息子の緘黙・幼児期5~6歳(その12)誤解されてた!

すでに12月も半ばを過ぎてしまいましたね。天気が悪いせいもあるけれど、朝7時になってもまだどっぷりと暗く、午後4時半前にはもう真っ暗。でも、明日12月22日が今年の冬至で、1年で一番短い日。それから少しずつ日が長くなっていくかと思うと、なんだかホッとします。

大学生になった息子が帰省し、クリスマスの飾りつけも終えました

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1年生の1学期は、教室で囁き始めるなど大きな進歩が見られました。その反面、どうしたら普通の声を出せるようになるのかと、随分気をもんだ時期でもあります。

そして、息子のことを随分誤解されていたんだと思い知らされたエピソードも…。

息子の緘黙状態はちょっと不思議で、学校内であっても放課後の校庭で幼稚園時代の親友T君(日本人)と一緒に遊んでいる時だけは、声が出せていたのです(詳しくは、『息子の緘黙・幼児期4~5歳(その18)悲しい想い』をご参照ください)。

多分、学校にいることに慣れて緊張や不安が減ったところに、私の顔を見てホッとする。さらに、仲良しのT君と一緒に行動できる楽しみや、「やっと学校が終わった!」という安堵感があったんだと思います。

また、みんなと一緒になって体を動かしている時は、「見られている」という意識が緩むよう。小学校低学年くらいまでは、第三者の目や自分の行動の不合理性をそこまで深く考えられず、だからこそ「ついポロっ」と声が出てしまうんじゃないでしょうか。

イギリスでは小学校の幼児部 (Infant School 4〜7歳)まで、保護者やその代理人が学校の送り迎えをする義務があります。父親もちらほらいますが、放課後のお迎えはだいたい母親かナニーさんの役割。

校舎から出てきた子ども達は、しばらくの間校庭で遊ぶことが多く、その間母親たちは井戸端会議。私とT君ママはおやつを持参することが習慣になっていて、息子とT君はお菓子やサンドイッチを食べながら校庭を走り回っていることが多かったと記憶しています。

1学期も終わりに近いある日、私は同じクラスのママ達とおしゃべりしていました。

どういう訳か、息子とT君は息子のクラスメートが大勢いるところで遊んでいました。すると、何と息子がクラスメートのいる前でT君に向かって大声で叫んだのです!ちょっと離れていた私たちのところまで聞こえてくる位の声でした。

きっと遊びに夢中になってたんでしょう。何と言ったのか、今では覚えていないのですが、3単語位の文章だったと思います

クラスメートのQ君が私たちのところにやってきて、

「〇〇(息子)がしゃべるの、初めて聞いた!」と純粋に興奮した様子でQ君ママに告げました。

すると、後からやってきたクラスでも代表格のE君が、

「でも、アイツ絶対に教室ではしゃべらないよな!」と…。

私は驚いてしまって何も言えませんでした。

そうしたら、そのすぐ後にもっと巨大な爆弾が!!!

そこに居合わせたE君ママが、「〇〇君、ちゃんと話せたんだ!もしかしたら、精薄なのかと思ってたわ!」

えええ~っ?!

その時放たれた “I thought he was retard” という言葉を、私は今でも忘れられません。

”retard’ が精神遅滞/ 薄弱(現在は知的障害)と頭の中で変換され、大ショック!

息子は、そんな風に思われてたんだ…。

「ちっ、違うのよ~。家ではちゃんとしゃべるのよ。えっと、不安のために学校では話せなくて…」

焦って頭の中が真っ白になり、しどろもどろの説明しかできず…(^^;)

(母親の私も未だ緊張しーで、とっさに言葉が出ないことも多いんです。あとになって、「ああ、あの時こう言っていれば」と悔やむことが多くて…)

よく考えてみると、話せないだけでなく緘動で動きも鈍く、レセプション時代は活動についていけてなかったと思うので、そう思われても仕方がなかったのかも…。

それにしても…。

すごい衝撃ではありましたが、その場でストレートに言ってくれて良かった、と後から思いました。イギリス人って、それほど人のことを気にかけないし、あまり噂話とかもしないような気がします。自分がどう思うか、ストレートに意見をいう人が多いかな…。

(ちなみに、息子は翌年からE君の友達グループに入れてもらい、今でも友達関係が続いています。さらに、E君ママは私の悩みを聞いてくれる良き友になりました。人生って本当に判らないものです)

みなさん、素敵なクリスマスをお過ごしくださいね。

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息子の緘黙・幼児期5~6歳(その4)先生が僕を喋らせようとする

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息子の緘黙・幼児期5~6歳(その6)もうひとりの緘黙児

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息子の緘黙・幼児期5~6歳(その11)初めての言語テスト

息子の緘黙・幼児期5~6歳(その11)初めての言語テスト

すでに12月も半ばですね。今年は時間が経つのが加速的に早かったような気がします。先週末、久しぶりに訪れたロンドン中心部のコベントガーデンで、ちょっとメルヘンチックなクリスマスイルミネーションに遭遇。雨降りのさえない天気が続く中、心がほっこりしました。

   

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こうして、学校外で少しずつ話せる人の輪が広がると同時に、学校内でも徐々に囁ける人が増えていきました。1学期の終わりには、TAだけでなく、ついに担任の耳元でも囁くことができるように。

クラスメートについても、仲良しのB君、S君、転入生だけでなく、他の子にも囁けるようになっていったようです。ただ、人目を気にしながら一人の人の耳元に囁くことはできても、クラスの前で声が出せる訳ではありません。

囁き声を続けることが声帯に悪いという見解もあり、どうしたら普通の声を出せるようになるのか、色々気をもんだ時期でもありました。

1学期も中盤を過ぎ、(2005年)11月に入ったころ、SLT(言語療法士)による言語テストが行われました(詳細については、『日本では発達障害と見なされやすい?(その2)』をご参照ください)。

その時のレポートを見ると、

  • SLT(言語療法士)と初めて会ったにもかかわらず、すんなり言語テストに臨めた
  • SLTとは短い間視線を合わせられるが、目を見ない方が応答しやすそうだった
  • 殆どの質問に囁いて答えることができ、何度かはSLTの目を見て答えた
  • 理解力:2~4個の情報を持つ文章を理解できる
  • 話す力:多数の単語を使って長めの文章を構成できるが、時々動詞(is)や冠詞が抜けたり、前置詞を間違えたりすることがあった (注:冠詞と前置詞は私の弱点です(^^;)息子が小学校に入ってから普段の会話を日本語から英語に切り替えたので、多分そのせいもあるかと…)
  • この言語テストは、絵を主体にした比較的解答しやすいもの
  • 緘黙児は「試される」ことを嫌う傾向が強く、それが不安を増す原因となることもあるため、担任や母親と話し合いこの形式に決めた(私はきいてない…)
  • 子どもの言語能力が年齢に見合う範囲内にあるかは、更に詳細なテストが必要

このレポートは、SLTが所属する地区のNHS(国民保健サービス)が発行したものです。そのコピーは私たち保護者だけでなく、学校と発達テストを受けた小児クリニックの担当医にも送付されました。

小児クリニックは1回受診しただけで、「(ASDではないから)もう来なくていい」と言われたのですが、(将来のため?)息子のファイルに追加されたんだと思います。この受診がなかったら、学校にSLTが送られてくることもなかった訳で、ちゃんと繋がってますね。

このことからも、イギリスでは保護者、医療機関、学校のネットワークがあるのが解ります。その中の一つが機能していなかったら、他の二つが指摘して協力を仰ぐことができるようなシステムといえそう。

(といっても、実際は保護者が学校や医療関係に働きかけることが多いのですが…。反面、学校が主導して緘黙支援をしてくれるケースもあります)

それまでの息子の治療・支援の歴史を簡単にまとめると、

  1.  幼稚園    寡黙(ただ、日本人の親友とは人目がないところで普通に会話)
  2.  4歳6か月   滑り台から突き落とされ緘黙・緘動になる
  3.  4歳6か月(事件の1週間後) SENCOと保護者が会い、学校での支援開始(この時点ではまだ場面緘黙とは判明していなかった)
  4.  4歳10か月  小児クリニックで発達テスト(心理士に場面緘黙だと申告)
  5.  4歳11か月半  発達テストのレポートが保護者と学校に書面で届く
  6.  5歳3か月     学校で言語テスト
  7.  5歳9か月     言語テストのレポートが保護者と学校に書面で届く

特に、医療機関の介入に時間がかかってるのが判りますね。息子の学校がインクルージブ教育に力を入れていて、特別支援の体制が整っていたのが幸いでした。

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