昨年の夏、イギリスの国営放送BBCで場面緘黙の特集があり、サブリーナ・ブランウッドさんという35歳の緘黙の女性が登場しました。(詳しくは『BBCが大人の場面緘黙を紹介』を参照してください)。そのサブリーナさんが、今回のSMiRAコンファレンスでプレゼンを行ったのです。
偶然、私の後ろの席に妹(?)さんと一緒に座っていたので、図々しくも声をかけてしまいました。そうしたら、無言でしたが、はにかんだ笑顔で応じてくれたんです。TVで観た時の殻に閉じこもったような印象はなく、ずっと穏やかな表情になっていました。
サブリーナさんのプレゼンは、小さい頃から現在までの写真&映像アルバムに、字幕で短い説明をつけたもの。本人は前に出ずに、最後列の自分の席に座ったままでした。
一番手前のポニーテールの女性がサブリーナさん。
写真の中のサブリーナさんは、ずっと微笑みを絶やしません。途中、「あれっ?」と思ったら、サブリーナさんが車を運転しているんです!そこに、「運転免許を取りました」と字幕が。次に、「NHS(国民保健サービス)でボランティアをしています」と…。
プレゼンを観ているうちに、BBCが取材する前からSMiRAとマギー・ジョンソンさんが介入していたことが判明。それから、ひとり暮らしを始め、運転免許を取得して、今ではボランティアの仕事もしてるんです。実家に閉じこもりがちだったサブリーナさんが、外に出てどんどん交際範囲を広げている!
最後の方では、特にお世話になったというマギー・ジョンソンさんやSMiRAの役員に対するお礼の言葉が。サブリーナさんの隣に座っていたマギーさんが、感極まってウルウルしていたのが、とても印象的でした。
サブリーナさんは今でも、初対面の人に対して普通にしゃべれる状態にはなっていません。でも、実家から出て自分ひとりで行動できるようになったんです。これって、すごくないですか?
長期間場面緘黙が続くと、社交・社会不安が高まって、外に出て働いたり、活動することを怖れる傾向が強くなります。その結果、就職できても長続きしなかったり、自宅に引きこもりがちになる人も多いんじゃないでしょうか?
このプレゼンは、緘黙の成人でも適切なサポートと周囲の理解が得られれば、ちゃんと自立できるという証明だと思いました。長い間自分を閉じ込めていた心の枷から抜けだして、自由になることができるんだと。
勇気を出してSMiRAコンファレンスに来てくださったサブリーナさんに、会場から惜しみない拍手が送られました。
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