息子の緘黙・学童期 7~8歳(その13)楽器のレッスンを開始

2月はいろいろな出来事があって、ただでさえ短い月なのに、あっという間に終わろうとしています。イギリスでは春めいた気候から、また寒さが戻ってきました。

    学校の休みと重なった今年のバレンタイン。主人も休みを取っていたので森へ散歩に出かけました

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私が住んでいる地区では子どもの音楽教育に熱心で、毎週土曜日に音楽教室(4~6歳まで)を開催。この年齢の地元の小学生なら、誰でも入れます。内容は歌が中心で、あとはタンバリンやカスタネットを演奏する程度ですが、毎年発表会も。

そして、小学2年(7歳になる年)の春期から、楽器(バイオリン、コルネット、フルートの中から選択)の個人指導を開始。ある程度うまくなったら、吹奏楽と管弦楽に分かれて、能力別のブラスバンドやオーケストラにも入団できます。

楽器のトライアルで息子はコロネット(トランペットより小さいので児童向)を選びました。理由は、初めて挑戦したのに結構音が出て、先生に褒められたから。また、人前で口を使って「吹く」ことが、「話す」練習になるのではないかと考えたからでした。

吹奏楽器のレッスンは、車で15分ほどのところにある地元のセカンダリースクールを借りて行われていました。この時から、私たち夫婦は息子の送り迎えを9年ほど続けるはめに…。

この頃、息子の学校での緘黙症状は「囁き」から「普通の声」へと前進し、教室で先生たちと短いやり取りをすることができていました。

50分の1対1のレッスンだったら、わりと早く慣れてコルネットの先生とも自然に会話ができるようになるかも?

そう考えて、最初は場面緘黙のことを告げませんでした。もし問題が出てきたらその時に対処すればいいやと、ごく気楽に考えていたのです。

初めてのレッスンは私たち夫婦も同席。6歳児なので特別なことではなかったと思うのですが、殆どの子は最初からひとりで行けてたかも。

息子は返事をしないものの、先生の言葉に頷きながら最初から音を出すことができていました。いっぱい褒めてもらった上、新品のコルネットを貸りて帰ることができ、自宅でも上機嫌で練習。真新しい練習帳にはexcellent(優秀)と記されていて、私も嬉しくなってしまったことを今でも鮮明に覚えています。

ちなみに、試しに私も吹いてみたら、全く音が出せず(主人はもう少しマシでしたが)…。息子はそれを見て得意そう。自信のない子どもにとって、こういう体験こそが重要なのかもしれませんね。

翌週のレッスンでは主人が教室で付き添いましたが、3回目のレッスンからはひとりで受けられるように。

私たちがいない方が気楽かも。先生と話せたかな?

期待しながら待っていたのですが、学期末に先生に訊くと一度も会話できていないとのこと…。うーん、やっぱり壁は厚かった(連絡帳にひと言書いてくれても良かったのにな(^^;)。

レッスンは上手くいっていたし、先生は息子が話さないことをさほど気にかけていない様子。子どもを見守ってくれるタイプなんだなと、安心できました。

その時に、初めて場面緘黙のことを手短に説明しました。話さないのは先生のせいではなく不安からだということ。返事をしなくても、本当は話しかけられるのが嬉しいということを強調し、息子のことをお願いしたのでした。

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早いものでもう2月!1月は学校の生徒たちの模擬試験の準備・実施・採点・通知と所得税の申請で、あっと言う間に過ぎ去ってしまいました。イギリスでは寒さが緩んで例年並みの気候なのですが、ふと気づくとあちこちに春の兆しが。

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さて、息子の緘黙話の続きです。

イギリスの小学校の給食は、通常のメニューの他にベジタリアンメニューを選択できるようになっています。これは本人の好みや家庭の主義、宗教的な理由を考慮してのこと。また、大抵はナッツアレルギーがある生徒のために、ナッツ類は使用されていません。

それは息子の学校でも同じでした。なのに「もしも」の事態を避けるためにと、担任からお弁当に切り替えるよう言われたのでした。

ちなみに、パックランチと呼ばれるイギリス人のお弁当は、大体サンドイッチとりんご等の果物、そして小袋入のスナック菓子(ポテトチップス等)と、すごく簡単。それに比べ、外国人の子ども達(息子の小学校には36か国以上の子どもが在籍)のお弁当は、国際色が豊かでした。

(実は、息子は学校給食が好きでした。というのも、チキンナゲットやフィッシュフィンガー、ピザなどファストフード^^;)やイギリス風のスィーツなど、普段は家で食べられないものが出てくるから。それにもまして、「皆と同じだから目立たない」というのが安心材料だったのかと)

私が作るお弁当はやはり日本式になってしまうのですが、お弁当を始めて割とすぐに食べてくる量が減りはじめました。

「あれ、どうしたの?全然食べてないね?好きなもの入れておいたのに?」

「…. 」

息子は帰宅するやいなやおやつを食べまくるので、お腹がへっているのは明らか。でも、お弁当を食べない理由は言いたがらないのです。

ある日のこと、

「マミー、お弁当におすし(海苔巻き)入れないで」と言われました。

「どうして? 嫌いじゃないでしょ?」

「…ん」

黙り込んでしまった息子が、やっと重い口を開いてぽつぽつ話しはじめたところによると、

「それ何? スシ?」

「私も食べたい!」

「見せて、見せて!」

「今日はどんなお弁当?」

日本式のお弁当が珍しいので、クラスの女の子たちが寄ってきて色々言うのだとか。それが嫌だと…。

多分、彼女たちに悪気は全然なくて、ただ珍しいだけだったんだろうと思います。いろいろ言われたのも毎日ではなくて、最初のうちだけだったのだろうと。

でも、抑制的気質で不安が強い息子にとって、それは驚くべき恐怖の体験だったのでしょう。

自意識過剰がマックスに達し、人目が気になって食べれなくなってしまったようです。

とにかく、人目につかず、目立たず、背景に溶け込んでいること――それが安心できる状態なので(^^;

これって人前でものが食べられない、会食恐怖症という症状ですね。

小学校にあがる前の夏休み(『息子の緘黙・幼児期4~5歳(その23)』をご参照ください)に一度なったのですが、スモールステップで少しずつ改善。半年くらいで緩和していった過去がありました。でも、また?!

そのうちに治るだろうと楽観視はしていましたが、どうやったら少しでも食べてくれるのか悩む毎日。サンドイッチにしてみましたが、時すでに遅し😢 結局、さっと口に入れやすいようにピンポン玉くらいのお握りとか、ひと口大のおかず類を入れることにしたのでした。

結論からいうと、徐々に食べられるようになっていきましたが、完食してくる日は少なかったような…。この問題は、3年生になってジュニアスクールに移り、給食が再度OKになって解決されました。

抑制的な気質の息子は、不安が強く自意識過剰で、繊細で、人目を気にしすぎ――恐怖症になりやすい子なんだと改めて思いました。

場面緘黙も恐怖症に含めると、6歳までに場面緘黙、犬恐怖症、プール恐怖症、会食恐怖症を(そして多分社会不安も)経験。結果的にどれも治りましたが、子どもも親も大変です。

ちなみに、克服方法は緘黙治療と同じでCBT(認知行動療法)のエクスポージャー法なので、一度身に着ければ本人が自分で活用していけます。

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