抑制的気質とHSP(その1)

『緘黙児とHSP』のコメント欄で、恵子さんとやり取りをさせていただいたんですが、その中で私はHSPの概念をすっかり誤認していたことに気づきました。

私の頭の中で「ケイガンの抑制的な気質の子 = アーロンのHSC」という図ができあがっていたため、「ASD児の中にもHSPがいると思うと書いてしまったのですが、実際はASD児の中にも抑制的な気質の子がいると思う」でした。

でも、アーロン博士は『ひといちばい敏感な子 (Highly Sensitive Child)』の中で、HSCはASD児とは全く(そしてADHD児とも)異なると明言しています。その理由は、ASD児には共感性がないから。

ある方から、アーロン博士のHSPの概念を完結にまとめているブログがある、と教わりました。子どもの疲労と発達・睡眠について研究されているYukiさんの、『いつも空が見えるから』というブログです。子どもの発達に関する研究・書物を広範囲に渡って紹介・解説されていて、ひとつひとつの疾患や概念などに対し、概要&要点を理路整然と解りやすくまとめておられ、大変参考になります。

https://susumu-akashi.com/2016/10/hsp/#i

リンクフリーと書いてあるので、『ひといちばい敏感な子 (Highly Sensitive Child)』についてのページから、目次の一部と「HSPの4つの特徴」についてご紹介させていただきます(Yukiさん、お借りします)。(「日本語版に寄せて、2015年2月に書かれた最新の学術的情報を含む明快な解説が追加されており、その部分を特に参照して、HSPとは何かをまとめる助けにしました」とあります。私は日本語版を持っていないのでこれは知らなくて、本当に勉強になりました)。

HSPの4つの特徴> (目次から)

●上記の4つの特徴を持っていなければHSPではない、普通より感覚が敏感=HSPではない

●HSPの感受性の強さと、ASDの感覚過敏とは別のもの

「中には感覚器が特に発達している人もいますが、大半は、感覚器の反応が大きいのではなく、思考や感情のレベルが高いためにささいなことに気づくのです。(『ひといちばい敏感な子 (Highly Sensitive Child)』p432)

HSPの敏感さは、単に感覚刺激が強い過敏さではなく、深く処理する感受性の強さでした。そしてその中には、場の空気を読み取る力も含まれていました。それは共感力の強さです。

[HSPの感覚過敏は] 学術文献では「敏感性感覚処理 (sensory processing sensitivity)」と呼ばれています。第1章でも述べましたが、「感覚処理障害(sensory processing dosorder)」や「感覚統合障害(sensory integration disorder)」と混同しないでください。(p424)

*グリーンの部分は、全て『いつも空が見えるから』から引用させていただきました。

ASDの大きな特性のひとつは、場の空気を読むことや社会的コミュニケーションの困難さ。ASD児に感覚過敏が多いことは周知の通りですが、SM児やHSCにも感覚過敏を持つ子は多いようです。

なお、感覚過敏(反対に、感覚が鈍いと感覚鈍麻)は、発達障害がある子も、そうでない子も持ちうる特性です。

アーロン博士の考えでは、ASD児は感覚器の反応が過敏なのに対して、HSPの大半は感覚器自体が敏感なのではなく、「感覚に対する処理が深い=感受性が高い」ために、ささいな刺激を察知する――とのこと。

感覚過敏については、下記のサイトがとても参考になりました。

https://h-navi.jp/column/article/35025696

素朴な疑問なんですが――離乳食のころから好き嫌いが激しかったり、洋服のタグを嫌がったり、混雑する場所で大泣きしたり—まだ赤ちゃんのころから、既に「感覚に対する処理が深い」んでしょうか?脳はまだまだ発達段階ですよね?

私は息子をHSCだと思っています(巻頭のHSC診断で高スコア、4つの特徴も備えている…と思う)。感覚過敏に関しては小学校高学年くらいまでに随分改善しましたが、息子の場合は、感覚器官自体が過敏なように思います。

判りやすいところでは、皮膚の過敏さや聴覚の鋭さなど。

息子は生まれたときから乾燥+敏感肌で、アトピーやアレルギーに苦しみました。2歳の頃、同じ年の女の子と庭で一緒に水遊びさせた時のこと――4月の天気のいい日で、その子のママは「丈夫になるから」と上半身裸にさせたんです。で、うちも真似してみたら、みごと息子の背中はアセモだらけに!

そんな調子なので、洋服は常にコットン100%、襟のタグは小2くらいまで切ってました。それから、ものすごいネコ舌で、ちょっと熱いだけでとよく泣いてた記憶が…。

聴覚については、庭に置いてある猫よけ超音波の音が、16歳になった今でも聞こえます。20kHz以上の音波(超音波)は人間の耳には聞こえないと言われ、子どもの頃はある程度聞こえても、大人になると全く聞こえなくなるらしいんですが…。ちなみに、私と主人には全く聞こえません。

これって、やっぱり感覚器官そのものの敏感さではないでしょうか? ということは、息子は感覚統合障害なんでしょうか?(現在は、鈍感になったのか対処法を見つけたのか、感覚過敏で困ってることは殆どないようですが)

また、ASD児の感覚過敏とHSCの感覚過敏は本当に別のものなんでしょうか?明確に分けられるものなのか、それとも色々な状態が連続体のように複雑に重なり合っているのか?

私は高機能ASDのこども専門の特別支援校で日本語を教えています。小学部では感覚過敏のある子が目立ちますが、やはり成長するにつれて目立たなくなる傾向が強いよう。以前、小学部で研修していた時は、子どもたちの様々な感覚過敏・感覚鈍麻を間近に見ました。思ったのは、息子に比べると振り幅がすごく大きいなと…。

例えば、給食が全くといっていいほど食べられず、毎日スタッフと長時間格闘(それでも10分の1も食べられない)とか、防音対策でイヤーマフを活用とか…。最初は苦手だったけど、徐々に食べられるようになる、徐々に騒音に慣れる――というような感じではなかったです。

「ダメなものはダメ」と絶対受け付けず、それが高じてパニックになったり--とにかく反応が半端じゃなくて、耐忍度が低いというんでしょうか。なんとなく、同じように感覚器が過敏でも、それに対する感じ方・反応が大きいような???

すごく長くなってしまったので、次回に続きます。

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