第一歩は、本人が「変わらなければ」と思うこと

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その7)

この3月に開催されたSMIRAコンファレンスで、イギリスの緘黙治療の第一人者、マギー・ジョンソンさんが、小学校中・高学年&ティーンのための支援方法について講演されました。その内容をKnetと拙ブログに公開する許可をマギーさんから得ましたので、概要を少しずつ翻訳してご紹介しています。

なお、内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。「年が上の子どもへの支援」については、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』に詳しく書かれていますの第二版(2015年春/夏出版予定)に新項目として掲載される予定です

《緘黙に苦しむ小学校中・高学年生&ティーンの支援》

場面緘黙アドバイザリーサービス 言語療法士マギー・ジョンソン著/ケント州コミュニティヘルスNHSトラスト

3  自分が変わるための起爆剤(働きかけ)となるもの(ことがら、目的、人など)

<内的に>

  • 今までどおりではいけない、という気づきと認識
  • 自分が変わらなければ、夢のキャリアや自立の機会を放棄することになるという認識

<外的に>

  • 家族以外の誰かが、純粋に子どものことを気にかけ/信頼し、変わることができると信じさせる

*変化の過程については、プロチャスカとディクレメンテ(Prochaska & DiClemente, 1983)による行動変容のステージモデルを参照 → ここ

*みく注: マギーさんの図と少々違いますが、同じものがなかったのでご了承ください。

4 変化の過程におけるサポート
<内的に>

  • 現実に沿って期待値を上げていく: 落ち着いて、肯定的な態度で確認しながら。成功したら自分の努力と成果を認める
  • 第三者がお手本を見せながらリードする → 子どもは回避というオプションはないことを理解してゆく。不安になることは普通であり、有益でもある — 私達は不安に対処することによって、不安をコントロールする方法を学ぶ(例: 不安になる行動を排除するのでなく、別のルートやより簡単なルートを見つける)
  • 子どもを責めたり、批判的になることなく、子どもに代わって何かしてあげることを止める → 子どもは自分が変わらなければどんな結果になるかを実感する
  • (最後の手段として) 未来が暗くなってしまった実際のケースについて話す

<外的に>

  • 「関わることへの拒否」と「告知に基づく同意」を混同しないこと。「告知に基づく同意(治療を受け入れるか拒否するか)」を得ることは、コミュニケーションの過程として何週間もかかる可能性がある(Mental Capacity Act 2005)。子ども達は何がどのように提供されるのか、治療を拒んだ場合はどのようなリスクがあるのかを十分に理解する必要がある
  • 最初のミーティング/約束を取り付ける時は、*パラメータを設定し、かつ/または避難経路を用意しておく
  • どんな形のコミュニケーションでも評価する — テキストメッセージや電子メールを使う方が、より多くを語る可能性が高い(初期には、自由回答式の質問(open questions)でなく、答えを選択できる質問(closed questions)をすること)

*みく注: 「パラメータを設定し(setting parameters)」という部分の意味が良く解からないのですが、子どもがどう反応しても対処できるよう、予め広範囲で考えておくということかなと思います。

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マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その6)

 

篇桃体(アミグダラ)のスイッチを切る

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その6)

この3月に開催されたSMIRAコンファレンスで、イギリスの緘黙治療の第一人者、マギー・ジョンソンさんが、小学校中・高学年&ティーンのための支援方法について講演されました。その内容をKnetと拙ブログに公開する許可をマギーさんから得ましたので、概要を少しずつ翻訳してご紹介しています。

内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。なお、年が上の子どもへの支援は、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』に詳しくカバーされています。

《緘黙に苦しむ小学校中・高学年&ティーンへの支援》 

場面緘黙 アドバイザリーサービス 言語療法士マギー・ジョンソン著                  ケント州コミュニティヘルスNHSトラスト

篇桃体(アミグダラ)のスイッチを切ることは可能です

  • 自らの恐怖について理解する
  • リラクゼーション – 笑い、深呼吸、(ほどよく)忙しくする、身体を動かす
  • スモールステップで恐怖と対峙し、危険がないことを篇桃体に示す
  • 怖いと感じるからといって、脅威となるものが存在するに違いないと思い込むのをやめる – 「自分は嫌われている。もし話したら、みんなに笑われる」といった愚かな理由に結びつけるだけです

次に、

  • 自分自身の考え方や行動によって、恐怖が現実のものとなり、危険な状況を創りだしていることに気づくこと(例えば、微笑みかけられた時に顔を背けたら、その人たちはあなたに嫌われていると思い、次は無視するでしょう)
  • (最大の恐怖である)ネガティブな思考を、肯定的または中立的な考え方(事実)に置き換える

このディスカッションを進展させるのに、2〜3回以上のセッションが必要かもしれません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・みく注: ここでマギーさんが強調しているのは、まず身体と心をリラックスさせて、ネガティブな思考から抜け出すこと。簡単なようですが、感受性が強く、気にしいの抑制的な性格の人には、なかなか難しそうです。

私自身そうなんですが、何か事件が起きると、悪いほうへ悪い方へと考えてしまう…。そして、人の何倍も凹んだり、落ち込んだりする傾向が強いように思います。誰かにちょっと何か言われると、ずーっとそのことが気になってしまう訳ですが、相手の人は既に忘れてたりして(笑)。

小学校の卒業式の前に、息子がちょっと情緒不安定になった時期があったんです。寝つきが悪くなったので理由を訊いてみたら、「あの時○○君にあんな風に接しちゃった。どうしよう」と、過去の出来事を心配してました。相手の子は元気に家にも遊びに来てたし、明らかに「気にしすぎ」…。

「くよくよせず、ぱっと切り替えなさい」と言っても、不安になりやすい気質は変えられない。でも、周囲の理解があったり、家族や友達との信頼関係ができていれば、ひとりでずっと落ち込むことはないのでは?そう考えると、学校で緘黙していても、友達がいたり、趣味があったり、家庭で楽しい時間を過ごせることが、本当に重要だなと思います。

マギーさんは「自己評価をあげること」を緘黙克服の第一歩にあげていますが、それが気持ちの持ち方に大きく影響してくるんですね。何でもいいので、趣味、特技、得意科目があったら、どんどんやらせて自身をつけさせましょう。

あと、好きなアニメを観るとか、ペットの世話をするとか、美味しいものを食べるとか、人生の「小さな喜び」を感じられる一時があると、気分転換できますね。実は、昨日嫌なことがあってずっとクヨクヨしてたんですが、先ほど黒澤映画『夢』を観たら、気分がすっかり晴れました。

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マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その5)

マギー・ジョンソンさんの講演から『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その5)

● 恐怖症はどのようにして起きるか?

パニックや激しい恐れを引き起こす何かが起こり、その恐怖が「害のない」ものや出来事と関連づけられます。次にそのものや出来事に遭遇した時、同じ恐怖やパニックの感情が蘇えります。そのものや出来事がもとの恐怖の原因ではなかったにせよ、それらを極度に嫌がるようになるのです。

恐怖症を持つ人の「怖い」という感情はリアルなものですが、それが危険かというと、そうではありません。危機感は心の中で創られたものなのです。

以下は子ネコを極端に怖がる女性の話です。どうして彼女が子ネコを危険なものと信じるようになったか、探偵になったつもりで推測してみてください。

(http://omensalam.blogspot.co.uk/2008_05_01_archive.html)

 

 

 

 

 

 

 

「この絵は、小さなネコや子ネコを見ると起きる私の反応です。普通のネコは大丈夫なのに、子ネコは死ぬほど怖い…。まずその大きさ、そしてふわふわの肌を想像しただけで、気分が悪くなるんです。

私はネコとの最悪な出会いを、今でも覚えています。それはある晴れた昼下がりのことでした。4歳だった私は、何日か病気をしたためベッドで休んでいました。そこへ、子ネコをくわえた親ネコが、生まれたばかりの子ネコの隠し場所を探して、突然私の部屋に飛び込んできたのです。母によると、私はパニックを起こして、気絶するまで叫び続けたそうです。それ以来、子ネコを見るのも触るのも全く駄目で、絵やTVで見るだけでも嫌なんです」

● ヒント

 「この絵は、小さいネコや子ネコを見ると起きる私の反応です。普通のネコは大丈夫なのに、子ネコは死ぬほど怖い…。まずその大きさ、そしてふわふわの肌を想像しただけで、気分が悪くなるんです(マギーさん注: この描写は変ですね?多分、恐怖症は柔らかくふわふわした子ネコではなく、肌に起因しているのでは?)。

私はネコとの最悪な出会いを、今でも覚えています。それはある晴れた昼下がりのことでした。4歳だった私は、何日か病気をしたためベッドで休んでいました。そこへ、子ネコをくわえた親ネコが、生まれたばかりの子ネコの隠し場所を探して、突然私の部屋に飛び込んできたのです。母によると、私はパニックを起こして、気絶するまで叫び続けたそうです(マギーさん注: 母親がすぐ彼女のところに行かなかったのは明らか。それは何故?)。それ以来、子ネコを見るのも触るのも全く駄目で、絵やTVで見るだけでも嫌なんです」

● あり得るシナリオ(マギーさんの推測)

母親は洗濯物を干すため外に出て、娘には「何かあったら窓から大声で呼びなさい」と伝えてあった。そのため、娘は家の中にひとり残され、誰かが自分の部屋に入ってくるとは考えもしなかった。ドアが開いたとき、彼女は恐怖に襲われた — 泥棒?人さらい?妖怪? ドアが開いた瞬間に、パニック反応と運命を感じた — 一体どんな恐ろしい侵入者が入ってきたのか?ドアのところに現れたのは、彼女が生まれてこのかた見たことがないもの — ピンク色でシワシワの生まれたばかりの子ネコだった – そして、無意識のうちにそれを恐怖と結びつけた。

● 篇桃体(アミグダラ)

脳の篇桃体(アミグダラ)は、恐怖反応を制御します。

恐怖を感じるとストレスホルモンを分泌し、身体に物理的な変化を与えます。例えば、心臓の鼓動が早まったり、喉の筋肉が締まるなど。これでは話せない訳です!体と喉がリラックスするよう、制御反応のスイッチを切れることができれば、言葉は楽に出てくるはずです。

● 良い知らせ

  •  場面緘黙は恐怖症
  • 恐怖症は治すことができる

*みく注: 恐怖症についての説明 → 恐怖症とは?コトバンク (http://kotobank.jp/word/%E6%81%90%E6%80%96%E7%97%87)

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マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その4)

この3月に開催されたSMIRAコンファレンスで、イギリスの緘黙治療の第一人者、マギー・ジョンソンさんが、小学校中・高学年&ティーンのための支援方法について講演されました。その内容をKnetと拙ブログに公開する許可をマギーさんから得ましたので、概要を少しずつ翻訳してご紹介したいと思います。

なお、内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。年が上の子どもへの支援の詳細は、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』に掲載されていますの第二版(2015年春/夏出版予定)に新項目として掲載される予定です

《緘黙に苦しむ小学校中・高学年生&ティーンの支援》

場面緘黙アドバイザリーサービス 言語療法士マギー・ジョンソン著/ ケント州コミュニティヘルスNHSトラスト

恐怖症

セカンダリースクールの子ども(12~16歳・日本では中1~高1に当たります)と、恐怖症について話し合う方法。子どもの承諾があれば、保護者、友達、兄弟姉妹も参加可能です。

<恐怖症について話し合う>

1) 怖いと感じるもの、感じないものを分類

下記の中から怖いと感じるもの、感じないものを、子どもに分類させる(正しい答えはないので、自分の気持ちに正直に答える)。

(例) サメ、水、車、トラ、ピエロ、子ネコ、橋、野菜、ボタン、警察官など

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・        怖くない                   水、ピエロ 、子ネコ、野菜、ボタン、警察官                                 怖い           サメ、車、トラ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・          2) ディスカッション1

上記に挙げた全ての項目は、現実的な危険の有無に関係なく、ある人たちにはパニックを起こす原因となります。多くの人がボタンやネコ、ある種の野菜などへの恐怖症を持っています。

脳はどんなものでも、危険なもの・脅威としてプログラミングすることができるのです。そのため、私達はパニックをおこし、恐怖を引き起こすものや出来事をなんとか避けようとします。

それと同時に、どのように対処するか学び、コントロールできると感じていれば、サメやトラなどを全く恐れない人もいるのです。

3) ディスカッション2

次に、あなた自身に起こったこと--「話すこと」をリストに加えます。

あなたは常にパニックを感じている訳ではなく、多分できるだけそれを回避することで、「話すことへの恐怖」に対処することを学んだのです--私がサメが出没する海で泳いだり、子ネコ恐怖症の人がペットショップに行くのを避けるのと同じように。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
怖くない                                  水 、ピエロ、子ネコ、橋、野菜、ボタン、警察官              怖い                     サメ、車、トラ、話すこと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・      4) 結論

危険についての認識は人によって異なる。

安全と感じることができるには:
1) ルールに従う (例: 道路を横断するなど)
2) 知識と経験を得る (例: 綱渡り、ライオンの調教師など)
3) 医学的(例: 喘息、ハチ刺され、ナッツアレルギーなど)もしくは、他の恐怖症と同様に心理的にリアクションを抑制する方法を学ぶ

*みく注: マギーさんは場面緘黙を恐怖症と捕らえると判りやすいとアドバイスしています(イギリスでは場面緘黙は「人前で話すことへの」恐怖のためにおきる症状であり、心理的な病気ではないという捉え方が強いように感じます)。余談ですが、ボタン恐怖症なんて最近まで聞いたことがなかったのに、実はイギリス人のママ友がそうであることが判明。普通に2、3個ついてるのは大丈夫らしいんですが、いっぱい集まってるとゾゾッとするそうで、ボタンのついている服はなるべく避けているんだとか…。私は田舎育ちで、虫とか昆虫とか慣れているハズなのに、ミミズのようなヌメヌメした動物を見るとゾゾっときます。小学校の同級生に蝶が苦手な子がいて、彼女が神経質なまでに蝶を避けていた様子を今でも覚えています。恐怖症って不思議ですね。

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マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その3)

 

マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その3)

緘黙を克服したサキ・ギャラクシディス君の動画

  • この動画では、22歳のオーストラリア人の青年、サキ・ギャラクシディス君が、(専門家の支援を得て)15歳の時についに決意を固め、どのように緘黙を克服したかを語っています。
  • 彼は”極端な社会不安”のため、9年もの間両親をのぞいて誰とも話しませんでしたが、今では誰とでも話しています。
  • 「自分を信じて。僕にできたんだから、君にだってできる」、というのが彼の主要メッセージです。

*みく注: 18分の長い動画の中から、マギーさんはサキ君の最大のチャレンジとなった、「学校で初めて言葉を発する」部分のみ抜き出していました。その前にも参考になるアイデアが多々あるので、簡単に説明しますね。

 サキ君は学校で全く話せなかったものの、成績はよく自負心がありました。苛めにもあったそうですが、あまり気にせず、それほど落ち込んだことはなかったとも。将来のことを考えた始めた時、どこかで「話せないバリア」を取り払わなければマズイと真剣に思い始め、それが起爆剤になったそう。少し自信がつけば何とかなると固く信じていたそうで、「本当にやりたいと思えばできる」と視聴者に語りかけています。自分で克服するんだと決心したのは14歳の頃。父親にもそう宣言して、プロの心理士に相談しました。心理士のアドバイスは、簡単なことから始めて、スモールステップで徐々に自信をつけていくというもの。経験値をあげてかなり自信がついたところで、最大のチャレンジに挑戦したことが成功の鍵だったと思います。

<サキ君の緘黙克服方法>

まずは、自分で簡単にできることから、徐々に難度をあげて経験値をあげてゆく。下記は彼が楽だと思った方法なので、それぞれが自分に合う方法を見つける必要があります。彼の人生最大のチャレンジは、学校でひとりの先生にひとこと声を発するというものでした。

  • 作戦1: 普段よりも多く、両親と話す
    学校から帰宅したら両親に話しかけ、徐々に長い会話にしていく
     
  • 作戦 2: 町に出て知らない人と話す練習(道をきく)
    多分、多くの緘黙児が感じることだと思うのですが、彼にとっては知っている人よりも、全く知らない人と話すほうが楽だったそう。「誰も僕のことを知らないし、僕が話せないことも知らない。僕も彼らを知らない」– 失敗しても安心できる状況ともいえますね。
     
  • 作戦 3: 最重要課題の決行 - 学校でひとりの先生に「ハイ」と、ひと言だけ声をかける
     

動画の10分26秒のあたりから、

「今がその時だ!何がなんでも言わなきゃ。僕はありったけの力と自信をかき集めて、最初のひと声を絞りだそうとした。たったひと言 — いうべき言葉は「ハイ」、それだけ…。数分間そこに立って何とか声を出そうとしていたら、自分の中で少しずつ自信が湧きおこってくるのを感じたんだ」

「その僅かな自信に気づくと同時に、すぐさまそれを掴んで離さないようにした。そして、なんとか声を出そうと自分を奮い立たせたんだ。やるしかなかった。己の限界を超えなきゃいけない。安全地帯にいる限り何かを成し遂げることなんかできないから、そこから出なきゃいけない。その時は、すっかり安全地帯の外だったよ!」

「本当に辛くて、ずっと緊張しっぱなしだったけど、なんとかやり終えることができた。ただ、「ハイ」という言葉を発しただけ。でもその言葉は、それほど長く考えなくても出てきた。そんな風に、実現させたんだ」

*みく注: 心理士が学校に働きかけ、ランチタイムに特定の場所で先生と出会えるようにセットアップ。予めこの挑戦について先生に説明してあり、サキ君自身もそれを知っていました。

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なお、内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。年が上の子どもへの支援の詳細は、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』に掲載されていますの第二版(2015年春/夏出版予定)に新項目として掲載される予定です

《緘黙に苦しむ小学校中・高学年生&ティーンの支援》

場面緘黙アドバイザリーサービス 言語療法士マギー・ジョンソン著                         ケント州コミュニティヘルスNHSトラスト

1) 自己評価をあげる - (その1)からの続き

子どもを受容する

  • 学校、そして学校外の活動などで、偏見なしに子どもをありのまま受け入れる
  • 共有体験--場面緘黙に苦しむ他の子どもやティーンと会ったり、連絡を取りあう。言語療法士に対しては、場面緘黙と訥弁の子どもを一緒に活動させたり、グループ活動を検討するよう奨励。FBやインターネット上でSMの子ども/ティーン用のグループに参加する

*みく注: 講演会では、重症の吃音に苦しむティーンの学校での受容例(教師、TA、クラスメイト)を映像で紹介。周囲の理解と支援があれば、学校に居場所ができ、モチベーションもあがることが判ります。 https://www.youtube.com/watch?v=cWeKiZS-dxM&hd=1

担任の取る態度や言葉だけでも、クラスの子ども達が受ける影響や態度は随分変わってくると思います。例えば、うちの息子(当時4歳)は緘動のため課題ができなかった時期がありました。「何でやらないの?」と訊ねるクラスメイトに、担任は「○○君は準備ができたらやるから、いいんだよ」と諭していました。自分のペースでやればいいと言ってもらえて息子も安心できたと思いますし、クラスメイトも「そういうものか」と納得したと思います。子どもがクラスで孤立しないような雰囲気を作ることは必須ですね。

2) 場面緘黙を理解し、自分でコントロールできる”症状″と捕らえる

  • 場面緘黙を外在化させるために必須 - 緘黙は彼らの個性ではない
  • 場面緘黙を克服する唯一の方法は、本人が自ら不安と向き合い、その時々に可能なステップを一歩ずつ踏んでいくこと - これは他の誰でもない、本人しかできないこと

<事例>

1) 場面緘黙とASDを併せ持つ14歳の少年

マギーさんが送ったハンドアウトを使い母親が2)を説明したところ、少年は非常に腹を立てました。(多分、誰かが話しているのを聞いたのでしょう)彼は地方自治体がこの問題に対処し、治療をしてくれるものと思い込んでいたのです。怒って部屋を飛び出し、その後この件については触れませんでした。

その週末買い物に行った際、突然彼の姿が見えなくなりました。母親がパニックに陥りそうになった時、少年は雑誌を手に戻ってきました。生まれて初めてひとりでニュースエージェントに行き、毎週取り寄せている雑誌を自分で取ってきたのです。驚く母親に、少年はすました顔で、「自分でやるようにしたら、怖くなくなるって言ったでしょ」と告げました。

2) 学生時代を通して場面緘黙に苦しみ、その後克服した若者

「最も開放されたのは、場面緘黙が自分の資質ではなく、不運にも罹ってしまった(アトピーのように)ものと捕えるようになったこと。一旦このような見方を始めると、何とかその症状と共存することを学び、さらには対処し、克服できるものと考えられるようになりました。今でも不安になりやすいですが、もはや不安が私をコントロールするのでなく、私が不安をコントロールしています」

3) 学生の頃ずっと緘黙に悩まされたが、現在は回復している若者

「-学校の外で、私の問題を知らない人たちとの間で自信をつけることに焦点を当て、怖いけれどやれそうなタスクを、難度をあげながら自分に課していきました。私のことを、ちょっと大人しい子と思っているだろう人たちと交流すればするほど、自信がつきました。それでも学校では話せませんでしたが、大学に入学して緘黙を克服することができたのです」

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マギー・ジョンソンさんの『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その1)

 

マギー・ジョンソンさんの講演から『小学校中・高学年&ティーンの支援』(その1)

この3月に開催されたSMIRAコンファレンスで、イギリスの緘黙治療の第一人者、マギー・ジョンソンさんが、緘黙で苦しむ小学校中・高学年生&ティーンの支援方法について講演されました。その内容をKnetと拙ブログに公開する許可をマギーさんから得ましたので、概要を少しずつ翻訳してご紹介したいと思います。

内容の著作権はマギーさんに属しますので、この記事の転記や引用は固くお断りします。なお、年が上の子どもへの支援については、緘黙支援のバイブルと呼ばれるマギーさんとアリソン・ウィンジェンズさんの著書『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual Speechmark社)』で詳しくカバーされていますの第二版(2015年春/夏出版予定)に新項目として掲載される予定です

《緘黙に苦しむ小学校中・高学年生&ティーンの支援》

場面緘黙アドバイザリーサービス 言語療法士マギー・ジョンソン著                         ケント州コミュニティヘルスNHSトラスト

成功の鍵となる指標 (社会不安障害の予防)

  1.  自己評価をあげる
  2. 場面緘黙を理解し、自分でコントロールできる”症状″と捕らえる
  3. 自分が変わるための触発剤(事象/目標/人)
  4. 家庭と学校の協力的な環境
  5. 専門家を含む支援ネットワーク
  6. 話すことへの恐怖を克服する戦略

*みく注: まず自己評価をあげ、子どもを取り巻く環境を整えてから、支援を開始します。その際、子ども自身が自覚を持って場面緘黙に向き合う必要があります。第三者の大人の支援者を得、できれば専門家にバックアップしてもらい、しっかりした戦略を立てて「話す恐怖」を克服していくというのが理想。でも、全部の条件を満たすのは難しいため、できるだけ多く組み合わせて、ということ。

特別支援教育が浸透しているイギリスの学校においても、条件をそろえることはなかなか難しそうです。というのも、学業に支障がなく問題を起こさない緘黙児は、放置されてしまう傾向が強いからです。イギリスでも、特別支援の予算やマンパワーが限られているため、後回しにされるケースが多いよう。まだ特別支援制度が徹底していない日本の学校で、環境を整え、支援ネットワークを作るのは、かなりハードルが高そうです。

1) 自己評価をあげる

★大人のメンター(保護者以外の指導者・支援者)を得る

  • 純粋にその子が好きな人/子どもとの関係を楽しめる人
  • 子どもに自分の価値を解からせることができる人
  • 子どもを信じ、子どもの自信を養わせることができる人

*みく注: 保護者では関係が近すぎるため、第三者の頼れる大人との繋がりを作ることが重要とのこと。保護者以外の大人に認められることは大きな自信になります。また、将来自立していくための足がかりにもなるでしょう。

イギリスでは、運が良ければ学校でTA(教員助手)が緘黙児の支援に当たります。日本では、学校でどんな支援を受けられるかは、担任の力量による部分が大きいかもしれませんね。

学校外で親しい親戚や知人などの協力を得られるといいんですが、多忙な暮らしの中で密に連絡を取るのは難しいかもしれません…。面倒見のいい習い事の先生、信頼できる家庭教師なども助けになりそうです。

★友達関係を広げる

  • 社会的な適性の確認
  • 同世代の子どもとのふれあい/会話の経験

<友達を作る方法>

  • 目的のある活動や共通する興味を通じて
  • 大人の仲介を通して
  • (ASDが併存する場合は)場面緘黙を認識させた後、特定のソーシャルスキルや会話練習のグループを通じて

*みく注: 仲の良い友達がいるかいないかが、子どものメンタルヘルスに影響してきます。子どもが好きなこと、得意なことを伸ばすように努め、共通の趣味や目的を持つ仲間を見つけることができるといいですね。学校の友達もですが、習い事や趣味関係の友達、違う学校に通う幼馴染、従兄弟など、学校外で自分を理解してくれる同世代の子がいれば、自己評価も随分違ってくると思います。

親にはバカバカしいと思える知識が、子どもの間では尊敬されることも。例えば、ASD児専門校に遊戯王博士と呼ばれる子がいるんですが、共通事項があれば違う学年の子とでも話が弾み、方々の大会に参することで行動範囲も広がっています。何より、好きなことが生活の楽しみ・励みになっています。子どものやりたいことを尊重し、奨励しましょう。

ASDやその傾向がある子どもは、将来の円滑な人間関係を築くためにも、ソーシャルスキルを学ぶことが重要になってくると思います。

 

息子の緘黙・幼児期1~2歳(その2)

引っ込み思案のはじまり

1歳を過ぎると自我が芽生えてきて、子どもの感情表現や個性がはっきりしてくるといいます。息子も2歳近くになると、かなり性格が固まってきたようでした。

うちは息子が1歳9ヶ月の時に、現在の家に引越してきました。日本人駐在員の家族が多いエリアの端っこに越してきたため、公園やプレイグループで日本人の子どもと顔を合わせる機会が多くなり、ちょっとしたカルチャーショック(笑)。それまでは、家では日本語、外では英語という感じだったのが、初めて仲の良い日本人の友達ができ、日本語を聞く・話す割合がぐっと増えたのです(話すといっても、まだ一語文でしたが)。

(主人はというと、実は日本語を話せるのですが、「バイリンガルに育てたいから英語に徹底してね」という私のリクエストなど全く無視。いつの間にか、息子と会話ができる方の言語に切り替えてるのでした…)。

引越し前、プレイグループや赤ちゃんグループ仲間と遊ぶ際に、気になってきたことがありました。新しい玩具やゲームに挑戦させようとすると、他の子は乗り乗りなのに息子はやりたがらないんです…。でも、家に帰って私と二人だったらやるという…。

あと、プレイグループなどで、自分が遊んでいる玩具を取られてベソをかくことが多くなりました。でも、みんなの前ではそれほど大泣きはしません — (よほど気に入っている玩具でない限り)取り返そうと怒ったり、泣き喚いたりできないようでした。反面、家で思い通りにならずに癇癪をおこす時の泣き方は、それはもうすごかった(笑)。こだわり屋で頑固な性格は、私にだけストレートに出るようでした。

そして、場の雰囲気が変わることや、場所が変わることを極端に嫌がるのです。例えば、家で機嫌よく過ごしているのに、どこかへ連れて行こうとすると急に抵抗して泣き始める…。でも、そんなに泣いて騒いだ割に、目的地に着く頃にはすっかり機嫌がなおっていることが多いのです。何ですか~?という感じで、不思議でした。

(幼稚園(3歳から)で「幼い子どもでも、急にしていることを止めさせるのは理不尽だから、事前に警告しましょう」と教わり、以来実践しています。例えば、「もう夕方だから家に帰るよ。あと5分だけね」という感じです。効き目はあったように思います)。

対人的には、1対1の関係を好む傾向が強く、3人以上の集団で遊ぶのが苦手というのが明らかになってきました。日本人の友達とは、車&電車好きという趣味がピッタリ合い、毎週互いの家を行き来しては、道路と鉄道を繋げてコレクションを駆使したごっこ遊びに没頭(彼のトミカコレクションと息子のダイカストの車&電車コレクションはとってもマニアックでした)。それなのに、そこにもうひとり彼の友達が入ると、息子は途端に引っ込み思案になり、遠慮の塊のように…。

引っ込み思案な性格は、引っ越した頃から頭をもたげてきたように記憶しています。初めての場所に馴染むのに少し時間がかかる…でも、声がでないということはありませんでした。不思議なのは、引っ込み思案な割に、すっと馴染む人や場所もあり、そういう時には自分をアピールできること。親しい親戚の集まりなんかでは、「社交的な子」と言われてたこともあるんです — 緘黙になった時、そんなイメージは消え去ってしまいましたが…。

息子は、どういう訳か大人の女性に甘えるのがすごく上手でした(今も…かな)。一度、グラニーと遊んでいるところに私が入っていったら、露骨に嫌な顔をされたのを覚えています…(涙)。また、時々仕事で家を空ける時はママ友達に子守をしてもらっていたのですが、引っ越し後に日本人の女性に子守をお願いしたことがありました。帰宅した時、息子が彼女にもたれかかって本を読んでもらっているのを見てびっくり。彼女が帰る時には、「行かないで~」と大泣きしたのでした。

そして、2歳になるちょっと前に、忘れられない???な事件が起こりました。赤ちゃんグループ仲間のひとりの誕生パーティに招かれた時のことです。彼女は大きなマンションに住んでいて、誕生会には赤ちゃんグループの仲間だけでなく、マンションに住む子ども達も。広い中庭に遊具をいっぱい広げて、子ども達は駆け回り、大人も大勢おしゃべりしていました。息子はこのシチュエーションがすごく嫌だったようで、どういう訳か動きがとてもぎこちないのです(今思えば緘動っぽい?)。

それでもなんとか慣れてきて遊具で遊び、お菓子とケーキを食べた後のこと。「皆で記念撮影をするから集まって~」と言われたのに、息子だけ断固拒否。いくら言っても動かないので、その時の集合写真に息子は写っていません…。とても切なかったです。今だからこそ、「初めて行った場所・初めて会った子ども達」に馴染めなかったから仕方ないと思えますが、その時は「知ってる子がいっぱいいるのに???」という感じで…(これほど強く反応したのは初めて。引越したため赤ちゃんグループ仲間とそれほど頻繁に遊んでなかったことも原因だったでしょう)。

関連記事 息子の緘黙・幼児期1~2歳(その1)

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話は変わりますが、ミスイングランド&ミスUKのカースティさんが、昨日のロンドンマラソンに参加し、見事完走したようです。ツイッターより写真をお借りしました。

カースティさん、王冠をつけて走ったんですね~。

SMIRAコンファレンスに行ってきました。

先週の土曜日、イングランド中部のレスターで行われた2014年SMIRAコンファレンスに行ってきました。(もとは「全国保護者会」という名前だったのが、規模が大きくなって「コンファレンス」と改名されたそう)

レスター駅で、同じロンドンからの電車に乗ってきた言語療法士(SLT)のアリソン・ウィンジェンズさんに遭遇!会場までご一緒して、お隣の席に座らせていただきました。アリソンさんは、SM治療のバイブルと呼ばれる『場面緘黙リソースマニュアル(Selective Mutism Resource Manual 2001年)』をマギー・ジョンソンさんと共著した方です。現在は現役から退き、時々大学などで講師をされているとか。

この夏(多分8月頃)、SMIRAから新書『(仮題)場面緘黙克服の取り組み:専門家と保護者のガイドTackling Selective Mutism: A Guide for Professionals and Parents (Alice Sluckin, Benita Rae Smith編)』が出版される予定なんですが、アリソンさんは場面緘黙とASD併存のケースの支援について寄稿。他にもマギーさんなど多数の専門家が寄稿していて、今回はKnetも関与しています。(まだ入稿前の昨年秋くらいに、この本が既にAmazonにエントリーされていて、ちょっとビックリしました)。

さて、10時から午後4時まで、ぎっしり詰まったプログラムは下記の通り。

・ 事務局長リンジーさんの挨拶
・ SLT マギー・ジョンソンさん  『小学校中学年以上と10代の子どもの支援』
・ SMIRA会長 アリス・スルーキンさん 『認知行動療法(CBT)の利用法』(簡単な説明)
・ 保護者 ジェイン・ディロンさん 『ローカンとジェシーキャット』
・ ディスカッション

リンジーさんの挨拶では、ミスイングランドのカースティさんから激励の言葉も。今年は参加者が70名を超え、その中の27人はSLTやTAなどの専門家や学校関係者。秘書役のヴィッキー・ロウさんほか、SMIRA事務局のメンバーを入れると合計で約80名ほどだったでしょうか。

マギー・ジョンソンさんの講演が、年齢が上の子どもの支援だったためか、緘黙のティーンエイジャーが両親と一緒に何人か参加していました。会場に足を運ぶだけでも勇気がいったと思うんですが、親との信頼関係が強いんでしょうね。ランチタイムにその一人と筆談したところ、筆談のスピードも速く、自分の意見をしっかり持ってました--学校がマンモス校だったこと、敏感すぎて騒音に耐えられなかったこと、登校できず今は家で学んでいること…。同年代の友達が欲しいという文を見て、とても切なかったです。

『ジェシーキャット - 少年の心を開いた猫(Jessie Cat: The cat that unlocked a boys heart)』の著書、ジェイン・ディロンさんの講演はかなり短く、ご紹介した新聞記事やTV番組と大体同じような内容でした。あれ以来、それほど大きな変化はなく、毎年担任が代わるごとに少し後退して、3学期には改善するというパターンが続いているとか。まだまだ自由に話せるという訳ではありませんが、仲のいい友達とは継続的に話せているそう。

IMG_4117ローカン君とジェシーキャットの話をするジェインさん

個人的に少しだけお話したのですが、ローカン君の小学校は規模が小さく1学年ひとクラスのみ。27人のクラスメイトとはずっと一緒なので、安心しているということでした。会場にはローカン君本人とお父さん(医師)も来ていて、ジェインさんの隣で本当に大人しく座ってました。写真で見る通りの、細くてきゃしゃな感じの男の子でした。

2時間あったマギーさんの講演は、すごく興味深かったです。支援を始める前に、まず自己評価をあげ、場面緘黙に向き合う必要があると強調。それから、支援者(第三者)を確保し、環境を整え、できたら専門家の支援を得、しっかりした戦略を立てて「話す恐怖」を克服していくというもの。全部の条件を満たすのは無理なので、できるだけ多く組み合わせてということでしたが、日本ではかなりハードルが高そう…。

IMG_4116マギー・ジョンソンさん(写真がブレててスミマセン)

ディスカッションでは、ASDの緘黙児のケースや薬についての質問などが出ました。「緘黙は症状であって、何故その症状が出ているかにスポットをあて、何か根本的な問題があればそれにも取り組まなければいけない。そうでないと、喋れるようになっても、根本にある問題はそのまま残ってしまう」というマギーさんの言葉が印象に残りました。例えば、子どもがコミュニケ-ションに問題を持っているとしたら、喋れるようになっても、自然にコミュニケーションが取れるようになる訳ではないんですね。まずは、喋ることばかりに焦点をおかず、子どもの全体を見ることが大切なんだなと思いました。

関連記事 ローカン君とジェシーキャット(その1)

      ローカン君とジェシーキャット(その2)

 

ローカン君とジェシーキャット(その2)

2012年にジェシーキャットがキャット・オブ・ジ・イヤーを受賞し、ジェインさんとローカン君は新聞やTVなどのメディアで何度も取り上げられました。その中のひとつ、BBCのインタビュー番組を見つけたので、内容の翻訳と一緒にご紹介ます。

左側がお母さんのジェインさん、真ん中に座っている男の子がローカン君(多分、この時7歳)、右側にいるのは兄のルーク君です。ローカン君にはもうひとり、アダム君という父親の違うお兄さんがいて、彼もアスペルガー症候群と診断されています。

アナウンサーに質問されてるのに、我関せずという感じで猫を撫でてるところとか、どこを見てるのか分からない感じ、腕や体の特長のある動かし方など、やはりASD傾向が見られるような気がしますね…。兄のルーク君の方は、かなりカメラを意識していて、所在なさげで目が泳いでる箇所も。でも、アナウンサーに答える時はきちんと視線を合わせています。

現在ローカン君は9歳になっていると思うんですが、明日SMIRA全国保護者会の講演でジェインさんからどんなお話を聞けるのか楽しみです。どんな内容だったかは、また追ってお伝えしますね。

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BBC News – Meet the cat helping a boy with Selective Mutism 場面緘黙の少年を助けている猫

http://www.bbc.co.uk/news/health-19293190

途中までの映像がありましたので、お借りして貼り付けます。残りは上記のBBCサイトからどうぞ。

男性アナ: みなさん、ようこそ。ちょっと待って、ジェシカ(猫)はどこにいるのかな?ああ、ローカンの後ろに隠れてるね。では、まず最初に家族に何が起こったか、順を追って教えてください。

ジェイン: 分かりました。ローカンは3歳半の時に幼稚園に入園したんですが、子どもにも大人にも話さないので、スタッフに心配されました。それで、調べてみたら場面緘黙だということが分かったんです。これは不安からおこる症状で、子どもが話すことを恐れたり、話せる人や誰の前だったら話せるかなど異なるルールがある様です。それが何年も続きました。ある時、ツィッターかなにかでキャッツコントロール(猫の保護団体)の広告を見たんです。どうして猫が素晴らしいのか - もちろん…あら(ジェシーキャットがソファから移動しようとする)

▲50秒

男性アナ: ローカン、猫が良く見えるように膝に抱いてくれる?落ち着かせられる?

女性アナ:あら、我慢強い猫ね。

ジェイン: そうです、すごく忍耐力があります。ローカンは感情を表現するのが苦手で、お判りのように、会う人誰にでも話すような子ではありません。まあ、今学校ではかなり改善されてきてますけど。ローカンはジェシーになら話すし、行動をともにすることが多いんです。ご覧のように、ローカンはジェシーと遊んだり、抱っこしたり、「ジェシー、大好き」とも言います。彼らの間には特別な絆があるんです。

▲1分23秒

男性アナ: (兄のルークに向かって)ルーク、ジェシーが来てから、君や弟の生活がどう変わったか教えてくれる?

兄ルーク: (弟は)以前よりも先生に話すのが好きになって、友達みんなに話してます。

男性アナ: (ローカンに向かって)猫に話すってどんな感じ?どうやって猫に話すのか、知りたいな、ローカン。どうやって話すの?

ローカン: (猫の耳に口を近づける)

男性アナ: 耳に囁きかけるんだ。そうやって話すんだね?猫はちゃんと分かるの?…そういえば、僕自身も自分の猫に話しかけるな。

女性アナ: ローカンにとっていいのは、猫は返事をしないことかしら。

ジェイン: あら、返事はしますよ。

女性アナ: そうなんですか?

ジェイン: とても大きな声でニャーニャー鳴きます。

▲1分58秒

女性アナ: ルークが学校で大きな変化があったといいましたが、どんな変化ですか?

ジェイン: 大人とは全く話さない状態から、この2、3ヶ月はクラス担任に話し、彼女の前で声を出して本を読めるようになりました。これはすごいことなんです。なんといっても、子どもが話せなければ、どのくらいの学力があるのか解りませんから。もっとすごいのは、この9月にクラス担任になる予定の先生にまで話せたんです。明らかに、猫はすごく助けになっていて、息子に自信をつけさせてもくれます。幼稚園でも小学校でも、言語療法をするなど、努力してくれましたし…。

▲2分34秒

男性アナ: この番組で今までに色々な動物をスタジオに招いたけれど、君の猫はものすごく行儀がいいね。いつもこうなの?いつもこんなに大人しい?

ジェイン: いいえ(笑)。犬に追いかけられているような時は、家を壊しかねない勢いよ。

男性アナ: 犬も飼ってるんですか?

ジェイン: ええ。

女性アナ: 猫と犬では違いがありますか?ジェシーキャットは特別だと思います?

ジェイン: ええ、思います。よく、猫はよそよそしくて独善的という人がいますが、私はそうは思いません。ローカンはうちの犬とよく取っ組み合うんですが、う~ん犬は猫より知性が劣るというか…あら、酷い言葉ね。でも、猫がとても温厚なのに対し、犬は食べることとラフな遊びにしか興味がないんです。ジェシーはもっと優しくて、ローカンの隣に座って前足をのせたり。

▲3分18秒

女性アナ: ジェシーは賞をとったんですよね?

ジェイン: ええ、二つの賞を獲得しました。昨日、ベストフレンドのカテゴリーで受賞し、最後にキャット・オブ・ジ・イヤーに選ばれたんです。アナウンスされた時は、びっくりしました。(猫がジェインさんに噛み付いて、スタジオ内が和む)

男性アナ: こんな風に猫との絆が助けになった子どもの話を聞いたことはありますか?

ジェイン: もちろんあります。通常は自閉症のケースですね。これもコミュニケーションの障害ですが、とても似ているところがあります。場面緘黙はその症状の出方から自閉症と間違えられることも多いですし…。でも、明らかに、大人から子どもまで様々なケースの話を、特に猫と子どもの話はよく聞きますね。猫はとても温厚で愛情深く、よくしてあげれば愛情を返してきますから。

▲4分08秒

男性アナ: 聞いたところでは、ローカンは今僕たちとは喋らないけれど、スタジオの外では…。

ジェイン: お喋りが止まらなかったわ(笑)。

女性アナ: (ローカンに向かって)今朝はずっとお喋りだったんですって?

男性アナ: TVに映ってるからだよね?その違いだよね?今日はどうもありがとう。

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