ASD(自閉症スペクトラム)とSM(場面緘黙)の併存 ASD & SM Overlap
今回のコンファレンスで一番興味深かったのは、教育心理学者のクレア・キャロルさんによる短い報告でした。実はこれ、プログラムには記載されてなかったんです。事前に参加者に質問を募ったところ、「ASDとSMの併存」についての質問が多くあったそうで、それに対し回答したもの。SMiRA委員会メンバーでもある彼女は、このテーマを研究中だそう。
午後の部の最初に登場したクレアさん。用事があってこの後退室されたので、質問タイムには不在でした
「これは正式な調査ではない」と前置きした後、SMiRAのFB会員にアンケートをした結果を発表してくれました。このアンケートには300人以上の保護者が回答を寄せたそうです。
1) お子さんは純粋な場面緘黙か、それともASD併存(診断済)か
- 場面緘黙のみ: 66%
- ASDとSMが併存: 34%
3割近くの回答者が併存と答えました。今のところ、ASDとSMの併存率については公式な数字が発表されていませんが、イギリスではこれまでもっと少ないと考えられていました。
(以前の記事で併存率について触れましたので、興味のある方はご参照ください。『日本では発達障害と見なされやすい?(その4)』)
この結果について、クレアさんは「きちんとした調査が必要」と語っていました。SMとASDの特性に重なる部分があるため、過剰に診断されている可能性がある。また、まだASDの診断が下りていないため、過少に診断されている可能性も考えられるとのこと。以前は、SMがまだ一般に浸透しておらず、ASDの二次障害として現れるSMが見逃されていた点があるとも。
2) 男女比
- 場面緘黙のみ 男子 23% : 女子 77%
- ASDとSMが併存 男子 50% : 女子 50%
SMの出現率は、男児より女子の方が多いということは周知の通り。場面緘黙のみのケースは女子が77%と圧倒的に多いですが、併存のケースだと男女比はきれいに半分ずつに分かれています――どうしてでしょう?
ASDの出現率については、男子の方が多いことが分かっていますが、イギリスでは最近になって女子の出現率の増加が話題になっています。これは、女の子の方が成長が早く、自分が周囲と違うことを隠したり、模倣して周囲に合わせるスキルが高いため、ASDが見えにくいという理由からのようです。そのために問題が起きるまで発見が遅れるケースが多いということ。
SMとASDの関係については、更なる研究・調査が必要となりそうです。でも、ともにコミュニケーションや社会性に関わっているので、いずれにしても早期発見がカギとなってくると思います。
長い間子どもがひとりで苦しむことがないよう、「あれっ、変だな」と感じたら、どこかに相談することが必須じゃないでしょうか?SMもASDも周囲の対応次第で本人が随分楽になることは確かなので。
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