場面緘黙が増加の傾向?

先月の場面緘黙啓発月間では、場面緘黙が多くの新聞・ラジオに取り上げられました。その中で、特に気になったのが10月26日のDaily Telegraph紙で紹介されたこの記事です。リンク: http://www.telegraph.co.uk/wellbeing/health-advice/selective-mutism-health-parent-child-advice

Isla母親のシャーロッテ・マダムスさんと場面緘黙の娘アイラちゃん 写真: ©Andrew Crowley

『 場面緘黙の子どもを持つということ(What it means to have a child with selective mutism)記者:インディア・スタージス』と題された記事に登場するのは、6歳の場面緘黙の少女、アイラちゃんと母親のシャーロッテさん。場面緘黙になったのは3歳のころです。

アイラちゃんの緘黙の原因は、生まれもった抑制的な気質に加え、気管支系が弱く幼少の頃から病院通いをしたことが関与しているのでは、とシャーロッテさんは考えています。というのは、アイラちゃんが最初に話さなくなったのが医者だったとか…。

喘息と乳製品などのアレルギーを持つアイラちゃんは、学校で吸入器やアレルギー薬が必要になっても先生に言えません。以前、喘息の発作を起こした時は、お迎えの時間まで2時間も咳続けたとか。それ以来、「吸入器をください」「喉が乾いた」「トイレに行きたい」などのキューカードを使って意思表示をしています。

シャーロッテさんはインターネット検索で「場面緘黙」を探しあて、言語療法士と小児心理士に相談。学校で唯一口をきけるのは11歳の姉だけでしたが、今ではTA(教育補助員)とディナーレディ(給食のお世話係)に囁やけるようになったそう。

↓ この記事で特に興味深かったのは、下記の記述です。

”What’s more, Alison Wintgens says instances of selective mutism in this country are on the rise.

There is no doubt there are more stresses and pressures around,” she says. “Schooling has become more verbal because of changes to the curriculum. You can’t be a silent achiever any more; you have to work in groups, give speeches and present experiments. While a good thing (selective mutism aside) it puts pressure on those who struggle with social interaction.”

「『場面緘黙リソースマニュアル』の共著者、アリソン・ウィンジェンズさんは、イギリスにおける場面緘黙の発症率は増加の傾向にあると語っています。

その原因として、子どもへのストレスやプレッシャーが増えたこと、カリキュラムの変更により、学校教育で口語に重点がおかれるようになったことをあげています。今や、大人しいけれど勉強ができるだけでは不十分—-グループワークでの貢献、スピーチや実験の結果発表なども要求されます。(緘黙の問題を別にすれば)これは良いことではありますが、社会的な交流が苦手な子どもにはプレッシャーになります」

この傾向は、多分場面緘黙だけではなく、自閉症スペクトラムや学習障害、ADHD、協調運動障害、不安障害などを含めた全般的な発達に関わる障害&発達凸凹でも同じではないか—-と私は思っています。その理由は、今までTAをした4つの小学校の各クラスにおいて、いずれも30人程度のクラスに、5人くらいグレイゾーンの子どもがいたから。

「あれっ、この子は別に問題がないようにみえるのに、どうして授業についていけないのかな?」という子どもが必ず4~6人いるんです。多くないですか?例えば、活発で話し言葉には全く問題がないのに、何度教えても自分の名前を判別できない5歳児とか、簡単な足し算ができない5年生とか…。地方でずっとTAをしている友人に訊いてみたところ、「そうなのよ。すごく増えてると思う」という答えが返ってきました。

これはイギリスだけではなく、多分世界的な傾向なんじゃないでしょうか?杉山登志郎著の『発達障害のいま(2011年講談社現代新書)』では、第一章「発達障害はなぜ増えているのか」の中で、その理由が詳しく記述されています(この本に関連する記事は下記のリンクをクリックしてください)。遺伝子やらDNAやら、環境要因やらが複雑に絡まっているよう。多分、住居や食べ物に使われている化学物質とか、ライフスタイルや家族・コミュニティ形態の変化なども影響してるんでしょうね…。

もうひとつ目新しいなと思ったのは、犬を使ったアニマルセラピー。緘黙の子と犬を引きあわせて、「お手」や「お座り」などの言葉がけをさせるというもの。人間相手ではなく、可愛い犬と一緒だったら、不安度がぐっと減りそうですね。

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