DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その2)

ASDや広汎性発達障害と診断される緘黙児の割合が大きい--これは日本における場面緘黙の研究で、頻繁に見られる結果です。発達障害を専門とする医師の間では、場面緘黙は決して珍しくないとも言われているよう…。

DSM-Vで新たに設けられた、「社会的(実践的?語用論的)コミュニケーション障害(Social (pragmatic) communication disorder)」は、場面緘黙とどのような関連があるのか?とても気になっています。

新たな分類 「社会的(語用論的)コミュニケーション障害(Social (pragmatic) communication disorder)」は、下記のように神経発達障害(Neurodevelopmental Disorders)カテゴリーの2) に含まれています。

Neurodevelopmental Disorders(神経発達障害)

  1. Intellectual Disabilites (知的障害)
  2. Communication Disorders (コミュニケーション障害) ←★ここ
  3. Autism Spectrum Disorder (自閉症スペクトラム障害)
  4. Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder (ADHD)
  5. Specific Learning Disorder (学習障害)
  6. Mortor Disorders (運動機能障害)

2) のコミュニケーション障害に含まれるサブカテゴリーは、

  1. Language disorder (言語障害)
  2. Speech sound disorder (音韻障害)
  3. Childhood onset fluency disorder (stuttering) (小児発音障害(吃音))
  4. Social (pragmatic) communication disorder (社会的(語用論的コミュニケーション障害) ←★ここ
  5. Communication Disorders not otherwise specified (特定不能のコミュニケーション障害)

DSM-IVでは、アスペルガー障害(Aspergar’s Disorder)及び特定不能の広汎性発達障害(PDDnos)と診断された人たちは、いずれも広汎性発達障害という自閉症関連をくくった大カテゴリーに含まれていました。それが、DSM-Vでは、「社会性の障害」はあるが「常同性」はないとみなされると、自閉症スペクトラム症(ASD)ではなく、コミュニケーション障害に該当…。

(なお、DMS-IVにおける特定不能の広汎性発達障害(PDDnos)の定義は、他の広汎性発達障害の定義に当てはまらないケースで、「社会性の障害」もしくは「常同性」のひとつが該当すれば診断されるというもの)

平たくいうと、このグループに移行する人たちは、自閉症ではない(なかった)ということですよね?もしかしたら、広汎性発達障害やアスペスガーと診断された場面緘黙児の多くは、このカテゴリーに入るんじゃないでしょうか?また、広汎性発達障害の傾向やグレイエリアと診断された緘黙児は、ASD傾向ではなく、コミュニケーション能力に発達凸凹があるのかもしれません…。

例えば、相手のボディランゲージが読めなくて黙っている場合と、相手のボディランゲージが読めても、相手の反応が不安でどうしたらいいのか判らず黙っている場合では、ちょっと違うような気がするんですが…。特に、緘黙期間が長く閉じこもりがちになると、コミュニケーションスキルが向上しないため、年齢に見合う社会的コミュニケーションを取るのが難しくなると思うんです。病院など、馴染めない環境でコミュニケーションを取ることの不安もあると思いますし、このあたりのことは、診断にどう影響しているんでしょう?

話は変わりますが、最近イギリス人の言語療法士(SLT)から「専門分野で活躍するSLTの間で、治療に当たったASD児が実は重度のコミュニケーション障害児だったという話が良くでている」と聞きました。子どもがオルタナティブなコミュニケーション法を身につけると、徐々にASDの特性がなくなることが多いんだとか。

イギリスではWHOによる国際疾患分類、ICD-10を診断基準にすることが多いので、DSM-5における変更はあまり問題視されていません。でも、研修中のASD児専門校に通う子どもの中には、「常同性」はないように見える子もいて、その子達には違うアプローチが必要なんだろうか? などと考える今日この頃です。

最後に、DSM-Vの診断によって、この新しいサブカテゴリーに移行する人はどの程度の割合なんでしょうか?

2012年1月に『ニューヨークタイムズ』紙が、アスペルガーと診断されていた3/4の人たちがASDと診断されなくなるという記事を掲載し、世界中で物議をかもしたようです。これは、イェール大学のフレッド・ヴォルクマー教授他による予測ですが、10%程度という予測もあり、かなりバラつきがあるようですね。

“about three-quarters of those with Asperger syndrome would not qualify; and 85 percent of those with P.D.D.-N.O.S. would not(アスペルガー症候群の約3/4が、そしてPDDnosの85%が(ASDと)認定されない)”

NYタイムズの記事 → http://www.nytimes.com/2012/01/20/health/research/new-autism-definition-would-exclude-many-study-suggests.html?pagewanted=all

自分の中でよく整理できておらず、チンプンカンプンな独り言のようになってしまいました…。ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございました。多分、誤解している部分も多々あると思うので、お気づきの方はご指摘ください。

関連記事:

DSM-Vに登場した新たなコミニュケーション障害(その1)