誕生

息子は2000年8月に北ロンドンの病院にて誕生。3050gのミレニアムベイビーでした。

高齢初産だったものの、妊娠中は悪阻もなく、血液検査やスキャンでも全く異常なしで、仕事もずっと続けていました。この分なら出産も問題ないだろうとタカを括っていたのです。

が、現実は甘くない。病院の誤診断から始まり、一旦入院したのに家に返され、真夜中に再入院という、ドタバタ喜劇のような序章つきでした。

分娩室に入ってからは微弱陣痛でお産がなかなか進まず、陣痛促進剤を使い、人口破水もしました。が、それでもまだまだ生まれそうにない。

あまりに痛みが酷く、睡眠不足も手伝って体力が限界に近かったので、途中でエピデュラル(硬膜外麻酔)を打ってもらうことに。無痛分娩には反対だったんですが、「あ~、こんなに楽になるなんて夢みたい!」と、医学の進歩に心から感謝したのでした。

結局2本のエピデュラルを打ち、もうすぐ生まれるという段階で、赤ちゃんの回旋異常と心拍数低下の心配を告げられました。「自然分娩が駄目だったら、即帝王切開にします」といわれ、急遽手術室に移動。

手術台の上はシアターライトが煌々と輝き、オペ担当医の他に、担当婦人科医と部下らしき人、麻酔技師やら助産婦やら大勢のスタッフが…。オマケに教育病院だったので、医学生までいました。

しかし、恥ずかしがっている場合じゃない。「ここで産まなかったらお腹を切られる!」と切実な恐怖に襲われ、絶対に自力で産むぞと固く決意。でも、極度に緊張している私の耳に聞こえてきたのは、部屋の隅で準備しているスペシャリストたちの、「今週末テニス行く?」という呑気な会話でした~。

付き添っていた夫はというと、いつの間にか青い手術着と帽子を身につけ、そして何故かサンダル履き!顔は真剣なんだけど、何かちぐはぐ(笑)。

エピデュラルの影響で陣痛が感知できないため、いきむタイミングが解らず、助産婦さんに「波が来たら教えて!」とお願いし、いざ出陣。ほどなくして、息子は鉗子分娩で無事産まれてきてくれました。分娩室に入ってから約16時間、その前のバタバタを計算に入れると、約30時間のドラマでした。

私も辛かったけれど、何だかトラウマになるような誕生だったので、息子にはストレスが大きかったと思います。もしこの体験が息子の気質に影響を与えてしまったとしたら、母親としては大変辛いところです。