SMIRAのパーティでカースティさんにお会いしました(その2)

SMIRA創設21周年記念パーティでのカースティさんの挨拶は、自分が場面緘黙で苦しんだ経験を持つこと、どんな風に克服したか、そして今後は自分と同じように場面緘黙に悩む子ども達を助けていきたいという内容でした。

時々メモを見ながらも堂々としたスピーチでしたが、途中で少しだけ躓いて、「ご覧のように、本当はまだシャイなところが残ってるの」と微笑んだのがとても印象に残りました。それほどスピーチに慣れていない感じが、かえって彼女の誠実さを強調していたように思います。

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自分に贈られた花束を、カースティさんはアリスさんに進呈

緘黙で全く話せなかった小学校低学年の頃、カースティさんが最も恐れていたのは、学校で出席を取る時だったとか。クラスの男子がふざけてカースティさんの名を呼ぶので、毎回「あ、また来る。嫌だな」とドキドキしたそう。誰が名前を呼ぶか毎日小競り合いにまでなっていたらしく、多分担任やTAもそれを認識していたのではと思います。でも、彼女が黙っているし、泣いたりしないので、そのまま習慣になってしまったのかな?

それから、学校行事やグループ活動などの際、話せないために無視されたり、後回しにされたと感じたことも多く、それがとても辛かったとも…。カースティさん、今でもとても感受性が強いように見えるので、当時はかなり傷ついたんだろうなと思いました。

カースティさんに限らず、緘黙児にとって「挨拶」は鬼門になることが多いようです。学校で出席を取るのは朝一番なので、まだその日の教室の空気に馴染めず緊張度が高いこともあるかもしれません。その上、返事をすることが当たり前のシチュエーションです。一度返事ができないと、翌日はもっとハードルが高くなるのではないでしょうか?そして、返事ができないことが続くと、ますます返事がしにくくなるので悪循環ですね。

ちなみに、うちの息子は授業中に短く話せるようになっても、出席の返事だけはなかなかできませんでした。それができたのは、インファント(幼児部5~7歳)からジュニア(中等部8歳~11歳)に移行した時。校舎と教師陣が入れ替わった初日に、「この機会がチャンス」と、自分から思い切って返事をしました。

日本では、「はい、元気です」と返事をする学校が多いのかな。イギリスでは “Good morning, Miss ○○” と返事をすることが多く、そのうえ給食かお弁当かチェックするので、結構しゃべらなくてはなりません。保護者は「何でうちの子は返事もできないの?」と思いがちですが、出席の返事はかなりハードルが高い分野です。本人も気にしていると思うので、返事の仕方を工夫してもらえるよう、先生に頼めるといいですね。

幼稚園や小学校低学年なら、出席の返事の代わりに手を叩くなどの動作を使って出席を取ることもできます。慣れてきたら、動物の鳴き声や番号など短い単語で答えさせたり、声を出しやすいように体を動かしながらというのもいいかなと思います。先生が生徒の前に来てくれたら、囁き声で答えることもできるかもしれません。

出席の返事にしても、学校行事にしても、ちょっとした工夫や気遣いで、緘黙児が安心できたり、話しやすい環境を作れると思います。また、緘黙児が傷つかないようにフォローもできると思うのですが、先生に強制する訳にはいかないので難しいところですね。

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