先週の日曜日は私の23回目の結婚記念日でした。ロンドン北部のハムステッドにある歴史記念館、Burgh Houseで式を挙げた私たち。記念日にはそのガーデンカフェでランチを楽しむのが恒例となっています。コロナ禍が続く中、今年も木陰のテーブルで家族そろって記念日を祝うことができました。
イギリスは先週末から猛暑(最高気温30度前後)が続き、私が小学生だったころの日本の夏を思い出しています
下の写真はBurgh Houseの向かい側に飾られていたストリートアート。パネルの上部はピンクの造花のバラで埋め尽くされ、下部には詩/ 言葉が。読みながら、「うんうん、これって人生の哲学だなぁ」としみじみ。
良いことは悪いことと共に受けいれなければならない
悲しい時は微笑んで
今持っているものを愛しみ、かつて持っていたものを記憶しておこう
常に許そう、でも忘れないで
過ちから学ぼう、でも後悔はしないで
人は変わり、状況は悪くなるもの
ただ、これだけは覚えていよう――それでも人生は続く
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話は変わりますが、私が勤めている特別支援学校は先週水曜日に終業しました。5年間日本語を学んでくれたアニメ好きの教え子2人が卒業。それこそ、良い時も悪い時もつきあってきたので、とても感慨深い別れとなりました。
驚いたのは、それぞれの最後の授業で2人とも送別のギフトをくれたこと!! ひとりは出るはずだった運動会をドタキャンして「最後だから」と授業に来てくれました。予期していなかったので、本当に感激しました。
(私からは手紙と日本食・雑貨店の商品券を贈ったのですが、彼らからなにかをもらうなんて思ってもみませんでした)
カードとポルトガル語のフレーズブックをくれた生徒は、幼少期をポルトガルで過ごしてからイギリスに移住(元は中東から?)。TVでポルトガル語版『ドラエモン』を観て育ち、日本に興味を持ったんだとか。
私が「いつかポルトガルに行きたい」と言ったのを覚えていてくれたんですね。
彼がお母さんと片面ずつびっしり書いてくれたカードには、こんな言葉が、
「日本語を始めた時は個人的にすごく大変な時期だったから、真面目にやらない時もあったし、いい生徒じゃなかった。でも、それでも忍耐強くつきあってくれたよね。日本語の授業もだけど、会話をしてる時が一番楽しかった。大好きな日本のアニメや音楽や文化について話すと、いつも興味を持って耳を傾けてくれたから」
この子は小学部の騒がしい雰囲気やクラスになじめず、うつ状態になって一時期不登校に(詳しくは『ひとりじゃない』をご参照ください)。
高等部用の別校舎ができてから登校できるようになったのですが、最初は普通の授業は無理…。そのころ何をしていたかというと、折り紙をしてたんです!
私は紙風船やツルしかできないのに、彼が興味を示すのはクノイチの短剣とか龍とかなんですよね (;^_^A ハードル高すぎ! で、動画を探して練習して、折り方の説明を英訳して。彼は手先が不器用なので、細かい部分は全部私がやらねばならず、とくかく形になるように必死だったなあ…。でも、喜んでくれるのが嬉しかったし、彼の忍者や龍についての知識には舌を巻きました。
そうこうしている内に、彼は新しい校舎と学友に馴染み、アニメ好き&日本食好きの友達ができたのでした。おまけに日本語の国家試験にも合格したんです。
もう一人の子はADHDと微細運動発達障害も併発していて、14歳ころかな、ちょっと荒れた時期がありました。私の授業では特に問題を起こしませんでしたが、一度だけフラストレーションを爆発させて壁をおもいきりパンチ!壁にボッコリ穴をあけたことが…。
どちらも今では良い思い出。来年はカレッジで新コースに挑戦しますが、学校やTAの補助はありません。その後、無事に社会に出ていけるよう、健闘を祈りたいです。
ところで、普通だったらシミジミと別れを惜しむところですが、2人とも「それじゃ、バイバイ」と、とってもドライ(;^_^A でも、そこが彼ららしいんです。
追記:ネットで東京オリンピック・パラリンピックの開会式音楽を担当していた小山田氏の辞任騒動を知りました。
うちの学校は高機能ASD児&ティーン専門の特別支援校で、公立校にうまく馴染めず転入してくる子も多数。この間、「好きな/ 嫌いな+名詞」の練習をしていて、たまたま「嫌いな人は誰ですか?」と生徒のひとりに訊いたんです。そうしたら、「キランです」ときっぱり。
この子は大人しくてあまり感情を外に出さず、ぱっと見ただけではASDとは判りません。前の学校ではこのキランという子にずっといじめられていたと教えてくれました。みんなに知られない様に、陰に隠れて執拗にいじめ続けたと…。
いじめられた側は、それが心の傷になって一生残ります。特に、ASD児&ティーンはフラッシュバックで追体験することが多く、嫌な記憶が昨日のことのように蘇ることも。
コロナ禍で人々の心が荒涼としている現在、誰もいじめたり、いじめられたりしないような世の中になって欲しいと心から思います。