PDA(病理的要求回避)の具体例

6月ももうすぐ終わり…ということは2024年がすでに半分過ぎ去ってしまったんですね。早っ!イギリスでは10日ほど前から天気が回復し、やっと初夏らしい気候になってきました。ここのところ夜9時半過ぎまで明るいのですが、6月20日の夏至から徐々に日が短くなっていると思うと、なんだか淋しいです。

      6月は果物が美味しい季節。露地栽培の国産の苺が出回り、時おりヘタに花びらがついた苺も。忘れた頃に芽吹いた鉢植えの苺は、5年連続で小さな実をつけました。ブルーベリーの実は、今年こそ小鳥に盗られないようにしないと…。イギリスでは甘みの強いフラットピーチ(平たい桃)が人気です

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これまで3回にわたってPDAの説明をしてきましたが、実際にはどんな症状なのか?文章を読んだだけでは良く判りませんよね。

9年前にイギリスで放送されたTV番組シリーズ ”My Aggressive Toddler/ Born Naughty?(うちの攻撃的な子ども/ 生まれつき反抗的?)” で、PDAと診断された子がいるので映像を観ていただければと思います(英語ですが、彼の行動を目で追うだけでもかなり参考になるはず)。

この回に出演したのは、3歳のビリーと8歳のチャーリー、そして家族たち。両家の保護者は、ともに子どもがASD(自閉症スペクトラム)ではないかと疑っています。

注目していただきたいのは、8歳のチャーリー(7:19-/ 15:18-/ 20:10-/ 28:17-/ 34:37-/ 34:40-)の方。母親のマキシーンさんは、彼の行動は発達上の問題に起因するものと確信し、支援を求めて4年のあいだ不毛な戦いを続けてきたそう( 15:18-)。番組の終わりに、ようやく「ASDのPDAプロフィール」という診断が降りました。

撮影時点では、チャーリーはホームスクーリングを余儀なくされ、ほとんど家で過ごす毎日(7:19-)。ゲームで負けると不機嫌になり、母親がスイッチを切った途端、叫んで母親を攻撃し始めます。自分の意向にそわないと態度が激変――そんな彼をマキシーンさんは「ジキル博士とハイド氏みたい。全く予測不可能」と告白。

ラビ医師が家を訪問し、まず祖父にインタビュー(17:09-)。祖父母には懐いていますが、祖父いわく「チャーリーは私達を側にいさせるけれど、いつもひとりで遊んでいる」とのこと。ソーシャルスキルの問題を示唆していますね。

学校や友達について聞かれると(17:38-)、チャーリーは「やってないのにいつも怒られるから学校は嫌い」「友達はX Boxの仲間たち。喧嘩しても実際に殴り合いにならないから」と答えました。ラビ医師は「思考や行動に柔軟性がなく、曖昧な言葉や冗談が理解できない。変化を嫌い、社交性がない」とASDの疑いを強めます。

私が気になったのは、ASD児の5人に1人が学校システムから排除されているというナレーション(20:10-)…チャーリーもそのひとりで、週に数時間は家庭教師がつくものの、ほとんどの時間をTVやPCゲームに費やしているのです。外出は極度に嫌うそう。

「犬の散歩に行くから靴を履いて」と頼む母親を拒絶するチャーリー。なんとか玄関まで来させると、チャーリーは止める母親を無視して外へ猛ダッシュ。いつも公園の樹に登り、母親が犬を散歩させている間中ずっとそこにいるのが習慣なんだそう。今まで母親や犬と一緒に歩いたことは一度もないとか…。

次に、児童心理士のケネリーさんと言語聴覚士のヘレンさんがチャーリーを訪問(21:52-)。一人がアセスメントを行う間、もう一人はボディランゲージ他を確認します。体を揺らす、思考が狭い範囲に限定されている、非言語コミュニケーションを使わない――ASDの特性が見て取れます。

また、いつもと違うビスケットを出されたチャーリーは、彼女たちと視線を合わせたり、問いかけたりしません。食べかけのビスケットを口から出して「おいしくない」とテーブルに戻しました。

チャーリーの睡眠のパターンを調べてみると(28:17-)、寝かせようとする母親に対してメルトダウンを起こし、暴力を振るっています…。ここで心理学者のケネリーさんが着目したのは、チャーリーが何度も体を揺らしていたこと。

複数のアセスメントの結果、常同行動や思考の狭さから、専門家チームはチャーリーがASDであると診断(40:00-)。加えて、新しくできたPDA問診を行ったところ、通常よりかなり高い数字が出たため、ASDのPDAプロフィールであることも同時に診断されました。診断結果が出ると、母親のマキシーンさんは安堵の涙を浮かべました。これでやっと皆に理解してもらえ、適切な支援をしてもらえると希望を持てたからです。

診断後、この情報は地方自治体に通達され、チャーリーは新しい学校に受けいられることに(TVで取り上げられたため、上手く行った部分も大きいかと思います)。家庭でも家族がPDAについて学んだことで、状況は好転。以前より笑顔が増え、かなり落ち着いて暮らせているよう。

朝チャーリーを起こす時(44:50-)、マキシーンさんは大きな砂時計を枕元に置き、「今から10分、砂が全部下に落ちたら起きるのよ」と告げます。こうすることで母親の要求は砂時計の要求にすり替わり、彼女が攻撃されることはないのだとか。

砂時計はゲームをやめさせる時や、寝る時にも使えそうですね。また、「◯◯をしなさい」ではなく、「何分で◯◯ができるかな?競争しよう」とゲーム感覚にすれば、要求の様には聞こえません。

緘黙もそうですが、子どもに合う支援を見つけることの重要性を感じました。

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PDA(病理的要求回避)とは?(その3)

イギリスでは先週末から天気が回復して、やっと通常の6月の気温に戻った感じです。一年で一番いい季節を楽しもうと日本からやってきた友達にとっては、雨降りの寒い日が続いて気の毒でした。

    ロンドンのキングスクロス駅近くにある生物学研究所、フランシス・クリック・インスティテュートで脳の研究をテーマにした『Hello Brain!』展を観てきました。現代神経科学の父、サンティアゴ・カハル(1852-1935年)による細密な脳細胞のスケッチや毛糸で編まれた脳細胞を見て不思議な気持ちに

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PDA(病理的要求回避)はASD(自閉症スペクトラム)のプロフィールのひとつ」と言われますが、標準的なASDの支援対策では機能しないことが多いといいます。

英国PDA協会が推奨するアプローチはPANDA:

P(Pick Battles)  やらせたいことを選ぶ

  • ルールは最小限に
  • こどもが選択しコントロールできるようにする
  • 理由を説明する
  • できないこともあると受け止める

A(Anxiety Management) 不安の管理

  • 低覚醒アプローチを使う
  • 不確実性を軽らす
  • 根底にある不安と社会的/ 感覚的な課題を確認する
  • 事前に考えて計画を立てる
  • メルトダウンはパニックアタックとして扱う:一貫したサポートを行い、先に進む

N (Negotiation & Collaboration)  交渉と協力

  • 冷静さを保つ
  • 課題を解決すべく積極的に協力し、交渉を行う
  • 公平性と信頼を主眼とする

D (Disguise & Manage Demands) 要求を隠して、管理

  • 要求は間接的に
  • 常に要求に対する許容範囲をモニターし、それに応じた要求をする
  • 子どもと一緒にやることが助けとなる

A (Adaptation)  臨機応変に

  • ユーモアや気晴らし、目新しさ、ロールプレイを試してみる
  • 柔軟な態度
  • プランBを立てておく
  • 十分な時間を与える
  • ギイブ&テイクの量的バランスを取る

では、具体的にはどうサポートしたらいいのでしょう?

例えば、部屋を片付けさせたい時:

<時間など選択肢を与える/ 柔軟な対応をする>

今部屋を片付けなさい  ⇒  今日は部屋を片付けてみようか? いつやってみる、今それとも後で?

★子どもが何かを要求してきたら、子どもと相談して小さなご褒美を与える

<間接的に言い換える:「~なさい」など直接的な要求は避ける>

部屋を片付けなさい ⇒ 何から片付けたらいいかな? 誰が早く片付けられるか競争しよう!

おもちゃを箱にしまいなさい ⇒ ゲームしようか? 何個おもちゃ箱に入るかな?

★要求されているのではなく、自分で選んでコントロールできるかのような言い方に換える

「色合わせ」をゲームにした具体例:

https://www.instagram.com/tv/Cbrk7S4pkrU/?utm_source=ig_web_copy_link

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PDA(病理的要求回避 Pathological Demand Avoidance)とは?

5月も今日で終わりです。何もしないうちに、またあっという間に時間が経ってしまいました。一時期は初夏の気候になって暑かったのですが、1週間ほど前からぐずぐずの天気に。今日は風が強い雨の一日で、冬に逆戻りした様な肌寒い一日でした。

   今年もまたリージェントパークのメアリー女王の薔薇園に行ってきました。生憎の雨の中、イングリッシュローズが静かに薫って

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イギリスではここ数年の間に、: PDA(Pathological Demand Avoidance 病理的要求回避)という症状名をよく耳にするようになりました。

PDAはASD(自閉症スペクトラム)のプロフィールのひとつと理解されていますが、その研究はまだ初期段階です。ただ、イギリスでは自閉症の診断時にPDAのアセスメントが追加されることも多くなってきているよう。

PDAの子ども/人は、社会的コミュニケーションの困難さや感覚過敏などASDの特徴を併せ持つといわれています。その上で、毎日すべき義務(タスク)を社会的な策略を駆使しながら、異常なまでに避けるというのが特徴。

英国PDA協会(Pathological Demand Avoidance Society)による定義は:

<自閉症スペクトラムのPDAプロフィール>

  • 現在「持続的な困難」と定義されるASDの特徴――社会的コミュニケーションと社会的な相互関係の困難さ、そして制限的で反復的な行動・活動・興味のパターンを――を併せ持つ
  • 多くの場合、一般とは異なる視覚・臭覚、触覚、聴覚、さらに飢えや渇きといった内的感覚などの感覚体験を覚えることが含まれる

上記に加え、下記のPDAプロフィールの多くの主要特性を備えている

  • 日常生活のあたり前の要求に抵抗し、回避する
  • 回避のいち手段として、社会的な策略を使う
  • 社交的に見えるものの、理解力に欠ける――予測よりもっと「社交的」に見えるかもしれない(例えば、より「従来型」に近いアイコンタクトや会話スキルなど)。しかし、これによって根底にある社会的コミュニケーションと社会的な相互関係の困難さが隠蔽されている可能性がある
  • 感情や気分の起伏が激しい
  • 時として極端なまでに、ロールプレイ、ふり、空想に没頭する
  • 多くの場合、度を超えて人に執着する――PDAの場合「反復的または限定的な興味」は社会的な性質のもので、実在または架空の人物が対象となる
  • 自己コントロールの必要性が高い――これは不安、または要求に直面した際の自動的な「脅威反応」によって引き起こされることが多い
  • 支援、子育て、教育における従来的なアプローチに反応しない傾向が強い

About autism & PDA

緘黙児のなかにもPDAを持つ子どもが?

緘黙児にとって「おはよう」や「いただきます」など、毎日の挨拶はとても難しいことです。当たり前のことだからこそ、話すことを期待されていると強く意識してしまう。だから、余計に緊張して言葉がでなくなると考えられます。

当たり前の挨拶をしない――緘黙を知らない人からすれば、「失礼な子」と誤解されてしまいますよね。

言うことが決まっているから簡単と思ってしまいがちですが、うちの息子も学校で声が出始めてから、朝の出欠確認に答えられるようになったのは随分後のことでした。

ただ、日常の挨拶ができないのは緘黙のせいではなく、PDAのケースもあるかもしれません。

イギリスのSLT(言語療法士)、リビー・ヒルさんは、緘黙児の中にもASDの特性を併せ持ち、PDAの症状を持つ子どもがいると警鐘を鳴らしています。

もしPDAの場合は、従来とは異なるアプローチが必要だからです。

(長くなってしまったので、次回に続きます)

場面緘黙と自閉症(その3)SMiRAの立場

イギリスはもうすっかり秋の気候。今日は久しぶりに秋晴れのいい天気になりました。これから落葉樹の梢がだんだんと紅葉していくのが楽しみです。

    雨降りの夕方、東の空にくっきりと円い虹がお目見え。よく見たらダブルレインボウでした。近くの公園でイギリスでは珍しいススキを発見

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場面緘黙の診断に関するSMiRAの立場

a. 診断担当医は、患者がSMの診断基準を満たしていると考える場合、SM(かどうか)の評価を行う必要がある。2018年、ICD-11が発表される前に推奨されていた診断基準は、SMを不安障害として記載していた DMS-5の診断基準でした。ICD-11ではSMを「不安障害または恐怖関連障害」として分類しています。除外疾患として次のものが挙げられます:

  • 統合失調症
  • 幼児の分離不安の一部としての一過性緘黙症
  • 自閉症スペクトラム障害

ICD-11における除外とは、「他(の分野)に分類されるという条件」であり、「ICD内で相互参照として機能し、カテゴリーの境界を定めるのに役立つ」ものです。これはSMとASDが別の障害として分類され、したがって併存疾患として診断できることを意味します。これは「(ASDの経過中)のみに起こるものではない」というDSM-5で使用されている除外の定義とは異なります。

注:解りにくいのですが、DSM-5ではASDの経過中にSMを発症した場合はASDが一次障害として上位診断され、二次障害であるSMは除外されて診断されないことになります。

SMIRA’s position on diagnosis of SM:

a. Diagnosing practitioners should make an assessment for SM where they believe the patient meets the criteria for such a diagnosis.The preferred diagnostic criteria prior to the publication of ICD-11 in 2018 were those published in APA DSM5, which lists SM as an anxiety disorder. ICD-11 classifies SM as an ‘Anxiety or Fear Related Disorder’. It lists as exclusions:

  • Schizophrenia
  • Transient mutism as part of separation anxiety in young children
  • Autism spectrum disorder

Exclusions in the context of ICD-11 are ‘terms which are classified elsewhere’ and which ‘serve as a cross reference in ICD and help to delimitate the boundaries of a category’. This means that SM and ASD are classified as separate disorders and can therefore be diagnosed as co-morbid. This differs from the definition of exclusions used in DSM5 as ‘does not occur exclusively’.

b. 診断担当医は、たとえ他の疾患に対する既存の診断があったとしても、SMについては別個の診断をくだす必要があります。SMiRAではDSM-5の併存診断からSMを「除外」することは、医療従事者とその患者にとって非常に無役だと考えています。これは、特に併存障害がASDの場合に当てはまります。私たちはASDを持つ人はSMの可能性もあると考えており、これはIDC-11の分類を使用すれば〈診断は)許容されます。

このSMiRAの立場は、『場面緘黙リソースマニュアル第2版 The Selective Mutism Resource Manual 2nd Edition』と『場面緘黙支援の最前線 Tackling Selective Mutism』で明らかにされており、後者ではマイケル・ラッター教授(キングスカレッジ・ロンドン精神医学研究所)によって支持されています。

b. Diagnosing practitioners should make a separate diagnosis for SM even if there is a pre-existing diagnosis for another disorder. SMIRA believes that ‘excluding’ SM as a comorbid diagnosis in DSM5 has been very unhelpful to medical practitioners and their patients. This is especially true in the case of ASD. We believe a person with ASD can also be selectively/situationally mute (SM), and this is allowable using ICD-11 classification.

This position is made clear in The Selective Mutism Resource Manual 2nd Edition and in Tackling Selective Mutism, the latter being endorsed by Professor Sir Michael Rutter (Institute of Psychiatry, King’s College London).

SMiRAがこの声明を出しているということは、イギリスでもまだSMの併存診断がつかないASD児がいるということですね…。うちの特別支援学校でも、SMや書字障害などのLD、ADHDを併せ持つ子が大勢います。イギリス国内ではASDの他に、これらも別個の障害として診断がおりているものと思いこんでいました…。

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場面緘黙と自閉症(その2)DMS-5 と ICD-11

今週は雨が降ったり・止んだりの肌寒い天気が続いています。雲の合間に陽が射して青空がのぞく時間もありますが、あたりはもうすっかり秋の空気。学校は始まったものの、まだ最終的な時間割が決まらず、ちょっと中途半端な日々です。

      久しぶりに訪れたハイゲートの森。うちの四季咲きのイングリシュローズは色も姿も儚げ

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さて、前回の続きです。

「現在の規定ではASDとSMの併存を診断できないのか?」という質問に対して、匿名で下記のような回答がありました。

DMS-5 (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders  米国精神医学会が作成する精神疾患の診断・統計マニュアル第5版) においても、ICD-11 (International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems 世界保健機関WHOが作成する疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第11版) においても、ASDとSMとが同時に診断することは可能です。ただし、そのためには子供の持つ発話の問題はASDが原因ではないことを確認する必要があります。

DMS-5よりSMの規定の抜粋

The disturbance is not better explained by a communication disorder (e.g. childhood-onset fluency disorder) and does not occur exclusively during the course of autism spectrum disorder, schizophrenia, or another psychotic disorder.

この障害はコミュニケーション障害(例えば、小児期発症流暢症)では説明がつかず、ASD、総合失調症、その他の精神障害の経過中のみに起こるものではない。

DMS-5より(どこに記されているか不明)

Neurodevelopmental disorders Individuals with an autism spectrum disorder, schizophrenia or another psychotic disorder, or severe intellectual disability may have problems in social communication and be unable to speak appropriately in social situations.

ASD、総合失調症、その他の精神障害を持つ神経発達障害の人、または重度の知的障害がある人の中には、社会的コミュニケーションに問題があったり、社会的状況で適切に話すことができなかったりするケースがある。

       ⇑  <上記に対する投稿者の意見>

でも、彼らにSMの症状がある場合、そのコミュニケーション上の問題は別の種類のものだから、ASDだからという理由ではうまく説明ができません。その問題は様々な場面(状況)を超えて持続する、もしくは会話の欠如ではなく会話の内容に関連するかのどちらかです。

ICD-11から

Boundary with Autism Spectrum Disorder and Disorders of Intellectual Development:

Some individuals affected by Autism Spectrum Disorder or Disorders of Intellectual Development exhibit impairments in language and social communication. However, unlike Selective Mutism, when language and social communications impairments are present in Autism Spectrum Disorder and Disorders of Intellectual Development, they are notable across environments and social situations.

ASDおよび知的発達障害との境界:

ASDや知的発達障害がある人の中には、言語や社会的コミュニケーションに問題を抱える人もいる。しかし、ASDや知的発達障害の人に言語や社会的コミュニケーションの障害がある場合は、SMとは異なり、その問題は環境や社会的状況を問わず現れる。

 ⇑   <上記に対する投稿者の意見>

そのため、ASDの子どもが場面緘黙になっている状況でのみ沈黙している場合は、SMとASDの両方を診断することが可能。反対に、彼らが常にコミュニケーションの問題を抱え、その原因がASDである場合はSMの診断はできません。ASDが除外セクションに記載されているのはこのためです(SMと診断する前に、言語の障害の原因としてのASDを除外する必要があるため)。子どもが安全と感じる状況では話し(例:家庭)、不安が強い状況では話さない(例:学校)のはSMに特有な性質で、ASDが原因ではないからです。

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DMS-5の「SMはASD等の経過中のみに起こるものではない」という言い回し、すごく解りにくくないですか? ASD経過中にも起こりうるし、そうじゃない時にも起こりうるということ?

追記:DSM-5では、ASDの経過中にSMが起こった場合、医学的にはASDが一次障害でSMは二次障害という位置づけ。そのため、一次障害のASDが上位診断となり、原則的に併存するSMは診断されないということだそう。

私は高機能ASD児を専門とする特別支援校に8年間勤務しているのですが、ティーンの生徒たちは言語能力が高く目立つ常同行動もないため、一見するとASDだとは分からない子が殆ど。グレーゾーンの子も入れると、学校などで問題が起きなければ、周囲が子どものASDに気づかないということも理解出来るんですよね…。

スレを立てた方の質問は、診察やテストの際にSM児が話さないから診断不可ということでしたが、子どもが家で話している映像を利用したら、少しは手助けになるかもしれないと思ったのでした。

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場面緘黙と自閉症(その1)

もう9月も半ばですね。今年は日本から友達が二人もやってきて、あっという間に夏休みが終わってしまいました。最後の最後に、この夏の課題だった遮光ブラインド作りに着手。やっと完成したんですが、ギリギリになるまで夏休みの宿題をやらなかった学生時代と同じ^^;  なんやかんやでブログをさぼってしまい、前の記事から1ヶ月近く空いてしまいました…。

     

     秋風が吹き始めた中庭に咲く花々。ご近所さんにもらったナスタチウム(?)が巨大化して、あっという間に庭の一角を占拠してます😲

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私がこのブログを始めた2013年頃、イギリスでは場面緘黙(以降SMとします)と自閉症(以降ASDとします)の関連はほとんど取り沙汰されていませんでした。当時はSMとASDの併存という話題も非常に少なかったと記憶しています。その反面、日本では多くのSM児に発達障害が認められると言われていました。

当時、イギリスでは緘黙治療法が進んでいて、マギー・ジョンソンさんをはじめとする専門家たちや緘黙支援団体のSMiRAが全国的な活動を行っていました。そのイギリスで発達障害との関連について議論されていないのに、どうして日本では?と不思議に思っていたのです。

そこで、『日本では発達障害と見なされやすい(1-6)?』という記事で自分の見解を書いた訳です。

ところが、ここ5、6年ほどの間に随分様相が変わりました。SMiRAのFB掲示板でもSMとASDの併存についての話題がぐっと増えてきたのです。

今ではASDとSMが併存することは周知の事実。ただし、これはSM=ASD/ 発達障害ということでは決してありません。ただ、SMの背後に潜んでいるかもしれないASDや他の発達障害、言語の問題等の可能性を慎重に考慮すべきという姿勢になっていると思います。

最近、SMiRAのFB掲示板に特別支援教育の関係者から下記のような質問がありました。

質問者は複雑なニーズを持つ子どもたちを担当。彼女の職場では、子ども達が話さないために5/6歳で行ったASDの診断テストの評価をすることができなかったそうです。子ども達が10、11歳になった現在、心理士達はASDの評価を行うことに消極的なのだとか。その理由が、SMの診断基準ではASDは存在し得ないと規定されているため。両方の診断マニュアルによると、ASDとSMの両方を持つことができないというのです。それで、実際のところはどうなのかと。

この質問に対して多くの反響があり、当事者1人と29人の緘黙児の保護者が「子ども(自分)にはSMとASD両方の診断がおりている」と返答。更に、「SMだからASDの診断ができないというのはおかしい」という書き込みが多くありました。

保護者たちの回答から、子どもたちの診断パターンが2つに別れているのが分かりました。ひとつは幼児期にSMの診断がおりて、複数年後(長くて10年ほど)にASDの検査をして診断がおりたケース。もうひとつは、ASDの診断が先におり、数年後にSMの診断がおりたケースです。SMとASDの診断が同時におりたケースはなく、何故なのか気になっています。別々の専門機関で診断してもらう必要があるんでしょうか?

次回はアメリカ精神医学会による診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)DSM5と国際疾病統計マニュアル(ICD 11)におけるSMとASDの規定を比べてみたいと思います。

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場面緘黙とASD(その3)ASDの女性

8月もすでに半ばを過ぎてしまいました。イングランド南部では先週金曜日から6日間30度を超える(ロンドンは32~36度)猛暑日が続き、1961年以来の記録だそう!日本はもっと暑い毎日が続いているようですが、ちょっと想像がつきません。みなさん、熱中症にはくれぐれもお気をつけて!

夏の花がそこかしこに咲き誇っています

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先回、最近までASD(自閉症スペクトラム障害)の女性は、典型的なASDの特質が見えにくいため、見過ごされたり、診断の網の目を潜り抜けてしまうケースが多かったことを書きました。

これは診断を受けずに成人し、何とか社会生活を切り抜けている人も大勢いるということ。じゃあ、それでいいじゃないかと思われるかもしれませんが、そうではないことを学びました。

目立たなくても、彼女たちが実生活で多くの困難を抱えていることに変わりはないのです。

「なぜ自分は皆と違っているのか?」「どうして人並みにできないのか?」「なぜ対人関係が上手くいかないのか?」「どうして社会的な場面にストレスを感じるのか?」

何とか毎日をやり過ごすことができても、コミニュケーションの問題や社会的な困難を克服することはできません。困難を抱え続けることで自分に自信が持てず、自己評価が下がり、二次障害を発症しやすくなるといいます。

診断名がつくことで、なぜ自分が困難を抱えているのか理解できます、自分の存在について納得し、受容することができるのです。これは生きていくうえでの大きな力。

2013年に改訂されたDSM-5では診断基準やスクリーニングツールが見直され、それが診断改善の鍵になっているとのこと。

DSM-5 autism criteria relevant to gender is reviewed, along with the role diagnostic screening instruments play in perpetuating gender bias. Finally, the sensitivity of DSM-5 criteria to females on the autism spectrum is considered within the context of social work practice and research.

DSM-5においては、性別に関連する自閉症基準が、性別のバイアスを恒久化させる診断用スクリーニングツールと共に見直されます。最終的に、自閉症スペクトラムの女性に対するDSM-5基準の感度は、ソーシャルワークの実行および研究の範囲内で考慮されるようになります。

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ASDの女児・女性にも様々なタイプがいますが、私が気になったのは下記の2つ。

  • おとなしくて行儀がいい
  • 内気で受動的

内気、臆病、大人しい、受動的、あまりしゃべらない――世間は「女の子だから」と受容し、男児・男性ほどにはASDを疑いません。内向的な性格というよりも、どう行動・対応していいのか判らないため、黙っていることで対処しているケース。また、後ろの方でみんなのすることを観察・分析しているケース。間違えたり、目立つことを嫌い、大人しくしていれば注目されないことを学習したケースなどがあるよう。

それから、ASDを隠している二次的なメンタルヘルスの問題として、下記の例が挙げられていました。

  • 不安障害
  • 拒食症
  • 統合失調症
  • うつ病
  • 自傷癖
  • 場面緘黙

場面緘黙が出てきたのでハッとしたのですが、ASD児と同じようにSM児にも感覚過敏な子が多いですよね…うちの子もそうでした(成長とともに過敏さは鈍化したようですが)。

ASD児は感覚過敏のために授業や遊びに集中できないことも多いといいます。また、これは別問題かもしれませんが、会話や授業の内容(データ)を処理するのに時間がかかるため、すぐ会話に加われなかったり、答えられなかったりすることもあるよう。

SM=ASDではありませんが、もしかしたら場面緘黙の裏にASDが隠れているかもしれません。

でも、世間話ができなかったり、社交が苦手だったりするのは、長年緘黙で人と関わる体験を積んでこなかったせいもあるのかも…ASDはスペクトラムなので境界線は不明確ですよね…。

実生活で支障がなければそれでいいんですが、悩んでいる場合はやはり周囲の理解と支援が必要だと思います。

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場面緘黙とASD(その2)

場面緘黙とASD

2019年SMiRAコンファレンス(その6-2)ASDの定義

2019年SMiRAコンファレンス(その6)SMとASDへの基本姿勢

2019年SMiRAコンファレンス(その5)SMとASDの対比

2019年SMiRAコンファレンス(その4)SMとは何か?

2019年SMiRAコンファレンス(その3)ASDとは何か?

2019年SMiRAコンファレンス(その2)SMとASD

2018年SMiRAコンファレンス(その5)

場面緘黙とASD(その2)

7月も今日で終わりですね。ロンドンは今日、今年の最高気温36度を記録しました。久しぶりの猛暑だったためか、暑さ負け…なんだか体がだるくて頭痛がします。

でも、晩御飯にそうめんとお魚、サラダを食べたら、ちょっと回復。日本には季節に合わせた食文化があって、やっぱりいいなと思います。次は鰻のかば焼きを食べたいけれど、高くて手が出ないかな…。

真夏の入道雲?

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私が日本語を教えている特別支援学校では、ロックダウン中に多数のオンラインコースを受講させてくれました(というか、義務だったのですが…)。その大部分は、生徒やスタッフの安全を守るためのセーフガード関連。

それとは別に、ASD(Autistic Spectrum Disorder 自閉症スペクトラム障害)の女子生徒が増えてきたことを踏まえ、『少女と女性の自閉症』も受講できることに。これはイギリスの全国的なチャリティ団体、National Autistic Societyが作成した、最新の研究・情報に基づく研修コースです。

SMiRAのFBページでは、ここ5年ほどの間にASD併存やその疑いのある緘黙児が増えていて、緘黙とASDの関係が気になってました。

かつてASDは男児・男性に多いとされ、男女比は4:1とも5:1とも言われてきました。が、最近では女児・女性が増え、比率は3:1くらいとされているよう。これは実際にASDの女児・女性が増えた訳ではなく、相談件数が増えたり、診断漏れが少なくなったから。

自閉症(Autism)はレオ・カナーによって1940年代に発見されましたが、現在のように先天性の脳障害と判明したのは1960年代後半のこと。それから50年位しか経っていないので、明確になっていない部分もまだまだ多いんでしょうね。そういう意味では、場面緘黙もまだ研究が進んでいないかも。

オンライン研修でまず気づいたのは「masking 覆い隠す」という単語の多さ。(なお、本人が意識してmaskingしているケースもあれば、無意識のうちにmaskingが習慣になっているケースもあるとのこと)

典型的なASD検査は男児・男性を対象に作成されたものなので、ASDの特性を覆い隠すことに長けた女児や女性は、検査の網を潜り抜けてしまうらしいのです。また、社会に根強く残るジェンダーステレオタイプの概念――例えば、女児・女性は大人しくても当たり前――が、相談や診断への道を妨げているとも。

イギリスでは、80年代にアスペルガー症候群の研究を発表したローナ・ウィング女史の「3つの特徴」が、現在もASDの基本定義として使われています。その定義とは、

  • 対人相互作用における質的な障害 (非言語性行動や相互関係の困難さなど)
  • 意思伝達の質的な障害 (話し言葉の遅れ、偏り、言葉遣いの奇妙さなど)
  • 行動、興味及び活動の限定された反復的 (強いこだわり、固執、常同行動など)

これらの特性を兼ね備えていても、女児や女性はmaskingによってそれが目立たないことが多いとか。それでもよく観察すれば、目立たない特性が見えてくるのです(多分、ここでは高機能で言語の発達に遅れのない群が対象だと思います)

ASDの女児・女性の特徴

  • 分析的な思考
  • 社会的な対人スキルの高さ(男児・男性に比べ)

ASDの女児は、分析的な思考をベースにして世の中を理解しようする傾向が強いといいます。周囲を観察し、TVや映像等からも、人が言ったり、したりしていることを分析してコピーするのだそう。他人との関わり方もそうやってコピーするため、一見すると、ちゃんと社会性があり、人との相互関係も問題ないように見えます。

でも、実際のところはものすごく神経を使いながら、自分の役割を演じているのです。そのため、帰宅してから学校での我慢が爆発してしまうことも多いそう。また、自分が作ったシナリオ通りに物事が進まないと、非常な不安に襲われ、対処できなくなるとも。

視線は合うし、こちらの問いかけにはちゃんと答えるし、友達とも上手くやれているように見える――園や小学校の教諭たちは、そういう子どもに問題があるとは思わないですよね。それで、発見が遅れたり、見過ごされたりするのだそう。

ちょっと長くなりそうなので、続きは次に書きますね。

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場面緘黙とASD

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2019年SMiRAコンファレンス(その4)SMとは何か?

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2019年SMiRAコンファレンス(その2)SMとASD

2018年SMiRAコンファレンス(その5)

場面緘黙とASD

日本は度重なる台風の影響で、豪雨による甚大な被害が出ているようですね…被災者の方々に心よりお見舞い申し上げます。世界中で今までにないような大災害が多発していて、いつ自分が被災してもおかしくないような状況になってきていると思います。

雨続きのロンドンでは秋がどんどん深まり、店先にはクリスマス飾りやカードが。まだそれほど寒くないけれど、近づいてくる冬の足音がきこるよう。

  

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2013年に『緘黙は発達障害なのか?』という記事を書いた頃、SMiRA掲示板ではASD(自閉症スペクトラム障害)の併存に関する話題は殆どありませんでした。当時は不安、言語やコミュニケーションに関する問題の併存については知られていましたが、ASDや発達障害との関連についてはそれ程着目されてなかったように思います。

それが、SMiRAのFBグループ内では、ここ3年あまりでASDを併存する緘黙児の割合が急増しているのです。

その理由を推測してみると、ASDとSMに対する全体的な知識が深まってきたからのように思えます。

1) 学校関係者や専門家、ASD児の保護者がSMという症状があることに気づいた結果

イギリスでは幼児期における自閉症のスクリーニングが定着していて、就学前(5歳になる前)にはASDの診断がおりていることが多い。以前はSMの症状があっても、その子が持つ自閉症状のうちのひとつ(一定の人や状況へのこだわり/ 他人への興味が薄いため、会話する気持ちの欠如/ 社会的な理解力の問題)と捉えていた。しかし、学校関係者や保護者がSMの知識を持つようになり、ASDの二次障害だと気付くようになった。

2) 子どもの緘黙に気づいた学校関係者、専門家、保護者がASDの併存を疑うケースが増えた結果

最近では、学校関係者や専門家の知識が豊富になったうえ、保護者の側からASDのアセスメントを要求することが増えている。

現在のところ、SMとASD併存率は明らかになっていません。が、2018年に教育心理学者のクレア・キャロルさんがSMiRAのFBグループを対象に行った非公式の調査では(対象者 364名)、SMとASD併存する子どもは、全体の約三分の一(34%)という比率になっていました(詳しくは下記を参照ください)。

もう一つ注目したいのは、最近になってASDと診断される女の子の数が急増していること。自閉症の名付け親、レオ・カナーの1943年の研究によれば、ASDの男女比は4対1。これに対して、2017年のルームズ他の研究だと、3対1の比率になっています。

私が働いている高機能ASD専門の特別支援学校では、これまで女生徒の人数は1割に満たないものでした。それが、今年9月の新学期から女子が急増! 日本語の生徒さんのクラス(15〜16歳)は、女子が3分の1以上に増えていてビックリ。

イギリスのNHS(国民保健サービス)によると、場面緘黙の発症率は140人の子どもにひとり。男女比は女子の方が多く、カナダの団体Anxiety Canadaによると、男女比は1対2となっています。

2018年のクレアさんの調査では、「SM とASDが併存」と診断されたのは、全体の34%(124名)、その中で診断に満足していると答えた98名について、男女比はきれいに1対1に分かれているのです。全体の男女比は公表されていないのですが、とても興味深い結果だと思います。

場面緘黙だからASDというのは決してありませんが、ASD児の中に二次障害として場面緘黙を発症する子が一定数いるのは、間違いないよう。…………………………………………………………………………………………………

2018年度、SMiRAのFBグループで行った調査から(詳しくは『2018年SMiRAコンファレンス(その5)』をご参照ください)

 1) 第一調査:参加者(大半は保護者)364名

SMのみ   66% (240名)  /  SM とASDが併存 34% (124名)

2) 第二調査(1) 対象:「SMのみ」の診断に納得している参加者(162名)

男女比:      男子 23%(37名) :  女子 77%(125名)

3) 第二調査(2)対象:「ASDとSMが併存」の診断に納得している参加者(98名)

男女比:      男子 50%(49名) : 女子 50%(49名)

2019年SMiRAコンファレンス(その8)SMとASDが併存している子どもへの介入

6月も半ばに近づいてきましたが、イギリスはここのところ雨模様の天気が続いています。今日は一日中雨で、最高気温が14度…寒っ。先週の土曜は午後から雨があがって天候が回復したので、ハイドパーク内のSerpentine Sackler Gallery に行ってきました。

    ギャラリー&カフェをデザインしたのは、東京の国立競技場の初回コンペで選ばれた建築家、故ザハ・ハディド氏。曲線の遊び心溢れるデザインは、昔流行ったTeletabbiesという子ども番組に出てくるTeletabby House(右)に似てる?

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SMとASDが併存している子どもへの介入

<SMを併発するASD児への対応>

ASDは理解されているが、SMは理解されていないケースの問題点

  • ASD児には、期待されていることを明確にする(例:ソーシャルストーリーなどを使って、社会性を身につけさせる)対応がとられる。しかし、SMを併発している子どもに対しては注意が必要。それがプレッシャーになると、不安による反応を誘発し問題が深刻化することもある
  • 言葉が出ない理由を、何を期待されているかを理解できていない(例:社会的な理解の問題)、会話をする気持ちの欠如(社会的コミュニケーションの問題)と限定して考えると、間違った指導方法に結び付きやすい(「何をしなければいけないか解っているのに、やりたがらない」と考えがち)。不安が原因、また話さない状態を持続させている要因だということを考慮すべき
  • 話さないこと、対話/ 自分の意見をいう課題をやらないことを、「頑固」「拒否」と誤解される可能性がある。賞罰式の指導に結び付いたり、長期に渡ってネガティブな評価を受けかねない

★早期介入がなされないと、緘黙状態が固定してしまう傾向が強い

SMは理解されているが、ASDは理解されていないケースの問題点

  • 表出している行動・言動のみに焦点が当てられ、ASD児が持つ三原則(TRIAD)と感覚過敏を背景にした通常とは異なる情報処理の方法や社会的理解のニーズが理解されにくい。子どもの行動・言動をひきおこしている要因への対処がないため、介入の成功がより難しくなる
  • 時間割変更などの問題に積極的に対処する支援が得られにくいため、学校での不安が続きやすい
  • 学校で一日中我慢し続けているため、家で「爆発」しやすく、保護者は子どもをネガティブに評価する傾向が強い。また、特別扱いしがち
  • 学校側は「単に言葉の問題だけではない」ことを理解できず、頑固な子と誤解されやすい

<結論>

  • ほとんどのASD児はSMを併発していない
  • ほとんどのSM児はASDを併発していない
  • しかしながら、重複する部分がある――根源に不安があり、コミュニケーションに影響を与えている
  • 表出している行動・言動の根底にある要因を探る
  • 子どもの幅広いコミュニケーションに着目する
  • 常に不安を減らすサポートを心がける――現時点からのスモールステップで可能なチャレンジを

クレアさんの講演はSMとASDの併存について、以下の点に着目して、今後のさらなる研究が必要ということで締めくくられました。

  • 2018年リサーチの結果と男女比に対しての更なる研究
  • SMとASDが併存する若者の支援
  • ASD児(人)が抱える社会不安がSMを引き起こす可能性
  • SMの若者に対して、適切なASD診断プロトコルが必要

みく備考:

ASDに関しては、「発達障害」という概念のもと1980年代くらいから一般に広く知られるようになりました。これに反して、SMの知名度はまだまだ低いように思います。

ただ、「自閉症」が一般に知られているといっても、ASD児は「人に興味がない」「一人でいることを好む」「視線が合わない」「会話ができない」など、ステレオタイプにはめ込んでいないでしょうか?実は、私がそうでした。

私が今働いている特別支援学校は、いわゆるアスペルガーの子どもを対象にしています。最初、「人に興味がない」はずのASDの子どもたちが、友達同士でゲームをしたり、校庭で一緒に遊んだりしているのを見てびっくり。一方的ではあっても「会話」は通じるし、視線を全く合わせないということもありません。「友だちが欲しい」と思っている子、「自分は人と違う」と違和感を持っている子が多いことも、だんだん判ってきました。

SM児もそうですが、ASD児にも色々なタイプの子がいて、一人ひとり個性が違います。また、発達の凸凹を持った子も多くいることが解ってきています。子どもの個性や特性を良く見極めて、困っている部分をうまくサポートしてあげたいですよね。

SM=ASDではないし、例えSMのお子さんがASD診断を受けたとしても、お子さん自身は今までと全く変わりません。最後にクレアさんが、「グレッグがASDじゃなかったら、今の彼じゃなくなるから、ASDで良かった」「今の彼が好き」と、息子さんをありのまま受け止めていたのに、とても共感できました。

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