること。SMのティーンは目立つことを嫌がるので、クラス全体に指示を出した方がいい。また、次にする活動を事前に教えておくと安心できる。

セカンダリースクールでは子どもの自立を推奨し、家庭との連絡が少なくなる傾向にあるが、連絡は密に取ること。介入・支援することで、学業・社会性ともに進歩が見られることが多い。緘黙や不安が試験の結果に影響を与えている場合は、試験会場や試験の方法、時間を延長することなどを考慮に入れる

SMのティーンは自分のSMに対する周囲の反応に非常に敏感。言動には注意が必要。場面緘黙と関係ない分野で、子どもを評価してあげる必要がある。

みく備考:

イギリスの公立校システムでは、小学校(5~11歳)の次は、5年間のセカンダリースクール(12~16歳)に通います。2018年調べによると、小学校の全校生徒数は平均で280名ほど、それがセカンダリーになると平均で1000名近くに膨れ上がります。

小学校では1学年が平均1、2クラスとアットホームな感じなのに、セカンダリーに上がると途端に規模が大きくなり、大学のような移動教室式に。ベースになる教室や自分の机はなく、カバンを持ったまま次の教科の教室(別棟のことが多い)に移動しなければなりません。休み時間やランチタイムにいられる教室がないため、緘黙のティーンにとっては、過酷な環境といえます。

(息子がセカンダリーに入った時は(2012年)、学校との距離がとても遠くなったように感じました。連絡は学校のサイトで確認、担任や教師との面会は、メールでアポを取る形式。学年末の懇談会やたまにある保護者会をのぞき、学校に行った記憶があまりないです。そういえば、入学時の保護者会では「子どもを自立させるため、保護者はあまり学校のことに口を出さないように」と言われたような…)。

小学校で緘黙症状が改善したのに、セカンダリーに入って逆戻りしてしまったというケースも…。セカンダリーでは複数の小学校から生徒が集まるため、新たな友達関係を築く必要があります。緘黙児が新しいクラスで新たな友達の輪に加わることは、かなりの難関…。思春期の生徒がそれぞれ悩みを持つ難しい年頃でもありますね。教科数も担当教師もぐんと増えることから、学校での支援も難しくなると予測されます。

<関連記事>

2019年SMiRAコンファレンス

2019年SMiRAコンファレンス(その2)

2019年SMiRAコンファレンス(その3)

2019年SMiRAコンファレンス(その4)

2019年SMiRAコンファレンス(その5)

2019年SMiRAコンファレンス(その6)

2019年SMiRAコンファレンス(その6-2)

2019年SMiRAコンファレンス(その7)

2019年SMiRAコンファレンス(その8)

2019年SMiRAコンファレンス(その9)

環境問題の旗手は場面緘黙(その1)

環境問題の旗手は場面緘黙(その2)