息子の緘黙・学童期 7~8歳(その21)インファントのSENCoと対立

7月18日から学校が夏休みに入り、既に2週間が過ぎてしまいました。今年は6月から猛暑が3回も押し寄せてあれほど暑かったのに、夏休みに入った途端に雨模様。先週、今週と天候が崩れて最高気温は20~24度位に留まっています。

   友だちに会いにロンドン南東部に位置するケント州のカンタベリーへ。電車のトラブルで2時間ほど遅れましたが、念願だったフランシスコ教会の庭で小ピクニックをすることができました。大聖堂がある中世の町並みをそぞろ歩き、美味しいコーヒーで再び話に花が咲きました

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ものすご~く久しぶりに息子の緘黙話に戻ります^^; この内容はすでに公表したような気がしているのですが、見つけられないのでここに記しておきます。

息子の小学校はインファント(レセプション~2年生 ・5~7歳)とジュニア(3~6年生・8~11歳)に分かれていて、同じ敷地内にありながら校舎も校長先生も別々でした。ジュニアには制服があり、登下校に保護者の付き添いが必要なくなります。ここに来てやっと一人前の小学生という感じかな^^;

息子の学校ではクラスは持ち上がりで7年間ずっと変わらないシステム。だから、毎年担任が変わるだけで、クラスメイトの顔ぶれは同じです。それでも、緘黙の息子にとっては大きな変化なので、新たな環境に慣れさせる必要性があると感じていました。長い夏休みが来る前に何度か新担任に会っておければ――と考えていたのです。そこで3学期(4~7月)に入ったところでインファントのSENCo(Special Educational Needs Coordinator 特別支援コーディネーター)に相談することに。

すると、SENCoからは意外な返事が返ってきました。

「この間、地区のSENCoが集まる研修会があって、そこにマギー・ジョンソンさんが講師として招かれていたの。場面緘黙について新たに学んだわ。新しい環境に変わる時は、子どもが自意識過剰にならない様に、何もお膳立てしない方がいいそうね」

えっ、それは新しい環境で自分から話す自信と意欲がある緘黙児の場合では???

息子は教室でもかなり話せる様になってきたとはいえ、いきなり新しい環境に飛び込ませるのは不安でした。

緘黙児が進級したり、新しい学校に進学・転校する際は、トランジション(移行)の準備が大切といいます。ちなみに、小1から小2に移行する際、3学期のIEPは「次に進むクラスの新しい担任たちと良い関係を築き、2年生にスムーズに移行する」でした(詳しくは『息子の緘黙・幼児期5~6歳(その23)トランジションの支援』をご参照ください)。え~っ、今年はやってくれないの?!

SENCoは息子にはもうトランジションの支援は必要なく、私が心配しすぎ・関わりすぎと考えていたのかな…?「大丈夫だから」とそれ以上取り合ってくれませんでした。

「うーん」

考えた末、SMiRAの掲示板で相談してみましたが、これという明確なアドバイスはもらえず…。

経験上こういう時は自分の直感を信じるのが一番。思い切ってジュニアのSENCoに直接かけあってみることにしたのでした。

まず最初が肝心なので、以下のような作戦を立てました。

  • 夫婦でミーティングに参加

こちらの真剣さを解ってもらうために、できれば母親一人よりも夫婦で出向く。

  • 息子の取り扱い説明書を持参(A4の紙に箇条書きで)して説明

息子の緘黙の状態・特徴、担任(学校側)にして欲しいこと、して欲しくないこと、困った時の対策など、要点をできるだけ簡潔にまとめる。教師もSENCoも多忙です!長い資料や書籍などをじっくり見る時間はないと考えましょう。

  • 新学期が始まる前に、スモールステップを開始

新たな環境に慣れるため、3学期中に新しい教室で新しい担任に何度か会う機会を作ってもらう。

インファントのSENCoには申し訳なかったのですが、新学期からは彼女と会う機会もなくなるし、以前夏休みのスモールステップをお願いしたのに、すっかり忘れらていた経験もあるし^^;

イギリスでは自己主張しなければ別に問題なしと思われる風潮が強く、言ったもん勝ち、やったもん勝ちという感じが強いんです。気にしいの私がかなりの勇気を出して何か主張すると、「あっ、そうだったんだ」とあっさり認めてくれるという…日本での「言わなくても解ってもらえる」とか「空気を読んで~」という感覚は全く通用しません。(息子にも気にしいの気質が倍ぐらいになって遺伝してしまったので、この国では生きにくいだろうなと思います)。

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場面緘黙と自閉症スペクトラム障害(ASD)SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その13)

あっという間に7月も中旬に差し掛かろうとしていますね。 イギリスでは猛暑の第三波がやって来て、今日ロンドンは32度を超える真夏日となりました。日本と比べ気温は低いかもしれませんが、何せエアコンが普及していないので汗だく! 夕方になるともうぐったり疲れてしまい、少々忙しかったのもあって、ブログの更新をずっと怠けていました^^;

    暑い日が続くせいか庭の花の開花も例年より早いよう。ミニトマトは青い実がつき始め、ブルーベリーは今食べ頃です

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さて、かなり間が空いてしまいましたが前回の続きです。

通常とは異なるSM(場面緘黙)の要因

アンディは自分が支援するASDのティーンの中で、通常とは異なる要因でSMを発症するケースが多いことに気づきました。ASDの子どもが極度のストレスを受けると、ストレス受容のキャパが許容量を超え、フリーズ反応を起こすといいます。この状態になると、身体が硬直して言葉を出すことができなくなる――つまり、SMの状態になるというのです。

アンディはASD児が緘黙になる主因が、話すことへの恐怖心からではないことに着目。SMとの併存グループには、ストレス過剰でフリーズ状態になって話せなくなる子が大勢いることに気付いたのです。

(もちろん、ASD児の中にも話すところを人に見られることを極端に恐れ、緘黙になる子もいると考えられます)

「極度のストレスが原因で起こるSMは、感覚への過負担(sensory overload)が起きてフリーズ状態になっていると思う。このケースには環境的な要因や虐め、過去のネガティブな体験など、明確なストレス源がある。それは現在起こっていることかもしれないし、過去の出来事かもしれない。学校にいることで既にストレスを感じている子どもは、常に緊張状態にある。それに加えて、周囲が騒がしすぎたり、光が眩しすぎたり、過去に怒鳴られた恐怖経験を思い起こしたりして、感覚への過負担(sensory overload)が起きると、フリーズ状態になり話せなくなる。ASD児は次に何が起こるか予測できないため、不安でストレスレベルが極度に上がってしまうことも起因していると思う」とアンディは言います。

これに対して、一般的なSMに関しては、何故話しているところを人に見られるのが不安なのか理由ははっきりしていません。

通常、SMの治療はCBTを用いたスモールステップ法によって行われますが、環境が強いストレス源になっている場合は、まず環境を変えることが先決だといいます。治療の第一歩は、不合理な恐怖ではなく、実存するストレスの原因を取り除くこと。場面緘黙になった原因によって支援方法を変えるべきだと強調しています。

アンディはASD児のフリーズ反応についてマギー・ジョンソンさんに相談したそう。話し合いをした結果、新たに「リアクティブミューティズム(Reactive  Mutism  反応的な緘黙)」という名称を使うのが良いのではないかという意見が出ているのだとか。

実は、これは過去に使われていた用語ですが、現在は使用されていません。この用語の使用については、英国の主な支援団体であるSMiRAとも話し合っているそうです。

自らもASDであるアンディが、ASDの子どもやティーンの支援を行う中で見えてきたASDとSM併存ケースにおけるSMの特徴。これからの緘黙治療の大きなヒントになるかもしれません。

追記:

Reactive Mutism(反応性緘黙症)は1980 年に作家のトリイ ヘイデンさんによる研究で、場面緘黙の 4 つの「サブタイプ」として特定されていました。説明には、トラウマや虐待に対する反応であり、全ての子どもがうつ病の症状を示し、通常は無表情で引きこもりがちとあります。

扇風機をかけながらここまで書きました^^;

<関連記事>

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場面緘黙と他の不安障害の併存 SM H.E.L.P.2024年秋サミットより(その4)

場面緘黙と社会不安障害 SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その5)

場面緘黙と強迫性障害 SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その6)

場面緘黙とPDA(病理学的要求回避) SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その7)

場面緘黙とASD(自閉症スペクトラム障害)SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その8)

場面緘黙とASD(自閉症スペクトラム障害)SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その9)

場面緘黙と自閉症スペクトラム障害(ASD)SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その10)

場面緘黙と自閉症スペクトラム障害(ASD)SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その11)

場面緘黙と自閉症スペクトラム障害(ASD)  SM H.E.L.P. 2024年秋サミットより(その12)

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