コロナが家にやってきた!

一時、冬の天気へと逆戻りしたかのように思えたイギリスですが、また少しずつ陽光が戻ってきました。ぼんぼりの様な八重桜と遅咲きの水仙が花盛りを迎えています。

     

「コロナとの共存」という政府のスローガンが定着してきたイギリスでは、3月下旬にコロナに関する規制がすべて撤廃され、全国各地に設置されたPCR検査センターも、簡易テストの無料配布もなくなってしまいました~😢

オミクロンの変異株BA.2により感染率が13人にひとりと急上昇したのにもかかわらず、です。ワクチン接種によって重症化率が低くなったため、風邪やインフルエンザと同じ扱いにするということらしいんですが…。

現在、政府が行っているのは、75歳以上と免疫弱者を対象にした4回目のワクチン接種のみ。イギリスに入国する人は、もうコロナ陰性を証明する必要もないのです。でも、これだと海外から新たな変異株が入ってきても、早期発見できない…😱

陽気が良くなって学校の春休みも始まったので、大勢の人が街や行楽に繰り出し、海外に出始めました。今やマスクをしている人はどこに行ってもマイナリティー。そりゃ、感染が拡大してもおかしくないですよね。

と思っていたら、ついに我が家にもコロナがやってきました~!!

3月3週目の金曜日にロンドン中心部にあるオフィスに行き、夜遅くまでパブで飲んできた主人。翌週の火曜日、「夕べよく眠れなかった。ちょっと調子悪い」とポツリ。

えっ、大丈夫なの?!

次の日の朝、いつも早起きの彼がなかなか起き上がらず…。そのうえ、「喉がヒリヒリする」いうのです。これはやばい!!

私も何だか疲れていたので、2人して簡易テストを。(私は学校勤務があるので週2回テストしていたのですが、この週は人に会う機会が多くて日曜から連続でテストしてました)。

結果を見て、「あ~、2人とも陰性だった!」と安心し私は学校へ、主人は自宅の屋根裏部屋オフィスへ。

で、朝の授業を終えて主人に連絡を入れたところ、

「コーヒーを作りに階下におりてテスト結果を見なおしたら、ものすごく薄く陽性のところに線が出ていた」というのです!!

「えええっ!?」

NHS(国民健康保健)に問い合わせたら、薄くても陽性は確実とのこと😱😱😱

実は、私は3月28日から1週間ほどニューヨークに行く計画を立てていたのです。昔ハウスシェアをしていた友達がNYCに移住していて、もうひとりのシェアメイトと一緒に彼女に会いに行く予定でした。春になれば感染もすっかり鎮まっているだろうという憶測の元、計画を立てたんですが…。

主人は既にPCR検査キット(私の分も)を自宅に郵送してくれるようNHSに依頼済でしたが、一刻も早く結果を知りたくて、近所のPCR検査場に空きがないか調べてもらうことに。

その間、私は校長に連絡して、「主人がコロナ陽性かもしれないので、自宅に帰ってオンライン授業をした方がいいですか?」とお伺いを立てました。

すると、政府のガイダンスで症状がなければ自己隔離しなくてもいいから、そのまま午後の授業を続けるようにとのお達しが…。

でも、もしかしたら感染してるかもしれないし――生徒にうつしたらどうしよう😱😱

もんもんとしながら受付の女性にSNSで相談したら、「大丈夫よ、今朝陰性だったんだから。でも、心配だったら外で授業すれば?」とのアドバイス。

幸い学校の校庭は狭いけれど、池のある庭があります。とても天気がいい日だったので、庭のベンチに誘って1対1で授業をしました。直射日光が暑かった(^^;

その間に主人から「今日、5時半にPCR検査を予約できた」とのメッセージ。

慌てて個人授業のスケジュールを調整し、5時ごろ隣町のスポーツセンターにあるPCR検査場へ。2人ともN95のマスクを着け、私は助手席ではなく斜め後ろの席に座り、車の窓は開けっぱなし。

会場に着いて検査キットをもらい、自分達でサンプルを取って提出。ほんの10分で完了しました。

帰宅してから家の窓を全部開けはなして換気し、テーブルやドアノブなどを再度消毒し、タオルを変え、主人にはバスルーム付の屋根裏部屋に籠ってもらうことに。

翌日学校から帰ると、主人には既にNHSから連絡が来ていて、やはり陽性😱 😱 😱😱

出発まであと4日というタイミングで~!!!

それから私の携帯にもメッセージが届いたので、おそるおそる読んでみると、

「陰性です。でも、今後陽性になる可能性もあるので要注意」

あ~、ひとまず良かった!

急いで友達に連絡を入れ、それから出発の朝まで5日間、何度も簡易テストをしてしまいました。というのも、私は風邪をひくとすぐ喉にくるタイプで、「あっ、ちょっと喉が痛いかも」と何度も感じて青くなったからです。時期的にヘイフィーバーの季節と重なって、鼻と喉が敏感になってるし…。

屋根裏部屋に籠った主人の症状は、幸いにも喉の痛みと一日だけ夜熱が出たかもという程度で、仕事は普通に続けていました。

毎日3度の食事に加え、水、コーヒー、スナック、ビールやらをトレーでドアの前まで運び、食べ終わると下げての繰り返し。ゴム手とマスクの完全防備で挑み、食後はトレーまで泡立てて洗って、最後に消毒…疲れました~(^^;

月曜の朝11時の飛行機だったので、日曜日に旅のお連れが家に泊まることになっていたのですが、彼女から空港の近くのホテルにツインルームを予約したから一緒に泊まろうと提案が。

でも、「2人で一緒の部屋に泊まったら感染させちゃう可能性があるから」と断りました。そしたら、日曜日の検査結果次第でやはり私の家に泊まるかもと…。

アメリカに行くには、今のところ出発の24時間以内にテストをした陰性証明書が必要です。オンラインビデオで看護師に監視されながら簡易テストをして、結果をIDと共に写真に撮って送ると証明書が届くというしくみ。

彼女は午前中にテストをして陰性、私は午後テストをして無事陰性。ほっ。それからリビングを掃除して、ベッドメイクして、最寄りの駅まで車で彼女を迎えに行って、夕食の支度をして、と大忙し。

月曜の早朝、最後の簡易テストをして陰性なのを確かめてから、タクシーで空港へ。

結局、観光やショップ、レストランなどの情報を詳しくチェックしたり、旅行中の計画を立てたりすることなく、初めてのNYCへと飛び立ったのでした(^^;

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息子の緘黙・学童期6~7歳(その6)特別扱いはしません

もう3月も終わりに近くなりましたね。イギリスは今週ずっと晴天が続き、気温がぐんとあがって春爛漫という感じです。

もうクリスマスローズの季節も終わりです。

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ロンドンには毎週土曜日に国語(日本語)を学ぶための補習授業校があります。駐在員のお子さんが帰国した際に困らないよう、日本の学習指導要領に準じた国語教育を行うのが目的。日本人ハーフの子も大勢通っていますが、2、3年で辞めてしまうケースがほとんど。でも、私の周りでは、ハーフで補習校に行ってない子はいなかったような…。

だから、私も6歳になった息子を2007年の4月から補習校に入学させるつもりでした。が、問題は息子の緘黙。やっと学校で少しずつ改善してきたのに、新たに補習校に入れて後退しちゃったらどうしよう。でも、日本語はちゃんと勉強させたいし…。

(ハーフだからこそ、自分のルーツと両方の言葉を持っていることが大切なのでは、と今でも考えています)

実は、息子が近所の現地校に入学した当日、「僕の英語、みんなみたいに上手くない…」と告白されてビックリ。それまで家庭では日本語中心だったのですが、自信をつけさせるために私も英語で話すことにしたのでした。

だから、日本語はみんなより遅れているだろうし、そこでまた自信を無くす可能性も充分ありました。

本人は補習校には絶対行きたくないと泣いて拒否。同時期にそれまで通っていたミュージックセンターで土曜日の楽器練習が始まる予定で、そちらを希望していました。

複雑な気持ちを抱えながら、新入生の保護者のための授業参観に参加しました。見学させてもらったのは1年生のクラス――なんだか厳しそう。まず、教室がシンとしていて、生徒達がひとりずつ個別の机に座ってきちんと前を向いている――日本では当たり前の風景だけど、久しぶりに見て軽いカルチャーショックを受けました。イギリスの小学校は机をくっつけたグループ学習で、いつもザワザワしているので。

補習校では、当てられたらまず立って、答を言ったり、本を読んだりしなければなりません。現地校では座ったままでいいし、答えられなくてもそれほど注目が集まらないので、その辺りも緘黙児には楽…。

子ども達が席順に読本を始めたところ、あるハーフの女の子が起立したまま固まってしまいました。今にも泣きだしそう…。

教室の後ろには知らない父兄(母親ばかりだったけど)がズラリ。大人たちの視線を感じて緊張感がすごかったんでしょう。教師は半泣きになった彼女に優しく声を掛けましたが、どうしても言葉がでそうになく、いったん座らせました。

一通りみんなが読み終わった後、教師が彼女に「今ならできるかな?」と声をかけたところ、小さな声ですが短い文章を読むことができました。ほっ、いい対応。

皆が耳を澄ませているところで起立して答えたり、本読みしたり――緘黙児や引っ込み思案の子には至難の業…。日本の緘黙児たちはどう対処してるんでしょう?

もうひとつ気になったのは、駐在員の子女とハーフの子とでは、やはり語学力にかなり差があること。前者はスラスラ読みますが、後者はたどたどしかったり、棒読みだったり。読みながら意味が取れているのか疑問でした(だから数年で辞めてしまうんでしょうね)。

これは、息子にはめっちゃハードルが高い!就寝前に日本語の本の読み聞かせやひらがなを書くことなどはやっていましたが、家庭で英語を話す様になったので、日本語に英語が混じるようになっていました。う~ん。

授業参観の後、補習校の校長先生とアポを取って面会に行きました。場面緘黙のことを説明して、配慮してもらおうと思ったのです。

当時は日本ではまだ場面緘黙がほとんど知られていませんでしたが、校長は「ああ、日本で教えていた時にひとりいました。結局、小学校を卒業するまで話せなかったんですが、いつ頃話せるようになるんでしょうか?」と…。えっ、話せるようになるまでずっと放っておかれたんでしょうか?!

そこで、場面緘黙は放っておくと悪化すること、気長な支援が必要なことを説明し、配慮してもらえるかどうか訊いてみたのですが…。

「補習校ではみんな同じ扱いです。特別扱いはしません」と、きっぱり断言されてしまいました。

当時は「合理的配慮」という言葉はなく、校長先生は場面緘黙は成長すれば治ると信じておられたよう。その生徒さんがその後どうなったのか――なんだか不憫でした。

息子が自分の席に立ったまま硬直して何も言えないところを想像したら、恐ろしくてとても入学なんかさせられない。息子が自信を失ってしまったら今までの努力が無駄になってしまう――もう日本語は自分で教えるしかない、と腹をくくったのでした。

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息子の緘黙・学童期6~7歳(その5)持ってる先生と持ってない先生

ロシアがウクライナに軍事侵攻してから、もう2週間以上…。戦火は止むどころか、市民を巻き込んでますます激化しています。本当にもう止めて欲しい。

先週末、誕生日の前祝いをかねてサフォーク州の海辺の町へ行ってきました

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さて、息子の緘黙話の続きです。

子どもの担任が誰になるのか?――これは宝くじのようなものですよね。

緘黙についての知識があるにせよ、ないにせよ、問題を抱えている子どもにどう対応すればいいか、クラスにどう馴染ませるかは、担任の力量にかかってくるのではないでしょうか? 頭で緘黙を理解できていても、子どもはそれぞれ違うので、日々どう接するかは先生次第というところが大きいと思います。まあ、クラスの状況にも左右されますが。

「当たり」の先生は、緘黙(や他の問題)の知識がなくても、自然に察知して子どもによりそえるタイプ。対応の仕方を学ばなくてもさり気なく配慮できる、もう既に「持ってる」先生です。

息子が緘黙になった2005年当時、場面緘黙は学校関係者にも知られていませんでした。SENCOでさえこの症状名を聞いたことがあったかどうか。SMiRAの会長、アリスさんに「あなたが先生たちを啓蒙するのよ」と言われたほど。

それでも、レセプション時代(4~5歳)の担任は、滑り台事件を機に突然固まって全く話さなくなってしまった息子に対して、神対応をしてくれました。場面緘黙と判明するまで4か月ほどかかったのですが、その間も息子の不安を少しずつ少しずつ解きほぐしてくれたのです。明るくて包容力のある若い女性教師で、私よりずっと年下だったけど絶大の頼もしさ(笑)。

女の子に「先生、どうして◯◯君は(課題の活動を)やらないの?」と訊かれ、「◯◯君は準備ができたら自分でするから、放っておいてね」と。

ごくごく自然に、息子も傷つかず、質問した子どもも納得できるような受け答えをしてくれていました。

持ってる先生というのは、マニュアルがなくても自然と子どもが安心できるような対応ができるんですね。

反して、残念ながら2年生の時の担任二人は私と息子にとっては「外れ」でした。

「外れ」というと大変失礼なのですが、IEP(個別指導プラン)に則して緘黙支援をしてもらっているはずなのに、子どもへの接し方のピントがずれているというか…。お願いしても、うまく話がかみ合わない感じでした。自分の生活が忙しすぎて、緘黙について学ぶ余裕がなかったのかもしれませんが。

それが解ったのは、2学期が終わるころ。

私は1年生の時と同様クラスのボランティアに立候補し、週に一度ITの授業のお手伝いをしていました。ある日、珍しくL先生が声をかけてくれたのです。

「昨日の夕方、スーパーであなたたちを見かけたわよ」

「そうですか」

「◯◯君が大きな声でしゃべっていて、ビックリしたわ。あんなに元気よく話せるなんて。いつ学校であんな風に話すようになるのかしら?」と、まるで他人事のよう。

どうしたら学校で同じように話せるよう支援できるか――という話には全くならなかったのでした。

その少し後に、E先生からも声をかけられました。

「今日学年で劇場に行ったんだけど、◯◯君がB君と大きな声で話しているのを初めて見たわ」

「えっ、そうなんですか?」

きっと劇場内では生徒達がはしゃいで、ガヤガヤした楽しい雰囲気だったんでしょう。また、薄暗いので誰かに見られている意識がうすれ、安心感があったんだと思います。

「それで、何歳ぐらいになったら治るのかしら?」

絶句…。

E先生は、緘黙は成長したら自然に治ると信じていたよう。最初にあれだけ説明し、専門書をお貸しして、IEPに沿って取り組みをしているはずなのに、全く緘黙を理解してもらえてなかった?!

正直、ガッカリしました。

でも、緘黙児の保護者はこんなことでメゲてはいられませんよね。担任がダメなら自分ができる範囲で何とかするしかない!模索の道はまだまだ続くのでした。

追記:息子の場合、小学校時代は当りと外れの先生が半々だったかなと思っています。でも、緘黙になったレセプションクラスと1年生、それからジュニアスクールにあがった3年生(8歳になる年)の時の担任が当たりで、本当に助かりました。

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息子の緘黙・学童期6~7歳(その4)小2の放課後の教室

もう2月も残りわずかですね。先週からの嵐が止んで早春の気候になってきたところで、ロシアのウクライナ軍事侵攻が始まりました…。NATOや欧米の牽制でロシアが踏みとどまると思っていたのに――自分か生きている間にこんな戦争が起きるなんて、信じられません。一刻も早く停戦して欲しいです。

イギリスでは感染者数が一日4万人以下に減ってきて、2月24日からコロナ規制を全て解除。感染しても自宅待機しなくてOK(政府は5日間の待機を奨励してますが)、なんと雇用主に申告する必要もないんです(*_*; 濃厚接触者になっても連絡は来ないし、どう行動するかは本人次第。「コロナとの共存」というのは、全てが自己責任になるということで、政府は国民の良識に任せるらしい…。もう公共の場でマスクする必要もなく、4月からは無料のPCR検査と抗原検査も打ち切り(*_*; また新株がでてきても、しばらくは判らないんじゃ?!

……………………………………………………………………………………………………

さて、ものすごく久しぶりに息子の緘黙の続きです。

IEPミーティングで2人の担任がしぶしぶ承知してくれた放課後の教室訪問。IEPに場面緘黙と明記されているし、事前にSMiRAの本は渡したし――なんとか協力してもらえるだろうと期待してました。

でも結論から言うと、なんだか空回りしてしまい、息子も私も担任と打ちとけるところまでいきませんでした…。担任たちの忙しさ(無関心?)もあって、両者とも尻切れトンボで終わってしまい、反省点がたくさんあります。

(ジョブシェアをしていた担任2人は、幼児の子育て中で忙しい身。放課後は勤務時間外なので、自分の時間を割きたくないという心境だったと思います。それなのに「10分くらい会話する時間を」と頼みこむなんて、今思うとほんとうに図々しいですね。でも、その時はせっかく改善してきた息子の緘黙を停滞させたくなくて、必死でした(^^; )

まず行ったのは、

1) 週に1回ずつE先生とL先生に会いに放課後の教室へ行く

2) 先生の様子をみながら挨拶して、時間がありそうだったら話し相手になってもらう

E先生の場合:

いつも忙しそうで、挨拶してからだいたい一言二言くらいで会話が続かず。先生、笑顔だけど息子の沈黙がかなりつらそう…。あとは教室の展示などをみて私が息子に質問したりしていたのですが、先生を意識して声がでなかったり、ひそひそ声になったり。長居しては悪いので、そそくさと教室を去るというパターンでした。先生に馴染ませる意図もあったのですが、ほとんど効果は見られず(先生側も馴染もうとはしてくれてなかったように感じました)。

1か月くらい経ったところで、E先生の方から「忙しいから、もう無理」と断られてしまったのでした。

L先生の場合:

自分の意見をはっきり言うL先生は、好き嫌いが解れるタイプ。ちょっと恐くてとっつきにくい印象だったのですが、何故か息子はL先生の方が安心度が高かったんですね(詳しくは『息子の緘黙・学童期(その2)』をご参照ください)。

L先生はE先生と違って、息子が返事をしなくても、どんどん話しかけてくれました。そのせいか、息子もE先生の時より返事がしやすかったよう。また、先生の息子さん(同じ学校のレセプションクラス(1年生の前の学年)が教室に来ることも多く、おいかけっこをしたりして遊ぶようになりました。これでかなり緊張が解けたと思います。

そのうちに息子が家で書いたマンガや創作文(?)をL先生に見てもらい、私はすぐ退出して教室の外で待つようにしました。その様子がどうだったのか、、先生は何も言ってくれないし、息子も何も言わないので、少しは進歩したのかしなかったのか、全く不明のまま…。それでも、L先生との10分間セッションは2学期の終わりくらいまで続いたように記憶しています。

<反省点>

・場面緘黙とは何か、放課後の活動の意味を簡潔に伝えておくべきだった

・事前に担任たちと話し合いを持ち、何をしたいか、どうしたいか明確にしておくべきだった(担任たちは放課後の教室訪問の意味が解っていなかったと思う)

・たとえ10分であっても、活動を決めスモールステップの目標を立てておくべきだった(でも、それには担任の協力が不可欠)

思い起こせば、SENCOを巻き込んでしっかり計画を立て、IEPの一部にすればば良かったですね…でも、それには関与する人全員が同じ方向を向いている必要がある訳で。ジョブシェアをしている、あまり評判の良くない担任に当たってしまったのも時の運だし、自分が上手く対応できなかった点も多くあると思います。

息子の学校では毎年担任が変わる(クラスは7年間同じ)システムだったのですが、担任にも自然に子どもに寄り添えるタイプ、勘がいいタイプというのがあるような気がします。緘黙のことを何も知らなくても、クラスの中で孤立しない様にさり気なく振舞える担任だと「当たり」かな(^^;

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SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その7)

あっという間に2月も中旬ですね。昨日はバレンタインデーでしたが、イギリスでは男性が女性に赤いバラの花束を贈ったり、レストランでロマンチックなディナーを食べたり。うちの場合は、たまたま2人とも今日休みだったので、外でランチを楽しみました。

   

     先週末、すごく久しぶりに主人の友達2人(男性と女性)が泊りに来て、球根花のブーケをいただきました。赤いバラの花束よりず~っと嬉しかったです

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さて、マギー・ジョンソンさんの講演の続きです。

保護者へのアドバイス

  • 2つの重要なポイント:

1) まず、保護者は子どもの自立を応援すること。多くの親は自分たちがどれほど先回りして子どもを助けているか理解していません。自らが成功体験を重ねることで、子どもは自信をつけていくのです。その機会を奪わないよう注意して。ただ褒められたり、奨励されるだけでは、本当に自信を積み重ねていくことにはなりません。

実際のところ、ティーンは自分の親に褒められることは好きではないのです。できることは自分でやらせないと、いつまでたっても自信はつきません。

例えば、5歳の子どもに何か手渡そうとして、子どもが躊躇したとします。多くの親は自分でさっと手に取って、子どもに手渡すでしょう。でも、それは良くありません。

まず下記のような声掛けをしてみて。

① 大丈夫よ、受け取りなさい

② じゃあ、一緒に受け取ろうか?いい、1、2、3

③ じゃあ、後で受け取ろうね

セッション中に保護者が手助けしようとした場合、マギーさんは「じゃあ、あのテーブルの上に置くから、後から取りに来て」などと、子どもができそうな方法を提案するそう。

2) 子ども自身が自分で対処することが重要。だから、子どもの代わりにやってあげるのではなく、子どもがやりやすいように援助してください。子どもにとって何が難しいかを察知し、よりやりやすい方法を考えましょう。

ティーンの場合、本人が望むなら、教師やTA、保護者がメールを書くのを手助けすることに問題はありません。ただ、メールを送る時は本人にやらせること。緘黙の人は自分からものごとを始めるのが難しいからです。すぐしそうになかったら、「今送らなくてもいいよ」「送りたくなったら、送ればいいよ」と声かけをして、時間をあげましょう。その間はティーンを放っておくことが大切。

徐々に自立できるようサポートしていけば、いずれは全部自分でできるようになります。初めは非言語でOK、社会的な場面で居心地悪さや引け目を感じさせない様な配慮ができるとベスト。

例えばマックに行って、ケチャップをもらい忘れたとします。「ママ、取ってきて」と頼まれて、取りに行くのは簡単。でも、そこでやってあげないこと。

「自分で取りに行きなさい」ではなく、「ママ買い物で疲れちゃって、もう歩きたくないの。どうやって取ってくればいいか教えるね。あそこまで行って、紙カップを取ってケチャップのレバーを押せばいいのよ。大丈夫、できるよ」とアドバイスしてみて。

兄弟がいたら、一緒に取りに行くように提案してもいいでしょう。子どもがゴネたら、「別に行かなくてもいいよ。でも、ケチャップが欲しかったらあそこにあるからね」。そういって、自分は食べたり、携帯を見たりして、子どもから視線を外します。こうすると、だいたいは自分で取りに行くそう。

親は自分で気づかない内に、色々やってあげることが習慣化していることも多いのです。やってあげることで、子どもは「自分はできない」「ママがやってくれるから」と思い込んでしまい、自分から動こうとしなくなることも..。

こうしたアドバイスに対し、「あら、私息子がもう14歳になるのに学校のかばんをずっと持ち続けているわ。迎えに行くと、カバンを私の足元に置くから。それに、まだお風呂のお湯も出してあげているし…」と気づいた14歳の男の子の母親もいたとか。

なお、家庭で子どもに手伝いをさせる習慣をつけておくことも大切です。担当を決めて毎週必ずなにか仕事をさせるのでもいいし、何気なく手つだいを頼むのでもOK。例えば、食事のデリバリーを頼んだら、「テーブルにお皿を並べて」「後片付けを手伝って」という感じで。

また、子どもが自分で行動を起こすきっかけを作ることも大切。例えば、ゲーム器の乾電池をわざと切らして、「あ、ごめん、ごめん。来週オンラインショッピングする時に注文するね」とすぐには入手しないこと。子どもがゴネたら、「ここにお金があるから、角のお店で買ってくれば?大丈夫、できるよ。別に話さなくても、レジに乾電池とお金をおけばいいから」、「来週は必ず注文するから、あなた次第よ」と選択肢を与えて、子どもに決めさせるなど。

子どもが自分を信じて行動し、自信を積み重ねていけるよう支援してください。5秒ルールを作って、子どもが自分で対応できるかどうか5秒は待つようにしてみて。できない場合は、「頷き」「指差し」「はい、いいえ」など緘黙症状の度合に応じた返答ができるように誘導しましょう。

これでマギーさんの講演は終了です。振り返ると、子どもの一番近くにいる保護者がどう支援していくかが、とても重要になってきますね。以前は、家ではおしゃべりなので、親にも理解してもらえない子どもやティーンが多くいたと思います。場面緘黙の情報が増えた昨今、そういうことがないといいのですが…。

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第2回 SM H.E.L.P オンラインサミットから(その1)

第2回 SM H.E.L.P オンラインサミットから(その2)

第2回 SM H.E.L.P オンラインサミットから(その3)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その1)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その2)

SM H.E.L.P.2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その3)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その4)

SM H.E.L.P.2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その5)

SM H.E.L.P.2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その6)

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SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その6)

ついに日本でもオミクロン株の一日の感染者が10万人を超えてしまいましたね…。イギリスでは、ここ3週間ほど8~11万人を行ったり来たり(1月31日は政府のサイトにデータが記載されず…何故???)。オミクロンのピークもピークアウトも早いと言われていたのに、欧米ではまだ下がりきってません…一体どうなっているんでしょう?

  

晴れの日は空が春めいてきました。学校へ向かう途中で出会う猫ちゃん

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さて、マギ-・ジョンソンさんの講演の続きです。

★保護者への助言:自らが不安を抱える17歳の娘さんを支援した経験から

「こうしてみたら? ああしてみたら?」と親が言い続けることで、子どもは親が自分に対して失望していると感じます。「今のあなたではダメだから、変わらなくちゃ」と言われているように感じてしまうのです。親が助言すればするほど、子どもは「あなたはこのままではダメ」というメッセージを受け取ることに…。

ティーンにまだ準備できていない時、親が手を差し伸べようとすると反発しがち。親への拒絶反応を起こすこともあります。

保護者ができるのは場面緘黙が恐怖症であることを説明し、いつでも支援する準備ができていると伝えること。「話すこと」だけに集中しないで。「小さなステップを少しずつ踏んでいけば、絶対克服できるよ。いつでも支援するからね」と伝え、子どもを信じて待ってください。

(なお、本人に気づかれないよう、保護者がしてあげられることはたくさんあります)

親は心配ばかりせずに、子どもと一緒に過ごす時間を楽しんで。将来が心配でも、今のこの時間を大切にして、子どもとの時間を満喫しましょう。

なんでもOKです。例えば、一緒に映画を見たり、料理をしたり、ガーデニングしたり、ウォーキングをしたり。子どもが興味を持っていることを探し出して、子どもの興味に沿って一緒に楽しみましょう。そこから「自分が変わりたい」というモチベーションが生まれてくるかもしれません。

★主導権を持たせることでティーン(子ども)は安心できる

言わないかもしれませんが、どの子も「自分はこれをやりたい」という夢を持っています。どうしたらその夢を叶えられるか――親は子どもを人として尊重し、そのままの子どもを愛してあげてください。子どもには恐怖症があるけれど、それが一生続くわけではありません。必ず克服する道を見つけられるはず。

子どもがモチベーションと緘黙を克服する決意を固めるのを辛抱強く持ちましょう。

情報は与えて、でも押しつけないこと。

★ティーンとの接触を持つための具体例:

緘黙のティーンとのセッションでは、パワポの作り方やどうしたらもっと良いプレゼンになるかを訊いたり、助言してもらったりするとか。そして、「完成したものをPCで見て欲しいから電話してもいい?いつだったら時間がある?」と自然に切り出すのです。こうして、PCを観ながら電話でコミュニケーションを取るきっかけを作るのだとか。

こういった間接的な方法だと顔を見合わせずにすむので、やり取りしやすいそう。まずPCの画面を見てもらい、修正した方がいい点を書いて送ってもらうことからでOK。

ティーンの得意な分野を見つけ、何気なく手伝いを頼むことで、自信をつけさせモチベをあげることが可能です。あくまで本人主導であることを忘れないで。

長い講演だったので、また次回(最終回)に続きます。

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ついに濃厚接触者に

イギリスでは1月4日に一日のコロナ感染者数が20万人とピークに達し、その後は7万~10万人前後で移行しています。それだって充分多いのに、政府は今週1月27日からプランBを解除することを決めました。

 

      6日間の抗原検査の結果(C 陰性でした~)。もうスノウドロップが開花

プランBというのはオミクロン株の感染拡大により12月から施行された規則で、リモートワークへの切り替え、要マスク、ワクチンパスポート実施という緩~いもの。

なので、これからはもう超密になる場所以外ではマスク無しでOKなのです(*_*;

(現在はワクチン接種のみに頼るプランAに逆戻りし、たとえ地下鉄やバスやスーパーでマスクをしなくても法的な拘束力なし――イギリス人は基本的にマスク嫌い――怖い、怖すぎる)

要マスクだと外産産業や旅行業界に悪影響を及ぼすらしく、ジョンソン首相が国会でプランB解除を発表した時は、保守党メンバーから「いいぞ!いいぞ!」とやんや賛同の声が…いつも人命より経済を回すことを優先しているような――企業から献金もらってるから?というか、ジョンソン首相は最初は集団免疫派だった…。

そして、つい2週間ほど前、私は濃厚接触者になってしまいました~😢

日曜日の朝、久しぶりにママ友会があって、6人(日本人は私だけ)がカフェに集合。以前と同じく外のテラス席でと思っていたら、みなさん「寒いから中で」と…。いや、あの~私は外でもいいんだけど…(が、気が弱くて言えない)。

まあ換気は良さそうだったし、店内で2時間ほど楽しくお喋りしました。

で、帰宅したその夜に、今回の会には参加しなかったママ友Aさん(ウォーキング仲間)から連絡があり、「実は、今晩コロナ陽性が判明したの」と!!

彼女は前の週末に2回目のワクチンを接種して体調不良に。その後、木曜日に歯の治療(インプラントで抗生物質)をしたところ、顔が腫れてますます体調が優れず。翌日はウォーキングをパスしてずっと休息してたのに、日曜日に喉が痛くなったとか…。

(ちなみに、彼女は日曜はママ友会ではなく、別の友達グループと会う予定だったのです。が、その会はコロナが2名出て中止になったそう。不幸中の幸いで、Aさんの家族には感染しませんでした)

あ~、一緒にウォーキングしなくて良かった。

そう胸をなでおろした私。そうしたら、翌週の火曜日の午後になって、ママ友のグループチャットがにわかに活性化。「なに?」とチェックしたら、何と日曜に会ったうちの一人が陽性に!!!!

えええ~っ!なんと、私のお隣に座っていたBさんでした😢

ついに濃厚接触者になってしまった~!

翌日・翌々日は学校で仕事の日――急いで学校のコロナ規則(政府の規則が変わる度に変わる)を読み返してみたら、「ワクチン3回接種済で無症状の場合は自宅待機しなくてOK」でした。

ただし、一週間は抗原検査をして毎日陽性にならないかチェックしなくてはなりません。私の場合は学校で検査キットをもらえるのですが、近くの薬局やオンラインでも入手可(今は無料ですが、6月からは有料(7個入£30約4600円)になるそう。高っ!)

毎朝検査をして、陰性が出るとほっとするという繰り返しの1週間。学校ではマスクとバイザーを付けてましたが、もし途中で発症して生徒や他の先生にうつしちゃったらどうしようと、気が気ではありませんでした。オミクロン株の潜伏期間は3~5日とのことなので、1週間陰性でひと安心。

でも、Aさんは会った日の朝に抗原検査をして、陰性だったんですよ~。ママ友グループは学校関係者が多くて、Bさんも小学校のTA(教育補助員)。今小学生の感染率が高いから学校で感染したんだと思うけど、いつ感染したんでしょう?月曜日に感染して、その翌日にすぐ症状が出るってあるのかな? それとも日曜日は潜伏期間中だったけど、陽性になるほどウィルスが多くなかった? う~ん、謎です。

とにかく、何とか感染を回避できました~。でも、今回のことで周囲との温度差を実感 (*_*; もう一人のウォーキング友達CさんはBさんの向かい側に座ってたんですが、自分が感染することを全く心配していなかった…。私が極力人に会わない様にビクビクしていたのに、4日目に連絡が来て「明日、ウォーキングする?」といつもと変わらず…。

まあ、野外で歩くだけだから感染の心配はない、といわれればその通りですが…。もし私が潜伏期間中だったら、うつしてしまう可能性もある訳で。そのまた逆もある訳で。

彼女は週末約束がいっぱいということでその日しか機会がなかったのですが、心配性の私はスキップしたのでした…。Cさんだけでなく、別の友達も「ワクチン3回受けてるから、感染しても大丈夫よ。軽症で済むから」と。でも、他の人にうつすのはマズいですよね?イギリス人が「コロナとの共存」の道を歩いているのはいいんですが、やっぱり他の人に感染しないようマナーは守って…と思ってしまうのでした。

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SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その5)

あっという間に1月も後半になってしまいました。今年のイギリスの冬は暖冬で、霜が降りる日が珍しいくらい。快晴の日には、なんとなく空気に春の気配が感じられるような…。

   冬でもあちこちに花が。イギリスには古い住宅が多く残っているのですが、この建物はヴィクトリア王朝後期のもの。間取りが大きく、高い天井と大きな窓が人気です

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さて、マギー・ジョンソンさんの講演の続きです。

★カフェで行うスライディングイン法例

1) メニューを読む (小声 → 音量を上げていく)

2) 同席者と言葉を交わす(小声 → 音量を上げていく)

3) ウェイトレスに飲み物を注文する (1単語 → 文章)

まずはその場で声を出せるかどうか、事前に声を出す練習をすると安心。カフェに入る前にハミングしてみると「できる」と判ります。まずは、テーブルについて声を出せる、お喋りができることが重要。注文するのはその後で良いのです。知っている人に何かを言うより、見知らぬ人(この場合はウエイトレス)に飲み物の名前を言う方が簡単だということを覚えておきましょう。

みく注:本人の緘黙症状や緊張の程度によって、ステップを更に細かく分けたり、省略したりできます。

親が子どもの代わりに答える習慣がある場合は、親以外の人(はなせる友達や親戚など)とトライする方がベター。親の干渉を嫌うティーンは多いので。

(保護者は代わりに答えを言う前に、笑って数秒待ってください。声が出なかったら、「はい、いいえ」で応えられる形にして質問しなおして。まずは、頷いて返事ができればOK。失敗しても気にしないこと)

★ひとり語り(Lone talking)

保護者とのスモールステップに抵抗があるというティーンや成人には、ひとり語り(Lone talking)というテクニックもあります。

ひとり語りのスモールステップには、友達や親戚の人など、保護者でない第三者が必要。「一人で本を読む/ 録音する → 読本をしている部屋に誰かをスライディングインする/ 録音したテープを誰かに聞かせる」という方法も。

実際に誰かに本を読んでいる声を聞かせる場合:

部屋で一人で声を出して本を読む → 少しドアを開けて外の人に声が聞こえるようにする → 第三者がドアを開けてゆっくり部屋に入っていく

★緘黙改善に否定的なティーン

緘黙することに慣れて、話さなくても良い状況で止まっているティーンには、どのように対処したらいいのか?

重要なのはモチベーションをあげることではありません。子どもが「話せなくても構わない。別に話したくない」と言っても、鵜呑みにしないこと。話さなければならない苦しい状況に陥ることを、恐れているだけです。

緘黙の人は「話すだろう」と誰もが期待している場で話せないことが一番怖いのです。話し始めるためには、その恐怖に打ち勝たなければなりません。実際には、モチベは既に持っているし、本心では話をしたいのです。ただ、不快で困難な状況に陥ることを恐れているのです。

もし蜘蛛の恐怖症を克服するのにタランチェラを使ったらどうでしょう?恐怖心がさらに増しませんか? 蜘蛛と同じ空間にいなければならないだけで、既に緊張がマックスに達してしまいます。

声を出すことはあくまで最終段階です。その前に「場面緘黙は恐怖症」という自覚を持たせること。それがティーンや成人の緘黙克服の要です。緘黙を克服するためのテクニックは複数あって、スライディングイン法はそのひとつ。保護者と行う人もいれば、そうでない人もいます。また、一人で行う方法もあります。実際に顔を見ながらビデオで、もしくは音声だけで行う方法もあるので、本人が「これだったらできる」と思う方法を選ぶことが大切。

マギーさんの場合は、ある子にはスライディングイン法が適していると思っても、「これとこれがある」と複数の方法を提案してみるのだとか。

重要なのはティーン本人がやり方を決めること。彼らは自分を解ってくれる人、どんな思いをしているか理解してくれる人、悩みを話せる人を欲しているのです。

またまた次回に続きます。

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SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その1)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その2)

SM H.E.L.P.2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その3)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その4)

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SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その4)

新年、明けましておめでとうございます。といっても、1月ももう10日経ってしまいましたね。今年こそは準備万端にと思っていたのに、日本語の模擬試験の準備や、今月末に迫った確定申告の締め切りなどに追われている日々です。

     バービカンアートギャラリーで開催中のイサムノグチ展。温かみのある灯にほっとひと息

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さて、マギージョンソンさんの講演の続きです。

<20代前半の場面緘黙の女性2人のケース>

緘黙に苦しんできたラーナとリサは、お互いに話しをしたいと希望していました。各自がスモールステップ法で少しずつ改善し、留守番電話にメッセージを残すところまで進歩。2人は友達になりたくて、SNSでメッセージを送りあう仲になったのです。

マギーさんが仲介するオンラインおしゃべり会では、ラーナはリサがいる前でマギーさんと話すことに成功。でも、リサはできませんでした。

2人がマギーさんと一緒に緘黙のコンファレンスに参加した際、3人で同じホテルに宿泊。マギーさんは、下記の4段階のスモールステップを実施しました。

1) ラーナをバスルームに行かせて、2分間待たせる(第1段階)

マギーさんとリサはベッドの端に座って食事のメニューについて話す。ラーナには事前に「その時が来たら、こちらに来るように呼ぶから待ってて」と指示。

2) ラーナはドアを少しだけ開けて、再び2分待つ(第2段階)

3) ゆっくりドアを開ける(バスルームから出られるだけの幅)

4) 部屋に入ってアームチェアに座る(第3段階)

5) アームチェアをベッドの近くに寄せて3人が円状に座る

6) 一緒にメニューを読む(最終段階)

最終的には、お互いが質問し合う形までもっていく。スターターは何にするか、AとBではどちらが好きかなど、話題は全てメニューに関すること。

………………………………………………………………………………………………….

スライディングイン法で導き出す最初の会話は、『SMリソースマニュアル』のステージ 5(Confident Talking段階)に該当します。3人は話しているけれど、自由にコミュニケーションとっている訳ではありません。メニューは読んでいるものの、メニューに関する自由な会話ではない訳です。

言葉を引き出すためにスライディングイン法でよく行う活動のひとつに、交互に数字や日にち、曜日を順番に言うというのがあります。緘黙児(成人)は声を出していますが、それは厳密には会話といえません。脳が知っている単語を自動的に読んでいる自動スピーチ(Automatic Speech)なのです。

自動スピーチは自分で内容を考えて話すより簡単です。

1996年にマギーさんが13歳の少女、ケリーにスライディングイン法を試した際、気づいたことがありました。母娘に “I Spy”(アルファベットの文字を使ったなぞなぞ)ゲームをさせたところ、上手くいかなかったのです。

“I Spy” ゲームでは次に言うこと自分で考えなくてはならない。だから難しいのだ――そう悟ったマギーさんは、答えを読ませたり、数字や曜日など誰でもすっと出てくる言葉を順番に言うなど、まず自動スピーチから先に練習させることにしました。

また、次回に続きます。

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SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その3)

2021年も明日で終わりですね。去年末はアルファ株の激増でロックダウンしていたイギリス。今年はオミクロン株が激増して、本日の感染者数はパンデミック始まって以来、最多となる18万9000人を越えてしまいました!それでも、昨年に比べると重症化率が低く、死者数も少ないのが救いのひとつ。一部の科学者が指摘するように、コロナウィルスが徐々に弱毒化して、風邪のような存在になれば良いのですが…。

    

   イングランド中部のクリスマスは深い霧に包まれていました。義両親宅の近くのBrixworthの町まで歩き、その起源をアングロサクソン時代の7世紀まで遡るというAll Saint Churchを見てきました

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さて、マギー・ジョンソンさんのオンライン講演の続きです。

<ティーンと成人向けのスライディングイン法>

マギーさんがスライディングイン法を重要視するのは、最小のストレスで最速の回復を期待できるから。

ティーンや成人と子どもとの主な違いは、年齢的に場面緘黙が恐怖症だと理解できること。不運にも恐怖症になっているだけで、緘黙状態は本来の自分ではない――スモールステップ法を実践すれば、少しずつ恐怖心を克服できると理論的に理解できることです。

(みく注:ティーンや成人は緘黙を「恐怖症のひとつ」と捉え、第三者的な視点でみることができるということですよね)

脳が間違った反応をしているため、脳を再訓練して危険でないことをゆっくり学習していきます。危険がないと判断できれば、脳内でFight or Flight(戦うか逃げるか反応)の自動スイッチが入ることはありません。

例えば、大きな黒い犬が向こうからどんどん近づいてくると仮定してみてください。犬が自分に危害を加えるかもしれないと判断すると、脳は自動的にFight or Flight モードに。でも、危険はないと解れば、恐怖はなくなりパニック状態に陥ることはありません。

スモールステップに対して、「じゃあ、試してみようか」と本人が思えること、大きなプレッシャーを感じずに自分のペースで進めること――本人が「大丈夫、できる」と思えることが重要になってきます。

16歳のポーランド人の少年、サンダー君の例:

症状:2年間心理士にかかったが進歩はなく、親しい関係の祖父母にも話せなかった

母親が渡英して緘黙の研修を受け、緘黙は恐怖症だからスモールステップで克服できると説明。サンダー君は「それならできる」と同意し、まず祖母とスライディングイン法を試み、話すことに成功。翌日、祖父とも試みる予定だったが、スライディングイン法を実施することなしに話すことができた。

心理士とセッションを続けていた間、サンダー君は「原因は自分にある」と自分を責めたり、絶望したりしていました。それが、たった2日間で祖父母と話せるように!彼はその後、理解のある学校に転校し、そこで徐々に緘黙を克服することができたそう。現在は、緘黙だった過去を想像できないまでに回復しているとか。

マギーさんは、年を重ねることに緘黙が固定化して話せない人が増え、克服が難しくなる傾向があると指摘。けれど、適切な支援と本人の理解があれば、必ず克服できると語っています。まず、「緘黙は恐怖症で、克服できるもの」と理解すること。この気づきがあれば、長いセッション1回で話せなかった人と話すことも可能となるのです。

子どもの場合は、恐怖を感じさせないよう、短時間のセッションを何度も行う必要があります。プロセスを小さなセクションに分け、根気よく積み重ねるのです。親子のいる部屋にマギーさんが入り、子どもと話をするまでに平均で10セッション程度かかるそう。

一方、ティーンや成人の場合は、長いセッションを一度行うだけで話せるようになるケースも。スライディングイン法は、緘黙の程度や個々の状況に合わせてやり方や回数・時間などをいくらでも調節できるところが利点だといいます。

(次回は具体的なケースをご紹介します)

オミクロンの脅威は消せませんが、皆さん身体と心の健康に気をつけて、良い新年をお迎えください。

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