SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その3)

2021年も明日で終わりですね。去年末はアルファ株の激増でロックダウンしていたイギリス。今年はオミクロン株が激増して、本日の感染者数はパンデミック始まって以来、最多となる18万9000人を越えてしまいました!それでも、昨年に比べると重症化率が低く、死者数も少ないのが救いのひとつ。一部の科学者が指摘するように、コロナウィルスが徐々に弱毒化して、風邪のような存在になれば良いのですが…。

    

   イングランド中部のクリスマスは深い霧に包まれていました。義両親宅の近くのBrixworthの町まで歩き、その起源をアングロサクソン時代の7世紀まで遡るというAll Saint Churchを見てきました

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さて、マギー・ジョンソンさんのオンライン講演の続きです。

<ティーンと成人向けのスライディングイン法>

マギーさんがスライディングイン法を重要視するのは、最小のストレスで最速の回復を期待できるから。

ティーンや成人と子どもとの主な違いは、年齢的に場面緘黙が恐怖症だと理解できること。不運にも恐怖症になっているだけで、緘黙状態は本来の自分ではない――スモールステップ法を実践すれば、少しずつ恐怖心を克服できると理論的に理解できることです。

(みく注:ティーンや成人は緘黙を「恐怖症のひとつ」と捉え、第三者的な視点でみることができるということですよね)

脳が間違った反応をしているため、脳を再訓練して危険でないことをゆっくり学習していきます。危険がないと判断できれば、脳内でFight or Flight(戦うか逃げるか反応)の自動スイッチが入ることはありません。

例えば、大きな黒い犬が向こうからどんどん近づいてくると仮定してみてください。犬が自分に危害を加えるかもしれないと判断すると、脳は自動的にFight or Flight モードに。でも、危険はないと解れば、恐怖はなくなりパニック状態に陥ることはありません。

スモールステップに対して、「じゃあ、試してみようか」と本人が思えること、大きなプレッシャーを感じずに自分のペースで進めること――本人が「大丈夫、できる」と思えることが重要になってきます。

16歳のポーランド人の少年、サンダー君の例:

症状:2年間心理士にかかったが進歩はなく、親しい関係の祖父母にも話せなかった

母親が渡英して緘黙の研修を受け、緘黙は恐怖症だからスモールステップで克服できると説明。サンダー君は「それならできる」と同意し、まず祖母とスライディングイン法を試み、話すことに成功。翌日、祖父とも試みる予定だったが、スライディングイン法を実施することなしに話すことができた。

心理士とセッションを続けていた間、サンダー君は「原因は自分にある」と自分を責めたり、絶望したりしていました。それが、たった2日間で祖父母と話せるように!彼はその後、理解のある学校に転校し、そこで徐々に緘黙を克服することができたそう。現在は、緘黙だった過去を想像できないまでに回復しているとか。

マギーさんは、年を重ねることに緘黙が固定化して話せない人が増え、克服が難しくなる傾向があると指摘。けれど、適切な支援と本人の理解があれば、必ず克服できると語っています。まず、「緘黙は恐怖症で、克服できるもの」と理解すること。この気づきがあれば、長いセッション1回で話せなかった人と話すことも可能となるのです。

子どもの場合は、恐怖を感じさせないよう、短時間のセッションを何度も行う必要があります。プロセスを小さなセクションに分け、根気よく積み重ねるのです。親子のいる部屋にマギーさんが入り、子どもと話をするまでに平均で10セッション程度かかるそう。

一方、ティーンや成人の場合は、長いセッションを一度行うだけで話せるようになるケースも。スライディングイン法は、緘黙の程度や個々の状況に合わせてやり方や回数・時間などをいくらでも調節できるところが利点だといいます。

(次回は具体的なケースをご紹介します)

オミクロンの脅威は消せませんが、皆さん身体と心の健康に気をつけて、良い新年をお迎えください。

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第2回 SM H.E.L.P オンラインサミットから(その3)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その1)

SM H.E.L.P. 2021年秋サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その2)

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一足早いクリスマスプレゼント?

クリスマスイヴまであと2日を切りました。イギリスでは1年で一番大きなイベントがクリスマス。家族や親戚、友人同士が集まって、プレゼントを交換し合い、クリスマスディナーを食べて盛り上がります。あとはTVで女王様のお言葉を聞いたり、飲んだり、食べたり、話したり、リラックスしたり。

我が家の今年のデコレーションはこんな感じ

が、ご存じのように今イギリスではオミクロン株の感染が激増中。特に、ロンドンでは完全にデルタ株から置き換わり、今や90%がオミクロン株なんだとか。今日の感染者数はなんと10万人を超え、未知との遭遇状態…。

2週間ほど前から、ごくごく身近で感染の話を聞くように。でも、1週間ほど前からそれが加速し始めたんです~( ;∀;)

まずは、先週末会う予定だった友達から連絡が来て、月曜日に一緒だった顧客が金曜日に感染したと…(彼女は2万円ほど支払ってPCR検査を受け、陰性でした)。

それから、オンラインの日本語の生徒さん(13歳で、自身は2か月前に学校で感染)から、今度は両親が感染して自宅療養しているとの報告。

別の友達のご主人も職場で陽性者が出て、症状は出ていないものの簡易テストをする毎日。クリスマス前に不意打ちのように陽性者が激増して、濃厚接触者も大激増。

うわ~、すぐ近くまで迫って来た~と不安になったところで、今度は我が息子が!!

先週頭の3日間、友達とロンドンに遊びに来ていたのですが(家には帰って来ず)、大学のある町に戻ったところで友達が発熱(◎_◎); PCR検査の結果、おととい陽性が判明しました(◎_◎;)

息子は先週金曜日から簡易検査ではずっと陰性だったものの、友達が陽性だったのでもう感染してるに違いない!と悲観的な気持ちになっていました…。

で、息子は昨日PCR検査に出向き、今日結果が出る予定だったのです。

心配で一日中落ち着かなかったんですが、ついさっき連絡が!

陰性でした~\(^o^)/ ヤッタ~!

これで息子は下宿先で独りぼっちのクリスマスを過ごさずに済みます。

去年のこの時期は英国由来のアルファ株が急増して、政府はクリスマスの5日前にロックダウンに踏み切りました。我が家では、通常義両親や義妹家族の家に行って一緒にクリスマスを祝うのですが、私たちが会ってプレゼントを交換したのは今年の4月。

今年は義両親宅に行って2家族でクリスマスを過ごすことになっていたのですが、息子の友達の感染で不透明に。でも、義両親に陰性の情報を伝えたところ、予定通りに来てと言われました。

念のため、出発前に全員簡易テストをして確認し、換気を徹底してコロナ感染することなくクリスマスを過ごせればと思っています。

オミクロン大感染のなか、重症化する人が少ないのが救いといえば救いかな…。私の周りで感染した人は全員軽い症状で済んでいます。オンランピラテス仲間のひとりも陽性(同じ家に住む3名全員)ながら、昨日のクラスに参加してました(;^_^A

熱や咳はそれほど酷くならず、呼吸が苦しくなったり、嗅覚・味覚に変調をきたすことも少ないよう。軽い風邪やインフルエンザに近い症状で、ピラテス仲間は2日間ほどくしゃみが出て「あれっ、風邪かな?」という感じだったそう。重症化しているのはワクチン接種をしていない人が殆どと聞いています。

症状が軽いのはやはりワクチン接種のお陰のよう。症状が軽ければそれほど恐れることもないと思うのですが、問題はオミクロン株の感染率の高さですね。入院患者が増えると医療システムがパンクしてしまうので…。

森林公園ハムステッドヒース内、ケンウッドハウスのイルミネーション

皆さんも感染に注意して、素敵なクリスマスとお正月をお過ごしください。

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SM H.E.L.P. サミット マギー・ジョンソンさんの講演(その2)

早いもので、12月もすでに中盤に入ってしまいました。仕事も生活もなんだか慌ただしくて、時間だけがびゅんびゅん過ぎていく感じ…毎年この季節になると焦るのですが、今年は高速感が半ばないです~。

    通勤途中の風景。最近では4時ごろになるともう薄暗いのですが、寒桜や赤い実が暗い季節を彩ってくれてます

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さて、マギージョンソンさんの講演の続きです。

場面緘黙児の不安は一体どこからくるのか?

その謎が解けたのは、1995年にマギーさんの娘さん(当時10歳)が酷い蟻恐怖症になり、児童心理士を受診した時のこと。心理士は恐怖症がどのように始まり、作用するかを説明したうえで、マギーさんが無意識のうちに恐怖症を強化してしまっていると忠告…。マギーさんはショックで泣きだしてしまったそうですが、同時に「あっ、場面緘黙も同じなんだ!」とピンときたそう。

不安障害は心理的な問題――恐怖やパニックは現実のものだけれど、感じる脅威は頭の中でつくられた/ 想像されたもの。現実の不安要因に対して、感じる恐怖は不合理に大きく、全くつり合いが取れていません。大きな恐怖を脳が察知すると、身体が条件反射的に反応して、冷や汗が出たり、足がすくんだり、体全体が硬直したり、パニックに陥ったり…人によって症状はさまざま。場面緘黙の場合は、喉が締まったようになり、声が出なくなるのです。

場面緘黙の人にとって、特定の人や場面で話すだろうという期待は大きな脅威。ほとんどの緘黙児には、不安を感じることなく話せる小さなサークル(安全領域/ コンフォートゾーン)がありますが、大多数の人はこの安全領域の外なのです。その人・場面を知っている期間の長い・短いは関係ありません。

子どもはすごく話したいと思っているのに、恐怖のために声がでないのだ――そう理解したマギーさんは場面緘黙の治療に恐怖症への対処法を取り入れることに。それまでにスモールステップ法が有効なのは明らかでしたが、その上に必要なものが判明したのです。

治療を始める時は、子どもに対して、どんなに怖い思いをしているか解っていると共感。自分がすることは話をさせることではなく、恐怖心を少しずつ少しずつ減らしていく助けをするのだと説明します。子どもが「できる」と思えるように、小さなステップを重ねていくことが重要です。

もう一つの大きな変化は、子どもと保護者の前で場面緘黙についてオープンに話すようにしたこと。不安について話すことで、子ども自身も自分の状態を把握できます。

また、保護者が子どもの緘黙を強化しないよう、保護者も治療チームに加えるようにしました。親の育て方のせいで子どもが緘黙になるのではないことも強調。保護者はどうして自分の子どもが緘黙になったのか見当がつかないことが多く、原因を見つけようと苦悩します。でも、保護者が不在の時に緘黙になるきっかけに遭遇していることも多いのだとか。

治療法にこれらの変更を加えたことで、子ども達の回復はかなり早まったといいます。

治療にあたっては、主にスライディングイン法とフェイディング法を使いますが、重要なのは段階的なエクスポージャー法を取り入れていること。以前はシェイピング法(段階的に発話動作を形作っていく)を使い徐々に声を出せるようにしていましたが、スライディングイン法を使うと、最小のストレスで最速で子どもを回復させることができることが解ってきました。

(またまた次回に続きます)

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