『私はかんもくガール』―場面緘黙児のなんかおかしな日常って?

今年2月に出版されたコミックエッセイ『わたしはかんもくガール』(合同出版社)は、元緘黙児でイラストレーター&2児の母親でもある、らせんゆむさんの作品です。(実は、私も帯のお手伝いさせていただきました)。

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もう読まれた方も多いと思いますが、今さらながら感想を。まず最初に思ったのは、やはり日本のコミックカルチャーはすごい!ということで、文字だけだと判りにくい緘黙児や抑制的な気質の子どもの気持ちや態度、表情などがつかみやすいですね。苦悩の末、どんな風に緘黙を克服し、後遺症と戦ったかをユーモアたっぷりに綴っています。

らせんさんが緘黙になったきっかけは、幼稚園に入園したこと。初めての公の場で緘黙になる子どもは多いですが、それ以前の3~4歳の段階で自ら「外ではしゃべらなくていい」と決心するなんて…とても早熟で利発な子だったのでしょう。そして、とても感受性が高かったんじゃないでしょうか?それゆえに、家庭環境からの影響も強く受けただろうと想像されます。

私は所属しているTAエージェントでも、ボランティアをしていた特別支援校でも、愛着論理(Attachment Theory)の研修を受けました。乳・幼児期に少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持できないと、子どもは社会的・心理的な問題を抱えるようになるというものです。Wikiの愛着論理の説明: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E7%9D%80%E7%90%86%E8%AB%96

両親が喧嘩をしていると、子どもは自分のせいではないかと不安になります。その上、無条件で愛してくれるはずの母親が、時として自分を否定するような言動を取るというのは、めちゃくちゃ辛くて混乱することだったに違いありません。

軽妙なタッチで描かれていますが、緘黙と家庭での問題がダブルでのしかかり、それを自分だけで克服していくのは本当に、本当に大変だったと思います。

学校で話せない緘黙児は、同世代の子ども達や大人とコミュニケーションを取ることが難しく、社会的な体験を積む機会が失われがち。学校は子どもが社会性を培い人格を形成していく集団生活の場でもあるので、長く緘黙していると社会性の発達に支障をきたし、いわゆる「後遺症」が残ってしまいます。ちなみに、緘黙に限らず、話し言葉、言語、コミュニケーションに難しさを持つ子どもは、心理的・社会的な問題を抱えやすく、その影響が態度やふるまいに反映される傾向が強いようです。(2年ほど前、『Supporting Children with Speech, Language & Communication Needs』というコースで学びました)。だからこそ、家庭が安心できる場であり、のびのびと過ごせる環境であることが望まれます。

ゆむさんは社会人になってうつ状態になった時、自らクリニックに通い、たくさんの本を読んで思考を転換する強さを持っていました。そして、「母も母なりにしんどかったんだろうなあとは思う」、お父さんと旅行した際「初めて父の心境や苦労を聞けた」と、不安や怒りを浄化し、過去を受け入れて親に思い遣りを持つまでに自分の気持ちを整理できたよう。すごいことです!

ゆむさんを支えていたのは、「好きなこと」で培った自信だと思います。「やりたい」ことへの情熱と追求心は半端なく、苦境を創作意欲に変えてきた面もあったでしょう。もともと才能があったところに、努力を積み重ねて希望する職業に就き、色々な人と関わって自信をつけていった結果、緘黙もうつも克服できたのではないでしょうか。

「好きなこと」「得意なこと」の力ってすごいなと、改めて思いました。

それと、私も母親なので、読んでいてお母さんのことが気になりました。彼女は彼女なりに娘のことを愛し、心配していたのではないかな?好きな習い事を続けさせたり、美術系の高校に進学させたり、ゆむさんの個性を尊重し才能を認めていたと思います。ただ、自分が問題に直面すると、その不満のはけ口が自分より弱い存在である子どもに向かってしまった…特に攻撃しやすい対象だった長女のゆむさんに…。

そういう私も、時々息子に怒りを爆発させてしまいます。何かにつけて慎重な性格なので、「早く!早く!」とガミガミ急がせることもしょちゅう…注意しないといけませんね。緘黙支援をしている時、子供や自分のことで悩んでいる時、のめり込んでしまってどうしても視野が狭くなりがちかと思います。母親にも話し相手や息抜きがとても大切ですね。

*ここ数日間サーバーがダウンしていて、ブログへのアクセスができない状態でした。もしアクセスしてくださった方がいらっしゃったら、どうもすみませんでした。

 

緘黙児と習い事-うちの場合

緘黙児、というか抑制的な子どもにとって、好きなことを奨励し、個性を伸ばすことはとても重要だと思います。本人が「これが好き」「楽しい」「得意」と感じることが自信につながり、自己評価があがるからです。また、将来的に仕事に結びつけば素晴らしいですが、趣味としてキープできれば社交の糸口になってくれそう。

うちの息子の場合は、4歳の頃から音楽教室に参加し、その延長で7歳から吹奏楽器を習い始めました。理由は小さいころからいつも鼻歌を歌ったりと音感が良かったこと。また、スポーツ好きの子どもではないのが明白だったからです。

音楽教室に入った当時は、引っ込み思案だったものの、まだ緘黙ではありませんでした。途中で(4歳半で小学校に入学してから)緘黙になったんですが、その後も先生から「お宅の子は歌ってません」とか「固まってます」と注意されたことはなく、多分何とかやってたんでしょう。

吹奏楽器を選んだ理由は、お試しでヴァイオリンとコルネットをやってみたら、初めて挑戦したコルネットで結構音が出て先生に褒められたから。この頃は緘黙症状が徐々に和らいでいて、人前で「吹く」ことが、「話す」練習になるように思えたからでもありました。また、楽器ができれば、学校以外の友達を作れるかもという希望もありました。

スポーツもやらせたかったんですが、本人がものすごく嫌がり、やってもいいよという感じになったのは緘黙が随分改善した9歳のころ。が、この年齢になると、既に同級生は空手3年目とか、地区の少年サッカーチームのレギュラーとかになっていて、これから始めるにはすでに時遅しという感じでした。

その後、アーチェリーと卓球にトライしたものの、どちらも正式にクラブに入会する段階になって脱落…試合のために猛練習するほど好きじゃなかった/上手くなかったんですね…。今では、時々祖父に連れられてゴルフに行くくらいかな。

これまでの経験で思うことは、

  • 適性がないと長続きしない
  • 周りの子と同じ時期にスタートしないと、後からは入りづらい
  • 集団よりマンツーマンで習えるもの、マイペースで進めるものがベター

息子はマイペースで今も楽器を続けています。地区のブラスバンドにも入っていますが、ポジションはいつもその他大勢のひとり。そんな息子ですが、今年に入って楽器をやっていて良かったと思えることがいくつかありました。

2月のハーフタームに義両親宅に滞在した際、村の公民館で小中学生のための音楽セッションがありました。義両親は責任者夫婦と親しく、息子も彼らとは顔見知り。私と義父は公民館に息子を預け、3時間ほど買い物へ。帰りがけに息子を迎えに行くと、年下の男の子と一緒にドラムを叩いていました。

夕食の支度をしていた時、「今日は大勢の子に楽器を教えたよ。これだったら、日本でホームスティもできそう」と息子が漏らしたのです。(我が家には主人のドラムキットとギター、息子がグラニーにもらったウクレレなどがあり、息子はよくこれらで遊んでいます)。

3月中旬には、遅れに遅れていたグレード5の検定試験を受けました。ゆっくり目だったものの、大幅に遅れたのは1年半歯の矯正をしていたためと(高音が出せなかった)、昨年試験間際になって先生が突然変わったため。

2年以上も同じ課題曲を練習してたので受かるハズの試験でしたが、当日思わぬ落とし穴が…。息子を連れて試験官の家に行くと、伴奏してもらう先生がなかなか来ない!(試験は平日の授業中に、不便な住宅地で行われるのです)。そのうえ、息子は「サイレンサー(消音ミュート)忘れた!」とパニック気味。チューニングに5分もらえるのですが、別室から聴こえる音がビビってました~!

緘黙は治っても、息子の抑制的な気質は変わってません。待合室には試験を受けに来た子どもや親がいるため、演奏を聴かれたくない気持ちが大きく、動揺してたと思います。

で、そのまま試験に突入。待合室で最初の課題曲を聴いた私は、「ああ、これは落ちた」と確信したのでした。それまで何回聴いたか判らない曲でしたが、あんなに詰まったのは初めて。2曲めからは失敗しませんでしたが、これは駄目だと思って息子にも言いました。そうしたら、先日合格したという知らせが!(息子いわく、「この曲の課題部分はクリアしてたから」だそう。賭けに負けて50ポンド取られました…)

そして先週木曜日は、息子の音楽人生のハイライト(多分)でした。地区の小中高生の吹奏楽団と管弦楽団、合唱団など総計1500名を集結させ、クラシック音楽の殿堂といわれるロイヤルアルバートホール(RAH)でコンサートを行ったのです。私が住む地区では音楽教育に力を入れていて、これは5年に一度の大イベント。私たち夫婦はRAHのボックス席の前列に陣取り、双眼鏡で息子を探すこと約10分。その他大勢のひとりに心からのエールを送りました。辞めたい時期もあったけれど、続けていれば何かいいこともあるんですね。

IMG_20150423_182833 BBCプロムスも開催される由緒ある会場

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 先生方の努力のお陰で一生の良い想い出ができました

どうして緘黙のティーンが短期間で話し始めるのか?

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その14)

先回の投稿から、またまた1ヶ月空いてしまいました。いきなり仕事が集中し、その後2週間ほど帰国している間はネット難民になっていました(日本では空港を除いて無料Wifiを飛ばしているところはないんでしょうか…)。イギリスに戻ったらすっかり春の気候。なにも手入れしていなかった中庭が、すっかり緑につつまれていました。

帰国中に息子は知人宅で生まれて初めてのホームスティ(4泊5日)を体験。なんと、スティ先の3人の子ども(特に、11歳の長男くん)が息子に輪をかけたような恥ずかしがり屋で、親が仲介して会話を盛り上げてくれたとか。あまり日本語は上達しませんでしたが、薪風呂や掘りごたつのある実家に連れて行ってくれたり、パネルで注文するくるくる寿司や空手教室など、貴重な経験をいっぱいさせていただきました。

さて、番外編の続きです。年が上の子への支援について、マギーさんに直接お伺いしたところ、「支援を受けたティーン全員が2、3週間で口をきくようになった」との答え。これらのティーン達は緘黙が長期間続いていたと思われるのに、すごくないですか?

その理由を色々考えてみて、下記のようなことを思いつきました。

1) 公の場で話せるようになった訳ではない

まず注意すべきなのは、彼らは自宅または学校の一室で支援者に話した、または読本などで声をだしたのであって、クラスで周囲に聞こえるように話せるようになった訳ではないということ。緘黙が習慣になってしまったティーンがそんなに簡単に話せるはずはなく、やはり克服までにはかなりの時間と努力が必要と思われます。でも、一言の答えであれ、一行の文章であれ、新しい人に対して発話できたというのはすごいことですね。これをきっかけに、どのようにステップを進めていくか、子どもが支援者と共に納得しながらどう取り組んでいくかが重要なんだと思います。

2) 学校内でのセッションの不安度が低い?

自宅は安心できる場所ですが、緘黙が起こっている現場の学校はかなりの難関のはず。どうして学校での支援も同じような結果がでるのか?これはイギリスのセカンダリースクール(12~16歳)の構造によるところが大きいような気がします。イギリスでは小学校はどこも小規模ですが、セカンダリーでは急にマンモス校と化します。日本の大学のようなシステムになっていて、教科ごとに教室を移動。ベースとなる自分の教室はなく、決まった席も机もありません。同じクラスでもバラバラの教室で授業を受けることが多く、常に移動している状態。誰かが特別な支援を受けていても、それほど目立たないのではと思います。

また、イギリスには特別支援チーム専用のスタッフや学校に通ってくる専門家がいて、教師でない大人が支援セッションを担当します。緘黙の子は自意識が過剰なことが多く、同じ学校内でも人・場所・時間帯で不安や緊張度が違います。自分のことを知っている(=苦手意識が強い)クラス担任と自分の教室でセッションするのでなく、別の大人と他の生徒が入ってこない部屋・時間帯にセッションをすることで不安度が下がり、成果が出やすいと考えられます。

3) 第三者の大人とのつながりを持ちやすい環境

年齢が上の子には、本人が納得したうえで意識的に緘黙を克服していく方法が有効といわれています。第三者の大人と信頼関係を持つことで、自分を客観的に見ることができ、それが大きな自信に繋がるのでしょう。イギリスではこの第三者の大人はだいたい特別支援員(TA)か言語療法士。こういった教師でない大人が長期の支援を行うシステムがあることが、すごく強いと思います。

日本で特別支援教育を担うのは教師だと思いますが、例えばスクールカウンセラーを増やすなど、外の大人に定期的な支援をしてもらえるといいなと思います。養護教諭や用務員など、教員以外の大人にも配慮してもらえると嬉しいですね。

4) 家庭のサポートも大きく影響していそう

マギーさんが所属しているケント州のコミュニティヘルスNHSトラストは、公共の機関です。ケント州に住む友人によると、親や支援者が直接マギーさんに無料相談できる定例会が開かれているそう。(同じイギリスでも住んでいる場所によって違うんですが、ケント州とSMIRAのあるレスター州は緘黙支援が充実しています)。ということは、支援者と親、専門家のネットワークも充実しているんですね。この支援プログラムでは親とのセッションもあるので、親も子どもの状況を把握でき、それに見合ったサポートが可能になります。

思春期の子どもとどうコミュニケーションを取り、家庭を居心地のいい場所にできるかは世界的な課題です。例え子どもが自分のことを話さなくても、親に信頼されていて、いつでも助けてもらえると感じていれば、心理的に随分違うのではないでしょうか。

 

緘黙のティ―ンが2、3週間で話し始める?!

 

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その13)

前回から随分間があいてしまいましたが、マギー・ジョンソンさんの年齢が上の子の支援について再開します。この講演は昨年3月のSMIRAコンファレンスで行われたものなので、既に丸1年が経ってしまいました~。講演の翻訳はもう終わりに近いのですが、今回はその続きではなく番外編をお届けします。

SMIRAの講演では、支援方法やセッションの進め方を中心に話が進められました。そのため、ジェイ君がどの時点でマギーさんに話し始め、学校でどのように変化していったかという説明はありませんでした。

小学校中・高学年以上の緘黙の子ども達は、幼稚園や小学校の低学年から学校でずっと沈黙を守り続けていることが多いと思います。支援を受けた子ども達(多分、11歳以上の子が多いと思います)は、マギーさん、もしくはマギーさんの指導を受けた支援者と何回目のセッションで話し始めたのか?それがとても気になり、昨年秋にマギーさんにメールで質問しました。そして、下記のような回答をいただきました。

1) 長期間緘黙してきた子ども達は、大体何回目のセッションで話すようになるのか?

大体このくらいというような目安はない。子どもへの対処の仕方、信頼関係、子どもが持つ困難に対してどんな説明が行われたか、またセッションの頻度にもよる。でも、私が担当する学校支援者に限っていうと、全員のティーンが2、3週間で支援者に口をきくようになっている。

2) 各セッションの長さと場所は?

各セッションは、最後に両親と話す時間も含めて1時間半ほど。ジェイ君の場合は、クリニックではなく自宅で行った。

3) 「声をだして読む」課題はだいたい何回目のセッションから始めたらいいのか?

初回から読める子もいれば、もっと回数を経ないとできない子もいる。ジェイ君の場合は、2回目のセッションでできた。すぐに話し始める子には、「声を出して読む」課題は必要ない。子どもによってペースが異なるので、よく観察してどんな課題を与えるか判断する必要がある。

「全員のティーンが2、3週間で支援者に口をきくようになった」ときいて、正直ものすごく驚きました。学校で何年間も沈黙していただろう子どもが、たった2、3週間で話すようになる?! 本当なんでしょうか?しかも、ジェイ君の場合はマギーさんが彼の自宅でセッションしましたが、学校支援者は場面緘黙が起こっている現場の学校内で支援を行っているはず…。

どうしてそんなに早く話せるようになるのか、次はその理由を考えていきたいと思います。

春の兆し

1月の初めに日本から戻って以来、五里霧中のような感じで
何をするにも現実感が薄い毎日
霧の中にすっぽりと囲まれてしまったようで
出口を見つけようともがいていました。

久しぶりに帰った我が家では
キッチンのオーブンが壊れて使えず
今年で15年目になる車も故障中
そのうえ、予期せぬ爆弾のようなメールが届いて
ただでさえ沈んでいた気持ちが、さらに降下することに。

そんな時に話を聞いてくれた友達と
いつもマイペースの家族がいてくれて
何とか心のバランスを保つことができたような気がします。

TAの仕事には戻れませんでしたが
単発の仕事が舞い込んできて
急に忙しくなったのも良かったのかもしれません。

でも、いったん仕事が切れたら
やっぱりモヤモヤは晴れてなくて
またまた無力感に襲われる日々。

これではいけない、何とかしなくちゃと焦り
気分を上向きにするために
自分の好きなこと、今やりたいことを
とにかく実行してみようと思い立ちました。

偶然にもネットでアイスショー”Art on Ice”のチケットを譲りたいという人がいて
試しにコンタクトしてみたらトントン拍子に話が進み
ローザンヌへ一泊の旅にでかけることに。

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ロンドンからジュネーブまで飛行機で1時間半、ジュネーブからローザンヌまで電車で40分ほど。
知り合いが誰もいない土地にひとりで行くなんて、何年ぶりのことか…。

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まずホテルに荷物を置いて起伏の多い街をぶらぶら観光。まだ雪が残る中、陽光が暖かかったので外で遅いランチを摂りました。何の変哲もないサンドウィッチだったのに、ライ麦パンとマスタードがめちゃ美味しかったです。

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カフェから階段を上がるとすぐローザンヌ大聖堂。小高い丘の上にあり、街を見降ろせました。

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夜は無事にアイスショーを鑑賞。結構リンクに近い席で高橋大輔、ステファン・ランビエール、カロリーナ・コストナー、ジョアニー・ロシェット、ボロソジャル&トランコフ等をガン見してきました。チケットを譲ってくれた熱烈なフィギュアファンの女性と少しおしゃべりも。彼女はVIP席で公演後のパーティにも参加したそう。

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翌日は曇り空の下でレマン湖付近を散策

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オリンピック博物館を通りぬけてエリゼ写真美術館に行く途中、シュールな彫像がいっぱい。写真の彫像は何かルネ・マグリッド風じゃないですか?

ラクレットチーズをお土産に、夕食の支度に間に合うようにロンドンに帰りつき、ふたたび日常に戻りました。

ちょうどバレンタインの日から
息子の学校のハーフターム(学期中間の1週間休み)が始まったので、久しぶりに主人の実家へ。

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主人と息子からのチョコとカードに感激

どういう訳か義父と義母が順番に風邪(インフルエンザ?)で寝込んでしまい
1週間ずっと家事を担当するはめになりました。
帰国中に息子を預かってもらったので、少しはお返しができたかも。

天気はあまり良くなかったのですが
空気に春の兆しが感じられ、早春を告げる花々が咲き始めていました。

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こんな風に季節はまた巡り、新しい生命が芽吹いていくんですね。自然の力はすごいです。

私のひとりごとに最後までお付き合いくださった方、ありがとうございました。次からやっと、緘黙の話題に移れそうです。

2月ももう終わり

2月ももう終わりですね。

昨年の12月に一度エントリーしてから、もう2ヶ月以上が過ぎてしまいました。
その間に、ものすごくたくさんのものを失ってしまったような気がします。

小さな頃から大切にしていたもの
私を育んでくれたもの
ずっと心の支えにしていたもの

そういったもろもろを一度になくしてしまったような
心のなかにぽっかり穴が空いてしまったような
霧の中にひとり迷いこんでしまったような

そんな気持ちから抜けだせず、なかなか前に進めないでいました。

少しずつ心の整理をしていくために、忘れることができない今年の冬の心象景色をここに貼っておこうと思います。

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支援セッションの構成

あっという間にもう12月も半ば。家庭の事情で学校の仕事を早めに切り上げ、先週末から急遽帰国しています。状況が少し落ち着いてきたので、10月中旬で止まっていたマギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンへの支援』の続きをぼちぼち再開していきます。

内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。なお、年が上の子どもへの支援は、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』の第二版(2015年春/夏出版予定)に新項目として掲載される予定です。

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その12)

ジェイ君(15歳)のケース

<支援セッションの内容と構成>

セッションは毎回3つのカテゴリーに分けて行った(順番を決めたのはジェイ君自身)

1) キーボードとPC画面を使うセッション

ランキング表やスケール表を作ったり、概括的に考察しながら、自己分析をする。質問表のいくつかは、セッションの合間に電子メールを介して完成させた。

2) コミュニケーションスキルを上達させるための実用的なセッション

面接で良い印象を与えるための指導

3) 実際に課題をこなすセッション

(課題例)

・私(マギーさん)のパワーポイントのプレゼンをどう改善できるか、自分の考えを文書で説明する(非言語)

・PDFのソフトウェア設置と使用方法について説明する(準備したものを読み上げる)

・午後4時に電話を受け、指定しておいたPCに関する質問について答える(事前に警告)

・明日の午後に電話を受け、PCに関する質問に答える(事前の準備なし)

みく注: 子どもによって性格や緘黙の程度、家庭と学校の環境、得意とすること等が異なるため、それぞれの子どもに合わせて、その子のペースでセッションを進めていく必要があります。どんな風に接したら子どもが安心してくれるか–それは支援者との相性によるところも大きいかもしれませんね。とにかく、最後までじっくり付き合うという心構えでいきましょう。子どもが支援者に心を開いた時、すぐ声が出る子もいれば、ちょっとした工夫が必要な子もいるかと思います。どの時点で非言語の課題から「読む」・「電話で話す」に進むか、どの程度進むか、その見極めも重要なポイントとなってきそうです。

関連記事:

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その1)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その2)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その3)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その4)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その5)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その6)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その7)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その8)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その9)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その10)

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その11)

 

もう12月ですね

早いもので、今年もあと残すところあと1ヶ月となりました。ふと気づけば、11月のブログ更新はたったの1回だけ…。

心配事がどんどん深刻になってきて、立ち往生したまま何もする気になれない毎日--学校で子ども達と向き合って忙しい時間を過ごすのが、とっても救いになっています。笑ったり、泣いたりしながら日々色々なことを吸収し、少しずつ成長している子ども達の姿を見ていると、こちらまで元気をもらえます。

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だんだん寒くなってきて、通勤路の草むらに霜の降りる日もちらほら

11月29日は主人の誕生日だったので、久しぶりに家族で外出しました。行き先はテムズ南岸にあるデザインミュージアム。インテリアデザイナーのテレンス・コンラン卿が1989年に開設した小規模なモダンデサインの博物館です。何のことはない、無料チケットの期限が切れる直前だったという理由から、テムズ河沿いの散歩がてら行って来たのでした。

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途中、キングスクロス駅で地下鉄を下りて、ちょっとだけショッピング。ヴィクトリア王朝時代に建てられたネオゴシック様式の重厚なセントパンクラスの駅舎は、6年がかりの大改装工事の末2007年にリニューアルオープンしたもの。左側は、ユーロスターが発着する駅に直結するセントパンクラス・ルネッサンス・ホテル

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ロンドンブリッジ駅で下車し、曇り空の下タワーブリッジの袂を通ってデザインミュージアムへ

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ロンドン市庁舎ではクリスマスデコレーションを設置中。右はデザインミュージアムで観た”Women Fashion Power”。女王、女優、政治家など、それぞれの地位を築いた女性たちがどのようにファッションを武器にしてきたか、コルセットの時代から現在まで150年の変遷を辿った展示です

IMG_20141130_162630デザインミュージアムを出たのは4時半過ぎ。既に薄暗いテムズ河岸の散歩道に電灯が輝き始めて

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対岸の夜景。右側に見える建物はロンドン塔です

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ヘイズ・ギャレリアのクリスマスツリー

バイリンガルと緘黙(その2)

日本での滞在後半に大きな問題が持ち上がり、ロンドンに戻ってからも心配事が多くてなかなかブログを更新する気持になれませんでした。もし更新を待っていてくださっている方がいたら、どうもすみませんでした。

天気が悪いせいか、年齢的なものもあるのか、通常それほど酷くない時差ボケが長引いたのもこたえました…。夕方5時(日本時間の午前2時)頃になるとめちゃめちゃ眠くなり、夕食後は起きていられないくらいで。家事はそこそこにして早めに眠りにつくものの、朝2時頃目が覚めてしまい、それからほとんど寝付けず…。

ちょっとつらい毎日でしたが、こちらに戻った翌日に眠い目をこすりながら学校に行ったら、子ども達が「淋しかった~!」と抱きついてきてくれたのが本当に嬉しかったです。

さて、ここから本題に入ります。

私が今TAとして働いているレセプションクラスは、東欧から来た移民の子どもが多く、やはり英語よりも母国語の方が得意です(ちなみに、うちの学校では白人系イギリス人はマイナリティー)。

今学期(秋ターム)の前半、全員がカーペットに座って活動する「カーペットタイム」で、輪になって「今朝何を食べたか」を順番に言いあいました。そうしたら、東欧出身の女の子2人が何も言えずにうつむいてしまったんです。担任は何度か軽く促したんですが答えはなく、「じゃ、また次にね」と隣の子に移りました。

彼女たちは、個々やグループのアクティビティでは元気が良い方で、かなりお喋りなんです。だけど、皆の前で発言するのは、誰でも緊張するもの。まして、英語は彼女たちの母国語ではありません…。

次に担任がしたのは、相手の名前を呼んでからボールをその相手に転がすゲーム。この時は、全員がちゃんと声を出すことができました。「友達の名前のみ」+「ボールを転がす動作」で、声を出すハードルが少し下がったんじゃないかな。

毎日のカーペットタイムは、1回20分~30分くらいで1日に4回程度。この時間はクラス全員で国語や算数の勉強をしたり、歌を歌ったり、読み聞かせをしたり、ゲームをしたり(現在は、朝一番にアルファベットの発音を覚えるフォニックス(Phonics)を学んでいます)。この時間を利用して、皆の前できちんと話すという練習も少しずつ重ねています。家庭でのインフォーマルな会話から、学校へのフォーマルな会話への移行ですね。

例えば、「好きな果物は何?」という質問をすると、4~5歳の子どもは「バナナ」、「リンゴ」と一言で答えることがほとんど。担任は「私の好きな果物はーから始めてね」と毎回声をかけ、徐々にきちんとした文章で答えるよう練習させてるんです。

もちろん、最初のうちはひとことでも全然オーケー。文章で言えたら褒めるのは当然ですが、普段声の小さい子が頑張って大きい声を出したりした時には、「頑張ったね」と随時コメントが。担任がひとりひとりの子どもの能力をしっかり把握していて、それに合わせて声掛けをしているのに感心させられます。

秋タームも後半に入った現在では、クラス全員がちゃんと発言できてます。毎日繰り返して「場を経験する」ことで、少しずつ自信がついたみたい。バイリンガルの子も、そうじゃない子も、毎日新しいことに挑戦しながら、場数を踏んで経験値をあげています。失敗することもありますが、「失敗しても大丈夫」と思える雰囲気なんですね。

カーペットタイムは特にインファント(小学校の幼児部・5~7歳)で使われるんですが、カーペットにペタンと座ることで、気安い雰囲気が生まれるように思います。雑談も多くなるし、日本の小学校の雰囲気と比べると、とっても気楽な感じ。これは私だけの感想ではなくて、息子の学校にいた日本人駐在員の子ども達がよく言っていたことです。ちなみに、授業の速度もなんかゆるい感じ(笑い)なんですが、まあ一長一短ですね。

ところで、クラス担任は教師歴3年目で、イギリス人とモロッコ人のハーフだそう。「今までに場面緘黙の子はいた?」と訊いたところ、「一人いたけど、自然に話せるようになったわ」とのこと。彼女の子ども達への接し方、授業の仕方を見ていると、「うん、うん、そうだろうな」と頷けます。

関連記事:

イギリスの学校ではASD児が場面緘黙になりにくい?(その5)

 

里山の秋

先週の火曜日に帰国して、あっという間に1週間が過ぎました。山々に囲まれた岐阜県の故郷では、樹木が徐々に色づいて、紅葉シーズンも中盤という感じかな。昨夜はなんだか冷え込むと思っていたら、今朝は初霜が降りてました~。

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青空の下で紅葉していく樹々。今年は柿が大豊作だとか

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紅葉した葉っぱが色鮮やか。緑を背景に着物の裾模様みたいです

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金色に揺れる川岸のすすき

一昨日は名古屋から友達が訪ねてきてくれたので、知り合いのご夫婦が経営する森の中のカフェ、『アリスの不思議のお店』まで足をのばしました。車を飛ばして街をひとつ越え、村里を越え、さらにどんどん山奥へ。ときどき道脇に登場する『不思議の国のアリス』の白兎の看板が道案内です。

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山奥に突如として現れる黄色い木造のカフェは画家のアトリエとして建てられたもの

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     天井が高く、大きなガラス窓や高窓から森が見えます。ゆったりしたテーブル席や薪ストーブの暖かさ、オーナー夫妻のもてなしに、時間を忘れてお喋りに花が咲きました

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森のカレーセット(1680円)は、りんごサラダ、森のカレー、手作りケーキ、飲みもの付

一番人気の森のカレーは、スパイスから調合した手作りスープカレーです。ご飯の上に大きな海老、カボチャ、ナス、パプリカの素揚げと野菜もたっぷり。ケーキは蓬のシフォンケーキ、ベイクドチーズケーキ、チョコレートケーキがあって、どれも甘みをおさえた上品な味。オーナー夫妻はもともと同名の輸入雑貨店を経営していたんですが、料理とガーデニングの腕前もすごいんです。