告知するかしないか(その4)

年齢が上の子どもに告知する方法?

前回の記事にコメントをいただいたのですが、この年齢の子どもに告知する方法は、子どもの性格や親子関係、緘黙の程度、学校環境、友達関係といった状況により、人それぞれということになると書きました。告知した後の反応もまた、子どもによってそれぞれでしょう。

学校での友人関係や担任に恵まれて、安心して学校に通えている子は、「変わらなくてもいい」と感じているかもしれません。そんな時は、学校で話し始めることにこだわらず、学校以外の場所で少しずつステップアップに挑戦したり、勉強や習い事などで自信をつけ、自己評価を上げていくことが重要だと思います。また、テキストチャットなどで、友達とのコニュニケーションを促進していけるといいですね。

「聞きたくない」、「知りたくない」と、拒絶する子もいるかもしれません。そんな時は、親の直感がたより。子どもの気持ちを尊重しつつ、より添うことができたらいいのでは?いつでも手助けする気持ちがあることを、伝えておきましょう。

不安や恐怖といった感情をブロックして、諦めムードだったり、投げやりになっている子もいるかもしれません。また、ストレスで攻撃的になっている子もいるかも…。

緘黙している時間が長ければ長いほど、ひとりで不安を抱える時間が長くなり、想像できないほど辛い思いをしているのではないでしょうか?

「話せない」ことばかり話題になりますが、それは氷山のほんの一角にすぎません。子どもが不安や劣等感、疎外感や孤立感といったネガティブな感情をひとりで抱え込んでしまうと、身体やメンタルに影響してしまう可能性もでてきます。早く対処できるよう、子どもからのサインを見逃さないようにしたいものです。

誰だって嫌なことがあれば、眠れなかったり、朝起きられなくなったり、お腹が痛くなったりしますよね?繊細な子どもには、些細なことが大きな心の傷になりかねません…。抑制的な気質の子は、思い込みも激しかったりします。だからこそ、自分のことを無条件で受け入れてくれる存在、文句や愚痴をいえる存在がとても大切になってくると思うのです。

前置きが長くなってしまいましたが、思いついた告知方法をいくつか書きとめておきますね。

●子どもが信頼している相談員、医師、心理士などに告げてもらう

子どもが専門家の治療を受けていて、改善の兆しが見られるようであれば、予め相談したうえ、親子で一緒に診断をきくというのもアリかなと思います。実際に克服した/克服中の子どもの例などを話してもらえると、勇気付けられるんじゃないでしょうか。

●場面緘黙の本を一緒に読む/子どもに手渡す

欧米に比べ日本では場面緘黙の研究が遅れていましたが、2007、8年頃から様々な書籍が出版されていますね。私が所属するKnetからも、2008年に『場面緘黙Q&A』、2009年にDVD付の翻訳書『場面緘黙へのアプローチ-家庭と学校での取り組み』、2013年に『どうして声が出ないの?-マンガでわかる場面緘黙』が出版されています。

こうした書籍の中から適切な箇所を選び、子どもと一緒に読んでもいいですし、小学校の5、6年や中学生だったら、『どうして声がでないの?』を手渡してもいいと思います。また、高校生なら、ひとりで専門書を読んで理解できますね。手渡した後は、子どもの反応を見ながら、フォローするのを忘れずに。

●映像(TV/DVD/You Tubeなど)を一緒に観る/子どもに手渡す

日本では昨年、元緘黙だったミスイングランド、カースティさんの幼少時代をドラマ化した『ザ! 世界仰天ニュース-静かな少女の秘密』が放送されました。その時、親子で観られた方もおられたのでは?

ここで観られます → http://youtubeowaraitv.blog32.fc2.com/blog-entry-26558.html

また、前述の『場面緘黙へのアプローチ』のDVDにも、緘黙だったレイチェルさんの体験談が収録されています。映像の方がより具体的なので、わかり易いかもしれませんね。

(3月に開催されたSMIRAコンファレンスでは、緘黙のドキュメンタリー番組の録画を子どもと一緒に観たという保護者の方がいました。番組に登場したSLTのマギー・ジョンソンさんを子どもが指差し、「この人に会わせて」と主張したため、マギーさんとアポを取ったのだそう。幸運にも同じ地区に住んでいたためセラピーを受けることができ、かなり改善されてきているということでした)。

告知した後にどんな反応が返ってくるか、何ともいえません。でも、ひとりで悩んでいるよりも、「自分はこれだったんだ」と解かった方が、本人のためになるはず。周りがいくら説明しても、子ども自身がその気になって問題に立ち向かわない限り、話す不安は改善されません。自分はどうしたいのか、子どもの意思を確認することができたら、支援の方向性も決まってくるかと思います。

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