PDA(病理的要求回避 Pathological Demand Avoidance)とは?

5月も今日で終わりです。何もしないうちに、またあっという間に時間が経ってしまいました。一時期は初夏の気候になって暑かったのですが、1週間ほど前からぐずぐずの天気に。今日は風が強い雨の一日で、冬に逆戻りした様な肌寒い一日でした。

   今年もまたリージェントパークのメアリー女王の薔薇園に行ってきました。生憎の雨の中、イングリッシュローズが静かに薫って

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イギリスではここ数年の間に、: PDA(Pathological Demand Avoidance 病理的要求回避)という症状名をよく耳にするようになりました。

PDAはASD(自閉症スペクトラム)のプロフィールのひとつと理解されていますが、その研究はまだ初期段階です。ただ、イギリスでは自閉症の診断時にPDAのアセスメントが追加されることも多くなってきているよう。

PDAの子ども/人は、社会的コミュニケーションの困難さや感覚過敏などASDの特徴を併せ持つといわれています。その上で、毎日すべき義務(タスク)を社会的な策略を駆使しながら、異常なまでに避けるというのが特徴。

英国PDA協会(Pathological Demand Avoidance Society)による定義は:

<自閉症スペクトラムのPDAプロフィール>

  • 現在「持続的な困難」と定義されるASDの特徴――社会的コミュニケーションと社会的な相互関係の困難さ、そして制限的で反復的な行動・活動・興味のパターンを――を併せ持つ
  • 多くの場合、一般とは異なる視覚・臭覚、触覚、聴覚、さらに飢えや渇きといった内的感覚などの感覚体験を覚えることが含まれる

上記に加え、下記のPDAプロフィールの多くの主要特性を備えている

  • 日常生活のあたり前の要求に抵抗し、回避する
  • 回避のいち手段として、社会的な策略を使う
  • 社交的に見えるものの、理解力に欠ける――予測よりもっと「社交的」に見えるかもしれない(例えば、より「従来型」に近いアイコンタクトや会話スキルなど)。しかし、これによって根底にある社会的コミュニケーションと社会的な相互関係の困難さが隠蔽されている可能性がある
  • 感情や気分の起伏が激しい
  • 時として極端なまでに、ロールプレイ、ふり、空想に没頭する
  • 多くの場合、度を超えて人に執着する――PDAの場合「反復的または限定的な興味」は社会的な性質のもので、実在または架空の人物が対象となる
  • 自己コントロールの必要性が高い――これは不安、または要求に直面した際の自動的な「脅威反応」によって引き起こされることが多い
  • 支援、子育て、教育における従来的なアプローチに反応しない傾向が強い

About autism & PDA

緘黙児のなかにもPDAを持つ子どもが?

緘黙児にとって「おはよう」や「いただきます」など、毎日の挨拶はとても難しいことです。当たり前のことだからこそ、話すことを期待されていると強く意識してしまう。だから、余計に緊張して言葉がでなくなると考えられます。

当たり前の挨拶をしない――緘黙を知らない人からすれば、「失礼な子」と誤解されてしまいますよね。

言うことが決まっているから簡単と思ってしまいがちですが、うちの息子も学校で声が出始めてから、朝の出欠確認に答えられるようになったのは随分後のことでした。

ただ、日常の挨拶ができないのは緘黙のせいではなく、PDAのケースもあるかもしれません。

イギリスのSLT(言語療法士)、リビー・ヒルさんは、緘黙児の中にもASDの特性を併せ持ち、PDAの症状を持つ子どもがいると警鐘を鳴らしています。

もしPDAの場合は、従来とは異なるアプローチが必要だからです。

(長くなってしまったので、次回に続きます)

いよいよ今週末!場面緘黙の国際コンファレンス

今週末、5月11日(土)と12日(日)に英国バースのノーランド大学において、場面緘黙の国際コンファレンスが開催されます。

前回の記事で少し触れましたが、より詳しい内容が明らかになってきました。

11日(土)には、場面緘黙が各年齢の子ども、十代の若者、大人にどのような影響を与えるかについて、またそれぞれの年齢層にどのようなサポートの選択肢があるかについて、6つのプレゼンテーションが予定されています。

また、12 日(日)のプレゼンテーションは、音楽療法と動物療法の他、神経系への理解、個人とその嗜好への理解、家族の力関係の重要性への理解などがテーマになっています。

この国際コンファレンスを共催するSoundEmotiveとSM H.E.L.P.を代表する二人も講演する予定。

◎ジョアンナ・ターナーさん(Joanna Turner)

ジョアンナさんはイギリスのサマセット州をベースに活動する SoundEmotive の音楽療法士です。原始反射の統合(primitive reflex integration)、安全で健全なプロトコル(Safe and Sound Protocol-SSP) 、子供のためのヨガの研修も。娘さん2人が場面緘黙で、場面緘黙に対する認識を高め、緘黙に苦しむ全ての人を支援するためにイギリス全土で改善された治療経路が導入されるようキャンペーンを行っています。 SMIRA のコミッティーメンバーのひとり。

◎ケリー・メルホーン(Kelly Melhorn)さん

ケリーさんは米国 SM.H.E.L.P.の主催者。2018年に娘さんが場面緘黙の診断を受けて以来、場面緘黙の理解に専念してきた行動分析官士補佐です。2020年に SM.H.E.L.P.(家庭教育学習プログラム)を立ち上げ、場面緘黙に関する答えを探す人々に無料のオンライン・サミット、ポッドキャストなどを提供。場面緘黙の人を支援するためのアプローチとして、外部環境と内部環境の両方を変えるだけでなく、固定化してしまった「戦闘(fight)」「逃避(flight)」「フリーズ(freeze)」反応状態を引き起こす可能性がある原子反応の統合を目指しています。

その他の講演者は、SMiRAやSM H.E.L.Pのコンファレンスやサミットでもお馴染みの専門家が多数。イギリスからは児童療法士のルーシー・ネイサンソンさん(Lucy Nathanson)、言語療法士のアンナ・ビアヴァティさん(Anna Biavati)、リビー・ヒルさん(Libby Hill)、アニタ・マッカーナンさん(Anita McKiernan)、スザンナ・トムソンさん(Susannah Thomson)。動物療法士のケリー・ベイカーさん(Kelly Baker)SMiRA委員会メンバーのクレア・ニールさん(Claire Neal)、そしてノーランド大学で学ぶ、場面緘黙経験者のジェス・ブリンさん(Jess Bryn)。アメリカからは言語聴覚士のジョリーン・フェルナルドさん(Joleen Fernald)が講演します。

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