場面緘黙とASD(その2)

7月も今日で終わりですね。ロンドンは今日、今年の最高気温36度を記録しました。久しぶりの猛暑だったためか、暑さ負け…なんだか体がだるくて頭痛がします。

でも、晩御飯にそうめんとお魚、サラダを食べたら、ちょっと回復。日本には季節に合わせた食文化があって、やっぱりいいなと思います。次は鰻のかば焼きを食べたいけれど、高くて手が出ないかな…。

真夏の入道雲?

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私が日本語を教えている特別支援学校では、ロックダウン中に多数のオンラインコースを受講させてくれました(というか、義務だったのですが…)。その大部分は、生徒やスタッフの安全を守るためのセーフガード関連。

それとは別に、ASD(Autistic Spectrum Disorder 自閉症スペクトラム障害)の女子生徒が増えてきたことを踏まえ、『少女と女性の自閉症』も受講できることに。これはイギリスの全国的なチャリティ団体、National Autistic Societyが作成した、最新の研究・情報に基づく研修コースです。

SMiRAのFBページでは、ここ5年ほどの間にASD併存やその疑いのある緘黙児が増えていて、緘黙とASDの関係が気になってました。

かつてASDは男児・男性に多いとされ、男女比は4:1とも5:1とも言われてきました。が、最近では女児・女性が増え、比率は3:1くらいとされているよう。これは実際にASDの女児・女性が増えた訳ではなく、相談件数が増えたり、診断漏れが少なくなったから。

自閉症(Autism)はレオ・カナーによって1940年代に発見されましたが、現在のように先天性の脳障害と判明したのは1960年代後半のこと。それから50年位しか経っていないので、明確になっていない部分もまだまだ多いんでしょうね。そういう意味では、場面緘黙もまだ研究が進んでいないかも。

オンライン研修でまず気づいたのは「masking 覆い隠す」という単語の多さ。(なお、本人が意識してmaskingしているケースもあれば、無意識のうちにmaskingが習慣になっているケースもあるとのこと)

典型的なASD検査は男児・男性を対象に作成されたものなので、ASDの特性を覆い隠すことに長けた女児や女性は、検査の網を潜り抜けてしまうらしいのです。また、社会に根強く残るジェンダーステレオタイプの概念――例えば、女児・女性は大人しくても当たり前――が、相談や診断への道を妨げているとも。

イギリスでは、80年代にアスペルガー症候群の研究を発表したローナ・ウィング女史の「3つの特徴」が、現在もASDの基本定義として使われています。その定義とは、

  • 対人相互作用における質的な障害 (非言語性行動や相互関係の困難さなど)
  • 意思伝達の質的な障害 (話し言葉の遅れ、偏り、言葉遣いの奇妙さなど)
  • 行動、興味及び活動の限定された反復的 (強いこだわり、固執、常同行動など)

これらの特性を兼ね備えていても、女児や女性はmaskingによってそれが目立たないことが多いとか。それでもよく観察すれば、目立たない特性が見えてくるのです(多分、ここでは高機能で言語の発達に遅れのない群が対象だと思います)

ASDの女児・女性の特徴

  • 分析的な思考
  • 社会的な対人スキルの高さ(男児・男性に比べ)

ASDの女児は、分析的な思考をベースにして世の中を理解しようする傾向が強いといいます。周囲を観察し、TVや映像等からも、人が言ったり、したりしていることを分析してコピーするのだそう。他人との関わり方もそうやってコピーするため、一見すると、ちゃんと社会性があり、人との相互関係も問題ないように見えます。

でも、実際のところはものすごく神経を使いながら、自分の役割を演じているのです。そのため、帰宅してから学校での我慢が爆発してしまうことも多いそう。また、自分が作ったシナリオ通りに物事が進まないと、非常な不安に襲われ、対処できなくなるとも。

視線は合うし、こちらの問いかけにはちゃんと答えるし、友達とも上手くやれているように見える――園や小学校の教諭たちは、そういう子どもに問題があるとは思わないですよね。それで、発見が遅れたり、見過ごされたりするのだそう。

ちょっと長くなりそうなので、続きは次に書きますね。

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2019年SMiRAコンファレンス(その3)ASDとは何か?

2019年SMiRAコンファレンス(その2)SMとASD

2018年SMiRAコンファレンス(その5)

緘黙のティーンの告白

7月もすでに後半に入りましたね。先週金曜日から学校が夏休みに入り、大学のある町に残っていた息子もやっと帰省ました。家族が一人増えただけで、家の中はがぜん賑やかです。

庭の敷石の汚れを息子にジェットウオッシュしてもらうため、先週から敷石と敷石の間に敷いた砂を取り除き始めたんですが、これがけっこう大変…。

庭仕事といえば、今春の厳格なロックダウンの間ガーデニングに熱中した人は多かったよう。先日、お向かいさんが「中庭見に来て!」と熱心に誘ってくれたので訪ねたところ、そこはもうジャングル(笑)!! ユリもひまわりもバラもコスモスもデルフォニウムも、トマトも芽キャベツもイチゴもトウモロコシも、花と野菜が混じりあって元気よく共生していました!

細い通路をのぞき、庭は色とりどりの花と植物だらけ。多くは種から育てたそうですが、4月から6月まで好天が続いたので驚くほどよく成長したとか。

今まであまりガーデニングに興味のなかった友人も、庭仕事に精を出すように。「自分がこんなにガーデニング好きになるなんて、想像だにしてなかったわ」と笑っていました。

世界的なコロナ禍で悪いことばかりのような毎日ですが、こういった小さい愉しみを大切にしたいものですね。

好天に恵まれ、我が家でも鉢植えのブルーベリーと苺が豊作でした

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さて、マギーさんの講演の続きです。講演の中で、3歳の入園時に場面緘黙を発症し、ティーンになるまで引きずってしまった女の子の話が出てきました。本人がマギーさんに語った内容から、周囲の気づきがいかに大切かを思い知らされた気がします。

彼女は3歳で入園するまで、社交範囲は近い親戚や近所付き合いくらいだったそう。ある日、広い講堂で大勢の子ども達が一緒に活動するような幼稚園へ。近くに母親がいたため安心して遊び始めたところ、ふと気づいたら母親がいない!(教諭は子どもが早く園に馴染めるよう、母親をこっそり帰宅させた旨)。

パニックに陥った彼女は、身体が固まって何も言えない状態に。半日間(イギリスの公立幼稚園は1日2時間半ほど)ほとんど動けずに過ごし、母親が迎えに来た時にやっと言葉を発することができたとか。

(その日園のテーブルの上に置いてあったパズルの絵柄を今でも覚えているそう…)

幼稚園側は、彼女がパニック状態になっているとは全く気づかず…。誘うとトイレには行き、泣かずに大人しく座っていたため、初日はこんなものだろうと解釈。迎えに来た母親は、「いい子にしていましたよ」という園の報告を真に受けて安心したそう。

いつまで経っても園に馴染めず、口もきけず――さすがにこれは変だと気付いた頃には既に緘黙症状が固定化。彼女はセカンダリースクール(12~15歳)まで緘黙症状を引きずることに…。

マギーさんの治療を受けるようになって、初めて自分の体験を告白できたのです。

入園前にも見知らぬ人の前で固まることがあったのかどうか、彼女が抑制的な気質だったのかどうかは定かではありません。でも、緘黙児は自分から人に働きかけることが苦手です。また、目立つことを嫌って自分の感情を隠そうとするため、困っていても外からは判りにくいのです。

ただ、幼稚園の教諭や学校の教師に場面緘黙の知識があれば、彼女は10年近く(以上?)沈黙の学校生活を送らずに済んだのでは?

マギーさんによれば、通常は緘黙のせいで話し言葉・言語・コミュニケーションの発達に遅れがでることはないということ。これは、子どもが学校で話さなくても、家庭などで普通に話すことができるため。

ただ、もともとこの分野に苦手や問題があって緘黙になっている場合もあるので、注意が必要です。また、緘黙の期間が長引くと、パニック障害など他の二次的な不安障害を引き起こすケースも。

いずれにしても、早期に発見して緘黙が固定化する前に介入できれば、早い回復が望めます。それには、やはり教育の場に場面緘黙の正しい知識を広めることが重要だなと思います。

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10代で発症する場面緘黙

代弁しないで

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すでに7月も5日となり、2020年も折り返し地点を過ぎてしまいました。これから夏休みがやってきますが、そのあと一体どうなってしまうのか?新型コロナ感染の第二波が来るのか、それとも抑制できるのか、全く予測がつきません。

イギリスでは先週からやっと毎日の感染者が1000人を切るようになり、死者数も減ってきました。が、土曜日からパブやレストラン、美容室、ホテル業界などが再オープンし、保つべき社会的距離も2mから1m+αに収縮。でも、みなさん1mの距離も保てていないような…。

     再開した土曜日のウォーキング中に見かけた紫陽花屋敷(?)。イギリスは土壌がアルカリ性のためかピンクの紫陽花が多いのですが、ここは青からピンクのグラデーションがお見事!

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子どもと一緒に買い物に行くと、店員さんが子どもに話しかけてくることが多いかと思います。子どものものを選んでいる時は、特に。幼稚園くらいの子どもは可愛いので、つい声をかけたくなる気持ちも解ります。

「何年生?」「どこの幼稚園に行ってるの?」「どんな色が好き?」などと問いかけられて、固まってしまう我が子…。

そんな光景を見て、緘黙児の母はすかさず代わりに返事をしてしまいがち。聞かれてもいないのに、「うちの子は恥ずかしがり屋で」と言い訳してしまうことも多くないですか?

我が子が話せなくて困っているのを見ると、いてもたってもいられなくなりますよね…。

子どもに気まずい思いや、辛い思いをさせたくない。また、自分も恥ずかしい思いをしたくないという気持ちがあるかもしれません。

でも、子どもの代わりに答える習慣を作ってしまうと、子どももそれに慣れてしまい、親が答えるのが当たり前になってしまいます。

それが緘黙の維持要因になっているとしたら?

子どもが第三者とコミュニケーションを取る機会を奪っているとしたら?

マギーさんは、親が子どもの代弁をせず、子ども自身に答えるチャンスを与えるよう提案しています。

まず5秒待って答えられない時は、自分が子どもと向き合い、より簡単な質問になおして同じことを聞いてみましょう。

「ピンクが好きよね?」

声が出せなくてもいいんです。子どもがうなずいたらYesのサイン、首を横に振ったらNoのサイン。自分で意思表示をすることが大切なのです。

親の質問に対して5秒待っても反応がなかったら、店員さんには「ちょっと待って」と声をかけ、子どもをわきに連れていって、もう一度質問してみましょう。

それでも反応がなければ、話題を変えましょう。店員さんは子どもと話したい訳ではないので、別に気にしません。「じゃあ、違う色も見せてください」「〇〇はありますか?」など本題に戻ればいいのです。

母親の心配そうな様子や戸惑う様子は、子どもに不安を与えます。感じやすい子が多いので、その場の空気を肌で感じてしまいます。堂々として微笑んで。

子どもに答えるチャンスを与え、サポートしてあげてください。

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