息子の緘黙・学童期 6~7歳(その16)祖父母との関係

あっという間にもう4月。日本では桜の開花が例年よりずいぶん早かったようですね。3月末に2度目の来日を果たした元生徒さんから、散りゆく東京の桜の画像が送られてきました。イギリスでは雨模様の寒い気候が続き、今日も花曇りです。  

  イギリス中部にある義両親宅の庭と室内から。

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息子がまだ6歳だった16年前(もうそんなに経った?!)のこの季節。私たち家族は学校の春休みを利用して、久々に日本に帰国していました。

当時の記録によると、セントレア空港から岐阜県の田舎にある実家にたどり着いた日の夜、息子が話したのは英語のみ。でも、翌日からすぐじぃじとばぁばに懐き、日本語で話すように。毎日TVを観ていたせいか、ものすごい勢いで語彙が増えてビックリ。

3月31日には父の誕生日をみんなで祝ったり、くるくる寿司に行ったり。畑仕事をする父のそばにくっついて昆虫を捕ったり、小川をせき止めて遊んだりもしました。息子のことを知っている人は皆無だし、実家は息子にとってとても安心できる環境だったんだと思います。

しばらく実家に滞在したあと息子と主人は2日ほど私の友人宅に泊まり、そのあと兄一家を訪ねて神奈川へ。憧れていた新幹線に乗って大興奮し、日本のハンバーグの大ファンに。ただ、初めて会った兄一家には、最初はほとんど口がきけませんでした。

大丈夫かな?

でも、やはり親族だからなのか、慣れるにつれて話せるように。特に、年が離れた2人の従姉にはすぐ懐き、色々と世話を焼いてもらっていました(昔から若い女性に甘えるのは得意)。マクドやコンビニでお弁当を買って、公園で満開の桜を見ながらピクニックを満喫。兄夫婦に息子が場面緘黙であることは伝えておらず、普通に「大人しい子」という印象を受けたよう。

イギリスに戻ってきたあと、初めて日本の祖父母と電話で話すことができました。父が「初めてだな」と感激していたことが今でも忘れられません。

そして、5月のハーフターム休み(学期の真ん中にある1週間の休み)には主人の実家へ。いつもの様にグラニー(祖母)とはすぐに打ち解けておしゃべりする一方、厳格そうなグランダディ(祖父)には近づこうとしません。

それでも時間の経過とともに慣れてきて、最終的にはそれまでになく自然な感じで話せるように。もたれかかって本を読んでもらう姿を見て、感激もひとしお。やっぱりスモールステップもだけど、旅行など社会的な体験の経験値を上げていくことも緘黙の改善に繋がるのではと思います。

義両親には息子の緘黙のことは初めから伝えてありました。でも、義母は「最近では、なんでも病気にして症状名をつけたがる傾向がある」と否定的。配慮などせずに普通に接していればいい、という考え方なのです(今でもそれは変わっていないよう)。

この滞在では、小さな進歩がいろいろ見られました。

みんながいる居間で宿題の読本をやらせようとしたところ、息子はしりごみ。が、側で見ていた義母は「〇〇が本を読むところを聞いたことがないわね。読めないの?」と、挑戦させようとするのです(^^; もちろん、息子は後で私に「絶対読むのイヤ!」とゴネました。

でも、翌日「今日は知らん顔して他のことをしていてください」と、あらかじめ義両親にお願い。部屋の片隅に息子を連れて行き、ちょっとプッシュしてみたら、小さな声で読むことができました。また、遊びに来た叔父と従弟に応答し、彼らの前で初めてコルネットを吹くこともできたのです(これは人数的に味方が多かったためと、自慢したかったため?)

そんな息子を見て、義母は「ほら、成長したから治ったわよ」と。

「それは違います。この子は絶え間なく努力を続けているんです」

そう説明したものの、どうもきちんとは理解されていないようでした…。でも、気にしない、気にしない。

ちなみに、ヴィレッジフェア(村のお祭り)では誰かと積極的に話すことはありませんでしたが、周りに聞こえていても私とはずっと日本語で会話。日本語なら言っていることが解らないので、息子にとっては隠れ蓑だったんですね。

「緘黙児は人に話しているところを見られるのが怖い」といわれますが、息子の場合は「言われていることを理解されるのが嫌」?! なかなか複雑ですね(;^_^A

実は先月末に義父の葬儀をすませ、息子の祖父母の中で残っているのはグラニーのみとなってしまいました…。淋しいばかりですが、できる時にできることを。できる時に、できるだけその時間を楽しむしかないですね。

音楽家の坂本龍一氏が他界したのは、義父のお葬式の日でした。あいにくの雨で、「空が泣いている」と言っていたのですが…。ご冥福をお祈りいたします。

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