この8月に出版予定『場面緘黙リソースマニュアル』改訂版。言語療法士のマギーさんとアリソンさんが実体験や指導結果から導き出した緘黙支援・対処方法が、こと細かに解説されているようです。SMiRAの講演では、その一例として緘黙児の代弁をすることについて簡単に触れました。
友だちや親に代弁者として代わりに応えてもらうのが、緘黙児にとっていいことなのか、悪いことなのか?慣れすぎてしまうと、自分で話そうという気持ちや機会が失われてしまうのでは?そういう疑問を持つ保護者も多いのではないでしょうか。
<同年代の子どもの場合>
家の外でも、仲良しの友達や兄弟姉妹とだけなら囁ける・話せるという緘黙児も多いかと思います。マギーさんは緘黙児が「友達を通じて話す」ことを容認し、”架け橋”として使うことを奨励しています。
- 緘黙児への質問は友達を介して行う 例:「○○ちゃんに、何が飲みたいかきいて」「○○ちゃんは、何をして遊びたいかきいて」
- 最初は緘黙児が安心して話せるようその場から立ち去る、時間をかけて徐々に子どもたちの近くへ移動し、緘黙児が目の前で友だちとナイショ話しても平気になるようにする
- そのうちに第三者の存在に慣れ、緘黙児の声が徐々に大きくなってくる
- 第三者のいる前で、友だちに向かって直接聞こえる声で返事をするようになる
- 子どもが第三者に直接応えるようになる
- 友だちを介さずに、1対1で会話を始める まずは、Yes/Noで答えられる質問から始め、徐々に長い答えを引き出していく
イギリスの小学校では席をグループで固めることが多く、支援の一貫として緘黙児の隣に話せる友達を座らせたり、同じグループにします。日本と比べると授業中もガヤガヤした雰囲気で、私語も多い(笑)。とてもインフォーマルな雰囲気なので、友達を”架け橋”役に使いやすいと思います。
日本の小学校では難しいかもしれませんが、幼稚園や保育園でならできそうですね。園だけでなく、例えば祖父母が兄弟姉妹を”架け橋”役に使えば、緘黙の孫とのコミュニケーションを改善していけるんじゃないかな?
注:上記はまだ緘黙が定着していない、園児や小学校の低学年向けと思われます。
<保護者の場合>
医者、買い物、親戚との会話など、母親が子どもの代わりに返事をしてしまうことって多いんじゃないでしょうか?特に、緘黙期間が長いと、それが習慣になってしまっているかもしれませんね。
マギーさんは、人から何か訊かれた時、親は返事ができない子どもを”救済”するのではなく、子どもが会話に加わる際に”不安を減らす”役割を担うよう提案しています。子どもへの重要なメッセージは、「誰かに何か訊かれたら、できたら答えればいい。でも、もし答えられなくても大したことじゃない。誰も気にしない」というもの。
- 人に何か訊かれたら、子どもの返事をまず5秒待つ
- 質問を繰り返していう、もしくは二者選択の質問にして子どもに訊く
- 5秒待つ
- 親に囁いたり、最初は非言語でも答えられればOK。徐々に言葉がでるようにしていく。子どもが答えない場合は、「ちょっと考える時間をください」「また来ます」とその場を立ち去る。もしくは、話題を変える
こうすることで、緘黙児が親に代弁してもらうのでなく、自分で答えることに慣れるのが大切ということ。親が代弁してくれることに慣れてしまうと、家庭外で話す機会がどんどん少なくなってしまうので、その通りだなと思いました。
ケント州のNHS(国民保険サービス)で言語療法士として働いているマギーさんは、保護者やTA(教育補助員)を集めて定期的に懇談会を行っていてるそう。ディスカッションや個人的なアドバイスも活発に行われているということで、大変羨ましい環境です。マニュアルの対処・支援法は、こうした場でのフィードバックや情報にも裏付けされているとか。
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