緘黙になりやすい子?

6月19日に記載した『再び、場面緘黙は発達障害なのか?』の記事に、マーキュリー2世さんからコメントをいただきました。

「緘黙は発達の問題というよりも、心の問題(心因性の精神障害)だと思う」と書いたのですが、「精神疾患は脳の病気という考え方もあり、心の問題と神経系(脳だけでなく、迷走神経なども含む)の問題を切り離すのは問題のすり替えにしかすぎない」、というご指摘でした。

全くその通りです。脳と心(精神)は密接に関連しているため、切り離して考えることはできませんね…。チキンとエッグの論争に似てますね。

(自閉症の脳科学的診断については、マーキュリー2世さんがご自身のブログに詳しい記事を載せておられます。 こちら→ http://smetc.blog120.fc2.com/blog-entry-183.html

ただ、言い訳ではないんですが、私が言いたかったのは、場面緘黙という疾患(症状)が日本で一般的にいう狭義の発達障害(ASD、PDD)とは異なるのではないか、ということです(知識及び語彙不足のため、上手く説明できなくて、すみません)。

ちょっと古いですが、下記のサイトの分類が理解しやすかったので、参照したのでした。この分類だと、場面緘黙は精神障害であり、発達障害ではありません。まあ、DSM-5では「不安障害」に、世界保健機関(WHO)では「小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害」に含まれ、どちらも発達障害ではないんですが…。

【障害のある学生へのサポートブック(金沢大学障害学生支援委員回保健管理センター 2007年版)】

こちら → http://www.adm.kanazawa-u.ac.jp/ad_gakusei/campus/kousei/soudan/syogai/010.html

  1.  感障害         感覚器官の機能に障害がある場合
  2. 運動障害      身体運動の機能に障害がある場合
  3. 言語障害      聞くこと、 話すことなど言語の機能に障害がある場合
  4. 内部障害      身体障害のうち、 主として内臓の機能障害
  5. 精神障害      医療の対象としての精神疾患を含み、 ある程度以上の精神的偏りがある場合     障害がそれぞれ独立して存在し、 かつ相互に影響するなど、身体障害とは異なる障害の構造がある
  6. 知的障害      先天的な問題、発達期中( 一般的には 18歳以下)の頭部外傷や病気などによって生じた知的発達の遅れ
  7. 発達障害      何らかの生物学的な要因があり、発達の遅れや偏りが生じた状態            家庭環境や養育環境・態度など心理的な要因で正常に発達しなかったというものではない。広汎性発達障害 (自閉症、アスペルガー症候群)、 LD、 ADHDなどがある

しかし、国際的な基準も含め、国や機関によって精神疾患の分類方法が異なっているような…。それだけ複雑で難解な分野ということなんでしょうね。(な お、この5月から日本精神神経学会により、病名が「障害」→「症」に変更されましたが、解かりにくいので以前の名称を使っています)。

簡単にいうと、発達障害(ASD)と場面緘黙には下記のような違いがあると思います。

  • 発達障害(ASD)は治せない
  • 脳の構造が違う(認知の仕方が異る) → 心理的な発達が通常とは異なる
    療育により、社会性やコミュニケーションの問題に対処していくことはできるが、根底にある認知の違い(歪み)は治せない。

これに対して、

  • 場面緘黙は治すことが可能
  • 発症要因が特定されていない → 定型の子でも、発達障害の子でも、言語・発音・コミュニケーションなどに問題を持つ子でも発症する
  • 不安や抑制的な気質、言語・発音・コミュニケーションの問題、バイリンガル環境など、様々な要因があるとされる(*抑制的な気質の子どもは、アミグラダと呼ばれる脳の篇桃体が刺激に対し過敏反応するのではないかという研究仮説があるが、抑制的な気質の子ども全員が緘黙になる訳ではない)    支援・環境・本人の努力などにより、学校をはじめ、それまで話せなかった人・場所・活動で徐々に話せるようになることが多い。しかし、緘黙期間が長く、社会的な体験やコミュニケーションの経験が不足したままだと、大人になってもごく一部の人としか話せなかったり、対人関係が苦手だったり、社会不安症などの精神的な問題を抱えることになる人もいる。また、緘黙を克服できても、言語・発音・コミュニケーションに問題を抱える子(ASD児を含む)は、その問題自体が解決される訳ではない。

《場面緘黙になりやすい子は?》と考えると、

★生まれ持った気質・性格

  •  抑制的な気質(不安や恐怖を感じやすい)

★生物学的(神経生物学的/発達的)な要因

  •  話し言葉や言語に苦手意識がある(表出性&受容-表出混合性言語障害を含む)
  •  言葉の発音に苦手意識がある(吃音、音韻障害を含む)
  •  コミュニケーションに苦手意識がある(ASD、特定不能のコミュニケーション障害を含む)

*上記の他にも、身体的・知的な問題があって、人前で注目されることへの苦手意識がある場合も、抑制的な性格の子だったら、緘黙になる可能性がありそうです。

更に、バイリンガル環境や環境の急激な変化など、環境的な要因も大きく関与してきます。コミュニティや家庭内での会話やコミュニケーションが極端に少なく、年齢に見合う言語・コミュニケーション能力が育っていないと、会話やコミュニケーションに苦手意識を持つようになる子もいるかと思います。

同じ子どもでも、環境や人間関係によって、緘黙になる場合もあれば、ならない場合もあると思うんですね。それを考えると、やはり意識の問題というか、気にしいの性格という部分が大きく影響してくるような気がするんですが…。

例えば、うちの息子はバイリンガル環境も要因ですが、小学校入学時に幼稚園時代の日本人の親友と同じクラスに入っていたら、寡黙ではあっても、緘黙にはならなかったと思っています。また、直接引き金要因となった滑り台事件がなかったら、そのまま非常に大人しい子でいたかもしれません。

ついでに、WHOによる国際疾患分類、ICD-10による精神障害の分類を載せておきますね。

  • F0  症状性を含む器質性精神障害--痴呆症その他のいわゆる脳器質性精神障害を含む
  • F1  精神作用物質使用による精神および行動の障害--アルコールや麻薬・覚醒剤等に関連した障害を含む
  •  F2  統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害--統合失調症(精神分裂病)やその類縁疾患を含む
  •  F3  気分障害(感情障害)--双極性感情障害(いわゆる躁うつ病)、うつ病エピソード(いわゆるうつ病)等を含む
  •  F4  神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害--恐怖症性不安障害(いわゆる恐怖神経症)、パニック障害、強迫性障害(いわゆる強迫神経症)、外傷後ストレス障害(PTSD)等を含む
  • F5  生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群--摂食障害(いわゆる拒食や過食)、睡眠障害、性機能不全(性欲の低下など)等を含む
  •  F6 成人の人格および行動の障害--いわゆる人格障害や性行動に関する問題などを含む
  •  F7 精神遅滞 精神発達遅滞
  •  F8 心理発達の障害--学習能力の特異的発達障害(いわゆるLD)や広汎性発達障害(いわゆる自閉症)等を含む
  • ★F9 小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害--多動性障害(いわゆる多動児)や行為障害、チック障害等を含む
  •  F99 特定不能の精神障害--以上の分類に当てはまらないもの全て

厚生労働省のホームページから http://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/index.html

だらだらと長くなってしまい、すみません。最後までお付き合いいただいた方、ありがとうございました。

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場面緘黙の要因(カテゴリー)