先週の土曜日、イングランド中部のレスターで行われた2014年SMIRAコンファレンスに行ってきました。(もとは「全国保護者会」という名前だったのが、規模が大きくなって「コンファレンス」と改名されたそう)
レスター駅で、同じロンドンからの電車に乗ってきた言語療法士(SLT)のアリソン・ウィンジェンズさんに遭遇!会場までご一緒して、お隣の席に座らせていただきました。アリソンさんは、SM治療のバイブルと呼ばれる『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual 2001年)』をマギー・ジョンソンさんと共著した方です。現在は現役から退き、時々大学などで講師をされているとか。
この夏(多分8月頃)、SMIRAから新書『(仮題)場面緘黙克服の取り組み:専門家と保護者のガイドTackling Selective Mutism: A Guide for Professionals and Parents (Alice Sluckin, Benita Rae Smith編)』が出版される予定なんですが、アリソンさんは場面緘黙とASD併存のケースの支援について寄稿。他にもマギーさんなど多数の専門家が寄稿していて、今回はKnetも関与しています。(まだ入稿前の昨年秋くらいに、この本が既にAmazonにエントリーされていて、ちょっとビックリしました)。
さて、10時から午後4時まで、ぎっしり詰まったプログラムは下記の通り。
・ 事務局長リンジーさんの挨拶
・ SLT マギー・ジョンソンさん 『小学校中学年以上と10代の子どもの支援』
・ SMIRA会長 アリス・スルーキンさん 『認知行動療法(CBT)の利用法』(簡単な説明)
・ 保護者 ジェイン・ディロンさん 『ローカンとジェシーキャット』
・ ディスカッション
リンジーさんの挨拶では、ミスイングランドのカースティさんから激励の言葉も。今年は参加者が70名を超え、その中の27人はSLTやTAなどの専門家や学校関係者。秘書役のヴィッキー・ロウさんほか、SMIRA事務局のメンバーを入れると合計で約80名ほどだったでしょうか。
マギー・ジョンソンさんの講演が、年齢が上の子どもの支援だったためか、緘黙のティーンエイジャーが両親と一緒に何人か参加していました。会場に足を運ぶだけでも勇気がいったと思うんですが、親との信頼関係が強いんでしょうね。ランチタイムにその一人と筆談したところ、筆談のスピードも速く、自分の意見をしっかり持ってました--学校がマンモス校だったこと、敏感すぎて騒音に耐えられなかったこと、登校できず今は家で学んでいること…。同年代の友達が欲しいという文を見て、とても切なかったです。
『ジェシーキャット - 少年の心を開いた猫(Jessie Cat: The cat that unlocked a boys heart)』の著書、ジェイン・ディロンさんの講演はかなり短く、ご紹介した新聞記事やTV番組と大体同じような内容でした。あれ以来、それほど大きな変化はなく、毎年担任が代わるごとに少し後退して、3学期には改善するというパターンが続いているとか。まだまだ自由に話せるという訳ではありませんが、仲のいい友達とは継続的に話せているそう。
個人的に少しだけお話したのですが、ローカン君の小学校は規模が小さく1学年ひとクラスのみ。27人のクラスメイトとはずっと一緒なので、安心しているということでした。会場にはローカン君本人とお父さん(医師)も来ていて、ジェインさんの隣で本当に大人しく座ってました。写真で見る通りの、細くてきゃしゃな感じの男の子でした。
2時間あったマギーさんの講演は、すごく興味深かったです。支援を始める前に、まず自己評価をあげ、場面緘黙に向き合う必要があると強調。それから、支援者(第三者)を確保し、環境を整え、できたら専門家の支援を得、しっかりした戦略を立てて「話す恐怖」を克服していくというもの。全部の条件を満たすのは無理なので、できるだけ多く組み合わせてということでしたが、日本ではかなりハードルが高そう…。
ディスカッションでは、ASDの緘黙児のケースや薬についての質問などが出ました。「緘黙は症状であって、何故その症状が出ているかにスポットをあて、何か根本的な問題があればそれにも取り組まなければいけない。そうでないと、喋れるようになっても、根本にある問題はそのまま残ってしまう」というマギーさんの言葉が印象に残りました。例えば、子どもがコミュニケ-ションに問題を持っているとしたら、喋れるようになっても、自然にコミュニケーションが取れるようになる訳ではないんですね。まずは、喋ることばかりに焦点をおかず、子どもの全体を見ることが大切なんだなと思いました。
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